外せない用事があったため投稿することができませんでした。
今回は0.5ということで、少し短めです。
萃香が僕の店に、香霖堂に来たのは二日前のことだ。
急須に入っているすべてのお湯を注ぎ、半分ほど飲んだ。熱い茶が喉を通り抜けていく感覚は悪くない。
「…」
固形墨を擦っていたがようやく水が黒く染まった。固形墨についた水を丁寧にタオルでふき取り、専用の紙の箱に入れて置いた。
小さな筆を持ち、僕はいつものように本を開き、持った筆に墨を丁寧につけた。
ちょうどいいぐらいに墨を筆に含ませ、紙に書き始めた。
「…ん?…間違ってしまったな」
すぐに謝った字を書いてしまい、僕はノートを丁寧に裂いて気を取り直して続きを裂いた紙に書いた。
「………」
二十分ほど書き続けた。すべてを書き終えて僕は一息つき、ぬるくなったお茶を飲んだ。
「……来たか…」
僕は湯飲み椀を机に置いた。
外から複数人の人間の足音がする。耳に意識を集中して音を聞いた。
何度も同じ人間の足音を聞くと足音だけで誰が来たかわかるようになる。
踏み込んだ時の音の強さ、歩くタイミング、それらを何度も何度も聞いたおかげで今回の客が誰かなんてすぐにわかる。
ぎぃぃ…。
「…霖之助さん。いる?」
「ここは僕の家であって店だよ。いるにきまっているだろう?」
霊夢に続き、永遠亭の永琳とフランをおんぶした矢守神社の早苗が店の中に入ってきた。
「……今度はどうしたんだい?…霊夢…言っておくけど煎餅は出さないよ?」
僕が言いながらさっきまで書いていたものを霊夢に見せた。
「……!」
何かを言おうとした早苗に僕は指を口の位置に持っていき、しーっと静かにするようにと促した。
「……萃香が異変を起こしたらしいね」
僕は言いながら霊夢たちが読むのを待ち、紙を裏返した。習字では書きづらいものではあるが、最近の外の紙は質が良くて裏に映らなくてよかった。
「ええ、霖之助さんには、こっちについてもらいたくてね」
霊夢が読み終わったとジェスチャーで僕に伝えてきた。
「残念ながら僕はどちらにもつかないよ」
僕は言いながら霊夢たちが呼んだ紙を音を立てないように畳んだ。
「そう…残念ね」
霊夢が言いながら商品が並んでいる棚に向かった。
「…でも、お茶ぐらいは出そう」
僕は席から立ち上がって後ろの部屋のキッチンに向かい、やかんに水を入れ、それをかまどの上に置いてかまどに持っていた紙を火種に火をつけた。
特に会話も思い浮かばなかったので、さっき霊夢たちに見せていた紙を思い出し、それについて話すことにした。
「そういえば、この頃外から流れてくる紙は質が良くていいね……外の世界の技術力は日に日に進歩しているというのが伺えるよ。今の外の世界から流れてくる本は昔の本と違って管理もしやすいし、ちょっとやそってじゃあ破れなくなったのがいい」
僕はゆっくりと紙の話をし始めた。
「…湿気にも強くて、腐りにくい。様々なものを扱って…定期的に管理しなくちゃいけない身としてはうれしい限りだよ」
僕は言いながらやかんの水が沸騰するまで、やかんの前に立ったまま続けて言った。
「…そういえば、ガラスやガラス製のコップはこの頃、同じ種類のものは全く同じ形をしている。だから、外の世界では機械というものが普及してて、それで製造しているみたいだね。昔、僕は幻想郷の外に出たことがあるが……たった数百年でここまで技術が進んでいれば、同じ場所に行っても全くわからないかもしれないね」
それからも様々な話をしていると水が沸騰し、お湯が入ったやかんを取って店の方向に戻った。
「おや…?霊夢たちはどうしたんだい?」
今しがた店に入ってきた萃香に僕は言った。
「霖之助……てめぇ…」
怒りをあらわにして僕を殺気だった目で睨みながら言った。
店を見回してみても霊夢たちの姿はなく、萃香だけしかいない。
「…あのね、僕も努力はしたさ…でも、霊夢が気づいたんだろう?…霊夢の考えていることなんて僕にはわからないし……そんなのどうしようもないじゃないか」
「…くそが!!引きとどめろといっただろうが!」
萃香が僕の机をたたくとたくさん用意しておいた湯飲み椀が倒れ、霊夢が自分用に勝手に置いている湯飲み椀が床に落ちて割れた。
「……だから、僕は僕なりのやり方で止めたんだよ」
自分が飲んでいた空の湯飲み椀を倒れた状態から元に戻し、急須にやかんに入っているお湯を注ぎ、やかんを別の場所に置いて急須からお茶を注いだ。
「…てめぇ!殺されてぇのか!!」
萃香が机に上り、座っている僕の胸倉を掴んだ。
「止めてくれ、僕は君がどう止めろと言わなかったから自分なりの方法で止めようとしたんだよ。…それを君にどうこう言われる筋合いはない」
萃香の手を放させ、お茶を口に含んだ。
「……それに、君は協力すれば殺さないでおいてやる……そう言ったんだ。成功しなければならないなんて聞いてはいない。成功の云々は契約外だ。契約外のことを押し付けないでくれ」
「……抜け道だけを探すのに回る、悪知恵にしか働かない脳みそぶちまけさせてやろうか!!」
「悪知恵が働くのはお互い様なはずだ。それに、僕はきちんと協力した…こんな理不尽な理由で僕を殺そうというなら、僕は霊夢のところに行くしかないね」
僕が目を細めると萃香が苛立ったように歯を食いしばった。
「…っち……くずが…!」
萃香が吐き捨て、店のドアを蹴り開けて出て言った。
「…やれやれ…、おちおち本も読めないよ」
僕はそう言いながら魔力で体を強化し、ツボの中に仕掛けた盗聴器を拾い上げた。
「協力はした。感づいた霊夢がもう一度この場所に来るわけがない。…君たちを手伝う理由はもうない…そう伝えておいてくれ」
霊夢たちが来てから本当に十分程度できたことから誰かが常に聞いているのだろう。
ベギベギ!!
盗聴器を握りつぶして粉々に粉砕して、かまどに持って行って炎の中に投げ入れた。
今回は本当に殺されるかと思った。
萃香は僕の戦闘能力が未知数でどれだけ強いのかわかっていなかった。それを利用してどんな状況でも余裕を見せつけていたおかげで何とかなったようだ。
「……頼んだよ。霊夢」
僕はそう呟きながら道具を用意し、とある物を作り出した。
明日はきちんと投稿します。