原作とは一切関係がありません。原作無視の無理な設定やキャラ崩壊を起こしています。
見方によれば原作の名を借りた何かです。
駄文です。
それでも良い方は番外編その②をお楽しみください。
黒い服装を着た方たちが行列を作っている。
これは母の葬式だ。
幻想郷中の人間、それと妖怪までもが集まって、母の遺体が焼却炉に入るのを見守っている。
「……」
私は涙が流れるのをこらえて母の入った棺桶が焼却炉に入るのを見つめた。
たくさんの人が泣いている。
それほど母は偉大な人だったのだ。
私の周りには家族はいない、もう一人の母もすでにこの世にいない。
博麗の巫女だった私の母が亡くなる一週間前に死んだ。魔法使いで、集中しないと分からないぐらいだが、妖怪が混じっていた人だった。
肉親が短い間に二人ともいなくなってしまった。という現実に涙が目からこぼれそうになり、私は上を向いた。
焼かれた母の骨を瓶に入れ、もう一人の母が眠る墓のすぐ横に埋められた。
母の遺言なのだ。
あらゆる行事が終了し、こうして母のお葬式は終わった。
「……」
それが一週間前。
時々母たちと友人だった妖怪の方や人間の方などが来てくれるおかげで、何とかやっていけている。
だが、今日は私の方からある人を呼んだ。
「…すいません。遅れてしまって」
黒い翼を広げて減速しながら縁側に座る私の前に、文さんが降りてくる。
「いえ。お仕事中なのにこちらこそ申し訳ないです」
私が頭を下げると文が慌てて言った。
「大丈夫ですよ!明日のネタは既に掴んでありますので!」
私が文に座ってくださいと伝えると、文さんは私の隣に腰かけた。
「…それより、どうしたんですか?」
文さんが早速本題に入った。
「母たちのことなんですけど、文さんなら何か知っているんじゃないかと思いまして……」
急須のお茶を湯飲み椀に分けて、私は文さんに渡しながら言った。
「…あー。知っていないわけではないです」
文さんがバツが悪そうに言った。
「…教えて、いただけませんか?」
「……聞いていて、あまり気分の良くない部分もありますよ…?」
文さんが手帳を開きながら言った。
「…私は母たちのことを何も知りません……なので、少しでも知りたいんです……」
私が文さんの目を見つめながら言うと彼女は静かにうなずいた。
「わかりました」
現在、私が見つめているのは天井だ。時刻は十時を回っているのに床に転がって天井を見つめているのは、私が朝が弱いからではない。
ではなぜか。家族に暴力を振るわれているからだ。
その理由は様々だ。店の経営が少し落ちた。苛立つ客がいる。楽しいから。なんとなく。だが、だいたいがストレス解消で私に暴力を振るった。
それらの暴力は、親、祖父母、兄弟、使用人までもに容赦なく行われた。
殴る蹴るは日常茶飯事。数日間、ご飯を与えられなかったり焼けた鉄の棒を押し付けられたり、水に沈められたりナイフで斬られたこともあった。
なぜここまでエスカレートしたか、私はなぜかほかの兄弟たちよりも頑丈で傷の治りが早かった。だからこそ、私への虐待はエスカレートしていったのだ。
しかし、私は抵抗をしない。いや、できない。抵抗すれば逆上した彼らに何をされるかわからない。
私は殴られ、蹴られ。ぐったりと横たわった体を起こして洗面台へ歩いて行き、胃から上がって来た血を吐き出した。
いくら体が頑丈でも、小さな子供に容赦なく腹を蹴ればそりゃあこんなふうにもなる。
吐き出された血を水道の蛇口から水を出して洗い流し、口も水を含んでうがいをしてきれいにした。
もう、こんな拷問のような日々が何年続いただろうか。
私は顔を上げると鏡に映る濁った眼をした私と目が合った。
「……」
一度だけなぜこんなことをするのかと、殴る父に私は聞いたことがあった。
その時父はこう言った。
「お前は髪の色が違うからだよ」
父の言う通り、私の髪や目の色は黄色でほかの兄弟たちや親とは全く違うのだ。
それに、顔も兄弟たちとも両親とも似ていない。自分の子じゃないから暴力を振るう。そういうことなのだろうか。
そして、それを聞いて私は絶望した。私が何かを下とかならば謝罪をすることができる。しかし、生まれた時点でこんな状態なのだ、私は何を謝ればいいんだ。
ギリッ
と食いしばった歯から擦れる音がした。
どこにも向けようのない溶岩のように煮えたぎる怒りに、私はそっと蓋をするように押し殺した。
「…大丈夫かい?」
「…!!」
横からした男性の声に私はビクリと体を震わせる。
私には暴力を振るってこない唯一の使用人だ。
だが、私は彼のことを無視した。この家にいる連中はだれも信用できない。優しい言葉をかけてきて私を信用させようとしても、そうはいかない。
私が廊下に出てしばらく歩くと、さっき私を殴った父が待ち構えていた。
「…!」
ああ、またか。
私はとっさにうつむいて歯を食いしばった。頬をぶん殴られて私は床に倒れた。
「あぐっ!?」
その衝撃に頭がくらくらする。星がちらつき、私は気絶した。
「っち」
たった一撃で気絶した私に父は舌打ちをする、意識が遠ざかる私を父は何度も蹴った。
なんだろうか。暖かい。
ふわふわで柔らかい布団に私は包まれていた。初めての感覚でものすごく気持ちよくて、ぐっすりと眠っていた。
「……」
目を覚まして起き上がると、そこは倉庫などではなくとある部屋にいた。
「…ようやく起きたようだね」
その声に私は振り返った。洗面台で私が血を吐いていた時、声をかけてきた人だ。
確か、名前は霖之助と呼ばれていたはずだ。
私は時計を見ると四時間近く時間がたっているのが分かった。
「……」
私はすぐに起き上がって一応、霖之助に頭を下げてお礼を言い、部屋を出ようとした。
「…どこに行くんだい?……戻ったらまた同じ目に遭うよ?」
どうせ戻らなくちゃならないんだから、いつもどってもかわらない。早いか遅いかという違いしかない。
私は黙って部屋から出た。霖之助は何も言わずに私が部屋を出るのを見届けた。
それからも、虐待は毎日続く。
霧雨家は様々な道具などを販売しており、大きな店だ。それにより変な噂が立てばこの狭い幻想郷だ。噂は瞬く間に広がり売り上げに大きく影響するため、父親は服だけはよいものを私に着せた。
自分の年齢はわからないが、ある程度の情報を集めれば自分の年齢を割り出すことなど簡単だった。誕生日までは無理だが。
「……」
みんなが寝静まったころに台所に行き、夕飯のあまりものを食べ、冷たくなったお風呂につかり、急いで着替えた。
こんな生活を既に八年近くしている。
いつかはやめてくれるんじゃないかという希望は米粒程度しかない。相手は私に暴力を振るうのが日常になっているからだ。
口は禍の元、そういう言葉があるが、文字通り身をもって体験した。だから、私はもう何年も喋っていない。悲鳴で口から出る物がなく、自分の話す声などもう忘れてしまった。
「……」
自分が知っている限り、私は笑ったことがない。
鏡を見て表情を作ろうとしたが、表情筋をどうやって動かしたらいいのかわからないのだ。
無表情が映し出される鏡から目を放して、私は茶の間の隅に向かった。
私は壁に背を預け、膝を抱えて座った。
眠るときはいつもこうだ。眠りが浅く、誰かの足音で目覚めることができる。。
「……」
私はうつむき、目を閉じた。
朝は決まって使用人たちや父親の足音や話し声で目が覚める。
「……」
目覚めた私は使用人たちに見つからないようにこっそりと茶の間からでた。
十二時ごろまで押し入れなどに隠れていようと思ったが、兄に見つかり、私は腹を蹴られた。
「…っ…!!」
私はうずくまって重たい痛みを耐える。
兄はすぐに歩いて行ってしまい、私だけが取り残された。
私は移動した。さっさと逃げたい。
だが、父親に名を呼ばれた。また殴られるのかと思ったが、今日は仕事を手伝えということらしい。
博麗家の神社ではなく、町のはずれにある本家の方に荷物を届けるということだ。
私に大量の荷物を持たせ、自分は手ぶらで店を後にした。
博麗家は昔から周りと交流を持たないため、こういう時にこび売ってつながりを持とうという考えなのだろう。
町中を私の歩幅など関係なく父は進み、私は半ば走るように父を追う。遅れれば家に帰った時に何をされるかわからない。私は汗を流しながら走り、父を追った。
町のはずれにある広い屋敷にようやくついた。長い石階段を上り、一息つくと先代の博麗の巫女と私と同じぐらいの年の女の子が出てきた。
父と先代の博麗の巫女が話をし始める。内容を聞くとどうやらこの女の子が次の博麗の巫女ということらしい。
博麗の巫女は代々、生まれたころから秀でた才能を持っていると聞く。
こいつは親に可愛がられて育ち、巫女となれば時々起こる異変を簡単に解決し、何の苦労もせずに過ごしていくのだろう。
彼女を見て私はなんだか苛立っていて、私は気が付くと彼女のことを睨みつけていた。
私は、お前が大嫌いだ。
バシッと手の甲を馬を調教するための鞭で叩かれた。私の皮膚は簡単に裂けて血が流れる。
手が痺れてしまって、私は持っていた札を落としてしまった。
「いづっ!」
私の手の甲にまた鞭が振り下ろされた。
「その程度で悲鳴を上げるな!!」
叔母がまた私の手に鞭を落とした。
霊力で治るとはいえ、十歳にもなっていない子供には酷すぎる仕打ちだ。
鋭く引き裂かれるような痛みに耐えきれず、私は目から涙をボロボロと流し、何度もたたかれて血まみれになっている手を胸に抱いた。
「本当、あんたはぐずね…!」
叔母は容赦なく私を拳骨で殴る。
「痛い……痛いです……おばあ様……」
「弱音を吐くな…!!」
今度は頬をぶたれた。私は耐え切ることができずに地面に倒れてしまう。
いくら我慢しようとしても、痛いものは痛い。そんなのどうしようもないじゃないか。
私はそう思いながら落とした札を拾いながら立ち上がった。
「もう一度」
叔母が言い、私は何回目かわからないが三十メートルは離れている的に向けて霊力を込めた札を投げた。
十メートルはまっすぐ飛んでいく、だがすぐに進む推進力をなくして札はひらひらと地面に落ちた。
「っ!!」
怒りをあらわにした叔母は私の頬を拳で殴った。私はまた地面に倒れることとなった。
頬がじんじんと痛み、さらに涙が流れる。
「霊夢!」
いつまでも立ち上がらない私に叔母が胸倉を掴み、持ち上げて平手打ちを食らわせてくる。
「ひぐっ……!!」
鋭い音が響き、頬に痛みが走る。
叔母がまた私をぶとうと手をあげた時、私は目をギュッと閉じた。
「ひっ……!」
だが、いつまでたっても私が殴られることはない。
「……?」
おそるおそる目を開けると、叔母の手を誰かが止めている。
「…紫…」
初代博麗の巫女のころから、交流のあるスキマ妖怪だ。
「…その辺にしてあげなさいよ……まだ十歳にもなっていない子供よ」
「……一度休憩する」
叔母がそう言うと乱暴に私から手を放して家に歩いて行く。
「ひぐ……ふえぇ…」
私はついに声を出して泣いてしまった。
「ほらほら、泣かないの」
紫はそう言いながら私の頭を優しくなでてくれた。
「紫ぃ……」
私は紫に泣きつく。
「紫、その子をあまり甘やかさないで」
叔母がそう言い残した。
「はいはい」
紫が言いながら近くの家の縁側に私を連れて行き、そこに私を座らせた。
「大丈夫?」
紫がそう言いながらハンカチで私の涙をぬぐった。
「…う……うん」
私はしゃっくりをしながらも、泣くのをやめた。
「……よし、霊夢は強いわね」
紫は笑っていい、私の頭をなでる。しかし、私は顔を横に振った。
「?」
「私は強くなんかない……。おばあ様以上に私がわかってる……原理はわかっているのにできないから…。…だから、今のうちに少しでも上達するように頑張るね」
私はそう言って、縁側から降りて札を投げる練習を始めた。
頭のいい子だ。紫はそう思った。
外の世界や博麗家でなければ、天才的に才能がある子だろう。しかし、博麗家では落第点以下であり、平凡すぎる。紫はそう思いながら霊夢を見守った。
月日は少し流れて練習力が異常となり、オーバーワークにより血反吐を吐いたことも一度や二度ではなくなったころ、体術の修行が始まりその修業は激しさを増していく、既に霊力を扱えるとはいえ幼い霊夢が耐えられるような修行の仕方や量を超えている。
「お前には才能がない」
叔母が何千回、いや何万回かもしれないが同じ言葉を私に吐いた。
地面にうずくまる私の顔の下には、たった今吐き出したばかりの鮮血が池を作っている。
「…頭はいい、だがそんなのクソの役にも立ちやしない。…才能で劣るのならば、努力で補え…おまえはまだまだ努力が足りない」
厳しい言葉が私に突き刺さる。
「今日の修行はここまでとする」
叔母が言い、家に歩いて行く。
ギリッと私は歯を食いしばり、地面についている手で土をむしり取った。
私は掴んだ土を握りしめて怒りを抑え込んだ。
才能がない。努力が足りない。それは事実なのだから。
弱いのならば修行をして強くなるしかない。当然だろう。
私は持っているお祓い棒に似たレプリカの武器に霊力を流した。
水滴が水面に落ちた時の波紋のように、霊力を体に巡らせる。
「やぁっ!」
私は目標の案山子に武器を振るう。
霊力の循環効率が悪い、打ちが遅い、弱い。
鞭で叩かれた手の甲から滲んでいた血は既に止まっていて、酸化を初めて茶色くなってきている。
丸太で作られた案山子を殴るごとに手が痺れた。
武器の強化が十分でなかったのだろう。棒が簡単に折れてしまった。
「……っ!」
どうしてもできない。何度やっても叔母たちのようにうまくいかない。でも、できないのなら何度でもやるしかない。
倉庫に新しい棒を取りに行き、壊れた棒を焼却炉に投げ込んだ。
これで何百本目だろうか。
新しい棒を持って倉庫を出た。
ゆっくりと着実に強化できる時間は伸びていたり、強化の質が良くなっている。だが、叔母や母などには程遠い。
武器を握り、丸太で作成された案山子に向き直る。
さっきと同様に霊力で筋肉と武器を強化して、振りかぶって案山子を殴った。
木と木がぶつかる甲高い音がする。木の表面が始めたころよりも削れていて、すでに数百回じゃきかないぐらい武器を振っているとうかがえた。
「……っ!」
私は何度も振るう。だんだんと木の棒を振るう手に力がこもりはじめ、耐久性の高くない棒は大きくゆがんだ木の棒は半ばから裂けて、木の繊維がむき出しとなる。
「…はあ」
私はため息をつき、新しい木の棒を余分に取りに行くことにした。
それからも修行は続いた。雨の日も風の日も雪の日も、私は外で修業をし続けた。
霊力操作のへたくそな私の手は既に古い傷から、真新しい傷で埋め尽くされている。すでに私の周りに叔母はいない。叔母は早々に私のことを見限り、必要最低限の修行しかしなくなった。
叔母たちの会話を聞いたが、歴代の博麗の巫女は皆、修行はせいぜい一か月程度しかしないそうだ。たったそれだけの期間で実戦に出られるぐらいの実力を身に着け、あとは実戦で学ぶのだ。
丸太の案山子は私のころからではなく、今までもしてきたらしいが本とんどの巫女は修行を初めて一週間でそれを吹き飛ばせるぐらいにはなるそうだ。
一年たつが、私はまだ倒せずにいた。武器で殴りすぎて削れて耐久性の無い丸太を折ったがそれでは話にならない。
私は武器を握りしめ、丸太を打つ。
私が叩くごとに丸太から木片が飛び散る。
「はぁ…はぁ……」
息が上がり、苦しくなるが私は関係なく棒を振り続ける。
流石に始めたころのようにしょっちゅう棒を壊すことはなくなった。一撃も重くなり、今では丸太がきしむぐらいになっていた。
私は一度攻撃する手を休め、体を最大まで強化した。
丸太を一撃で折ることはできなさそうだ。でも一度でダメなら、二度振ればいい、簡単なことだ。
私は一瞬のうちに二度丸太を叩いた。ほぼ同時に二回分の攻撃を受けた丸太が今までにないぐらいに歪み、きしんだ。
わたしはゆっくりだが確実に進歩しているという事実に少しだけうれしくなった。そろそろ札の修行をするため、私は体術の修行を繰り上げることにした。
「うぐっ……!?」
私は地面に膝をついた。
だが、この幼い体にはまだまだ負担が大きすぎるようで、体中の筋肉が断裂してしまったのではないかと思う激痛にうずくまる。
でも、弱いなら弱いなりにこうやって工夫しなければ、天才に追いつくことなどできやしない。
単純に手数を増やしたくて考えた攻撃方法だけれども、うまく使えば相手を圧倒することもできるかもしれない。
私は地面についた時に膝についた土を払い、立ち上がる。
「……」
私は絶対に強くなって見せる。武器を握りしめる手に力が入った。
朝食の際に叔母に言われた。
今日は母が一日だけこちらに戻ってくるそうだ。二年以上あっていない母に会えると私の心は舞い上がっていた。
朝食を食べ終え、私は母が早く帰ってこないかと門の入り口が見える縁側に座って待った。
しばらく待つと、私と似た服装を着た博麗の巫女の母がタオルのようなものを抱きかかえて石の階段を上ってくるのが見えた。私は母に駆け寄った。
「お母さま!!」
久しぶりに会う母は、最後にあった日から変わらずに元気そうだ。
母に抱き着こうとしたとき、母は静かで透き通るような声ではっきりと言った。
「私に近寄らないで」
「………え……?」
私は驚きのあまり、立ち止まってしまった。
「…な……何を言っているんですか……?じょ…冗談…ですよね…?……お母さま……」
私は震えた声で縋り付くように母に呟いた。
「…冗談なわけがないでしょう?…あんたがグズなおかげで、私まで悪者扱いよ。あんたとなんて二度とかかわりたくないわ…だから私のために近寄らないで」
優しかった母は眉一つ動かさずにきっぱりと言い放ち、目の前にいた私をわきに突き飛ばした。
私は足から力が抜け、地面に尻もちをついた。
「…そん…な……お母…さま…!」
私は母に向けて手を伸ばすが、短い私の手は母に触れることさえできずに伸びきってしまう。
「霊夢。あんたなんか産むんじゃなかったわ…」
通り過ぎるとき、母は私にぼそりと呟く。
結局私の手は母に触れず、母は叔母の方向に歩いて行く。
叔母にだけでなく、心の支え手していた私と直接血のつながった肉親にまで見捨てられた。
「…あ……あぁ……」
呆然と見開く私の目には涙は浮かんでこなかった。悲しくて悲しくて仕方がなくて、胸が張り裂けそうになるぐらい苦しいのに、私の目には涙一つ浮かんでこない。
冗談であってほしかった。しかし、私の頭はそれが冗談ではなく本気だと分かっていた。感ではない。理論的な推理の元だ。
涙の代わりに、私からこみあげていたのは笑いだった。
乾いた笑い声が響き渡る。だが、母や叔母は私から離れていき耳には入っていない。もしくは無視しているのだろう。
「…かわっちゃったわね……博麗家も……」
ふいに誰かが私のことを優しく抱きしめてくれた。
「……霊夢」
記憶の中にいる母のように優しく誰かが語り掛けてくれる。
私が顔を上げると、紫が悲しそうな顔でこちらを見つめていた。
「…ごめんなさい……私のせいで……」
紫がしゃがんで私を抱擁した。
「なんで…紫が謝るの?」
私は感情の無い声で呟く。
「…二百年も過ごしてて、博麗家の巫女が才能だけを見るようになっていたのを修正しなかった、私のせい……」
才能がなければこうやって私のような扱いをする集団にしてしまった自分のせいだと言いたいらしい。
「………紫は悪くないよ……私が……才能がないのがいけないんだよ……」
私は抱きしめる紫に体を預けて呟く。
「…霊夢……あなたは何も悪くない……!」
紫が私のことを痛いぐらいに抱きしめている。
「……どうして、紫は泣いているの…?」
私の頬に落ちた紫の涙を感じながら、紫のことを見上げた。
「…悲しいからよ……こんなの……ひどすぎるわよ…」
私は壊れてしまったのだろうか。紫の言葉にさっきまで悲しかったはずの感情はどこに行ってしまったのか、今は全くそれがない。
「…私は大丈夫よ、紫」
私は知らず知らずのうちに、さっきの悲しいという感情を心の奥底に閉じ込めていたのだ。
「…大丈夫なわけがないでしょう……!?」
私の両肩を掴み、紫が揺さぶるようにしてどなった。
「……確かにびっくりしたけど、お母さまはたぶん才能がない私を叱るために言ったんだよね?……博麗の巫女はそんなに甘くはないって、だから修行をしないといけない。だから私は修行してくるね」
呆然としている紫の手から私は離れ、いつものように庭の端に向かった。
紫はこの頃の私をまるで仮面をつけているように感情がなかったと語っていた。そうでもしなければ、私は壊れてしまっていたのだろう。壊れてしまわぬように頭の中の安全装置が作動したのだ。
この時、霊夢は知らないことだが霊夢の前、先代の博麗の巫女が修行を始めた直後に先々代の巫女から話を聞き、もう一人の子供を作った。その子を博麗の巫女にした方がいいと話はまとまっていた。
月日は流れ、私は十六歳になった。
妹も八歳になり、修行が始まる。私よりも物覚えがよく、才能のある妹はよく可愛がられていたのを見かけた。
私はその間、ひたすら武器を振り、札を投げ、霊力での強化をする修行を地道に続けた。
私と一緒に修業が行われることもあり、その時の私への風当たりはやはり強い。
「お姉さま」
「……?…どうしたの」
庭の端で汗を流して修行をする私に妹が話しかけてきた。
「私はあなたをお姉さまだと思いたくありませんわ…まだこんな修行をしているお姉さまごときに博麗の巫女の素質はありませんわ。だから、私が博麗の巫女になる」
妹が私に蔑むようなそんな視線を私に向けた。
「そお、じゃあ…私がダメだったときにはよろしくね」
私が言うと妹はふんと鼻を鳴らして歩いて行った。
マグマのように熱い何かが体の奥底で煮えたぎるような感覚がしたと思ったが、すぐにいつも通りに戻り、私は修行を続けた。
そんなある日、珍しく叔母から話しかけられる。
「霊夢、今日はお客さんが来るからあんたは荷物を運びなさい」
叔母が私にはれ物に触るように言った。
「…はい」
私は修行に使っていた棒を縁側に置き、叔母の隣に並んで門に向かった。
入り口付近に立ち、少しすると男性と私ぐらいの年齢の荷物をたくさん抱えた女の子が石の階段を上って来た。
男性の親の方は黒い髪なのに、女の子の方は金髪でしかも地毛らしくてとても印象的だ。瞳は大きく、まるで人形のように白い肌、とてもかわいらしい女の子だった。
しかし、彼女の第一印象は最悪だった。あって早々、彼女は私を睨みつけてきたのだ。
なぜ睨まれたか訳が分からず、私は困惑すると同時に苛立ちを感じていた。
叔母と女の子の父親の話す内容から、彼女が霧雨家の人間であることはわかった。その家のことは知っている。道具などを扱う店を開いており、とても裕福な家系である。
苛立ちを感じた理由はこの子は今まで何の苦労もせずに、家族にも可愛がられて育ってきて、そしてこれからも何の苦労もせずに実家の手伝いをし、結婚などをして幸せに生きていくのだろう。そう思うと私はなんだか今までにない気持ちが心の中にできていた。
私はそこまで考えて気が付いた。
私は、あんたが大嫌いだ。
番外編その② 下もしくは中を明日か明後日に投稿すると思います。