風邪をひきました。
永遠亭からしばらく飛行し、霖之助さんが経営する香霖堂が見えてきた。
「…見えてきましたね……霖之助さん…手を貸してくれますかね…?」
早苗が不安になってきたらしく、呟いた。
「さあね、それを決めるのは霖之助さんよ。半分は人間で半分は妖怪……ということは人間が五十パーセントということは、四捨五入したら人間が百パーセントということ……霖之助さんは手伝ってくれる」
「霊夢…その理論で言ったら、妖怪の部分も四捨五入したら百パーセントでしょうが」
永琳が言ったとき、私は降下して香霖堂の庭についた。
「…」
そのままドアに近づいてドアノブを掴み、捻ってドアをあけ放った。
ぎぃぃ……。
「霖之助さん、いる?」
「ここは僕の家であって店だよ。いるにきまっているだろう?」
机に座っている霖之助さんが私に言った。
「……今度はどうしたんだい?…霊夢…言っておくけど煎餅は出さないよ?」
霖之助さんが私に言いながら机に置いてあった紙を私に見せた。
内容は、この部屋には盗聴器が仕掛けられている。萃香たちが仕掛けたものだ、僕は君につくことにした。だが、今は一緒に動くことはできない。
と紙に書かれている。
「……!」
早苗が何かを言おうとしたとき、霖之助さんが指を口の位置に持って行って、しーっと静かにするようにと促した。
「……萃香が異変を起こしたらしいね」
霖之助さんが言いながら紙を裏返した。そこにも文字が書かれている。
「ええ、霖之助さんには、こっちについてもらいたくてね」
言いながら私は文字を読む。
萃香が10分かそこらでこちらに来る。今は逃げてほしい。できるだけ静かに窓から出て行ってくれ。
と書かれている。私は読み終わったとジェスチャーで知らせた。
「残念ながら僕はどちらにもつかないよ」
霖之助さんは言いながら静かに紙を畳んだ。
「そう…残念ね」
私は言いながら棚の方向に動き、並べてある商品を眺めた。
「…でも、お茶ぐらいは出そう」
霖之助さんが席から立ち上がり、後ろの部屋のキッチンに向かい、私たちに見えない位置でやかんをかまどに置いて火をつけた。
「そういえば、この頃の紙は質がいいね…」
霖之助さんがどうでもいいようなことを言い始めた。
今のうちに行けということだろう。
永琳と早苗と顔を見合わせてうなづきあい、音がしないように窓から抜け出した。
永琳とフランを抱えている早苗も続けて抜け出し、博麗神社に向かうようにして森の中の木々を避けながら移動した。
「…霊夢。博麗神社に行くのはいいけど…次はどこに行く?」
「そうね……でも、とりあえずやることがあるわ」
私が言うと二人はどういうこと?と言った。
「……それは…」
程なくして博麗神社の茶の間にある縁側に私たちは着地して中に入った。
「皆!どうしたの?帰ってくるのが凄く遅かったみたいだけど」
小傘が心配そうな顔をしてこちらに向かってきた。
「…」
小傘を見たまま何も言わない私に小傘はどうしたのと言った。
「…私の顔に何かついてる?」
小傘が言い、これで確信に変わった。
「……小傘はね。自分のことを…わちきっていうのよ。ぬえ」
「っ!!」
そういうと小傘が目を見開いて驚いた。
おそらく正体をわからなくする程度の能力の応用で化けていたのだろう。
小傘の顔を霊力で強化したお祓い棒で思いっきりぶん殴った。
「があ゛っ!!?」
小傘が殴られたことにより、のけぞるようにして吹っ飛んでいく。
壁に頭部をぶつけ、床に倒れこんだ。
「あ…ぐ……う……っ」
小傘の姿が揺らめき、ぬえの姿となる。
黒い髪の毛と、背中から生えた赤と青の三本ずつの羽のようなものがある。
「くそ……これだから博麗の巫女のスパイなんてできるわけがないんだ!」
ぬえが殴られた部分を押え、いくつものレーザーを放つ。
私はすぐさま四枚の札を床と天井に貼り付けた。
「反」
壁のような結界が現れた。
「っ!?」
レーザーが結界に触れたそばから反射してレーザーを放ったぬえを貫いた。
「が…っ……!?」
ぬえが倒れこみ、悔しそうにこちらを見た。
「いてぇ…!…くそ……なんなんだよ、それ……聞いて…ねぇよ…!くそが……」
ぬえが貫かれた部分を押えながら私を罵った。
「まあ、言ってないしね」
私が言いながらぬえに近づいた。
「…小傘はどうしたの?あんたが小傘の代わりになってるってことは、本物は捉えられてるんじゃないの?」
偽物がスパイ活動中に本物が現れないようにするため、ぬえは絶対に本物と接触しているはずだ。
「さあね…でも、あいつはもうたぶん死んでるよ。仲間にしても雑魚だからね」
「…あんた…!」
私が押し殺したような声で言うとぬえがそれを見て笑った。
「霊夢、落ち着いて…ぬえの言っていることは嘘かもしれない」
永琳が落ち着けと私の肩に触れた。
「…そうね……でもあんたにはきついバツが必要そうね」
私がぬえを見下ろして言った。
「やれるもんならやってみろぉ!!」
ぬえが先が三股にわかれた槍を私に突き刺そうとした。完全な不意打ちだ。槍の姿は寸前まで別の物に見せていたため、普通の人であればそのまま頭を貫かれていただろう。
「…」
ガツッ!!
私に刺さるはずだった槍の先端をお祓い棒で殴り、床に突き刺すようにさせた。
「くっ!?」
引き抜こうとする槍を上から右足で踏みつけ、走るようにして左足を前に突き出して腹に膝蹴りを食らわせた。
「かぁっ…!?……がは…っ…!?」
私の蹴りにより、ぬえが体をくの字に折り曲げ、咳をしながら倒れた。
「……命蓮寺の連中の中であんただけが助かってるってことは、あんたが聖たちを裏切って、萃香たちに殺させたってことかしら?」
私は言いながらぬえの額に札を張り付けた。
「ふ…ふざけるなぁ!……私は………聖を裏切らない!!あんたにはわからないだろうけどなぁぁ…!!」
額に張られた札を静電気のようなものに弾かれながらも、無理やり剥がしながら私に向かってぬえが走ってくる。
「…。それがききたかったわ」
私はそう言ってから詠唱した。
「爆」
ぬえの後方で、ぬえがさっき無理やり剥がした札が爆発した。その爆風にあおられてぬえがバランスを崩した。
「なぁっ!?」
ぬえが爆発に驚き、すぐに頭を切り替えることができずに私に頭部をお祓い棒で殴られて気絶した。
「うぐ……ぁぁ…………」
ぬえがいまだ結界の中で眠っている文の結界に倒れこんだ。
「…小傘にばけたぬえを見破るなんて、お前は本当に恐ろしいやつだよ」
「そうかしら?」
空が言い、私はちらりとそちらをみたがすぐに視線をぬえに戻した。
私はぬえを起こし、担いだ。
永琳に新しい布団を二つ出してもらい、フランとぬえを寝かせて結界を張った。
「……文。そろそろ起きたんでしょ?」
私が聞くと起きていたらしい文がのそりと布団から起き上がり私を見た。
「……どうします?私から無理やり情報を聞き出しますか?」
「…聞かないわよ」
「……意外ですね…」
こいつらは私にどんなイメージを持っているのだろうか。
「…そう……永琳、早苗…お客さんが来たわ」
茶の間から見える外の景色、そこの中に誰かがこちらに飛んできているのが見えた。
たった一日二日ぶり、それだけなのに懐かしく感じた。
「…どの面下げてこれたのかしら?魔理沙」
私が言うと魔理沙が庭にゆっくりと降りてきた。
「……」
魔理沙は表情を変えず、何も答えない。
「…?」
魔理沙の霊力に違和感を感じ、探ってみた。
「……あんた…」
魔理沙の霊力は前まで感じていたものとは違うものになっている。厳密には、わずかに交じっていると言った方がいい。
「…やっぱりわかったか」
魔理沙が呟いた。
この霊力の感じは……。
「…妖怪の物に似てる…」
だが、どの妖怪かは知らない。
その影響で魔理沙の霊力量が増加している。
「……ああ」
魔理沙がかろうじて聞こえるほどの大きさで呟いた。
「……堕ちるところまで堕ちたといったところかしら?魔理沙」
「………」
魔理沙は答えない。
「…私は戦いに来た………霊夢、やろうか」
魔理沙は持っている箒に足をかけて三メートルほどの高さに浮きあがった。
「……」
魔理沙の両手の手のひらにはレーザーを発射するための光が集まった。
「そうね、やりましょう」
私は右手にお祓い棒を持って、魔理沙と同じぐらいの高さを飛んだ。魔理沙から十メートルほどの距離を開けた。
「……」
魔理沙がえげつないほどの威力を持つレーザーを放ったことにより、戦闘が始まった。魔理沙のレーザーを体をひねって私は避ける。
目の前を埋め尽くすほどの星の弾幕を魔理沙が放つ。だが、同時発射ではなく連続的な発射であるため、隙間はある。
川にある岩を避ける水のように私は魔理沙の弾幕をかわして魔理沙に近づいていく。
弾幕をかわす合間に私は魔理沙に弾幕を放った。
「ぐうっ…!?」
星の弾幕にまぎれ,針を刺すような精密な射撃だ。
私の弾幕に当たった魔理沙が箒から落ちかけた、だが何とか持ちこたえたらしいが弾幕が途切れ、私が一気に魔理沙まで距離を詰めた。
魔理沙がポーチの中から小さな瓶を取り出し、投げつけてくる。
勇儀との戦闘の際に魔理沙が使った閃光弾が頭をよぎった。
魔理沙のレーザーが瓶を貫く前に私は瓶を取ろうとしたが、魔理沙が瓶を撃ち抜く方が早かった。
瓶は閃光弾のように光をまき散らすのではなく、瓶の破片をまき散らしながら大爆発した。
「!?」
瓶との距離は一メートルもない。まともに食らえば全身に瓶の破片を浴びて死ぬことになる。
だが、私はそうはならない。四枚の札を私の前に四角形に配置した。
「反」
札と札が線でつながり、囲われた部分に、薄い膜のようなものが作られてそれにあたった瓶の破片が跳ね返る。
「…このタイミングの奴を防ぐのかよ……!」
魔理沙が驚きのあまり口が開いたままだ。
かなりギリギリだったが何とかなった。
反射に使った札が効力を失い、一枚一枚をつないでいた線が消えて札は地面に向かってひらひらと落ちてゆく。
「さすがだぜ……霊夢」
「……そういうふうに言われるのが嫌いなことぐらい知ってるでしょう?」
「…贅沢な奴だぜ……」
魔理沙が言いながら上を見上げた。
「……?」
「そういえば…今日は曇りか……」
どんよりとした空を見上げて魔理沙が言った。
「…それがなんだっていうのかしら?」
「べつに……霊夢からしたらたぶん…どうでもいいことだぜ」
魔理沙が言いながら手に光を収縮させた。
「……まだまだ本気なんて出してないんだろう?……これが最後なんだぜ?本気で来いよ」
「…そうね。…ちょっと本気で言ってあげるわ」
私が言うと魔理沙は死期を悟った人、そんな表情をして私にレーザーをぶっ放した。
それを私は進みながらレーザーの射線から外れるように動き、レーザーが私がいたところの半分の距離に達する前に魔理沙のすぐ前についた。
「はあっ!」
魔理沙はさらにレーザーを放つが私はお祓い棒で魔理沙の手を弾き、攻撃させなかった。
箒に乗っている魔理沙を飛んできた勢いと脚力を生かして、箒から蹴り落した。
「うっ!?」
五メートルほどの距離でも、受け身を取らなければ落ちた時に想像以上のダメージを受けることになる。魔理沙は受け身を取ることができずに地面に落ちたようだ。
魔理沙の手から離れた箒が上に向かう推進力をなくし、落ち始める。
私は地面に降り、背中から落ちた魔理沙の胸倉をつかんで持ち上げた。
「どうしたのかしら?…やる気がないように見えるけど?」
「……馬鹿言うな……私はこれでも本気だ」
「…嘘つかないで…人には本気でやれと言ったくせに、自分はやられてるだけ?……ふざけるのもいい加減にしてほしいわね」
「そういうお前だってほんの少しも本気を出してないんじゃないか?」
魔理沙のやる気のないような、馬鹿にしたような脱力した目を見るとさらに怒りがわいた。
お祓い棒を魔理沙の腹に叩き込んだ。
「ぐえっ!?」
腹を押えて地面にひざを付こうとしたが私は魔理沙の胸倉を掴んだまま近くの木に強く押し付けた。
決して細くはない木が、私が魔理沙を押し付けた衝撃で少し傾き、きしんだ音を出した。
「く…があ……!」
魔理沙が顔を苦しそうに歪め、自分を木に押し付けている私の腕を掴んだ。
「…」
私がさらに魔理沙の胸倉を掴んだまま、押し込んだ。
「………っ!!」
機関が締まって声が出ないらしい。魔理沙が顔を青くして苦しそうにもがいた。
だが、さらに私が押し込むと魔理沙の胸骨にひびが入るような音がした。
「……っ!!」
魔理沙が真っ青な顔をしたまま、私に向けて手のひらを突き出した。
手のひらぐらいの太さのレーザーが放たれる。
だが、私はその至近距離から放たれたレーザーを避け、魔理沙の胸倉を掴んでいる手に力を込め、魔理沙を振り向きながら後ろに投げた。
魔理沙の体はしばらく直進していたが、重力により地面に引き寄せられた。
魔理沙は受け身をとれず、ゴロゴロと地面を転がる。
私はすぐに近づくと、起き上がろうとした魔理沙をお祓い棒で殴った。
「がっ…!?」
また魔理沙が地面に倒れた。
私は魔理沙を掴んで何度も殴った。蹴った。弾幕で撃った。
魔理沙はそのたびに反撃しようとするが、私のお祓い棒で殴られて何度も地面に倒れた。
帽子もいつの間にかなくなっている。
「……」
私が自分よりも身長の低い魔理沙を見下ろした。
「う…く……」
魔理沙がすり傷や痣だらけの体で立ち上がった。
私は立ち上がった魔理沙の肩を掴み、反撃してくる魔理沙の脇腹をお祓い棒で殴った。
「かはっ……!?」
魔理沙がまた地面に倒れてうずくまる。
「…霊夢さん…!やりすぎですよ!魔理沙さんが死んじゃいます!」
早苗が私の肩を掴んで止めるようにと言ってきた。
明日も投稿すると思います。
低クオリティでも見ていただければ幸いです。