東方鬼狂郷   作:albtraum

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二十九話で最終話とさせていただきますが、番外編も投稿するのでそちらもよろしくお願いします。




東方鬼狂郷 第二十九話(終) 封印

 魔理沙のマスタースパークが射線上の物を全て吹き飛ばし、その熱で地面を融解させた。

 魔理沙が薙ぎ払った後にはそれでも死ぬこともなく萃香が立っている。だが、さすがの萃香もついに力尽き、崩れ落ちた。

 あたりを静寂が包み込む。倒れたのは萃香の演技ではないかと。しかし、萃香はいつまでたっても立ち上がろうとせず、さとりが警戒を解いていて、本当に気を失っているのが分かった。

 異変の首謀者を倒した。つまり異変は、解決した。

 しかし、ここまで大規模で人間からも死傷者が出てる。被害にあって死んでしまった妖怪たちも少なくはないだろう。これで本当に勝利と言えるのだろうか。

 私がそう思ったとき、

「……勝った……。私たちは勝ったんだぁぁ!!」

 魔理沙が叫ぶと周りから歓声が上がった。

「……いえ、まだよ…勇儀が来てない」

「…でも、萃香を倒したんですし、大丈夫なんじゃあないですか?」

 早苗が取り合えず周りを警戒しながら言った。

「…萃香を勇儀に連れていかれれば、また異変を起こすわ」

 私が言い、周りを警戒したとき、村の方向から妖精や力の弱い妖怪たちが飛んでくるのが見えた。

 戦う気なのだろうかと思ったが、先頭を飛んでいるルーミアが勇儀を抱えているため、違うと分かった。

「…霊夢。勇儀を連れてきたのだ」

 ルーミアはそう言いながら勇儀を萃香の横に投げた。

「……よく倒せたわね」

「みんなで力を合わせて何とかなった…って感じなのだ」

 大人っぽくなっているルーミアを見て魔理沙が言った。

「…だいぶ雰囲気も違うけど、何かあったのか?」

「…変わったというよりも、戻ったと言った方がいいわね……まあ、この記憶もこの二人を封印したら消えるけどね」

 ルーミアが言ったとき、ルーミアの周りを飛んでいる白色に赤い文字が書かれた札に気が付いた。

 博麗の巫女が使うもので、今私が使っているのとあまり変わらないが、かなり古いものだ。

 ルーミアの髪の毛を見ると、いつも結んであった赤いリボンだと思っていたものがない。それが札だったということだ。過去に博麗の巫女と何かがあったのだろう。

「…そう……とりあえず、封印したいけど…どこに封印すればいいかしら……できれば行き止まりの洞窟みたいな場所がいいんだけど」

 ここまで人数が多いと、一人一人封印するというのは骨が折れるし時間もかかる。だから、何か大きな洞窟のようなものがあれば助かる。それを丸ごと封印すれば中の鬼たちは出てくることができない。

 私が聞くと、皆は特にいい場所を知ってはいないらしく、考え込む。

「アタイならいい場所を知ってるよ!」

 大きくなったルーミアよりも背の低いチルノが授業で挙手するように手を上げて言った。

「どんな場所?」

「山の方向にあって、入り口は狭いんだけど、中はすごく広くてしばらく行くと行き止まりなんだ」

「…聞いた感じ、そこがよさそうね」

 私が言うと異論はないらしく、うなづいた。

 怪我をして永琳に治療をしてもらっている人たち以外は手伝ってもらうことにした。

 私は萃香を持ち、ルーミアの能力でピクリとも動かない勇儀を魔理沙が持ち、その近くをルーミアが飛んだ。

 萃香が負けたことにより、戦意を喪失した数十体の鬼が投降し、チルノが言っていた洞窟に入った。

 勇儀と萃香も中に入れ、洞窟を封印して閉じようとしたとき、目を覚ました萃香がこちらを見た。

「……あんたの負けよ…萃香」

「…確かに、今はお前たちの勝ちだ」

 萃香が座り込んだ体勢で言った。

「私が生きているうちに次はないわ………それより、私を殺すのはこの異変の過程であって本当の目的ではないって言ってたわよね?……本当の目的はなに?」

「…ああ、それか……月の都の住人を皆殺しにすることだよ」

「…月の住人を?……何のために?」

「…昔、いろいろとあってな」

 萃香の傷が治り始め、そろそろ封印しないと萃香に逃げられてしまうだろう。

「そう、じゃあ……あんたを封印するわ」

 私は封印の準備に取り掛かった。

「…お前、魔力がほとんどないのにどうやって封印するんだ?」

 魔理沙が私のそばに来て言った。気づかれてしまったか。

「……あんたと同じ方法よ」

 私が言うと魔理沙が目を見開き、私に掴みかかって来た。

「駄目だ霊夢!……おまえと私じゃあ訳が違うんだぞ!?」

「だとしても、今封印しておかないと……時間が立てば萃香も霊力が回復するのは同じ。するしないとかの選択肢は元から無い……やらないといけないの」

 私は寿命を消費して今までにないぐらいの強力な札を作り出そうとした。十年二十年じゃ絶対に壊れないような物。

「で……でも…」

「あんたが寿命を削ってまで作ったこのチャンスを……私はふいにする気はないわ」

 私はかたくなに意思を変えない。

「諦めなさい魔理沙、一度決めたら霊夢は考えを変えないですよ」

 永琳に傷を治してもらった咲夜が魔理沙に言った。

「……」

 魔理沙が悔しそうに無言で下がった。

「…………」

 私は目を閉じて集中し、寿命を削って札の作成に取り掛かった。

 百年単位で封印する強力な結界をはる札は、並の集中力では作れない。私は玉の汗を流して作る。集中しすぎて周りの音が聞こえなくなるぐらい集中した。

「悪いな文」

 封印する寸前に萃香が文に言った。

「……え…?」

「勢いあまって殺しちまったよ」

 萃香が笑いながら言った。

「…?……………まさか…!!?」

 文が私に待ってくださいと言うが、札を作るために集中していた私の耳には届かず、私は洞窟を丸ごと封印した。

 雷のようなものが洞窟の入り口に落ち、倒壊させて入り口をふさいだ。

 入口があった場所には札が貼られており、これで萃香たちが出てくることはなくなった。

「……ふう」

 一息ついた私は周りの様子が変なことに気が付いた。

「……?」

 文が顔を真っ青にして、天狗の屋敷の方向に向かって飛び去る。

「…文?……いったいどうしたの?」

 私は近くにいた魔理沙に話しかけた。

「…わからん……だが、萃香が勢いあまって殺しちまった……そう言ったんだ……これって…」

 魔理沙が不安そうな表情をしていった。

「…天狗の屋敷に向かいましょう」

 私たちは既に小さくなっている文を追った。

 

 文よりも数分遅れて天狗の屋敷に入った。

「…手分けして探して」

 私が言うと何組かに分かれて文と椛を探した。

 乾いた血がこびりつく廊下を走り、地下の牢屋に向かって走る。みんなこの場所にとらわれていた、だからこの場所にいるかもしれないと思ったからだ。

 階段の手前の壁側に置かれてある机の上にあるマッチを取り、岩の階段を駆け下りた。

 真っ暗闇で何も見えなくなるが、壁に立てかけてある松明にマッチで火をつけ、さらにその奥にあるもう一本の立てかけてある松明にも火をつけ、それをとって後ろをついてくる魔理沙に渡した。

 進みながら牢屋を一つ一つ確認していくが、誰も入っていない。

 私がフランと戦う前に来た際に投げて、燃え尽きた松明が転がっている。

 気が付かなかったが、さらに右にも曲がれるようになっていて、牢屋が続いている。

「まだ、こんなにあったのね」

 私が言いながら進むと、いくつか目の牢屋の前方右側から生物の気配がした。

 牢屋の前に来て松明の炎で中を照らすと、中に入っているのは十数人の天狗だ。

 牢屋のカギを持っていないため、扉を少し回復した霊力を使い、体を強化して蹴り開けて中に入った。

「…霊夢さん……」

 近くに座っていた天狗が立ち上がりながら呟く。

「……異変は終わらせたわ。だから出ても大丈夫よ……それと、誰か椛のことを見てない?」

「……椛?…いつかはわかりませんが……連れていかれました」

 この場所にいたのなら仕方がないだろう。この場所では時間の流れがわからないだろうからだ。

「……どこに連れていかれたかわかるか?」

 牢屋の外の魔理沙が言い、天狗たちが牢屋から出始めた。

「わかりません……でも、個室に連れていくとかなんとか言ってましたよ」

「それはどこだ?」

 魔理沙が言いながら隣の河童たちが閉じ込められている扉の鍵を焼き切った。

「……天狗の屋敷に個室なんて限られてますから……二階の奥の……大天狗様がいた部屋の曲がった先にあるところだと思います」

「わかったわ。…ありがとう」

 私は言い、天狗たちを連れて魔理沙と今来た道を戻り、この場所から出た。

 岩の階段を駆け上がってそのまま二階へと行き、私と魔理沙は廊下を走る。

「……」

 大天狗の部屋を曲がって少し進んだ先に、一つだけ開いているドアがあった。

 わずかに漂う新鮮な血の匂いがする。嫌な予感に私の鼓動が段々と早くなっていく。

 ドアが開いている部屋をのぞき込むと、そこは狭い部屋で、そこの中央付近に文が膝を床について座り込んでいた。その視線の先には、壁にもたれるようにして全身血まみれの椛が倒れている。

「…椛……椛ぃ……」

 文が泣きながら椛の名前を呼び、すがり寄る。

 私の目から見ても椛が死んでいるのは一目瞭然だ。目や肌に生気を感じることができない。肌は青白く、目はよどんでいる。

 それにこの出血量。霊力で生産したとしても短期間の間に血を流しすぎれば死んでしまう。

 椛の血は部屋中にとびっていて、赤くない部分を探す方が難しい。

「…椛……!」

 その光景を見て魔理沙が顔を青くした。

 ぐったりとした椛を文が抱きしめて嗚咽を漏らした。

 私と魔理沙は文になんて言っていいかわからず、立ち尽くすことしかできなかった。

 

 椛はそのあと文の手により運び出された。

 私たちは掴まっている人がほかにもいるかもしれないため、別の個室を探した。

 ほかの個室からはパチュリーや小悪魔、火焔猫燐などが助け出された。

 私は少し魔力が回復したため、出力を絞った細いレーザーで鍵を壊して個室を一つ一つ霊夢と確認した。

「魔理沙、そっちには誰かいた?」

 霊夢が廊下の向かい側の個室を調べながら私に言った。

「あと二つ調べたら終わりなんだぜ」

 私はそう言ってレーザーで鍵を焼き切り、ドアを開けた。

 今までと変わらない部屋だ、だが部屋の隅に落ちている物に私は目を奪われた。

「なんで……これが……?」

 私が呟いた時、霊夢が私が開いたドアをのぞき込んだらしく、息をのんだ。

 落ちていたのはアリスの身代わり人形で、霊夢が宴会の時に貰ったものと同じものだ。見た感じ人形に損傷などは見当たらず、未使用だというのがわかる。

 今までの物やこの最新式もそうだが、死んだ際にポケットなどの中に入れて置けば、人形が身代わりになってくれた時、入れて置いた場所から無くなる。

 それなのにこの場所にあるということは、私がアリスの頭を撃ち抜いた時にアリスは身代わり人形を持っていなかったということだ。つまりそれが意味するのは、アリスの死だ。

「…嘘…だろ……?」

 私は呼吸するのも忘れて座り込んでいた。座り込むというよりも力が抜けて立っていられなかったと言った方が近いかもしれない。

「魔理沙!!」

 霊夢が私の名前を呼んだ気がする。

 だが、霊夢の声は私には届かない。どうしようもなくなった私は頭を掻きむしり、血が出るのも構わず爪でひっかいた。

 もしかしたら絶叫していたかもしれない。いや、していただろう。視界が歪み、私は涙を流しているのだと遅れて脳が理解した。

 アリスを殺す直前のアリスの嗤う顔が脳裏にべったりと張り付き、余計に私を狂わせた。

 アリスはお前のせいだ。お前が早く助けず、萃香のいいなりになんかなってるから私が死んだんだと批判しているようだった。

 その通りだろう。

 私の血が付く手を誰かが引きはがし、潰れてしまうのではない方ほどに力強く私の体を抱きしめた。

「…魔理沙……!!」

 霊夢の声が耳元でした。

「お願いだから……もう……やめて…」

 霊夢の優しい声が壊れかけていた私の正気をなんとか保たせてくれた。

「でも……私は……」

 力のない声で私が言うと、霊夢が言った。

「……私だってこうなるなんて思ってなかった。……こんなの…誰がやっても結果は変わらないと思うわ…」

 彼女は泣いているようだった。まるで人形のようにされるがままだった私は、霊夢を泣かせてすまないという代わりにを力いっぱい抱きしめていた。

「……………霊夢…………私は………」

 

 私は、助け出そうとしていた友人を、霊夢に次いで付き合いの長かった大切な友人を、自らの手で、

 

 

 

 殺した。

 

 




最後は速足気味になってしまいました。
番外編その①を明日投稿すると思います。
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