第二十二話をお楽しみください。
最近思いました。タグで百合があるのに、全くそれの展開がないじゃないかと。
「どうした?…さっきみたいにかかって来いよ」
萃香がそう言いながら笑った。
「……」
私たちは誰一人として動けない。
「そっちから来ないなら、こっちから行くぞ!」
ドン!
さっき私が使ったスペルカードよりも大きな破砕音。それを私の脳が知覚したころ、私は天狗の屋敷の壁をいくつも貫いて空を舞っていた。
「…が…はぁ…っ!!?」
天狗の屋敷が山の斜面にあるのと、斜めに飛ばされたことにより私はかなり高度が高いところにいる。
天狗の屋敷の戻ろうとして前方に進む力を飛行能力で弱めようとしたとき、後方斜め上から何かが猛スピードで突っ込んできた。こんな状況だ、そんな奴は一人しかいない。
「無様だなぁ霊夢!」
地面に向かって落ちていく途中、萃香に殴られてさらに加速して地面に落ちる羽目になる。
「ぐっ!?」
地面に一度衝突したが勢いが死なず、バウンドして数メートルの高さまで体が浮き上がる。
かたい土を砕き、その粒をまき散らす。ちょうど道に落ちたおかげで家を破壊せずに済んだ。
猛スピードで並ぶ民家や驚く人たちが通り過ぎていく。
「くっ……!」
三度目のバウンドで受け身を取ることに成功し、何とか止まることができた。
「霊夢…突っ立ってると死ぬぜぇ!!」
萃香が走ってくるがその脚力に耐えきれず、一歩一歩で地面にひびが入り小さく陥没している。
「爆!」
ドォッ!
空中にいるときに殴られる寸前、萃香に貼り付けておいた札が光を放ちながら爆発。
それにより、勢いを失った萃香の頭部にお祓い棒を叩きこむ。
「今のお前なんざ、塵になって逃げなくたっても十分だなぁ!」
私のお祓い棒を食らったのにもかかわらず、萃香は私を殴った。
「…ぐっ…」
私はお祓い棒で何とか受け止めることはできた。だが、そのお祓い棒に亀裂が入った。
「っ!!?」
大量の霊力をお祓い棒につぎ込むと最大まで強化され、お祓い棒が淡く光りだす。
これが壊されたら、私は萃香に抵抗することができず、一方的に殺されてしまう。
ガンガンガンガンガン!!
私のお祓い棒と萃香の拳が合わさり、霊力同士のぶつかり合った際に発生する火花に似たものが散る。
一撃一撃の衝撃だけで私は今にも崩れ落ちそうだ。まだ戦いの本番は始まったばかりだというのにだ。
体に霊力を一瞬だけつぎ込んだ。
筋肉と骨、神経や内臓などが超強化され、私はその間にフルスピードでお祓い棒を振れるだけ振った。
ガガガガガガガガガガガガッ!!
今までにないほどの連撃に強化した筋肉や骨が悲鳴を上げた。
だが、効果は多小なりとあったようだ。
「があ゛あ゛あ゛っ!!?」
同じ場所に十数回もお祓い棒を叩きこめば、さすがの萃香でもダメージは入るだろう。
だが、恐るべきことに萃香に三分の一は受け止められた。これではだめだ。
もっと早く!もっと強く!!
周りの景色が急激に減速した。私の萃香の戦いを見てにげ出す人々のの動きが遅くなり、トンボが止まってしまうのではないかと思うほどだ。
「あああああああっ!!」
私は雄叫びを上げて萃香に何度もお祓い棒を振るう。
両手で数えきれないぐらいの回数を殴った時、私は吐血してその場に膝から崩れ落ちた。
倒れそうになった時、私の髪の毛を萃香が掴んだ。
「……こんな……ときに……!!」
萃香が自分の身長よりも低い位置にいる私を持ち上げた。
「決まってんだろ?…私でもできないような人間離れした動きをしてるんだ。体に負担がいかない方がおかしい」
萃香が言いながら私を殴った。
私は数百メートルも吹っ飛び、村の端でようやく転がり止まった。
あれを使うしかないのだろうか。だが、あのままでは今の萃香相手には使い物にならないだろう。
私はそう思いながら突っ込んできた萃香の攻撃を起き上がり、ジャンプしてかわした。
十数秒休んだおかげで多少ならまだ体は動く。
萃香が真下を通り抜けた影響で突風が吹き荒れる。
すぐさま後ろを向いて萃香をお祓い棒で殴るが、そんな攻撃がちっとも聞いていない萃香は、それを無視して私に数度拳を叩きこむ。
私は拳を何とかさばき、反撃する。
負担をかけすぎた筋肉の繊維が千切れ、骨がきしむ。
痛みが全身に広がり、私は顔をゆがめる。限界が近いのだろう。
私が萃香に後れを取り出した時、萃香が炎に包まれた。
「なっ…!?」
目の前にいきなり現れた業火。それがあたりにまき散らす熱にたまらず距離を取った。
「霊夢。喧嘩ってレベルじゃあなさそうだな」
太陽の光でキラキラと輝く銀の髪、赤いモンペのポケットに左手を突っ込んだ妹紅が右手に炎を揺らめかせながら言った。
私は妹紅の近くに降りた。
「…助かったわ…妹紅。……珍しいわねあんたが人里にいるなんて」
萃香がいた方向を警戒しながら私は言う。
「……この前、北の村が襲われたからこの村にも来るかもしれないってことで、慧音に手伝ってくれって言われてな」
妹紅は右手の炎を消して左手同様にポケットに突っ込んだ。
「…じゃあ、慧音はどうしたの?こんなことになってるなら…飛んできそうだけど」
「……それが、どこを探してもいないんだよな…」
「…いない…?」
慧音もやられたのだろうかという考えが頭をよぎった。
「…まあ、あいつなら大丈夫だろう。……それよりも、お前がここまでやられてるってことは…あいつは相当な相手ってことだよな……?手伝いを頼まれてて、村に問題が起きたんだ。手を貸すぞ」
妹紅が放った炎の熱で陽炎が揺らめく焼けた地面を萃香は立ち上がった。
「…っち…邪魔な野郎だ」
黒く炭化した萃香の退くが剥がれ落ちると、その下には既に新しい皮膚があってもう全快している。
「わお。…俺並の回復力だな」
妹紅が言いながらポケットに突っ込んだ右手を出して、炎をつけた。
「…油断しないで、いくらあんたが不老不死でも、今の萃香相手だったらただではすまないわ」
私が言うと、妹紅が私の姿を見てそのようだなと呟く。
「炎はできるだけ小さくして、萃香は炎の中も突っ込んでくるだろうから姿が見えるようにしておいて」
私は言いながらボロボロのお祓い棒を構えた。
「周りには人の気配はない。存分に戦えるな」
妹紅もいつでも攻撃できるように構える。
「…萃香との戦いが始まったようだな」
誰かがそう言った。
「……そうね」
誰かが答える。
「……いくら霊夢でも、疲弊した今は勝てないんじゃないですかね…」
時折響く破壊音を聞きながら誰かが言った。
萃香さんの思惑通りに事が進み、疲弊した霊夢さんは萃香さんに殺されるだろう。
「その後、私たちはどうなるんだろうな」
空さんが呟く。
「…………殺されるんじゃないですか?」
私は力のない声で呟いた。
「…冗談はやめろよ……協力して、作戦通りに行ったのに何で私たちが殺されるんだよ」
ぬえが寝ていた状態からガバッと起きて私に言った。
「………私たちからしたらそうですけど、萃香の考えは私たちからかけ離れています。……仲間を5000人以上も捕食してきたんですよ?並の神経じゃないですよ……そんな精神状態の人に私たちの意見が通じるとは思えませんよ……」
私が言うとほかの妖怪たちが青ざめ始めた。
「……人質に取られた人はどうなるんだ!?」
隣にいるにとりさんが言った。
「……わかりません。……私たちが殺される以上。あっちも無事では済まないでしょう……」
私は言いながら椛のことが思い浮かんだ。
「私たちは……いったい…何のために……」
誰かが呟いた。
「…。………っ」
布団を私は握りしめた。
「霊夢さん……勝ってくれませんかね……」
誰かが呟く。
都合がよすぎるなんてことはわかってる。でも、そう願わずにはいられない。
「……たぶん。無理ね」
レミリアさんが言った。
「……なぜですか?レミリアさん」
私が聞いた時、ひときわ大きな地響きが鳴り響いた。
「……私と戦った霊夢は、かなり疲弊してた……数十分休んだ程度で萃香に勝てるわけがないわ」
「……加勢……できないですかね……」
誰かが言った。
「無理ですよ。……この結界がある限り」
ガラスのようにも見える結界。この結界を張った張本人の霊夢さん以外は解くことができない。
「……私たちは…今は待つしかないわ」
レミリアが言った。
「りゃああああっ!!」
私のお祓い棒で萃香の足を払った。
バギッ!
お祓い棒が折れたのではないかと思う音が聞こえた気がする。だが、淡く光るお祓い棒はきちんとついている。
宙を舞った萃香の腹部にお祓い棒を叩きこむ。
だが、それと同時に萃香の拳も食らい、萃香とは逆方向の空中に投げ出された。
地面を転がる前に何とか空を飛び、勢いを殺して着地する。
斜め上方向から萃香が突っ込んでくる。
ガギィィィッ!!
私のお祓い棒と萃香の拳が合わさり、魔力の火花が散ってお祓い棒がきしんだ。
私の体が萃香のパンチの威力に負けて後ろに数メートル下がった。
萃香が唐突に地面を殴る。
「!?」
初めは意味が分からなかったその行為も、衝撃で地面の砂が舞い上がって視界を塞いだ。
「くうっ…!」
砂煙が舞い、視界を大きく遮る。
私はとっさに札を上に投げた。
「爆」
ドン!
上で爆発が起こり、爆風で砂煙が押し出されて砂煙を利用して近づいてきた萃香を見つけることができた。
「霊夢!」
妹紅がわきから火炎を萃香に浴びせた。だが、萃香が振り払うような行動をしたとき、いきなり妹紅の体が後ろに吹っ飛んだ。
何か物を投げたのだ。
「…なっ!」
驚きながらもなんとか火炎の中をほぼ無傷で通り抜けてきた萃香を私は迎撃した。
だが、萃香の攻撃力が予想のはるか上を行った。
「………そん……な…………!?」
私はその光景を呆然と見るしかできない。萃香の攻撃で私のお祓い棒は木っ端みじんに砕け散った。
思考が追い付かなかった。
だが、背中につららでも突っ込まれたような悪寒に、何とか行動をしようとすることはできた。
だが、遅かった。
私の肩を掴んだ萃香が私の脇腹に拳を叩きこんだ。
「か…!?…あがぁ……!?」
ドズッ!
もう一度、萃香に同じ場所に拳を叩きこまれた。
息ができない。吸うことも、吐き出すこともできない。
「…かはっ…!?」
だが、血を吐き出して倒れそうになり、何とか呼吸することができた。
まだ、戦える。
私はそう思いながら拳を握った。
ドゴッ!
私は萃香を殴った。しかし、萃香はそれを鼻で笑って私の頬を殴った。
後ろに倒れ、私は動けなくなる。
「さてと」
萃香が髪の毛を掴んで私を持ち上げた。
「……な……何を……!」
「……最後の仕上げだよ」
萃香が言った。
「私がお前に何をすると思う?」
「……しら…ないわよ…」
「…ほかの鬼と同様に食い殺すだけだ」
萃香が言いながら私に噛みつこうとしたとき、私は言った。
「……なんで…こんな異変を…起こしたの?」
「…ふん。時間稼ぎか?」
「こんな状況で…何を待つのよ……私は武器もない……」
私がお祓い棒の破片を手から放すとカラカラと音を立てて地面に木の破片が落ちた。
「いいだろう。メイドの土産に教えてやるよ。…………もう200年前だ。幻想郷の中に閉じ込められた日、私は今までにない屈辱を味わった。……今までどんな奴にも負けたことがなかった私は、ある女にかすり傷つけられずに敗北した」
「………それって…」
「……そう、初代博麗の巫女だ…。負けた時の屈辱は、今でも昨日のことのように思い出せる……私の異変の半分は博麗の巫女への復讐だ」
「……復讐………?そんなくだらないことで……!」
私は萃香を睨みつけた。
「お前にとってはくだらないことでも、私には重要なことだ」
「……そんなことのために……みんなを巻き込んだっていうの…!?」
「…そうだが、なんか文句あるか?…まあ、文句を言うなら初代博麗の巫女に言うんだな」
「……そう……やっぱりあんたは…頭のいかれたくそ野郎ね」
「ふん。その暴言は見逃してやる………すさまじい力を持つ博麗の巫女の血肉は、私の力をさらに強くしてくれるだろう」
萃香は私の言葉を軽く受け流して言いながら口を開けた。
「……くたばれ……萃香」
私は吐き捨てた。
「何とでも言え、どうせお前はここで死ぬんだ」
萃香が言いながら私の僧帽筋と言われる肩と首の間に位置する筋肉がある場所に噛みついた。
ギチッと萃香の歯が私の皮膚に食い込んだ。
たぶん明日も投稿すると思いますが、忙しいので明後日になるかもしれません。