Harry Potter Ultimatemode EXシナリオ 作:純白の翼
1992年8月2日。午後11時。ここに、無駄に顔立ちの整っている少年が立っていた。名をグラント・リドル。英国最大のギャング組織、スマイルのBチーム総隊長である。だがそれは、彼の1つの顔だ。もう1つの顔は魔力を持った存在、即ち魔法使いなのだ。と言っても、まだ半人前なのだが。
何故ここに彼がいるのか。それは、彼の今回スマイルから課せられた指令にあった。
「ダブルドラゴンの壊滅は完了したのは良いけどよぉ。俺、チームの皆と逸れちまった。」
そう。ダブルドラゴンを壊滅させるのが、グラント率いるBチームに与えられた指令だ。ダブルドラゴンとは、構成員の半数以上が刑務所経験のある極悪組織なのである。それも、殆どは未成年の内から窃盗、強姦、麻薬、殺人等の罪を犯している連中である。それでいて、組織の資金力も潤沢。仮に逮捕されても、大抵は保釈金によってすぐに開放される。
今回、ロンドン警察から未成年の売春の元締めを発見し、それを足掛かりにダブルドラゴンの壊滅をさせようとしたのだが、旧ソ連の兵器を裏ルートから密輸していて、とてもではないが犠牲が増えやすくなっているという。故に、スマイルへ依頼が来たのだ。多額の報酬を渡す事と引き換えに、ダブルドラゴンを壊滅させて来いと来たのだ。
グラントの身体は、常人と違って異形だ。見た目は普通の人間と変わらない。しかし、スペックが桁違いだ。その気になれば、人間を殴り殺す事の出来る腕力、銃弾を受けても大したダメージにはならない耐久力、中々疲れすら感じさせない体力とスタミナ、そして化け物染みたスピード。何よりも驚異的なのは、普通の人間ならば数ヶ月でようやく完治する怪我もたったの数時間、長くても3日で完治する異常な生命力。
その力をグラントは、今までスマイルに仇名す敵に対して使っていき、粉砕して来た。死に追いやった人間も少なくない。そうしていく内に、自分が何者なのか分からなくなりつつあったのだ。
転機が訪れたのは1年前。4月16日の誕生日以降から奇妙な老人がやって来た。名をアルバス・ダンブルドアと言う。グラントを自分の学校に入れたいとスマイルのボスにそう言ったのだ。ボスは、グラント自身が決めると良いと言った。グラントは、ホグワーツに入った。
あれだけ充実した1年間は初めてだった。普通の11歳の少年が歩むべき、約束された日常を味わえたのだから。また戻りたいとも思えるようになった。だから、ダブルドラゴンをさっさと壊滅させようとしたのだ。
それが、壊滅させたのは良いが、迷子になったのだ。
「念の為に持ってきた杖と、マグル界と魔法界のそれぞれの金貨。どうしようか。」
未成年者は、魔法を自由に使えない。マグルから魔法族の存在を隠すための法律でそう決められているからだ。しかし、危機的状況に陥ればその限りではない。
「暗いしよぉ。う~ん。今こそ、杖を使っても良いかもな。」
何を使おうか。そう言えば、妖精の魔法の学期最後の授業でフォルテ・フィールドが言っていたのだ。『
「行くぜ。ルーモs」
そう言いかけたその時、何かがグラントの前に来た。物凄い金切り音が響き渡る。
「な、何だ!?3階建てのバスが、いきなり現れたぜ!何処にもそんな気配なんてさっきまで無かったのに!」
派手な紫色のバスのドアが開いた。1人の青年が下りて来たのだ。17、8歳程だろうか。
「
「ナイトバス?何だそれ?」
「私、車掌のスタン・シャンパイク。今夜――」
車掌が黙った。地面に座っているグラントを凝視したのだ。
「そんな所ですっ転がって、いってえ何してるんだ?」車掌は、職業口調をやめていた。
「いきなり来るもんだからよぉ。驚いて腰抜かしちまったんだ。」
グラントが返した。
「まあいいや。そう言う事にしとくぜ。名めえは?」スタンが聞いた。
「ね、ネビル・ロングボトム。」偽名を使ったグラント。
「ほんじゃネビル。どこまで行きてえんだ?」
「ロンドンまで行きてえな。どれくらい掛かる?」
「11シックル。13出しゃあ熱いココアが付くし、15だったら更に湯たんぽと好きな色の歯ブラシが付いて来るぜ。」
財布から13枚のシックル銀貨を出し、それをスタンに渡した。そして、バスの中へと入っていった。
バスの中は、座席が無かった。その代わり、カーテンのかかった窓際に、真鍮製の寝台が6個並んでいた。
「おめえさんのは、この席だ。」運転席のすぐ近くのベッドだった。
「こいつぁ、運転手のアーニー・プラングだ。アーン、こっちはネビル・ロングボトムだ。」
分厚いメガネを掛けた年配の魔法使いが、グラントに向かってコックリ挨拶した。ハンドルを握り、肘掛椅子に座りながら。
「アーン。バスを出してくれ。」
「ぶっ飛ばすぜベイベー!」急にハイテンションになったアーニー。
バーンという物凄い音がした。グラントは、反動でベッドから放り出され、仰向けに倒れた。彼の呆気にとられた顔を、スタンは愉快そうに眺めていた。
「マグルは聞こえないのか?」グラントが質問した。
「マグル!聞いてえねえよ。それに見えてもねえ。気付きもしねえ。」
若干、下に見るような言い方をしたスタン。
グラントは外を見る。田舎町、木の茂み、道路の杭、電話ボックス、立ち木――色んな所を通過した。途中、スタンがココアを持ってきた。それを飲みながら、グラントは景色を満喫したのだ。
数時間後、グラントはいつの間にか寝ていた。起き上がると、スタンが待ってましたとばかりに近付いて来たのだ。
「ロンドンのどこで降りるんだい?」
「ダイアゴン横丁で。」
「合点、承知。しっかり掴まってな……」
チャリング・クロス通りをバンバン飛ばすバス。アーンが思いっ切りブレーキを踏み付けた。ナイトバスは急停車した。漏れ鍋の前で。
「着いたぜ。」
「ありがとうよ。俺は行くぜ。」グラントが2人に礼を言いながら下りていく。
2人はグラントを見送り、そしてナイトバスは再び走り去っていった。
「ここまでくればどうにか……」
「ようやく見つけたぞ。」声がした。
グラントが振り向く。そこには、スリザリンの寮監セブルス・スネイプがいた。
「す、スネイプ先生!?」
「だが、見つかって我輩は安心した。来たまえ。」
有無を言わさず、グラントを漏れ鍋の中に連れて行くスネイプ。
「こ、これは珍しい。スネイプ教授、何か御用で?」
漏れ鍋の店主、トムが話しかけて来た。
「グラント・リドルの宿泊の手配を予めしたのだが。」
「その子のですね。もう準備は出来ておりますよ。」
トムは、グラントに鍵を手渡した。スネイプはそのやり取りを見終えた後、近くのテーブルにグラントに座妖に指示を出した。グラントは、そのテーブルに座った。
「君の家での指令が終わった後、迷子になったわかけだな。ナイトバスが来てくれたから良かったものの。」
「すみません。」
「何も無かったから、これ以上は何も言わない。ダンブルドア校長は、すぐに手紙をスマイルに送って、既にまとめておいたトランクをこの漏れ鍋に送ったのだ。」
「はあ。」
「戻ろうにも、遠過ぎるのでここで夏休み泊まるように。それと……」
ホグワーツからの手紙と、巾着を渡した。
「今年の教科書リストと、スマイルから預かった金だ。グリンゴッツで換金するように。」
「分かりました。」
「では、我輩はこれにて失礼する。新学期は遅れないように。」
そう言って、スネイプは立ち去っていった。早速、自分に割り当てられた部屋に向かうグラント。そこで、トランクの中身を引っ張り出し、まだ残っている宿題に手を付け始めるのだった。8月31日まで、ここで過ごすのだから。