東方鬼狂郷   作:albtraum

21 / 33
昨日は風邪をぶり返してしまい、投稿をすることができませんでした。

こういった事情が重なるかもしれませんので、ご了承ください。

第二十話をお楽しみください。


東方鬼狂郷 第二十話 茨歌仙

「…落ち着いたかしら?」

 私がお茶を出しながら言うと歌仙が顔を上げた。

「霊夢。さっきは取り乱してごめんなさい…」

 歌仙が俯きながら言う。

「……別に大丈夫よ。でも、聞かせてもらえるわよね?敵であるあんたが戦うってわけでもないのに、なんで神社に来たの?」

 私が言うと歌仙は顔を上げて言った。

「私は…霊夢達につく」

「……信じられないわね。なぜ萃香についていたあなたが?」

 永琳がお茶を一口飲んで言った。

「……私には、萃香のところで戦う理由がもう…ありませんから」

 歌仙が左手で湯飲み椀を掴んだ。

「……ちなみに聞いてもいいかしら?戦う理由って何?……言いたくないことなら言わなくていいって言いたいけど、今回ばかりは無理……。すまないけど言ってちょうだい」

 私は言いながら持っていた湯飲み椀を机に置いた。

「……私の右手は……約二百年前に…この幻想郷ができてすぐ、萃香によって切断されました」

 歌仙の右腕がないことは知っていた。だが、なぜ腕がなくなったのかは知らなかったため、私は少しばかり驚いた。

「……先日…私は萃香にその腕を返してやるから私の異変を手伝えと言ってきました……ずっとどこに隠しているかわからなくて探していた腕がようやく見つかると思って手伝いました」

 萃香がそこで言葉を切ると一口お茶を啜った。

「……私は少し前に、萃香に戦う時に全力を出せないから腕を返してくれと頼みました。……でも……」

「…返してくれなかったと」

 永琳が言ったとき、歌仙が顔を横に振った。

「……もう、返せない状態だったんです?」

「…?」

「……萃香がすでに食っていたんです」

「…え?…食った……?」

 萃香の言葉に私と永琳が唖然とした。それを見て少し涙ぐんだ萃香がああそうかと再度説明した。

「…霊夢たちは、どの種族にもある絶対的なルールって知ってる?」

「……ルール?…殺し合いとか?」

 永琳が言った。

「いいえ、……これは……それをしないことが普通です…」

「……しないことが普通…?」

 私も考えを張り巡らせるが特に思いつかなかった。

「それが普通だと思う……萃香がやった行為、それは…同種喰らい。……同じ種族ということで、似た霊力を持っていて、他の者を食うよりも蓄えやすいと考えたんでしょう…。ほかの妖怪に手を出して変な噂が立ってしまうことも同時に防げる…」

「……いかれてるの…あいつ……」

 永琳が言う。

 私もそう思った。

「……でも、あそこまで魔力が増加したとすると、食った鬼の数は100や200じゃあないわよね?」

「たぶん……もしかしたら四桁行くかもしれない…」

 私が聞くと歌仙が答えた。

「鬼が成人になるまでは人とは比べ物にならないほど速いと聞くけど、それにしても異常すぎる」

「…狂ってるわね。…そこまでして萃香が何をしたいか知らない?」

 私が歌仙に聞くが、歌仙は顔を横に振った。

「…そうよね……まあいいわ。萃香はまだ天狗の屋敷にいるんでしょう?」

「たぶんいる」

 私はそれを聞いて立ち上がり、寝室まで行って棚から札を取り出して補充した。

「……」

 休憩を入れたおかげで霊力を回復させることができて、準備は万端だ。

 私はお祓い棒を握りしめ、二人の居る方向に向かった。

 すぐに二人と一緒に神社を飛び出した。

 

「…霊夢。決着をつけましょう」

 永琳が天狗の屋敷が見え始めた時に言った。

「そうね。こんなことは終わらせるわ」

 私が言ったとき、歌仙が大天狗がいた部屋を指さして言った。

「萃香がもし私が出て言ったときのままなら、あそこにいるわ」

 私は数枚の札を取り出して壁に投げて張り付ける。

「爆」

 ドン!!

 札が爆発すると、木の壁が壊れて穴が開いた。

 私が中に入ると萃香は私たちに背を向けて机の上に座っている。

「…来たわよ?萃香……あんたの異変をここで終わらせるわ」

 私が言うと机に座っていた萃香が、机から降りてこちらを向いた。

「…もう来たか。まだまだ戦ってもらわないといけないやつもいたんだが……まあいいか」

 萃香が歌仙を睨むが特に気にした様子もなく視線を私に向けた。

「…遊びはここまでよ、異変の首謀者が倒れれば……異変は終わる」

「……そうだなぁ………。そうそう!魔理沙を殺したんだってなぁ?……友人を助けるためだったのに可哀そうに」

 萃香がニヤニヤと笑いながら言う。

「そう。……あんたがほかの連中からも人質を取ってることは薄々わかってたわよ」

「わかったうえでやってたのか?……血も涙もない奴だな」

 萃香は面白くなさそうに頭を掻いた。

 大方、魔理沙は人質がいたから仕方なく私を裏切った。ということを言って驚き、嘆く私を見てその反応を楽しもうとしたのだろう。

「まあいいや、じゃあ…おもてなししてやるよ。私流のやり方でな」

 萃香が握りこぶしを作った。

 周りには勇儀の姿は確認できない。やるなら今だ。あいつがいるだけで戦況が一気に変わる。

 私もお祓い棒を構え、最後になるであろう戦いに身を投じた。

 私が殴りかかるのと萃香が殴りかかるのはどちらも同時だった。

 ドオッ!

 さっきの爆発音に負けないほどの爆音が私のお祓い棒とスイカの右手の拳が合わさった部分から発せられる。

 耳がいかれそうだ。

 萃香が左手を斜め下からねじ込むように、私の脇腹めがけて左手の拳を突き出した。

 私を左腕の肘を萃香の伸ばしかけている腕に打ち下ろし、軌道を大きくそらさせた。

 右手のお祓い棒で萃香の顔を殴り、蹴り飛ばして距離をとった。

 私から離れた萃香に横から歌仙が殴りかかる。包帯の右腕で顔を殴った。

 ボッ!

 歌仙の拳を受けた萃香が突然塵となって消え去る。

 離れた位置に萃香が形成された。

「どうした?いつもみたいな動きじゃないなぁ…霊夢」

 萃香がケタケタと笑う。

「…」

「まあ、当たり前か。…連戦に続く連戦で無理をして戦ってたみたいだからなぁ」

 言った萃香にお祓い棒で殴りかかった。

 鉄と鉄を合わせたわけでもないのに、私の振ったお祓い棒は萃香の拳に当たると金属音のような鋭い音を発生させた。

 続けざまに二度三度とスイカと打ち合う。

 打ち合う数が増すほど、その衝撃が私の体を蝕み、動きが緩慢になっていく。

 一瞬だけ霊力を消費して萃香を音速に匹敵する速度で二度殴った。

 全身の筋肉を使って、二度殴ったが萃香には手ごたえがなく、また塵となって消え去った。

 筋肉が悲鳴を上げるようにして激痛で私に訴えかけてくる。

「惜しい惜しい。もっとやれよ…そのうち当たるかもしれねぇぞ?」

 萃香が余裕の笑みを浮かべながら言うと、永琳が矢を放った。

 空気を切り裂きながら突き進んだ矢は萃香に当たることなく壁に突き刺さる。

「厄介ね」

 永琳が苛立った表情で呟いた。

「…歌仙、手伝って」

 私が言いながら再形成した萃香に突っ込む。歌仙が少し出遅れながらも萃香に回り込むようにして走る。

「せい!」

 ドゴォ!!

 萃香が私のお祓い棒を交差した腕で受け止めた。

 萃香が私を振り払い、隣から殴りかかってきた歌仙の拳を叩き落とし、わき腹に蹴りを食らわせた。

「か…っ……!?」

 歌仙の体が浮き上がり、天井にぶつかった。

 歌仙を蹴ったことにより、私に背を向けた萃香にお祓い棒でぶん殴るが手ごたえが全くない。

「く…!」

 歯噛みして周りを警戒したとき、

 ドォッ!

「うぐっ…!?」

 背中から強い衝撃、背後から萃香に蹴られて上から落ちてきた歌仙にぶつかり、もみくちゃになって壁に衝突して床にずるりと落ちた。

 無理して戦っていたのが今頃になってしわ寄せしてきたかのようだ。

 お祓い棒を握る私の手がプルプルと震えている。

「どうしたぁ?霊夢…。ビビってんのか?」

 永琳に撃ち抜かれた萃香が塵となって消える。

「誰が、あんたなんかにビビるのよ…!」

 体に霊力を流し、無理やり立ち上がった。

「それでいい!…そうでなくっちゃぁ楽しくねぇ」

 のそりと立ち上がった私を萃香は既に殴る体勢で待ち構えている。

「!!」

 倒れている歌仙を多少乱暴だったが、投げて逃がした。

 萃香の拳を食らった。瞬きする間に私は廊下に投げ出されていて、高速で動いている。

 ドン!!

 後ろの壁を破壊し、床で一度バウンドしてさらに奥の壁を破壊してほかの部屋に転がり込んだ。私がバウンドした影響で空中にいるというのにもう萃香が追撃してきた。

 ガツン!

 私の腹を下に向けて萃香が殴った。

 床の木を破壊し、私は下の階に叩き落とされる。

 一階の床に倒れ、上から砕けた大量の木の板が降ってくる。

 こんな無防備な姿をさらしていたら攻撃してくれと言っているようなものだ。

 急いで動こうとしたが、ガラガラと木の板は落ちてくるが、萃香が降りてくる気配はない。

「く…」

 私は歯を食いしばっていつもの数十倍は重く感じる体を持ち上げた。

 体から力が抜けかけて倒れそうになったが、何とか持ちこたえた。

「…ん?」

 顔を上げると前方に誰かが座り込んでいる。

「……鈴仙…?」

 私が言うが鈴仙は反応を示さない。目が虚ろで魂が抜けてしまっているように見える。

 ずっと泣いていたのか、鈴仙は瞼を腫らしている。

 鈴仙は誰かを見下ろしている。それは妖夢だ。呼吸はしているが意識はないようだ。

 何とか山積みになった木の板から抜け出して、鈴仙の元まで行ってしゃがんだ。

「…鈴仙…どうしたの?」

 鈴仙の肩を揺すってみるが反応はない。

「鈴仙…!」

 強く鈴仙を揺すると、気が付いたらしい鈴仙がこちらをゆっくりと向いた。

「れ…霊夢さん……!」

 ジワリと鈴仙の目に涙が溜まる。

「…妖夢に…何があったの?」

「…私は……嫌だって言ったのに……萃香さんが……無理やり…!」

 鈴仙がそう言ったとき、上の方向から戦闘音が聞こえた。

 早く戻らなければならない。

「鈴仙、妖夢に何をしたの?」

「……萃香さんが……どれだけ、狂気を植え付けられるか妖夢でやれって……!」

 鈴仙が泣きながら妖夢を抱きしめた。

 妖夢はぐったりとしていて動かない。その時、何があったのかはわからない。でも、鈴仙には酷だったに違いないだろう。鈴仙は妖夢のことが好きだからだ。

 鈴仙は妖夢を人質にとられ、萃香に脅されて他の奴にも狂気を植え付けていたのだろう。なんとなくわかった。

「………っ!」

 ギリッと私を歯をかみしめる。

 私がもっと早くにこの場所に来ていれば、妖夢は助かったのだろうか。

 そんな考えが頭をよぎった時、自分の無能さに腹が立った。

 私は立ち上がり、永琳たちのところに向かう。

 自分が落とされた穴から二階に向かった。

 永琳と歌仙は見た感じは重症は負ってはいないが、けがはしている。

「萃香ぁ!」

 後ろからの完璧な不意打ち、振り下ろした攻撃はツノを掠っただけで終わり、萃香は塵になる。

「ズルいやつね……!」

 私は次、萃香がどこに現れるかわからないため、周りを警戒した。

「……」

 私の前方に現れた萃香にさっきまでの余裕の表情はない。あるのは怒りだけだ。

「やりやがったな…くそ巫女!!」

 忘れていた。鬼は自分のツノを触られたりする行為を極端に嫌がる。攻撃されるなどもってのほかだ。

 萃香が走り出す。そのすさまじい脚力に床の木の板が砕けていく。

「反」

 ドゴッ!

 萃香の蹴りを私は反射で跳ね返した。

 天井と床に四角形になるように張り付けていた札が、萃香の蹴りにたえきれずにその効力を発揮できないまま結界は砕け散った。

「なっ……!?」

 ガラスのような結界が消え、私に蹴りが直撃した。

「があぁっ…!!?」

 踏ん張りがきかず、私の足が床から離れて浮き上がり、体が壁に高速で向かう。

「霊夢!」

 壁に激突する寸前に歌仙がギリギリで受け止めてくれた。

「失せろ歌仙!!」

 萃香が握りこぶしを振りかぶり、歌仙が着地と同時に私を放して振り向きざまに萃香に右手の拳を見舞う。

 ボゴッ!!

 歌仙の包帯の腕がひしゃげ、弾けた。

 敗れた包帯が飛び散り、ひらひらと落ちた。

「くうっ…!!」

 萃香の第二撃を胸に食らい、歌仙が壁を突き破って外に吹き飛ばされた。歌仙が開けた穴から太陽の光が降り注ぎ、部屋が一段と明るくなる。

「このっ!」

 私は歌仙を殴った萃香をお祓い棒で腹を殴る。

「がはっ…!?」

 萃香が反対方向に倒れ、床を転がった。永琳がそのすきに矢を倒れた萃香に放つ。

「ちっ…!」

 萃香が舌打ちしながら腕を振ると、手首についている手かせの部分にちょうど良く当たったらしく、金属音が鳴りながら矢が弾かれる。

「…お前らみたいな雑魚どもにここまでやられるとはな……!!」

 萃香が言いながら距離を取った。

 私がお祓い棒を構えて動きを止めて萃香が来るのをじっと待つ。

 萃香が私に向かって来ようと足を前に出して踏み込んだ時、その脚力に足周辺の床が壊れた。




たぶん明日も投稿します。気長に待っていただければ幸いです。

いよいよこの話も終盤に差し掛かってきました。できるだけ楽しんでいただけるように頑張ります。







脱水症状って怖い。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。