東方鬼狂郷   作:albtraum

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魔理沙がどう戦い。何をしてきたか

第十六話をお楽しみください。


東方鬼狂郷 第十六話 霧雨魔理沙 弐

「…そうね」

 私の肩を掴んできた早苗の手を振り払いながら私は言った。

「そうねって…魔理沙さんを殺す気なんですか!?」

 魔理沙に向かおうとする私に早苗が食って掛かった。

 私は早苗の言葉を一度流して魔理沙に近づき、殴ってひるませて首を掴んだ。

「くうっ…!」

 私が投げた際に魔理沙はどこかに頭をぶつけたらしく、頭から頬を伝って阿保まで血の線がある。

「……」

 魔理沙が顔を上げて首を掴む私を見た。

 魔理沙を睨みながら自分の近くにぐいっと引き寄せた。

「霊夢さん!まってください!…魔理沙さんだって何か理由があるのかもしれないじゃないですか!!」

「……早苗、理由があれば友人を裏切ってもいいの?……早苗は知らないだろうけど、私は魔理沙を許せない理由がる。これだけは絶対に譲れないわ」

 私は無意識のうちに掴んでいた魔理沙のことを握っていたらしく、魔理沙がかすれた声を漏らした。

「ゔ……っ」

「……それでもです……魔理沙さんを放してください。霊夢さん…!」

 早苗が私に言いながらお祓い棒を構えた気配が後方からする。

「……私は仲間と争うつもりはないわ」

「…じゃあ、手を放してください」

「………早苗」

 私は早苗の方向を向いて言った。

「…手、震えてるわよ?」

「あ……当り前じゃないですか……!私が霊夢さんに勝てるわけがないんですから…!」

 早苗が言ったとき、魔理沙の方向から小さな動く音がした。

 ここは早苗から見れば魔理沙は死角に位置する。

「っ!!」

 私は魔理沙の方向をむこうとしたとき、魔理沙の方向から強い光源が周りに光をまき散らしている。

「霊夢さん!」

 光を見た早苗が焦った顔をしたが、掴んでわきにどかして私も魔理沙の位置を反対にどかしながら動いた。

 私と早苗をまとめて撃ち抜くコースで魔理沙の手からソフトボール台の太さのレーザーがさっきまでいた場所を通った。

 魔理沙の首を掴んでいた手を思いっきり握り、持ち上げ、地面に振り下ろした。

 ドズッ!

 常人なら全身の骨が折れていてもおかしくないスピードで魔理沙が地面に激突した。

「があっ!?」

 魔理沙の手をすぐに掴んで捻り、上向けの体を仰向けにして、捻った手を背中の肩甲骨の位置に持ってきた。

「……早苗、あんたは殺さないかもしれないけど、魔理沙は殺す気で来てるわ………それより、大丈夫?」

「……はい、何とか大丈夫です……ありがとうございます」

「それならいいわ」

 私は言いながらいまだ抵抗する魔理沙の腕を捻る。

「ぐっ…!」

 腕を脱臼するギリギリまで捻り上げられている魔理沙が呻いた。

「…それじゃあ、最後の言葉ぐらいは聞くわよ?…魔理沙」

 私が言ったとき、陶器のようなものが足元に転がってきた。

 小さなラベルのようなものが貼られているが、よくわからない文字が書かれていて私にはわからない。

「…っ!」

 私は霊力で体を強化しながら、爆発を受けて怪我をしても顔や心臓などの急所に破片が当たらないように手で覆い隠した。だが、瓶の中身は強烈な光を発した。

 やられた。閃光弾だ。

 破片が当たらないように手を顔で隠していたため、光を手が遮って直視は避けることができた。

「私にもやらなきゃならないことがある。私は…私の役割を果たさなければならいんだぜ」

 ようやく光が収まり始めた時、私に手のひらを向けている魔理沙がうっすらと見えた。

「!?」

 魔理沙の手のひらに集まる光の強さが最高潮に達しているというのに、私はいまだどうすることもできていない。

 だが、私に向けられた魔理沙の手はレーザーを撃つ寸前にあらぬ方向を向く。

「ああああああああっ…!!」

 魔理沙の肘と手首の間、前腕を永琳の矢が貫いている。

「私を忘れてもらっては困るわ」

 永琳が矢を放ったままの体勢で言った。

「永琳…!」

 魔理沙に刺さている矢が役目を果たし、霊力の粒となって消えていく。魔理沙に矢がつけた傷からは血が溢れてきた。

 傷をかばいながら私に手を向けようとした魔理沙に一気に近づき、腹を殴った。

「ごはっ…!?」

 殴られた魔理沙が地面に膝と手をついてせき込んだ。

 深追いして思わぬところで反撃を食らわないように、私は一応距離を取ることにした。

 だが、魔理沙はペタリと地面に座り込んでしまう。下を向いていた魔理沙がゆっくりと私を見た。

「……」

 そして、魔理沙がまた空を見上げる。

 早苗たちが緊張した顔で私を見ている。私は魔理沙の方向に歩き出した。

 ここから先の内容は早苗は見ない方がいいだろう。

 そう思っていると永琳が早苗の元に歩み寄り、魔理沙の方向を見ないようにさせた。

 魔理沙が私を見上げ、私は魔理沙の前で歩みを止めて見下ろした。

 魔理沙は覚悟を決めたように目を閉じた。

「……」

 私は自分が出せる最大の威力で弾幕を放ち、魔理沙の頭をぶち抜いた。

 魔理沙の後頭部から赤い血と脳漿が地面にぶちまけられる。

 魔理沙の体は少しの間、そのままの体勢を維持していたがすぐに後ろに倒れた。

 ドサッと魔理沙の体が倒れると視界の端の早苗の肩がびくりと揺れた。

 魔理沙の頭部のあたりから血だまりができていく。私は魔理沙を抱き上げて早苗に見えないように移動した。

「……」

「…霊夢さん。魔理沙さんをどうするんですか?」

 青い顔をした早苗が目尻に涙をためて私に言った。

「…埋めてくるわ」

 私が淡々と言うと早苗が私に叫んだ。

「そんな……こんなのあんまりじゃないですか!!」

「……私は裏切り者にかける情けはないの」

 私は早苗に魔理沙が見えない位置まで移動しながら言った。

「……そんな…!いくらなんでも酷すぎますよ……!!」

 早苗がついに私に言いながら涙を流す。

「……だって…魔理沙さんは……霊夢さんのことを……!!」

「……言わなくてもわかってる…」

 私は早苗の言葉を遮って言い、神社の裏に置いてあるスコップを取りに歩き出した。

「わかってるなら…!もっと別な方法があったんじゃないですか!?なんで……なんで殺したんですか…!!」

 永琳が引き止めるのも無視して早苗が私の後を追ってくる。

「……答える必要はないわ」

「……!…こんなんじゃあ、霊夢さんだって萃香さんと同じ、人殺しじゃないですか…!」

「……じゃあ。聞くけど…あんたは……何かあった時どうするつもりよ!!」

 私が早苗に怒鳴ると早苗が体を震わせた。

「……あんただって気が付いてるでしょう?魔理沙の霊力に妖怪の霊力が混じってる。生まれた時から半分妖怪だったりしたならわかる。でも、今まで人間なのにいきなり妖怪が混じる人間なんて見たことがない。……どんな力を持っているかわからない。私の結界に閉じ込めたって、壊してくるかもしれない。あれだって万能なわけじゃない。それに、私だってかなわない相手になるかもしれない。……あんたはそこまで考えた!!?早苗!」

 私が怒鳴ると早苗は何も言い返せなくなっていた。

「……早苗…怒鳴ってごめんなさい」

 私の口から震えた声が漏れた。視界が揺らぎ、涙を流しているのだと分かった。私だって悲しくないはずがないだろう。

「……私も……すいませんでした………でも…!…でも………!!」

 早苗が泣きじゃくりながら呟く。

「……ごめんなさい……私が不甲斐ないばっかりに…」

 私は涙をぬぐってスコップを小脇に挟み、魔理沙を連れて山の裏手に行った。

 

 そこから魔理沙が裏切るところまで時間はまき戻る。

「…くそ……」

 時が制止した世界を咲夜と私が並んで飛んでいた時、私は自然と呟いていた。

 咲夜は私をちらりと見ただけですぐに前を見た。

「…しかたないですよ……」

「…ああ」

 そこからしばらく沈黙が続き、天狗の屋敷が見えてきた。そのあたりになった時、咲夜が時の停止を解除した。

 大きく息を吸い込み、深呼吸した。

「……魔理沙、言っておくけど、馬鹿な真似はしないでくださいよ」

 咲夜が言いながら地面に降りて門の前に立ち、言う。

「……できたらな」

 私が言いながら咲夜の横を通って入り口をくぐった。

「…」

 私はそのまま萃香のいる場所に向かった。

「魔理沙。萃香のことを怒らせないでくださいよ」

「…善処するぜ」

私が言うと咲夜はため息をついて言ってくる。

「あなたが善処するって言ったときは……毎回、悪い方向にしか進んでないですよ」

 咲夜はそういうとふっと消えた。

 私は咲夜とわかれて萃香の元に進んだ。

「……」

「おうおう。早いお帰りだな…。魔理沙」

 勇儀が酒を飲みながら挑発するように言ってきた。

「………」

 私は勇儀を無視して萃香のところに向かう。

「おいおい。無視するなよ」

 勇儀が言いながら私の肩を掴んだ。

「なんだよ……私に何の用だよ」

 私は言いながら勇儀の手を振り払う。

「なんでそんなに喧嘩腰なんだよ。魔理沙……こっちがした手に出てりゃ調子に乗りやがって」

 勇儀が私の髪を掴んだ。

「いっ……!?なにすんだよ…!?」

「あんまり調子に乗るなっていうことだよ」

 勇儀が私の髪の毛を掴んだまま、持ち上げた。

「あたしはこの頃気が付いたんだよ。強いやつと戦うのは血肉わき踊る感じで面白いけどよぉ。弱いやつをいたぶる方が楽しいんだよなぁ」

 勇儀が私を壁に押し付けた。

「何すんだよ……!私は、お前には用はない……萃香に用があるんだよ……失せろよ、勇儀…!」

 私が勇儀を睨みながら言い放つと勇儀がニヤリと笑った。

「そうだなぁ、じゃあ今は失せるとするか、またあとでな」

 勇儀が酒を一口煽り、私を放して歩いて行く。

「…次また会わないといけないのか……」

 私は歩いて行く勇儀を見ながらいやそうに言い、萃香がいる部屋に向かった。

 萃香がいる部屋の前についた。

 襖の奥から重々しい空気が流れてきてる。

 こんなところには入りたくなんてない。だが、入って話をつけなければ何も始まらない。

「……」

 私は目を閉じて深呼吸して、心拍数をできる限り下げた。

 気を引き締め、ふすまを開けた。

「萃香…入るぜ」

 私はそう言いながらもともとは天狗の長の大天狗が使っていた部屋に入った。

「…部屋の外で言ってから…私の返事を聞いて入るもんだぞ。魔理沙」

 萃香が窓の外を眺めていたが、こちらを見た。

「……!」

 萃香に見られただけで、私の体は動かなくなってしまう。まるで金縛りにあってるようだ。

「…で?何の用だ?」

 萃香がこちらに歩いてくる。

 何をどう話すかあらかじめ決めていたのに、私は全く舌が回らず、息を吐くことすらできない。

 自分に落ち着けと言い聞かせ、硬直していた私はようやく震えた声で話した。

「単刀直入にいう……アリスを…解放してくれ、萃香」

「…あ?」

 萃香が眉間にしわを寄せてさっきとは違い、苛立った表情となり、こちらに向かってくる。

「きちんと私は協力した。約束通りに解放してくれ」

 私が言うと、萃香が私に向けて怒りをあらわにしてやってきた。

 目つきや殺気によって恐怖で怖くて泣きだしそうになるが、霊夢が怒った方がもっと怖いと言い聞かせて私は臆せずに言い切った。

「アリスを解放しろ?私の目的はまだ達成してないぞ?」

「…いや、お前は私の家に来た時、私にこう言った。霊夢を裏切れって……私は言ったとおりにした。萃香も約束を守れよ」

「…今からアリスを解放したら、お前たち二人は霊夢のところに行くだろう?…だからだめだ」

「いや、私はアリスを安全な場所に行かせたいだけだ」

 私が言うと萃香はさらに苛立った表情になっていく。

「…。おい」

 萃香が言うと後ろの襖から、女の鬼が入って来た。

「この裏切り者を牢屋にぶち込んでおけ」

 萃香が女の鬼に言った。

「なっ…!?…私が何をしたってんだよ!?」

 萃香に掴みかかろうとしたとき、私は後ろから鬼にこん棒で後頭部を殴られた。

 近くで爆発があったかのような衝撃が頭を突き抜けた。

「くっ……そ…」

 倒れた私は薄れゆく意識の中、萃香を睨みつけようとした、だがそれをする前に再度振り下ろされた棍棒により完全に気絶した。

 

 私はよくわからない空間に立っている。

「……」

 夢の中だろうか。

「………!」

 後ろで何か言い争っているような声が聞こえた。

 後ろを振り返る。

「……」

 全体的に白い服装を着て白い髪の私と、全体的に黒い服装を着て黒い髪の私が何か言い争っている。

 二人とも身長は低く、立った私の腰のあたりまでしか身長はない。

 白い私は、私の戦力では萃香は倒せないから従うのは仕方のないことだといった。

 それに対して黒い部分の私は、やってみなければわからない。戦わなければどんな戦闘も終わらないじゃないかと言った。

 白い部分の私は、アリスが人質に取られたんだ。こちらも下手には動けないと言った。

 黒い部分の私は本当にそうか?といい、さらに、いくら萃香が強くても油断をしていれば勝てはしなくても意表をついてアリスを助け出せたのではないかと言った。

 二人のいい争いは激しさを増していく。これはあれだろう。私が思っていたことなのだろう。

 黒い私はあんなことを言うが、私が全力を出したところで勝つどころか意表を突くのでさえ怪しいものだ。

「「本当にそうかな?」」

 言い争いをしていた二人が私が思ったと同時に言いながらぐるりとこちらを見た。

「…っ!」

「「魔理沙。あなたはどの戦いでも本気は出していたけど、本気を出してはいなかったわよね?」」

「……!」

 二人の問いかけの意味は他人が聞けば矛盾を並べていて、意味が分からないものだろう。

 二人の言いたいことはわかってる。私にしかわからない。

「「お前のそのくだらないしがらみのせいでアリスは人質のままで、霊夢を裏切ることになり、さらには自分もつかまることになった。……お前は何度もあったチャンスをすべてドブに捨てたんだ。お前は本当にクズ野郎だ」」

 二人がケタケタと笑い、私の周りを歩いて回りながら言う。

「うるさい……!!黙れ!」

 二人の言葉は私の精神を抉り、蝕む。

 私の足から力が抜け、黒い地面に両ひざをついた。

「「そもそも、博麗霊夢と同じ土俵に立とうとしている時点で間違いなのさ…わかってるだろう?」」

「…っ!!」

 自分の顔は見えないが、おそらく目を見開いて泣きそうな顔をしているだろう。

 そんな情けない顔を誰にも見せることにならなくてよかった。

「うるさい…………!!」

 私の声はか細く、声を出したのかさえ定かではない。

「「…わかってるだろう?……博麗霊夢はお前のことなんて認めていないし、お前は博麗霊夢のことを思っているが、博麗霊夢はお前のことなんてどうとも思っていないんだよ」」

 俯いて両手で顔を覆う私を白と黒の私は両側から私の耳に唇を当てて笑いながらつぶやいた。

「……知ってるよ……!そのぐらい…わかってるよ!!」

 私は絶叫した。

 私が叫ぶと横の二人が楽しそうに笑った。




風邪をひきました。投稿ペースが落ちると思います。
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