東方鬼狂郷   作:albtraum

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レミリアと咲夜の二人が霊夢を殺しに来ました。

誤字脱字はできるだけなくしていこうと思います。


東方鬼狂郷 第十九話 当主と従者 弐

「おおおおおおおっ!!」

 咲夜が雄たけびを上げて空中で霊夢と手元が見えないほどの速度で斬りあい、殴りあった。

 戦い始めは咲夜と霊夢の速さはほぼ互角、だが、すぐに咲夜が押されだし、それに比例して霊夢の攻撃するスピードが加速する。

「っ!」

 咲夜が驚いた顔をし、私がまばたきしたときには咲夜の姿が消えた。時を止めて移動したのだ。

「なるほどね」

 霊夢が言いながら後ろを振り返ってレミリアの方向を見た。

 レミリアが鋭い爪でスペルカードを切り裂いく。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 レミリアが手を上に向けた。

 ゴォォォォォッ!!!

 今までとは比較にならないほどの大きさ、それに雷のように揺らめく炎の槍。

「霊夢に恨みはない、だが私たちのために死ね!!」

 レミリアは言って、苦しそうに喀血した。さっきの爆発した札の影響だろう。

「幻葬『夜霧の幻影殺人鬼』」

 離れた場所に移動した咲夜がスペルカードをナイフで切り裂く。

 咲夜が空中に数十本のナイフを投げると、その場でクルクルと回転し始める。だが、回転していたナイフが意志を持ったかのように突如として動き出し、私を囲むようにして飛来し、一斉に私に向かって飛んでくる。

 ナイフが私に向かってくるのと同時に、レミリアがスピア・ザ・グングニルを投擲した。

 レミリアと咲夜のスペルカードのタイミングは完璧だった。

 レミリアのスペルカードで咲夜のナイフが吹き飛んでしまうこともなく、咲夜のナイフが当たった瞬間にレミリアのスピア・ザ・グングニルが当たるようになっている。

「霊夢!」

 これはさすがの霊夢でも無理だろう。そう思ったときに私は自分の目を疑った。

 同時に突き進んでいたナイフは、霊夢に当たる寸前に一つ残らず地面に向かって落ちて刺さっていた。

 霊夢は巨大なグングニルに対して顔色一つ変えずに立ち向かう。

 スピア・ザ・グングニルとお祓い棒が合わさった時、発生した衝撃は周りの木々がきしみながら曲がり、私たちも吹き飛ばされた。

 早苗をかばいながら地面を転がる。

 もしあのサイズのグングニルが爆発すれば、半径百メートルは軽く吹き飛ぶだろう。私は早苗を抱えて離れることにした。

 

 私はお祓い棒と大量の霊力を使い、スピア・ザ・グングニルを消し飛ばした。

「そんな…!?…スペルカードをスペルカードなしで……!?」

 驚愕する咲夜を視界の端に収めながら、私はレミリアの方向に走る。

「!」

 すぐに反応して咲夜が時を止めて回り込んできたらしく、目の前に現れてナイフで斬りかかってきた。

 私がお祓い棒を右方向から左方向に振った。

 咲夜はそれを受け止めようとナイフを構えたが、ナイフは根元から簡単にへし折れる。

「そん…な…!?」

 けっして霊力を流して強化していなかったわけではないため、驚くのも無理はない。

 今度は反対方向からの攻撃を咲夜はナイフで受け止めることができず、顔を殴られて右方向へと転がった。

 レミリアが自分に向けて跳躍した私にグングニルを振り下ろす。

 だが、寸前に回避した私はそこにはいない。

 横からレミリアに全速力で突っ込み、高度を下げながら共に湖に潜り込んだ。入る際に若干の抵抗があったが無視した。

「~~~~~~っ!!」

 レミリアの目が見開かれ、口から気泡の泡がゴボゴボと漏れた。

 流れる水は吸血鬼が入れない領域だ。それに無理やり入ったとなれば、すさまじい激痛が襲うだろう。

 だが、さすがは紅魔館の当主だ。痛みに耐えながら私に水中でも燃え続けるグングニルを振った。

 私はそれをひらりとかわし、レミリアを手から放して自分だけ上昇した。

 レミリアは私を追って水面に出ようとした。だが、その直前、レミリアは水中に引きずり込まれた。

「…殺さない程度によろしく、わかさぎ姫」

 私はそう呟き、倒れている咲夜の前に立った。

「勝負ありね。咲夜」

「くっ…!」

 咲夜は脳震盪でも起こしているのか全く立ち上がることができていない。

「お嬢様……!」

 咲夜が悔しそうにつぶやいた時、レミリアはわかさぎ姫に運ばれて湖から出てきた。水中であればいくらレミリアでもわかさぎ姫には勝てないだろう。

「ごほっ……!」

 レミリアは岸に放り投げられ、飲み込んだ水を吐き出した。

 レミリアに近づき、見下ろしながら私は言った。

「…萃香のためになんでそこまで戦えるか、私には不思議でならないわ」

 レミリアの表情に怒りが垣間見えた。

「…誰が……あんな…くそ野郎のために戦うかぁぁぁ!!!」

 レミリアがスペルカードを引き裂いた。

「運命『ミゼラブルフェイト』」

 私は急いでレミリアから距離を取った。

 ピンク色の鎖が霊力によって形成されていく。鎖の大きさは一つ一つが人の握りこぶしほどもあり、鎖の先には巨大なひし形の槍の先端部についているものに似たものが付いていて、太さと長さは共に成人男性の足ぐらいはある。

 どこに当たっても致命傷は避けられないだろう。そんなのが五十はある。

「……言葉も出ないわ…」

 ジャラジャラと鎖がぶつかり合う金属音が鳴り響き、蛇が獲物を見つけたように槍の先を私の方向に向けた。

 そろそろ来るな。

「…やれ」

 レミらあの掛け声とともに次々と私に向かって鎖が伸びてくる。

 ドドドドドドッ!!

 上空から私を串刺しにするため、五本程度の槍が高速で落ちてきた。私はそれをすべて叩き割った。

 後方から向かってくる槍をバク転でかわし、それをしながら右方向から来た槍を砕く、着地して私の後方から来ていた鎖を断ち切る。

 頭をフル回転させ、どれがどのタイミングで来て、どのような配置で飛んできた際にどれを先に壊すかを決める。

 前方と後方、真上から来た槍のうち、前方から来た槍をお祓い棒で打ち上げ、真上から来た槍を砕かせ、霊力で強化したお祓い棒で後方から来た槍を破壊した。

 前方から来ていた槍の鎖をお祓い棒でたたき割り、槍のついている方の鎖を掴み、レミリアに投げつけた。

 槍はすべてレミリアが操作しているため、二本の槍が射線上に割り込み、私の投げた槍に当たって両方とも砕けた。

 ようやく10個ほど壊した。

 私は十数枚の札を取り出した。それを上に投げると札はひらひらと舞いながら広がってゆく。レミリアは札から槍を遠ざけようとしたが、遅かった。

「爆」

 私の周りで札の数だけ爆発が起こり、槍や鎖が爆発していった。

 それでも、まだ半分以上も残っている。レミリアが私に一斉に槍を向かわせた。

 ガガガガガッ!!

 私は槍を砕き、時折かわしてその数を減らしていく。

 私が踏み込んで槍を破壊しようとしたとき踏み込んだ地盤が緩く、バランスを崩した。バランスを崩した私を鎖が縛り上げ、持ち上げて地面に勢い良く叩きつけた。

「があっ!?」

 地面に落とされた私を槍が追撃して地面に突き刺さる。しかし、槍はすべて砕かれた。

 だが、さすがに無傷とはいかなかった私は血だらけになってピンク色の槍と鎖の破片が雪のように降り、光が反射してきれいに見えるこの場所を駆け抜けた。

 一秒でも止まっていれば、レミリアの槍に串刺しにされてしまう。

 頭が痛い。常にフル回転させて使っているため、負担が大きいのだ。

「あああああああああああああああっ!!」

 私とレミリアどちらかが叫び、さらに攻防は激しさを増していく。

 頭が熱を持ち、額からは玉の汗が流れる。

 前方から来た槍を砕き、後ろから飛んできた槍を上から踏み抜いて地面に押し付け、砕く。二本同時に左右から飛んでくる槍を回転しながら破壊した。

 頭痛が酷くなってきた。

 残りは五つ。

 地面が盛り上がり、土の中から飛び出してきた槍をぶっ壊し、後ろから飛んできた槍をお祓い棒で受け流して鎖を蹴り壊した。

 残りは三つ。

 鎖を蹴り壊した私の後方から来た槍を破壊してレミリアの方向へと走った。

 残りは二つ。

 前方上空から薙ぎ払うようにして槍の先端が叩きつけられるが、それを鎖ごと破壊した。

 残りは一つ。

 私は時計回りに回転して横から飛んで来た槍を破壊した。

 ゼロ。

 レミリアの方向に駆け出す。

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!!」

 レミリアがスペルカードを破壊し、右手に巨大な槍を形成した。

「最後に勝つのは、私たちだ!!」

 レミリアがスピア・ザ・グングニルを投擲した。

 私は十数枚の札を取り出した。

「反!!」

 札をどこかに貼るのではなく、直接もって霊力を込めながら唱えた。

 スピア・ザ・グングニルは私の札に触れたとたんに方向転換してレミリアに向かって突き進んだ。

 作用反作用の法則。それは壁に手を付けて押せば壁からも押した強さと同じだけの力で押し返されているというあれだ。

 それと似たことが札を持っている私に起こった。

 私はスピア・ザ・グングニルの進む威力をそのままくらい、後方に吹き飛ぶ。

 二百メートルほど飛び、木の幹に叩きつけられた。木は私がぶつかった衝撃に耐えられなかったらしく、へし折れた。

「ぐうっ!」

 でかい岩に背中を打ち付けてようやく止まった。

 私が止まった時、レミリアがいた方向から大爆発が起こった。

 半径約百メートルの地表が薙ぎ払われ、炎がすべてを巻き込み燃やし尽くす。

 爆心地から二百メートルは離れているのに私のところまで温風が届いた。

 札を持っていた手を見るとすべての札が焼け焦げている。ギリギリだったらしい。一枚でも少なかったらあそこの中心にいたのは私だったのかもしれない。

 咲夜と永琳、早苗はだいぶ離れていたし、大丈夫だろう。

 私は咲夜が倒れているところに歩いて戻った。すると、あれだけの爆発の爆心地にいたレミリアが割と軽症で足を引きずりながらこちらに向かってくる。

 レミリアが私の前まで来て戦闘を続行しようとしたが、ゆらりとレミリアの体が揺れて地面に倒れた。

 霊力切れだ。スピア・ザ・グングニルとミゼラブルフェイトの形成と操作にかなりの霊力を消費し、スピア・ザ・グングニルの爆発からも身を守ったのだ。霊力が切れて当り前だ。

「……」

 レミリアのことを掴み、咲夜のところに歩いて行く。

「霊夢……大丈夫?」

 早苗を背負った永琳が言った。

「…ええ。大丈夫よ…だいぶくたびれたけどね」

 そう言いながら私は気を失ったレミリアを地面に寝かせて、その横に座った。

「……早苗は大丈夫?」

「一応大丈夫よ。…かなりひどいやけどを負ったけど、早めに治療したおかげで傷は残らずきれいに治せたわ」

 それならよかった。

「…今回はわかさぎ姫と青娥が手伝ってくれて助かったわ」

 私が言うと青娥が地面に穴をあけて出てきた。

「お久しぶりね」

「…そうね…久しぶり。……一つ聞いていいかしら?」

「何?」

「……青娥はなんで萃香につかなかったの?」

 前置きはなしで単刀直入に聞いた。

「…そうね。まだあなたに興味があるからかしらね」

 青娥が言いながら穴から出てくる。

「…」

 宮古芳香が一瞬脳裏によぎるが、考えないことにした。

「…わかさぎ姫は?」

「湖の中よ。…それよりも大変なことになってたのね」

 青娥が穴をあける道具、ステッキのような形状をした物を軽く振りながら言った。

「……そうね。……それと、萃香の居場所は知らない?」

 私は言いながら咲夜に札を張り付けた。

「封」

 咲夜の体が震え、気を失う。

「知ってるわよ?」

「…え?本当?」

 永琳が言い、青娥がうんとうなづいた。

「どこにいるの?」

 私が言うと青娥がそうねぇと言い。

「天狗の屋敷よ」

 青娥がそう言ったとき、私たちはがっくりと肩を落とした。

「…天狗の屋敷なら私たちも行ってきたわ。でも、いなかったのよ」

 私が言うと青娥があれっ?と首を傾げる。

「……ちなみに聞くけど、それはいつのことかしら?」

「……ついさっきよ?」

「…ついさっき?…私たちよりも後ってこと?」

 私が言うとたぶんとうなづいた。

「…そう。じゃあ行ってみることにしましょう」

 私が言うと永琳がそうね、と同意した。

「……あんたたちはどうするって言ってもわかさぎ姫は来れないか…」

「…私は遠慮しておくわ」

 青娥が言いながら穴を作って消えた。

「…まずは…この三人を運ばないとね」

 永琳が言い、私は立ち上がって咲夜を背負う。

 永琳がレミリアを小脇に抱えた。

「……そうね」

 遅れて私は返事をした。

 

「…永琳の傷は大丈夫なの?」

 帰りの飛行中、しばらく会話がなかったが私は聞いてみた。

「多少はあるけど、問題ないわ…霊夢こそ大丈夫なの?」

「…たぶん大丈夫よ」

「それならいいけど、早苗は無理そうね」

 永琳は背負っている早苗をちらりと見た。

「…そうね」

「………思ったんだけど、霊夢はどうやってあそこまで強くなったの?」

 永琳が唐突に私に聞いてきた。

「…どうしたの?いきなり」

「…フランたちとの戦いとか、今回の戦いを見てきたんだけど、体を強化してもあんな動きは人間離れしてる。聖だってできないんじゃないかしら?」

 永琳が言いながら私を見た。

「……」

「言いたくないことなら言わなくてもいいわ」

「……単純に、死ぬほど訓練しただけよ」

「あれほど強いなら、並の訓練量じゃなかったんじゃない?」

「…まあ、そうね…」

 神社よりも十数メートル高いところを飛行していたので、庭に着地するために降下した。

「……」

 私は、誰かが庭に立っているのが見えた。

 ピンク色の髪に、胸元に牡丹をつけていて、左手に鉄の手かせのようなものをはめている。右腕は包帯を巻いているように見えるが、実際は中身は空洞の腕。そんな人物は一人しかいない。

「……歌仙」

 私は呟き、急いで永琳に無理やり咲夜を押し付けて下に降りた。

「…どうしたのかしら?……茶の間で寝てる連中を取り返しに来たのかしら?」

 私が言うが、歌仙は何も答えない。

「……?」

 私はよく歌仙の姿を見直した。

 服はボロボロ、擦り傷や打撲だらけで埃で汚れている。目は虚ろで私をきちんととらえていない。

「……?…どうしたの?」

 私が言うと、歌仙が顔を上げて私を見た。

「……あいつが……私の……!」

 そう呟いた歌仙の瞳から涙がこぼれた。

「……」

 私は黙って歌仙の言葉に耳を傾ける。

「これじゃあ……私は……今まで………何のために……!!」

 河川が私にはよくわからないことをつぶやきながら、両手で顔を覆って泣きじゃくる。

 私はどうしたらいいのかわからなかったが、歌仙に部屋に上がってもらうことにした。

「…歌仙、ここじゃああれだし……中に行きましょう」

 歌仙は敵ではない。歌仙の目からは敵意を感じなかったからだ。




明日も投稿すると思います。

よろしくお願いします。
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