最後の戦いが始まります。
バギャッ!!
床の一部が壊れたというよりも、萃香の足元の床が壊されたと言っていい。床の壊れた部分から腕が伸びてきて萃香の足を掴んだ。
「幽香…!!」
目を見開いた萃香が一階の方向に引きずり込まれた。
「…!?」
私は困惑しながらも、萃香が引きずり込まれた穴に近づくと殴りあうような音が聞こえる、萃香と幽香は下で戦っているのだ。
ドゴッ!
ひときわ大きな殴った音が聞こえる。
私は萃香が引きずり込まれた穴に降りた。
「らあっ!」
萃香が幽香を殴る。幽香がそれを正面から受け止めながら反撃した。
萃香と幽香の拳が合わさると、その衝撃で周りの埃が爆発があったかのように浮き上がった。離れている私にも空気の振動が感じられる。
「幽香さん。かがんでください」
私の横から静かな声が聞こえた。
そっちを見るとさとりが片目を閉じて、胸の前にあるサードアイの瞼を開いた状態で立っていた。
幽香がしゃがみ、萃香の蹴りが幽香の頭上を通り過ぎる。
幽香が立ち上がりながら、全身の筋肉を使って萃香を殴った。
ボッ!
幽香の拳が当たったとたんに萃香が塵となって消え去る。
「……っち…面倒な能力ね」
幽香が舌打ちしながら私たちのところまで下がってきた。
「……いつも持ってる傘はどうしたのかしら?」
私は言いながら自分の後ろを確認した。
「…少し前の戦闘で壊れたわ」
「…そう」
私が言ったとき、幽香がさとりの方向を見て言った。
「…さとり、萃香がどこに現れるかわかる?」
幽香が言うと、さとりは顔を横に振った。
「すいません。さすがにわかりません」
また、萃香の奇襲を仕掛けられるしかないのかと思ったとき、私は室内なのに空気の流れを感じた気がした。
私はとっさに自分の正面に向かって走っていた。
ゴォッ!
すると、それを待っていたかのように萃香の体が現れた場所は、私のすぐ目の前だった。
「っ!!?」
私の懐に飛び込んできた萃香を迎撃することができず、萃香の攻撃をまともに貰ってしまった。
「があっ……!?」
私は何とか萃香の頭を掴み、すぐ後ろの壁に叩きつけた。
「くくっ」
萃香の目が指の間から見え、目尻が下がっていて笑っているのが見える。
ヴンッ!
萃香は能力で自分の身長を歌仙ぐらいにまで伸した。
そのおかげで私よりも身長が高くなり、腕も私よりも長くなる。
「うぐっ…!?」
萃香が私の首を掴んだ。
脊椎を握り潰されるのではないかと思うほどの握力で首を握られた。
「どうしたぁ…?霊夢…力が弱くなってきてんぜ?」
萃香が腕を伸ばすと、現在の私の方が腕が短いため、萃香から手が離れる。
萃香が私の喉を握りつぶそうと力を込め。
「……う…っ!!」
幽香たちが何かをしようとしているが、間に合いそうにない。
だが、萃香の後方の壁にヒビが入っているのが見えた。私が萃香の後頭部を押し付けた時にできたものだが、その時よりも大きくなっているように見えた。
バキッ!
壁が破壊され、歌仙が姿を現した。
右腕はまだ包帯で作っていないらしくて無いが、左手の平で萃香を殴った。その際、瞬間的に強い霊力をぶつけることにより、相手の霊力の波を乱して一時的に能力を使わなくさせることができる。とだいぶ前に歌仙が言っていた気がする。それをする気だろう。
「見え見えだよ」
そう呟いた萃香は塵状化し、歌仙の攻撃は私の胸に直撃した。
疲れ切り、ボロボロの体の私には痛すぎる攻撃で、体を満たしている霊力の波を内蔵ごとかき混ぜられたような感覚がする。
「ゴボッ…!!」
血を吐き出し、私は倒れた。
「霊夢!」
倒れる私を歌仙が受け止めてくれたが、後ろから萃香に蹴飛ばされた。
歌仙を巻き込みながら私は外に転がり出る。歌仙が地面に背中を打ち付けて止まり、私はその上に倒れこんだ。
「どうしたよ!!」
萃香の声が頭上から聞こえる。
今更もう遅いが、迎え撃とうとした私を歌仙は間に合わないと判断したらしく、私を横に投げた。
「…歌仙!?」
萃香の拳は歌仙の脇腹を直撃し、貫通して地面に穴をあけた。
「ああああああああああああああっ!!?」
歌仙が絶叫し、吐血して気を失う。
歌仙の体はかなり耐久性が高い。それを軽々貫通するとは思わなかった。
萃香が歌仙の腹から腕を乱暴に抜くと、血が溢れてピンク色の臓物がわずかにのぞいた。
「萃香ぁぁぁっ!!」
私は体が動かないのを霊力を使って何とか立ち上がらせ、萃香に向けて跳躍し、頭にお祓い棒を下から叩き込んだ。
萃香の顔が打ち上げられ、無防備は姿をしさらした。
当たった。だが、お祓い棒に当たった感触は固いものを殴ったようなもの、ツノに当たったらしい。
そして、今度は上から萃香の頭部にお祓い棒を叩きこむ。
だが、萃香はそれを受け止め、下からがら空きの脇腹に蹴りがめり込んだ。
「がっ…!?」
私の体から力が抜けて崩れ落ちそうになるが、私は体に鞭打って踏ん張り、萃香の頭に右手で持ったお祓い棒を振り下ろす。
ドゴォ!
カウンターのように私の顔を萃香が左手で殴った。
「……くぅ…!!?」
私は意識を何とか保ち、萃香の頭に当たっているお祓い棒を持つ手に力を込めて振り切って、自分から離れさせた。
空中で体勢を立て直した萃香が着地し、足の筋肉を使って私に向かって飛び込みながら右手で殴りかかってくる。
お祓い棒で受け止めた。左手でも殴ってくるが、萃香の右手を振り払いながら左手をお祓い棒ではたき落とす。
萃香のスピードはそこまで早くない。だが、一撃一撃が重く、反撃することができない。むしろ、私が遅くなってきている。
私が大振りの萃香の拳を受け流しながら、萃香の顔にお祓い棒で殴った。
「ぐっ!」
萃香が唸りながら私をぶん殴る。
拳が頬に当たり、私は後ろに吹き飛んだ。
「…爆…!」
殴られる寸前に萃香の足元にばらまいて置いた札を起爆した。
一斉に膨れ上がった札が爆発四散し、萃香を包み込んだ。
私は空中で宙返りをして、札を大量に持ち出して霊力を流した。すると札が丸まって繋がりあい、鎖のような形状となる。
爆風で空中に投げ出された萃香に向けてそれを振った。
札で作られた鎖の先端が私の操作により、萃香の足に巻き付き、それを確認できたときに地面に向けて萃香を振り下ろした。
ズドッと地面に萃香が落とされる。
「くそが!」
萃香が足に巻き付いた札の鎖を引き裂こうとしたとき、私は札の鎖から手を放した。
私が命令したとおりに札が萃香に巻き付き、縛りあげた。
「なん…!?」
萃香が引き裂く前に私は言った。
「…爆」
2、30枚はあった札が大爆発した。
「…霊夢!大丈夫!?」
永琳が歌仙に走り寄り、幽香とさとりがこちらに走ってくる。
「…私は大丈夫。それよりも歌仙を…」
私が言うと永琳は歌仙の傷を見て、様々な薬を飲ませたり塗ったりしている。
歌仙の傷がゆっくりと治り始めた。
傷が治るということは新陳代謝をしていて、歌仙が生きていることを示している
「…まだ、終わってません」
さとりが言うと、巻き上がった砂煙の中に人影が見えた。ボロボロでヨタヨタと立ち上がり、こちらに歩いてくる。
「…萃香。あんたの負けよ…大人しくしなさい」
まだやる気の萃香に私が言うと、萃香が愉快そうに笑った。
「…?」
「さとり妖怪も言ったろ?まだ終わってない」
ドォッ!
私に向かって萃香が突っ込んできた。
ガギィッ!!
萃香の拳を私はお祓い棒で受け流し、顎に一撃、首筋に一撃入れる。
だが、萃香はひるむ様子もなく私を殴る。
萃香の拳が私の顔を吹き飛ばす直前に幽香が萃香の腕を掴み、萃香の顔を上方面からぶん殴った。
ドゴォッ!
幽香の拳を食らった萃香が地面にぶつかると、彼女を中心に地面にヒビが入って陥没した。
私はそのすきにお祓い棒に霊力を込めて倒れた萃香に殴りかかり、幽香も萃香に追撃を加えにかかった。
だが、私たちの腕を萃香が掴み、追撃させない。
「!!」
私と幽香の手を自分の方に引き寄せながら萃香は立ち上がり、すぐに腕から手を放し、代わりに二人の頭を片手ずつで掴み、私と幽香の頭をタンバリンのように打ち合わせた。
「いづっ!?」
「ぐぁっ!?」
私は右側頭部を幽香は左側頭部を打ち合い、目の前に星がちらついた。
萃香は私の腹に一撃、幽香の胸に一撃を食らわせる。
「がはっ……!?」
私は吹き飛び、後方にいたさとりにぶつかった。
「ひゃあっ!?」
さとりを巻き込み、私は天狗の屋敷の壁に背中がぶつかった。
「ぐ…!…さとり、大丈夫?」
私がお腹を押さえながら言うと、けがをしていないさとりが立ち上がり、私のことを立たせてくれた。
「…それはこっちのセリフですよ……だいぶやられてるじゃないですか…」
「…まあ、そうね」
私は言いながら戦う萃香と幽香の方に歩いた。霊力で作り出したスペルカードを手のひらで握りつぶした。
この異変が始まってから何枚かスペルカードを作り直した。
「…霊符『夢想妙珠』」
霊力を大量消費し、七色に輝く霊力の丸い弾丸が現れる。
十個程度ではない。向こう側の景色が見えなくなるほどで、太陽に負けないぐらいの光が発生した。
幽香が退き、そのタイミングに合わせていくつかの弾幕を萃香に飛ばす。
「くそ…!!」
萃香が罵倒しながら砂煙の中から私に向かって走り出してくる。
思った通りだ。萃香はツノを攻撃された後の一定時間、能力の性能が著しく低下して塵状になったりすることができないようだ。
昔、紫とした会話を思い出した。
千年も二千年も前、鬼はもっと大きくて二足歩行ではあるが、人間とは姿はかけ離れた姿をしていたという。
しかし今はどうだろうか。まるで人間のような姿である。
そこから考えるに、妖怪たちとの生存競争において図体のでかさは必要でなく、退化したのだ。
ある意味進化と言ってもいいが、一つ解せないことがある。特に何の役にも立っていないように見えるツノがそのまま残っているのだ。
鬼に限ったことではないが、昔は人間を見下して殺してきてはいて、もっと今とは違う姿をしていた。しかし、人間の数が増えていくうちに、妖怪たちも人間の姿に近い方がこの世の中では生活しやすいとなり、人間に姿が近くなったのだろう。
それならば、特に使われていない鬼のツノなどすぐに退化しそうだが、そうではない。
例えば、天狗の特徴的な羽、あれは飛ぶ際の補助に使うと文は言っていた。しかし鬼のツノ、あれが何かの役に立つなんて聞いたこともない。
そこで私はある仮説を立てた。鬼のツノはなにか重要な役割を持つ器官なのではないかと。
それで何度か攻撃してみたが、変化は目に見えてあった。
「鬼はツノを攻撃されると能力が使えなくなるわけね」
鬼が自分のツノを触られることを嫌がるのも納得できる。
私は言いながら萃香に向けて一斉に弾幕を放った。萃香に光る弾幕が押し寄せ、着弾。
地面を揺らし、近くの木をきしませるほどの風と爆音。
爆発の寸前まで萃香の姿がわずかに見えた。直撃は間違いなしだ。
「……」
煙が晴れると萃香が爆発したと思われる爆心地に横たわっている。
「…お前たちに…教えてやる……!」
ボロボロの萃香が言った。
「……何を教えるっていうのかしら?」
私が言うと、さっきの大爆発を食らっているとは思えない軽快な動きで萃香は立ち上がった。
「…勝つのは…私たちだ……!」
「……どう考えてもあんたの方が劣勢じゃない」
私は言いながらお祓い棒を構えた。
「…そうかな?」
そう言いながら萃香は笑った。
「…?」
萃香の不敵な笑みに、私たちは警戒する。
「……上から…何か来る…!」
幽香が上を見上げて言った。
影は二つ。
一人は勇儀としても、もう一人は誰だろうか?
ドン!
そう思ったとき、二人が地面に着地した。
そして、私たちは目を見開いて驚きで何も言えなくなった。
「萃香が……三人…!?」
私が言うと、萃香が笑う。
理解が追い付かない。なぜ萃香が三人もいるんだ。
「理解できないようだから教えてやるよ。私は仲間の鬼を食うことで能力に変化が生じた。根本的な部分は変わらない。だが、応用すれば自分を力ごと三分割することもできる……いくら酒でごまかしてもバレるかもしれなかったからな」
萃香の言葉に私たちは絶望していた。
つまり、あれだけの攻撃力と防御力を持っていたのに萃香は本気を出せても三分の一しか出せなかったということだ。
「嘘……でしょ……?」
永琳が呟いた。
「……いや、本当だ」
今まで戦っていた萃香にもう二人が塵状化して合わさった。
萃香の霊力が倍増した。
「…っ!!」
「…さあ、始めようじゃないか」
萃香が前に出た時、私たちはじりっと下がった。萃香の圧力に私たちは少なからず圧倒されている。
「どうした?…さっきみたいにかかってこいよ」
萃香が笑いながら言った。
誤字脱字は許してください。
明日も投稿すると思います。