題名通りにあの二人が頑張ります。
「……早かったわね」
永琳がスコップを倉庫にしまった私に言った。
「ええ…土が柔らかくてね」
私は倉庫の扉を閉めながら言う。
「……そう…」
「…霊夢さん。すいません……任せてしまって」
さっきよりも顔色がよくなった早苗が言った。
「……大丈夫よ。…それに、あんたが来ても多分作業できないでしょう?」
「……ですね…」
早苗が力のない声で少し笑った。カラ元気という奴だろう。
「…萃香たちの居場所はまたわからなくなった……どうする?」
永琳が表の縁側の方に歩いて行き、縁側に腰かけて言った。
「…居場所はわからなくなりましたけど、そろそろ…萃香さんの方もそろそろ人手不足なんじゃないですか?」
「……そうね…結構こっちにいるし、そうかもしれないわね」
私は言いながら茶の間の方を見ると十数人が結界の中にいる。
「……まあ、今まで通りに虱潰しに探したほうがいいんじゃない?」
「一番手がかかるけど、それが効果的よね」
永琳が言い、私がそれに同意しながらため息をついた。
「……」
早苗が茶の間に寝ている妖怪たちの方向をちらりと見た。
「……どうしたの?」
私が聞くと早苗は不安そうな顔をしてこちらを向いた。
「…小傘……殺されちゃったんですかね…?」
「わからない、としか言えないわね……あんたの守矢神社のところに行った後、小傘は帰ったの?」
「はい。家で静かに隠れてるって言ってました」
「…そう。ぬえの言っていたことは嘘か本当かはそのうちわかるわ……そろそろ移動しましょう……そうすれば、萃香たちは私たちの居場所がわからなくなる」
「……どうしてです?」
「たぶん、魔理沙が来たのは小傘に化けたぬえが連絡したからよ……たぶんまだぬえはやられたとは思っていないだろうから、今のうちに移動すれば居場所がバレないで移動ができる」
「でも、椛さんが見張ってるかもしれませんよ?」
早苗が周りを見回しながら言った。
「ぬえを送り込んだのなら、見ることしかできなくて、会話がわからない椛は監視に付けないってこと?」
永琳が私に言い、私はうなずいた。
「…でも、すぐに椛さんに見つかっちゃうんじゃ…」
「問題はないわ。場所がわからなければいくら遠くを見渡せても意味はないわ……ということで、とりあえず……紅魔館に行きましょう」
「そうですね」
早苗はともかく、私と永琳は目立つ格好をしているため、あまり空高く飛びすぎると見つかる可能性も皆無ではない。森の木々の間を通り抜ける低空飛行で移動することにした。
紅魔館の方向に向け、私たち三人は飛んだ。
しばらく飛んだ時、早苗が私を呼ぶ声がした。
「…霊夢さん。ちょっといいですか?」
木を左右にかわしながら早苗が私に近づいてきた。
「永遠亭で永琳さんとフランさんの話をしてたじゃないですか」
「ええ、してたけどどうしたの?」
「…萃香さんは霊夢さんを殺すって言ってたんですよね?」
「ええ」
萃香が私に言ったことを思い出しながらうなづいた。
「それなのに、なぜ捕まえる必要があるんでしょうか?」
早苗が私に言った。
考えればそうだ。殺さなければならない人間を捕まえるなんて言う無駄なことは普通はしないだろう。最終的に殺す際に何かを私にしなければならないとかなのだろうか。
「……まあ、どうせ萃香が考えていることなんてくだらないことよ」
私が言ったとき、森を抜けた。池の上を水面ギリギリで飛び、紅魔館を見た。
いつものように赤い館が湖の向こうにたたずんでいるのが見える。
「……門には誰もいなさそうですね」
早苗が目を細めて言う。
「門にはいないわね」
永琳がそう言ったとき、紅魔館の止めの方向から赤い炎の光が揺らめいた。
「!!」
私と早苗はほぼ同時に左右に動いた。
その間を紅い炎の槍が飛びぬけ、私たちより後方に着弾した。
炎の槍が水中で爆発して高い水柱が立ち、轟音がとどろいた。
今のはとても危なかった。もっと紅魔館に近づいていたら直撃していたかもしれない。
再度、紅魔館の方向から紅い光が輝き、第二射が来る。
それは一直線に私に向かって飛んでくる。不意打ちの一撃ではなく、速度もさっきよりも遅く感じた。飛んでくるグングニルをかっ消そうとお祓い棒を振り下ろした。
グングニルとお祓い棒が合わさる寸前、グングニルの炎をかき分けて飛んできたナイフが腕や胸、首に刺さった。
流石としか言いようがない。レミリアのグングニルに咲夜のナイフを隠して投げるなんて、レミリアと咲夜がお互いのことをよく知っていなければできないような芸当だ。グングニルが遅く感じたのは本当に遅く、咲夜のナイフを隠すためであり、一回目と二回目で炎の光の見え方が違かったのは咲夜がナイフを取り出して、それの刃に反射した光を見たためだ。
ナイフが刺さったことにより、私がお祓い棒を振る速度が遅くなり、グングニルは私の胸に直撃した。
グングニルが膨れ上がり、爆発した。爆発は何千倍。何百倍という大きさになり、私を包み込むには十分すぎる大きさとなる。
「……ごほっ…」
体から力が抜け、高度を維持することができない。
「霊夢さん!」
早苗が私を掴もうと高度を下げて追ってくるが、その努力もむなしく私は水の中に落ちた。私の体は浮き上がることがなく沈んでいく。私が水中に入った時に一緒に纏わりついてきた空気の気泡が私の体を伝って、体から離れて上に向かっていく。水の色が水色から濃い青に色が変化していき、だんだんと暗い色となっていく。
それでも私の体は落ち続ける。
「…」
上に戻らないといけないのに、私の体はピクリとも動かない。
水が冷たいおかげで出血が少し収まり、体のあちこちにある火傷が冷やされた。
このまま何もしなければ、ナイフによる出血死よりもさきに溺死するだろう。すでに息苦しさがピークに達していて、酸欠により意識が朦朧となってきている。
背中に何かがあたり、湖の底に着いたらしい。
ゴポポッ
口の間からわずかに気泡が漏れた。
何を諦めているんだ。これじゃあだめだ。こんな簡単に死んでいられない。
だが、現在の私は酸欠的な意味も含めて既に死にかけている。今から三十メートル以上の距離を泳ぐことはまず不可能だ。
でも、やるだけやるしかない。
私は霊力を使って酸素を生産して、余分な二酸化炭素を吐き出した。これはかなりの量の霊力を消費することになるが、命には代えられない。
もう二回ほどその行為を繰り返すと、意識がはっきりとしてきた。上に行くまでは問題なさそうだ。
動かない体に無理やり霊力を流して動かした。
起き上がろうとしたとき、あることに気が付いた。
「…永琳さん…最高にまずい事態じゃあないですか?」
私の背後に立つ早苗がかなり息が上がっている様子で言った。
「…確かにね……」
私は息が上がっているわけではないものの、かなりボロボロである。
ゴォッ!
私の正面に立つレミリアがこちらに向けてグングニルを投擲した。
「早苗!」
私が叫ぶと同時に早苗が私の前に滑り込み、グングニルを受け止めた。
その間に私は後ろを向いて咲夜に向けて弓を引き絞り、矢を発射した。
矢が空気を裂く甲高い音を発して飛んでいく。だが、矢はその全く同じルートで帰ってきて私の肩に刺さった。
「ぐうっ…!?」
またこれだ。咲夜に矢を撃ってもなぜか自分に返ってくるのだ。
ひるんだ私に咲夜のナイフが空中から降ってくる。
「…!」
弓を振って何本かは弾くことはできた。
ドドドッ!
弾くことのできなかったナイフが腕や足に刺さる。
「ぐうぅぅっ!」
後ろでは何とか早苗がグングニルの軌道を変えることに成功し、炎の槍が早苗の横を通り過ぎて近くの木に当たって爆発した。
二十メートルは離れているのに、六十℃はある温風が私たちの間を流れていく。
木をちらりと見ると、爆発した周辺の木も巻き込まれてなぎ倒され、炎の影響で炭になっている。これをまともに食らった霊夢が魔力で体を強化したとしても無事で済んだとは思えない。
「これを相手にしていた霊夢さんがどれだけ強いか…身に沁みますね……!」
グングニルを完ぺきに受け流すことができなかったのか、こちらから見ると火傷を少し負っているように見える。
「……永琳さん……。すいません……ぶっちゃけ……やば…い…です…」
早苗ががっくりと崩れ落ちる。
「早苗!?」
倒れた早苗は右の顔半分と右肩、右腕、右側の胸と腹部を丸ごと焼かれているのだ。
「っ!!?」
ポーチから薬を取り出し、瓶の蓋を開けて早苗の火傷の部分にぶっかけた。
しゅううう……。
早苗の焼かれた部分が煙を上げて少しずつ再生を始める。
「チェックメイト…ですね」
私の首元に咲夜がナイフを添えていた。
「…!……そういえば、萃香が霊夢をとらえようとしていたみたいだけど、霊夢を殺してよかったの?」
「…霊夢があの程度で死ぬとは思えない」
レミリアが新たなグングニルを作り出し、私に向けた。
「…そうかしら?…霊夢はこれまでの戦いでかなり疲弊してた。今ならあの程度でもくたばるわよ?」
「…はったりよ」
レミリアが言った。
確かにはったりだ。とにかく、霊夢がこっちに来るまでの時間稼ぎをしなければならない。
「…霊夢と戦った私たちだからわかる。あの程度では死にやしないわ」
「わからないわよ?霊夢も一応人間だし、刺せば死ぬし、頭を吹き飛ばせば死ぬ弱い生き物よ?」
「お前はどうなんだ?」
霊夢が来るまでの時間稼ぎは、どうやら間に合いそうにない。
レミリアが私に向けてグングニルを投擲する体勢になった。
「お前とは違って、霊夢はそう簡単に死ぬような奴じゃない」
そう言ったレミリアの身長がガクンと下がった。
「なっ!?」
レミリアの真下にいきなり空いた穴から出てきた霊夢が落ちてきたレミリアの頭を掴んだ。
「その通り!!」
霊夢がレミリアの頭を掴んでいる方の手とは逆の手で持ったお祓い棒で腹部を殴った。
「ぐあっ!?」
ドゴオッ!!
続いて私の蹴りを受けたレミリアが吹っ飛んでいき、紅魔館の防壁を破壊した。
「お嬢様!!」
レミリアを蹴った霊夢に咲夜が大量のナイフを投げた。
ガガガガガガッ!!
飛んできたナイフを一つ残らず霊夢がはたき落とす。
「くっ…!」
咲夜が霊夢を睨みながら魔力で作り出したスペルカードをナイフで切り裂いた。
「幻符『殺人ドール』」
魔力で作り出したナイフが咲夜の周りにできる。
「死ね!霊夢!」
その数、およそ数百。それらが一斉に霊夢に高速で向かって飛んでいく。
私は早苗に当たらないように早苗を連れて木の裏に隠れた。
「反」
霊夢がそのナイフに逃げずに札を地面に貼り付けて唱えた。
二重にも三重にも張ったあらゆる攻撃を跳ね返す結界。そのうちの一枚目が約百本の当たったナイフを手始めに跳ね返した。跳ね返ったナイフが霊夢に向かっていくナイフに当たり、弾かれあった。
一枚目の札の効力が消え、結界が消え去った。
二枚目三枚目も同様にナイフを跳ね返す。だが、ナイフはまだ半分以上も残っている。
しかし、霊夢は結界を張る動きもしなければ、逃げる気配もない。
「霊夢!!」
私が叫んだ時、霊夢が札を飛んでくるナイフの中に投げた。
「爆」
どれだけの魔力を込めたのか、爆発の威力はレミリアのグングニルの爆発に匹敵する威力で爆発する。
「甘い!」
霊夢を囲うように咲夜がナイフを投げた。
だが、霊夢はすでに消えていた。
「なっ!?」
咲夜の投げたナイフはナイフ同士がぶつかり合って地面に刺さった。
霊夢がいた足元にはレミリアを奇襲したときのような穴が開いている。
「まさか……霍青娥…!?」
咲夜が言ったとき、隣にあった木の幹に穴が開いた。
「っ!」
そこから飛び出してきた霊夢のお祓い棒を二本のナイフで受け止めた。
「霊夢!」
レミリアがグングニルを掲げ、霊夢に向かっていく。
霊夢が身をひるがえしながら咲夜を蹴り、レミリアのグングニルにお祓い棒を打ち付け、鍔迫り合いとなる。
咲夜が蹴られた怯みから立ち直りながら両手のナイフを構えて、レミリアと鍔迫り合いになっている霊夢に切りかかった。
霊夢がレミリアのグングニルを弾き、咲夜のナイフをお祓い棒で受け止めた。すぐに斬りかかってきたレミリアの腹に蹴りを食らわせた。咲夜が両手のナイフのうち、片手のナイフで斬りかかってくる。だが、霊夢は本当にお祓い棒一本しかもっていないのかと疑うほどに咲夜の二本のナイフのスピードについていっている。
霊夢と咲夜のお祓い棒とナイフが交わるごとに鋭い金属音が響く。
ナイフの耐久性が低く、ナイフが欠け始める。
「くっ…!」
咲夜が唸りながら、一瞬のうちにボロボロのナイフを捨て、新しいナイフを取り出した。だが、そのすきに霊夢はお祓い棒で咲夜を殴っていた。
「ぐうっ…!?」
その時にグングニルで斬りかかってきたレミリアの武器を上に叩き上げ、右腕と胸にお祓い棒を食らわせ、咲夜の方向に向き直り、咲夜が投げたナイフを叩き落とし、落としたナイフの柄を蹴ってナイフを咲夜に飛ばした。
ガキンッ!!
それを咲夜は弾き、私に走って斬りかかってくる。咲夜がナイフを振る前に持ったナイフを弾き落としてお祓い棒を腹に叩き込み、90度向きを変えてレミリアのグングニルを受け止めた。
「……2対1で攻撃がかすりもしないなんてね……!」
レミリアが言いながらグングニルを薙ぎ払った。
だが、霊夢はレミリアのグングニルを逆に弾き飛ばした。
「ぐっ!?」
レミリアの体勢が大きく崩れた。そのすきにレミリアの胸に札を投げて貼った。
そして、霊夢がかがみながら言った。
「爆」
ドォッ!!
レミリアに貼られた札が爆発し、レミリアの小さな体が吹き飛ぶ。
「お嬢様!」
咲夜が霊夢の後ろから切りかかる。だが、霊夢は前に進むことでそれを避けた。
咲夜が自分に背を向けて前に進む霊夢を追った。
「爆」
霊夢の一言で咲夜の後方の足元が爆発した。霊夢がレミリアに貼った札を爆発させた際にかがんでいた。その時に地面に貼り付けたのだろう。
「!?」
爆風にあおられた咲夜が霊夢の方向に向かいながら宙を舞う。
霊夢は空中にいる咲夜の方向に跳躍した。
咲夜はそのままやられてしまうかと思ったが、すぐに体勢を立て直して霊夢を迎え撃つ。
光で輝くナイフと魔力で強化されたお祓い棒が打ち合わさった。
明日も十時に投稿します。
最近、読み返して
割と無理で捻じ曲げている設定が多いということに気が付きました。