東方鬼狂郷   作:albtraum

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第二十七話をお楽しみください。

誤字を気を付けたいのですが、時々見逃しているときがあるのでその時はすいません。


東方鬼狂郷 第二十七話 最後の戦いへ

 アリスがゆっくりとこちらを見た。

「…狂ってくるくせに頭が良い…一番手強い相手ね」

 私が言うと魔理沙がああ、と返事を返す。

 アリスは何も言わず、笑いながらこちらを見つめる。

 私がアリスに殴りかかろうとすると、無数のアリス人形と糸があらゆる方向から槍や剣で斬りかかって来た。

「くっ……!」

 お祓い棒を振ろうとしたとき、右手の手首に違和感。視線を右手に送ると、手首にアリスの糸が巻き付いている。

「っ!!」

 一足先に飛んできた糸が体のあちこちを切り裂いた。だが、手首に糸が巻き付いていたことでとっさに体を強化していたおかげで傷は浅い。

「霊夢!」

 魔理沙が私の方向に来る人形をすべて撃ち落とした。

 アリスが霊力を使って人形を量産し、数十体の人形を魔理沙にけしかけた。さすがにあの量の人形は無理だろう。

「逃げて魔理沙!!」

 私が言ったとき、首にアリスの糸が巻き付いた。

「うぐっ……!?」

 強化した体に糸が首を切断しない程度に首を絞めてくる。

 息ができない。

「……っ…!!」

 糸を取ろうとすると糸がさらに締まり、血がにじんだ。

「霊夢!動くなよ!」

 魔理沙がアリス人形に切り付けられながらも、私の周りに張り巡らせられていた糸をレーザーで焼き切った。

 私は魔理沙のレーザーが消え失せると同時に走り出し、アリスに向かう。

 札に霊力を込め、鎖のようにつなげて上から振り下ろした。鎖は切断されることもひっかがることもなく地面についた。

 先ほどのような罠はない。

 アリスの手を札の鎖で殴り、魔理沙を切り付ける人形たちの動きを止めさせた。

「はあっ!!」

 アリスを殴る。

 まともに受け流すこともせずにアリスは攻撃を食らった。

「ふふっ…!!」

 アリスの口が三日月のように裂け、アリスが右手の手のひらを振った。

「はがっ…!?」

 魔理沙が悲鳴を上げた。背中からアリス人形の剣で刺され、腕や足も続けて槍や鎌などで刺される。

「ま…魔理沙!!」

 私が叫んだ時、視界の端でアリスが動いた。

 私の首を糸で跳ね飛ばそうとしているのだろう。

「…!!」

 私は避けようとしたが間に合わない。糸が首に巻き付いてさっきよりも強い力で締め付けられた。

 首に大量の霊力をつぎ込み、何とか耐える。

 だがすぐに皮膚に糸が食い込み、霊力で治した首の傷と同じ場所に血が滲み始めた。

「ぐっ……!!」

 アリスが左手を握りしめるごとに首の糸が締め付ける。

「っ…!」

 アリスをお祓い棒で殴ろうとしたが、下手に動けば首を飛ばされる。だが、動かなければじわじわと殺されていく。ここは一か八か行くしかない。

 そう思った矢先、アリスのお腹や手をレーザーが貫いた。

「…あぐっ!?」

 アリスの両手の糸がレーザーで蒸発し、私は糸から解放された。

 アリスは霊力で糸を作ろうとするが、目の前にいる私がアリスをお祓い棒で殴る方が早い。

 霊力で体を強化、頭と顎を一瞬の間に強打。

 アリスは脳震盪でも起こしたのか、まともに立つことができずに地面に倒れた。

「…魔理沙…大丈夫!?」

 アリスが動かなくなったのを確認し、体中を剣などで刺された魔理沙に近づいた。

「あ…ああ……何とかな…」

 魔理沙が腕に刺さった鎌を痛みに耐えながらようやく引きずり出し、傷を霊力で治癒させた。

 鎌で最後の一つだったようだ。

 その治療の速さを見て、私は魔理沙が本当に普通の人間ではなくなったと改めて実感した。

「……魔理沙…助かったわ」

 私は言いながら地面に座り込んだ魔理沙のすぐそばにしゃがみ、さらに言った。

「でも、…あんな無茶は二度としないで」

 私は魔理沙の柔らかい頬に触れながら言った。

 もしアリス人形の剣が魔理沙の頭に刺さっていたらどうするんだ。いくら妖怪が少し混じったとはいえ、頭部に大きな損傷を受ければさすがに死んでしまう。

 そんなことになったら私は耐えられない。

「…すまなかった。…でも、とっさに体が動いてな……」

 魔理沙が言いながら頬に触れる私の手を掴んだ。暖かくすべすべとした触れていて心地よい魔理沙の手のひらが触れ、彼女の体温を感じる。

「………そうね……まだやる事が残ってる……萃香のところに行きましょう」

 私が言うと魔理沙が立ち上がって箒を拾い、萃香が向かった方向に向かおうとした。

 いつもならば、そのままむかっていただろう。しかし、何となくアリスの方向を向いた私は驚愕した。

 気絶させたと思っていたアリスが起きているのだ。

 アリスは指先を動かして人形を私に突撃させた。

 早い!

 目の前に迫ったいたアリス人形が横にズレ、剣先が頬をかすめた。

 珍しいこともある物だと思ったが、ちがう。アリス人形がズレていったと思っていたが、人形ではなく私がズレていたようだ。

 魔理沙が私の手を引っ張っていたのだ。

 魔理沙が私の手をさらに引っ張り、自分の方向に引き寄せてこちらに向かってくるアリスにレーザーを撃つ。

 レーザーがアリスの右腕を正確に撃ち抜く。

 だが、操っているのは左手らしく、他の人形まで私たちに向かってくる。

「霊夢!頼む!」

 魔理沙が私を呼んだ。私はお祓い棒を握りしめ、こちらに来た人形を殴り落す。

 数メートル先まで走ってきていたアリスの左手にレーザーを放った。

 その寸前に手首にアリスの糸がまきつけられ、引っ張られた。魔理沙の手のひらがアリスの顔に向けられるように。

「え……?」

 魔理沙が驚きアリスが嗤ったとき、とっさに撃つことをやめることができなかった魔理沙がアリスの顔を撃ち抜いた。

 アリスの左目を蒸発させ、レーザーは後頭部を簡単に貫通して後方にあった木にも穴をあけた。

 脳の一部を吹き飛ばされたアリスと人形たちは、文字通り糸の切れた人形のように地面に落ちた。

 アリスの頭部から流れた血が池を作り始める。

「……………そん……な………私が…殺……した…?」

 魔理沙が目を見開き、呟いた。魔理沙の呼吸が早くなり、過呼吸になりかける。

「魔理沙!……落ち着いて…!」

 アリスから目を放すことができなくなっている魔理沙の視線を切るように回り込み、抱きしめた。

「大丈夫……落ち着いて…」

「……でも、わたしは…アリスを……!」

 魔理沙は震えた手で私の背中に手をまわした。

「……確か、…アリスは…私が魔理沙に使った人形を持ってた……だから、アリスは生きてるわ」

「……ほ……本当か…?」

 魔理沙が目尻に涙を浮かべて私に言った。

「ええ。…だから、大丈夫……たぶんこれも萃香の作戦の一つなんじゃないかしら」

 私が言うと、魔理沙は時間をかけて深呼吸をして息を整えた。

「……すまない……ありがとう…」

 魔理沙が私から離れた。

「……」

 アリスは助かっているとは言え、人を殺したのだ。精神的に落ち込まないはずがない。

「……大丈夫そう?」

「ああ……ここでへばるわけにはいかない」

 魔理沙が倒れているアリスを見た後、箒にまたがり低空飛行した。

 

 かすかに爆発音のようなものが耳に入った気がした。

 上から落ちてきた木の破片が頭に当たり、私は正気に戻った。うつむいてた視線の先には白髪の少女が眠っている。

「妖夢……」

 彼女の名を呼ぶが少女は起きることはない。

 また、涙が出た。枯れたと思っていた涙はまた頬を濡らして顎から妖夢の頬に数滴落ちた。

 大好きだった。なのに、自分の可愛さゆえに妖夢を自分で手にかけた。死んではいない。だが、生きているとも言い難い状態にしてしまった。

「…私は……もう…生きていたくないよ……!」

 現実逃避だ。どうせ死ぬ度胸もないくせに目の前の出来事から目を背けている。

 こんな私を見たら妖夢はきっと私を蔑むだろう。

 こんな時、彼女は私になんて言うだろうか。

 虚ろな目で彼女のことを見下ろしてそう思ったとき、

「またそうやって逃げるの?……何もせずに…」

 妖夢がゆっくりと喋った。

「よう…む…?」

 私が呟いた時、妖夢はさっきと同じ体勢で目を閉じたまま眠っていた。

 幻覚だろうか。それとも現実だろうか。

 私には判断できなかった。でも、このまま何もしなかったら、私のために犠牲になった妖夢にもうしわけが立たない。

「ちょっとの間、ここで待ってて」

 私は立ち上がり、その場に優しく妖夢を寝かせて出口を探した。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』」

 私はスペルカードを切り裂き、赤色に燃える槍を作り出して萃香に向けて投擲した。

 萃香はよけもせずにそれを殴り、爆発させる。

「……」

 すでに残っているのは私と咲夜ぐらいだ。他にも何人か見えるが、時間を稼ぐには心もとない。

「咲夜!」

 私が叫ぶと咲夜が現れ、グングニルの影響で炎で埋め尽くされている爆心地の中央で立ち上がった萃香にスペルカードを使った。

「幻符『殺人ドール』」

 周りに投げた咲夜のナイフが淡く光り、萃香に向かって飛んで突き刺さった。

「それで終わりか?…その程度かぁ!?」

 咲夜が魔力で作り出したナイフが消える。

 今度は萃香がスペルかどーを握りつぶした。

「翠符『戸隠山投げ』」

 萃香が手を上にあげると、その手のひらに磁石に引きつけられる鉄のように岩が吸い寄せられて合わさり、巨大な岩となる。

 萃香がジャンプしてこちらに向けて岩を投げた。

 私が投げたスピア・ザ・グングニルよりも数倍速い。

「…!」

 だが、咲夜がギリギリで時を止めた。

 時を止めているときに人には触ることができないが、一人だけなら時を止めた時に一緒に行動することができる。

 私は咲夜と移動しながら萃香に向けてグングニルをいくつか投擲した。

 萃香に当たる直前でグングニルの動きが止まる。

 時が止まっている最中は生物に危害を加えることはできない。

「咲夜…あと何回時を止めることはできそう?」

 私が咲夜に尋ねると、咲夜はすぐに答えた。

「…できて三回ですが……スペルカードを使えば……よくて二回程度でしょう…」

「…この状況では…時間稼ぎも…無理ね」

「はい、五分も続くことはないと思われます」

 咲夜が冷静に状況を分析して言った。

「解除して」

 私が言うと止まった時がゆっくりと動き出す。

 萃香の側面に投げたグングニルが動き出し、萃香に当たって爆発を起こした。

「…私は…時間稼ぎも…できなさそうですね……」

 咲夜が後ろに倒れた。

「咲夜!?」

 咲夜の腹部から血が流れだし、メイド服が血で赤くなってゆく。

 時が元に戻ってグングニルが当たるまでの間にどうやって反撃をしたんだ。

「いったい何を……!?」

 私が咲夜から視線を萃香の方向に向けた時、萃香は目の前に迫っていた。

「なっ……!?」

「どうやって?…私はたいしたことなんてしてない……石を投げただけだ」

 萃香の拳が私にめり込み、腹を貫通した。

「…が……かはっ……!?」

 吐血し、倒れそうになった私から萃香が手を引き抜いた。

「…紅魔館の当主もこんなもんだよな」

 萃香がそう言って笑い、私の顔に蹴りを打ち込んだ。

「がっ!?」

 焼けた地面に背中を打ち付けて転がった。

「レミリアさん!!」

 萃香から離れた隙に、文が私と咲夜の方向に飛んできた。

 萃香の近くにいれば私と咲夜の命が危ないため、すぐに戦線から離れさせようとしているのだ。

 文が私の手を掴み、咲夜の方にも行こうとしたとき、萃香がこちらに来ていないか確認するために萃香を見た。萃香の何かがおかしい。片腕がないように見える。

 そう思った直後、私の頬に血が飛び散った。

「な…に……これ……?」

 文の方向を見ると、腹部から萃香の腕が肉を突き破って外に飛び出しているのだ。

「…レミリアさん……すいません……」

 文が言うとバランスが崩れ、地面に転がり落ちた。

 文の腹部から生えた腕が塵となって消え、萃香の右腕に戻った。

「…かはっ………!!」

 文が吐血し、腹を押さえてうずくまる。

 まだ戦闘を続行できる者はいる。だが、今すぐに援護できる体勢の奴はほとんどいない。全員何かしらの怪我をしているのだ。

「……霊夢に寝返ったことを後悔しろ」

 萃香が私を掴み持ち上げた。

「……お嬢…様……!!」

 咲夜が傷を押さえながらこちらに来ようとしている。

「…いや、後悔をするのはお前だ」

「あ?」

 萃香が言ったとき、スペルカードを切り裂いた。

「運命『ミゼラブルフェイト』」

「へぇ。まだ抵抗する力があったか…いいぞ来いよ」

 萃香が私を放し、一定の距離を取った。

 ピンク色で成人男性の握りこぶし台の大きさの鎖つながり、形成をはじめた。その先には巨大な槍が付いた。

 槍の数はおよそ四十。

 霊夢の時よりも数はやや少ないが、やれるだけやるしかない。

 腹の傷を応急処置として出血を押さえる程度に魔力で治した。

「咲夜……あんたは休んでなさい」

 私は咲夜の方向を見ながら言った。

 時を止める能力に魔力を使い過ぎて、動けなくなっている。

 ピンク色に光る鎖がジャラジャラと本物の鎖のような金属音を鳴らしながら、先端の槍を全て萃香の方向に向けた。

「塵となれる私にそんなのが通用するとでも?」

 萃香が言った。その時、上から自由落下運動に基づき、回転しながら加速して落ちてきた銀のナイフが萃香のツノに当たり、カチンと甲高い音を出した。

「なっ…!?」

 予想外の攻撃に萃香が咲夜を睨みつける。

「あら、私を見てていいんですか…?…止まってると死にますよ」

 咲夜がそう言ったとき、私は作りだした約半分の槍を萃香に向けて突き刺した。

「そう焦るな、遊びは始まったばかりだ」

 そう言った萃香は一時的に塵になることできなくなったというのに不敵に笑う。

 

 一段と強い破砕音が森中に反響しながら響き渡る。

「霊夢!」

 少し時間がかかったが、気持ちを切り替えた魔理沙が私に緊張した様子で言った。

「ええ!近いわ!」

 答えた時、前方が嫌に明るくなった。

 レミリアのスピア・ザ・グングニルの爆発の影響だろう。木々が燃えている。だが、この光ではない。

 その間からわずかに見えるピンク色に輝く光、見覚えがある。レミリアのミゼラブルフェイトの槍や鎖の光だ。

 燃える木々をよけて飛んでいくと、円形に焼け焦げた広場のような場所についた。

 そこの中央にレミリアと萃香はいた。

 私が思っていた通り、レミリアはミゼラブルフェイトを使っていた。

 しかし、鎖や槍は霊力の供給を立たれて形を維持できず、崩壊して塵となって消えていく。

 これが意味するのは、レミリアの戦闘不能だ。

「一足遅かったようだな……霊夢に魔理沙」

 そう言って萃香は蔑むように笑った。




明日も投稿すると思います。

駄文ですが楽しんでいただければ嬉しいです。
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