東方鬼狂郷   作:albtraum

29 / 33
第二十八話をお楽しみください。

題名の夢想天生ですが、本家とは全く違いますのでご了承ください。

今回の話はいろいろと違うところもありますので宜しくお願い致します。


東方鬼狂郷 第二十八話 夢想天生

「一足遅かったじゃないか……霊夢に魔理沙」

 そう言う萃香に私は言った。

「…そうでもないわ……」

 私は前に出て萃香に向かう。

「へぇ…じゃあなんか秘策があるわけか」

 萃香が笑い、掴んでいたレミリアを投げ捨てて、萃香に向かう私に正面から歩いてくる。

「…魔理沙は下がってて」

 私は横を歩く魔理沙に言った。

「なんでだよ…二人でやった方がいいに決まってるんだぜ……それとも私じゃあ火力不足だって言いたいのか?」

 魔理沙が私に食って掛かる。

「違うわ。別にあんたが邪魔とかそういうのじゃないわ……この場にいる全員…何もできなくなるからよ」

「……?どういうことだ?」

「…見てればわかるわ」

 私がそう言うと、魔理沙が了解と後ろに引き下がった。

「…じゃあ、見せてもらおうじゃねぇか。まあ、やれるもんならなぁ!」

 萃香がミッシングパープルパワーのスペルカードを取り出した。

 それと同時に私もスペルカードを取り出す。

「…な……!?」

 それを見た萃香が目を見開き、震える手を私に向けた。

「なんで……お前がそれを……!?」

 萃香が戦いを始めてから初めて見せる明らかな怯え。

 立っている者も座っている者も何事だと私たちを見つめている。

「『夢想天生』」

 私はカードを握りつぶし、ゆっくりとそれの名前を言った。

「なんで……博麗家の汚点と言われるほどのお前が……初代博麗の巫女しか扱うことのできなかった…夢想天生を…!?」

「……知らないわよ」

 八つの陰陽玉が私の腰のあたりの高さを円を描くように周りを浮遊した。

「……発動」

 私がそう唱えるのを引き金に、八つの陰陽玉が輝いて上昇しながら一つにまとまった。

 全ての陰陽玉が合わさり、一度収縮したと思ったら光が一気に拡散し、すさまじい光をまき散らした。

 その日、その瞬間から約十秒間だけ幻想郷中のありとあらゆるところに働く霊力が停止し、個人の能力すら使えなくなった。

 つまり、魔理沙は空を飛ぶこともできなければ魔法を使うこともできず、ただの人間になるということだ。それは萃香も例外ではない。

「……」

 私以外、霊力の流れを感じない。さっきまで自信満々だった萃香もこの十秒間ではただの人間並みの力しか出すことはできない。

「…抵抗できないやつを一方的に倒すのは気が乗らない。……でも、あんたは別よ」

 一秒経過。

 私は大きく一歩を踏み出した。

「く……来るなぁ!!」

 萃香が後ずさり、私から逃げ出した。

 二秒経過。

 私はまばたきをする間に萃香に追いついた。

「逃げられるとでも?」

 私はお祓い棒を振るい、萃香をぶん殴る。

「ぎゃあああっ!!?」

 萃香が絶叫し、転げまわった。

 そりゃあそうだ。霊力を使ってガードしていたものができずに全て痛みとして全身を駆け巡っているのだから。

 三秒経過。

 私は転げまわる萃香との距離を歩いて詰めた。

 四秒経過。

「くそっ!!…なんでだよ!あと一歩で私の異変は成功するはずだったのに!!」

 私は叫ぶ萃香に問答無用でお祓い棒を叩きこんだ。

 五秒経過。

「あああぁぁぁぁぁっ!!?」

 萃香が頭から血を流し、口内を切ったのか口の中も血で赤い。

 六秒経過。

「畜生!!…なんで勇儀は来ないんだよ…!」

 萃香が叫んだ時、頭部を再度私が殴った。

「ぐがっ…!?」

 すでに萃香の顔は血まみれで、体もボロボロだ。人間程度の耐久力しかない状態で私の攻撃を食らってまだ意識があるだけでもすごい。

 七秒経過。

「あんたの異変ももう終わりよ」

 萃香の顔をまた殴った。

「ぎゃっ!?」

 萃香が転がりながら木に背中を打ち付ける。

「…わかった…私の負けだ……!」

 萃香がお祓い棒を握りしめて依然として自分に向かってくる私に懇願した。

「だから……もう止めてくれ……!!」

 鬼というプライドを捨てて、萃香は私に言った。

 八秒経過。

「あんたは他の殺した人、捕まえて牢に入れた人に……止めてくれ…助けてくれって言われて、その人たちの頼みを聞いた?」

「……!!」

 私でも寒気するような絶対零度の殺気が萃香に向けられ、さっきを向けられた萃香は怯え、震えて目に涙を潤ませた。

「…魔理沙に……聖たちに……鈴仙に…!」

 天狗の屋敷にいた鈴仙と抱きかかえられた妖夢の姿が脳裏に浮かんだ。

 私がお祓い棒を握りしめ、霊力を流すと光を放ち始める。

 今まで勝手なふるまいをし、いざとなったら自分だけ助かろうとするその姿勢に殺す気はなかった私に怒りが芽生え、殺さないなんて考えは既に無くなっていた。

「自分がしてこなかったくせに……あんたがしてもらえると思うなぁ!!」

 私は自分でもビックリするぐらい、大きな声が出た。

 お祓い棒を振りかぶった。

 九秒経過。

「駄目だ、霊夢」

 振りかぶった私の手を掴み、魔理沙の静かな声が響く。

「…放して魔理沙」

 私の攻撃を止めた魔理沙に怒りの矛先を向けていた。

「駄目だ」

「こいつを殺さなきゃ…異変は終わらない」

 私が萃香を殺すのを認めないと、魔理沙が私を握りしめる手が主張してくる。

「…こいつは殺す価値もない。だから、封印して永遠に閉じ込めよう………恨みでこいつを殺してお前が萃香と同等になるなんて、私が許さない」

 魔理沙が言った。

 私は目を閉じて、炎のように燃え盛っていた気持ちを落ち着かせる。

「……そうね…」

 私はいながらお祓い棒を下した。

 十秒経過。

 夢想天生が解けた。

「あんたは私が封印する」

 私が言ったとき、萃香は笑いだした。

「私を殺す唯一のチャンスを捨てたな…!!…甘っちょろいこと言いやがって!反吐が出るよ馬鹿が!!」

 萃香が私に向かって殴りかかってくる。

「くっ…!」

「知ってんぜ…その技を使うと魔力がほとんどなくなるなんてことぐらいな!」

 萃香の拳が私に当たる直前、魔理沙が私の目の前に割り込んでレーザーを放った。

 マスタースパークの五分の一程度しか太さはないが、萃香の小さな体を包み込む。

「…それがどうしたぁ!!」

 勢いはかなり弱まるが、それでも萃香のパンチの威力は衰えない。

 魔理沙の額に拳があたり、皮膚が裂けて血が流れた。

 魔理沙が私を後ろに下がらせ、前方の萃香に向けてミニ八卦炉を構えた。

「それを撃つ前に殺してやるよ!!」

 萃香が走り出した。

 間に合わない。魔理沙はようやくミニ八卦炉を強化したところだ。

「死ね!」

 十メートルなんて距離、萃香からしたら一瞬だろう。

 まずい。私が魔理沙の前に出ようとしたとき、萃香の両足の膝に何かが当たり、血がまき散らされた。

 遅れて何かが超高速で通り過ぎた甲高い音がする。

 私はそれに見覚えがあった。

「……鈴仙」

 弾丸の形をした弾幕が続けて萃香の肩を撃ち抜いた。

 それにより、萃香の動きがかなり遅くなる。

 しかし、周りに鈴仙の姿がないことから遠距離射撃をしているのだろう。

「撃って魔理沙!!」

 私は魔理沙に言ったが、魔理沙はマスタースパークを撃つことはなかった。

 萃香が塵となって消えたからだ。

 別の場所に萃香が再生成された。

「いい判断だ。だが、私には当てられん」

 萃香が鈴仙が射撃できない死角に行きながら言った。

「確かに」

 魔理沙は言いながらミニ八卦炉の上にある光の弾を掴んだ。

 じゅぅぅぅっ!

 魔理沙の手から肉が焼ける臭いと音がし始める。

「魔理沙!?…何をして…!」

 私が言ったとき、魔理沙はこう言った。

「…テレポート」

 魔理沙が唱えると、掴んでいた光の球が消えた。

「テレポート?それでどうするつもりだ?それは言った場所にしか行くことができず、現在あるすべての魔力を使うんだよなぁ?…無駄なことを」

 そう言った萃香はこちらに走り出そうとした。

「そうでもないぜ」

「へぇ。じゃあどこに送ったんだ?」

 萃香が言ったとき、魔理沙が萃香を指さした。

「お前にあげたんだぜ」

 そう言った魔理沙は私を萃香から離れるように地面のくぼみに押し倒し、呟く。

「爆発しろ」

 そのころになってようやく、自分の体内に違和感を感じた萃香が目を見開いた。

 萃香を中心に魔理沙の閃光弾の比ではないほどの光がまき散らされ、大爆発を起こした。

 霊夢は知らないことだが魔理沙が妖怪になった時、萃香に腕を突き刺した。あれにより、萃香の体内に言ったことがあると判定され、テレポートで送ることができたのだ。

 魔理沙が私の目を塞ぎ、失明しないようにしてくれた。

 轟音が響き、熱い突風にあおられるが何とか耐えきり、光と風が収まったのを見計らい、魔理沙と私は立ち上がる。

 萃香がいた辺りの地面は一部が蒸発して、そこの周りの地面が融解していた。マグマのようになっている地面が十メートルにもなる。

 巻き込まれてた人はいないらしく、皆は萃香を探している。

「…あれでくたばったと思うか?」

 魔理沙が私に言った。

「…ないわね」

「…だよなぁ」

 魔理沙は霊力が切れて座り込んでしまった。

 逃げ遅れたらしい萃香が全身が焼け焦げて真っ黒になり、右腕と肩が丸ごと蒸発している。

「ぐ……そ……っ…!!」

 焼けているがツノなどがなければ萃香だと分からなかったかもしれない。

 炭化した人型の形をした人物がこちらに向かって歩いてくる。

 魔理沙は霊力切れ、私も何かができるほど霊力は残っていない。

「くそが…!……殺してやる……!!」

 動くことが困難な私たちに萃香が地面を張って近づいてきた。

「…まだやる気なの…!?」

 私は体を酷使して萃香にお祓い棒を向けた。

 萃香が私たちの近くにいることに気が付いた幽香たちがこちらに向かってくるのが見える。だが、萃香の方が早い。

 萃香の体が着々と治っていき、動きが早くなっていく。

「魔力切れを起こした人間なんぞ…ひねりつぶしてやる!」

「…魔力が無くなった私たちは弱い。だが、魔力以外にもエネルギーは存在するぜ」

 魔理沙が言い、ミニ八卦炉を覚悟を決めた表情で構えた。

 強化は既に済ませてあり、あとは撃つだけだ。

「なっ!?」

 私と萃香は同時に声を漏らした。

「『マスタースパーク』」

 萃香が巨大な光線に巻き込まれた。

 重度の火傷などを負った萃香がマスタースパークの影響で焼け焦げた地面に倒れた。

「お……お前……それをやる意味が分かっているのか…!?」

 萃香が叫んだ。

「魔理沙…いったい何を…!?」

 私は萃香の言葉が気になり、魔理沙に詰め寄った。

 霊力がなく、回復するために何かを飲んだり食べたりした様子はない。無いものをどこから持ってきたのか。答えはただ一つ。

「あんた……まさか!!」

「ああ……肉体エネルギーだ」

 肉体エネルギー。これだけ聞けば何かしらの別のエネルギーだとうかがえる。しかし、それにはもう一つの呼び方がある。それは寿命だ。

 肉体エネルギーは少量でも膨大な力を持っている。だが、肉体エネルギーは攻撃したりするための物ではないため、私たちがいつも扱う霊力に変換する必要がある。

 しかし、肉体エネルギーから霊力への変換は効率がかなり悪く、魔理沙がマスパ―スパークを撃つのにどれだけの寿命を消費したか計り知れない。

「止めて魔理沙!萃香を倒す前に魔理沙が死んじゃうじゃない!」

「萃香も消費してる。押し切るなら今しかない……!私は少し妖怪が混じって寿命が延びてるから、多少なら消費しても大丈夫だ!」

 魔理沙が言い、ミニ八卦炉を萃香に向けて構えた。

「止めてって言ってんでしょ!?」

 私が掴むが魔理沙が静かに言った。

「…何があったか知らんが、勇儀が来てない…あいつが来たらこんな状況の私たちなんて確実に負ける。……せめて萃香だけでも倒さないとだめだ……萃香は私がやる。霊夢は後のことを頼む」

 魔理沙が言い、私は唇から血が出るほど歯をかみしめる。

「『マスタースパーク』」

 魔理沙が再びマスタースパークを放つが、萃香は骨まで炭化した体を修復することもできずに霊力で強化して転がって避けた。

 魔理沙がマスパ―スパークを放つ寸前、萃香が体を修復させる時間を稼ぐために避けようとしていたが、横から何かが飛んできた。

 鈴仙の弾丸ではない。もっと大きくて遅い。

 ピンク色の髪をなびかせながら歌仙が萃香に掌底突きを食らわせた。

 萃香の霊力の流れが乱され、動けなくなった。

 歌仙が飛びのくと、萃香の両足を弓と弾丸が貫き、左肩を銀ナイフが貫いた。

「く…そ……!」

 萃香が膝を地面についた時、魔理沙が三度マスタースパークを放った。




たぶん明日も投稿すると思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。