原作とは関係がありません。こんなことがあったらいいなと言った感じなので、完璧に原作に忠実でないとダメな方は見ることをお勧めしません。
それでも良い方は第三十二話 番外編その② 下 をお楽しみください。
あんたが大嫌いだ。そう思っていた私は気が付くと私も彼女のことを睨みつけていた。
彼女もこの時同じことを考えていたとは夢にも思わないが、二人がこの感情が嫉妬であるのに気が付くのはもっと先のことだろう。
「今回、初めてということだったので、いろいろと持って来てみました」
女の子の親が言いながら、女の子が置いた荷物から様々な道具などを出した。
「じゃあ、せっかくですしいろいろと買ってみましょうかね。…霊夢、しばらくかかりそうだからその子と一緒に遊んでなさい」
叔母が私に言った。
「……はい」
私と女の子の様子に微塵も気が付いていない叔母が言った。
私はげんなりする。よりにもよってこの子と一緒にいないといけないなんて。
しかし、叔母の機嫌を損ねると面倒なため、私は嬉しそうにふるまい、女の子を連れだした。
どこに行けばよくて何をすればいいのだろうか、今までしてこなかったんだ何をしていいかわからない。私はとりあえず修行をしているところに連れていくことにした。
そこは、入り口から家を挟んで反対側にあるため、もし喧嘩しても親に見られないし聞こえない、女の子にも好都合だろう。
「……ねぇ……あんたの名前は…?」
私は前に進みながら聞いた。
「…………」
しかし、彼女は答えない。
「……あんたの名前を聞いてるのよ」
私は苛立ちを隠しもせずに女の子に言った。
「……………」
周りを見ていた女の子が力のこもっていない目をこちらに向けるが、話し出す気配はない。
もしかして、病気などで話せないのだろうか。だったら悪いことをしたかもしれない。私はそう思い、訪ねてみることにした。話すことができなくてもハイかイイエでうなづくことぐらいはできるだろう。
「…もしかして、喋れないの?」
「………別に、話せないわけじゃない」
思っていた以上に透き通った声に私は驚くが、それよりも苛立ちの方が大きかった。
「じゃあ、なんでしゃべらないのよ!」
気を使った私がばかみたいじゃないか。そう思ったとき、私の顔を見た彼女はささやくように言った。
「……まるで仮面でもつけるみたいだな」
「……え…?」
そんなこと言われたこともないため、私は驚いて聞き返していた。
「…………。それと…あって数分のお前に説明する理由はあるか?」
まったく力のこもっていない声で彼女は言った。
むかつく、全てに関して苛立つ。
だが、いつまでもあんただけだと呼びづらい。
「あっそ…。でもいつまでもあんたとかじゃあ呼びづらい、名前だけ教えて」
「……」
女の子はまたダンマリでカチンとくるが、私は待った。
「…聞いてるの…!?」
段々と腹が立ってきて、私は怒鳴っていた。
なんで私は赤の他人にこんなに苛立っているのだろう。いつもはない感情が出てきて私は困惑する。
「………魔理沙……だ」
私に聞こえるか聞こえないぐらいの声で彼女は言った。
「…私は霊夢、…まあ…よろしく」
私はそう言いながら縁側に座る。
「………」
魔理沙と名乗った女の子が私から離れた場所に腰を下ろす。
「「……」」
気まずい時間が流れる。
喧嘩腰になりすぎたのではないだろうか。冷静になった私はそう考えるが、どうでもいいことだろう。どうせこいつともこれっきりだ。
周りとの関係を持たないように徹底している叔母がまた道具屋を呼ぶとは思えない。
そう思っていたが、叔母はこの道具屋を気に入ってしまったらしく、月に一度の間隔で魔理沙は親に連れられてやってきた。
私と魔理沙はそのたびに喧嘩をしていた。
争う理由はくだらないものばかりだ。ちょっとした些細なことで喧嘩が始まる。私から、魔理沙から。
喧嘩は家だけにとどまらなかった。私がお遣いを頼まれた時に村に降りた際、たまたま会うことがあり、そのたびに周りのことなど蚊帳の外で大喧嘩した。
そのうち何度目かわからないが、また魔理沙がやって来た。
いつものように私たちは時間がかかるということで、別のところで待たされる。
またくだらない喧嘩が始まった。その前にどういう会話があったか喧嘩の理由がくだらなすぎて覚えていないが、私はこう言った。
「あんたは気楽でいいわよね」
皮肉めいたこの言葉に魔理沙は反応した。
「………おまえなんかに何がわかる……おまえなんかに…!!」
いつも無表情の魔理沙が怒りをあらわにして私を殴った。
「!?」
いきなりのことに反応が遅れ、私は頬を殴られて倒れる。
「……それは、…こっちのセリフよ!」
私は霊力を込めたい拳で魔理沙を殴っていた。
普通の人間、それも私と変わらない女の子が耐えられるはずがない。
後ろに倒れた魔理沙を見て、私は顔を青くした。
しかし、彼女はすぐに立ち上がると私に向き直り、私を殴った。
「黙れ!」
霊夢は知らないことだが、魔理沙が霊夢のパンチを耐えることができたのは、皮肉にも家族から日ごろから受けている虐待のおかげともいえるだろう。
私は後ろに尻もちをついた。
「…気楽でいいだと…?…苦労とは無縁のお前が私に言えたことか!!」
私が苦労していない?
その言葉に、私は怒りが爆発した。
「私が苦労してないだって…!!?」
魔理沙の足を払い、倒れた魔理沙に馬乗りになる。
「裕福な家系に生まれて、今まで親に可愛がられて、苦労の苦の字も知らないような奴が…ふざけたことを!!」
私は地面に倒れる魔理沙を殴った。
ここまで感情をむき出しにして自分の中にずいぶんとたまっていた鬱憤を吐き出すように私は叫ぶ、感情のコントロールができない。
魔理沙の抵抗がなくなるが、私は怒りで魔理沙を殴ること以外考えられなくなり、殴り続ける。
噴火する火山のように、とどめなく触れだす溶岩のように、私の怒りは収まらない。
そんな時、魔理沙の柔らかく、温かい手が私の頬に触れた。
「……?」
魔理沙が上半身を持ち上げ、こちらに手を伸ばしている。何がしたいのかよくわからない。
「……霊夢も、つらかったんだよな……?」
魔理沙は憐れむとはまた違う、とても悲しそうな泣きそうな顔をしている。
その表情を見た時、体の奥底で燃え盛っていた怒りの炎が一瞬で鎮火していた。
殴り、殴られてはだけた魔理沙の服の間から、いくつもの痣や傷が見えた。今殴られてできたものではない。
そして、霊夢もという言葉と魔理沙の体にある痣に私は察し、目を見開いていた。
振り下ろそうとしたてをゆっくりと下した。私はいつの間にか泣いていた。
母から見放されたあの日から心の奥底で押し殺してきた感情は、爆弾のようにはじけて私を埋め尽くす。
私と魔理沙は泣いていた。だが、この家の裏の庭でその隅ともなれば声は誰にも聞こえないだろう。
数年分のため込んできた感情を吐き出すように、私たちは泣き続けた。
しばらくしてようやく涙が収まり、私と魔理沙の晴れた目が合い、今まで仲が悪かったのがウソのように笑いあった。
「…ど……どうしたっていうの…二人とも」
いつの間にか私たちの近くにいた紫が困惑した様子で言った。
そうして私と魔理沙は知りあい、今まで彼女がどんな扱いを受けてきたのかを知り、魔理沙も私のことを知った。
魔理沙がなぜしゃべらなくなったのかも、ようやく私は知った。
「…霊夢は、次の博麗の巫女になるんだよな?」
縁側の私の隣に座った魔理沙が言う。
「……いや、なるはずだったって感じかしら」
私は上を見上げながら言った。
「はずだったってどういうことだ?」
魔理沙は意外にも饒舌で、今までとのギャップに少し驚く。
「……妹がいてね、私には才能がないから妹を博麗の巫女にするんだって」
私の話を聞いた魔理沙はそれを聞いて怒り出した。
「何だよそれ!霊夢を道具みたいに扱いやがって!気に入らない!」
魔理沙が手をぶんぶんと振り、怒っているのだと表す。
「ありがとう……でも、私に才能がないのは本当だから仕方がないよ」
私がため息交じりに言うと、魔理沙が縁側から降りて私の方向を見ながら言った。
「はじめっから諦めるな!霊夢!…もっと頑張って見返してやろうぜ!」
魔理沙が元気よく言う。
「…もしダメだったら…?」
「そしたら、私が慰めてやるぜ!」
魔理沙の言葉に自然と笑みがこぼれ、私は言った。
「…うん、もうすこしだけ頑張ってみる」
私が言うと今まで黙ってみていた紫が目を輝かせながら言った。
「よく言ったわ!…そんな霊夢にはいいことを教えてあげるわ」
紫が不敵な笑みを浮かべてる。
それから私は毎日修行をつづけた。
妹が実戦に出れる実力となり、修行を終えても私は修行をし続ける。
妹や叔母たちが馬鹿にしてきても私はやめない、くじけそうになっても魔理沙や紫が支えてくれた。
そのころに魔理沙の親と魔理沙はなぜ髪の色が違うのかと聞くと、魔理沙は知らないと言っていたのが気になり、紫に聞いてみた。
紫は少し驚いたような顔をして次に魔理沙が来た時に魔理沙にいろいろな質問をした。
その日を境に家の事情もあるため毎日ではないが、時々家を抜け出して私の一緒に修業を始めることになった。
「…まさか魔理沙が霊力を扱える人だとは思わなかったわね」
紫は縁側に座り、一緒に修業する私たちを眺めながら言う。
「ずっと昔から傷の治りが早かったり、体が丈夫だったのは…その霊力っていうのが原因だったわけか?」
魔理沙が手先に霊力を集中させる修行をしながら言った。始めたばかりであるため、まだ掌が淡く光るぐらいしか霊力を集められていない。
「私も早く霊夢達みたいに空を飛びたいな」
魔理沙が目を輝かせながら言う。
「練習すれば時期に飛べるようになるわ」
紫は私たちを楽しそうに眺めながら言った。
「…魔理沙は…霊力を扱えるようになって…何かなりたいものでもあるの?」
私は隣で意味なく力みながら霊力を集中させようとする魔理沙に語り掛ける。
「…なりたいもの?」
「ええ…霊力が操れるのが分かったけど……普通に生きていく上では必要ないでしょう?だから、なりたいものがあるんじゃないかなって思ってね」
私が言うと魔理沙はうーんと考えてから言った。
「……そうだなぁ……もしこの力を使いこなせるようになったら……魔法使いになりたいな……系統が違うか…?」
「いや…なれるわよ?基本的に同じものだから」
紫が私に代わりに答えた。
「…もしかして、魔法使いが使う魔力ってやつもこれと同じなのか?」
「そうよ」
紫が日傘をさしながら言った。深い説明をする気はないようなので、私がすることにした。
「…霊力については、言語みたいなものよ」
「…?言語…?」
「そう、例えば…私たちはこれのことを木と呼ぶでしょう?」
庭のかどで花を咲かせている木を指さしながら私が言うと、魔理沙はうんとうなずいた。
「でも、外国人は別の呼び方で呼ぶでしょう?それと同じで、別の場所で作られた言葉だから、霊力をさすものなのに違うってわけ」
私が言うと魔理沙はうなりながら考え始め、思いついたように言った。
「じゃあ、術と魔法も突き詰めれば同じってことか?」
「うん」
私がうなずくと、魔理沙は嬉しそうに笑った。
「…そっかぁ、じゃあ…私は魔法使いになる!」
「…どうして魔法使いなの?」
私は気になって聞いてみた。
「…どうして?そんなのなりたいからにきまってるぜ!」
魔理沙が男の子っぽい口調で宣言した。
それからも修行はしばらくの間続いた。
魔理沙は相変わらず週に一度、紫に連れられて私のところに来た。
そして、魔理沙は目に見えてわかるほどに霊力の扱いが上達していく、今まで霊力を使っていなかった魔理沙の霊力の量が上がっていく速さが早い。素質や才能もあるかもしれないが、本人は決して口には出さないことだがかなりの努力をしているだろう。
二ヶ月もすれば基本的に持久力不足だが、魔理沙は弾幕も撃てるようになり、箒にまたがって飛べるようにもなっていた。
「魔女が空を飛ぶなら、やっぱり箒だぜ!」
と彼女はいって自宅から箒を持参したこともあった。私たちは彼女の家の事情を知っている。大丈夫なのかと聞いたが本人は大丈夫だと言い張った。
それを何度も続けているうちに、ついに見つかってしまったのか顔に痣を作って来た。
魔理沙の怪我は日に日に酷くなっていく、本人は服で隠そうとしているが服で隠せない場所などにも多数痣などがあり、私は見ていられなくなり紫にどうにかならないのかと相談した。
「無理ね」
紫は私にきっぱりと言い放った。
「どうしてよ」
私はむっとして紫に聞く。
「霊夢なら少し考えればわかるでしょう?」
紫が言いながらスキマに手を突っ込み、白いカップを取り出して紅茶を飲み始める。
知らない仲じゃないのに酷くないだろうかと私は思ったが、魔理沙の家では魔理沙への暴力は日常化して、それが当たり前になっている。もし、紫が止めなさいと言っても魔理沙の親が止めるはずがない。怒りの矛先が魔理沙に向き、彼女がさらに痛い目に遭う可能性が高い。私が言っても相手にされないのはわかりきっていることだ。
それに、いくら誰かが言ってもそう簡単に人の考えなど変わるはずがない。
「…確かに紫の言う通りかもしれない……でも、魔理沙が理不尽な暴力を受けて…かわいそうじゃない」
私はうつむきながらいうと紫は考えるようにしぐさをしてから言った。
「…まあ、やりたいなら好きにしなさい」
紫がそう私に提案した。
メキッ!
父の足が私の脇腹にめり込んだ。
「かっ……!!」
私はせき込み、倒れる。今日だけで何回目だろうか。
「お父さん…止めて…」
私は掠れた声で呟いた。
「………」
父は私の言葉など聞こえていないように蹴飛ばした。
「いぎっ…!?」
私は転がり、床にうずくまる。
「けほっ…!」
私はせき込みながら立ち上がり、父にヨタヨタと近寄って私は負けじと言った。
「お父さん…もう、こんなことはやめてくれ…!」
そんな懇願を無視して父は私の顔をぶった。
いつも通りの容赦のない一撃に、私は再度床に倒れた。
どうして父は私を殴るときにこんなに楽しそうに殴るのだろうか。
口の中が切れ、血の味がする。私が生きていると証明してくれる味だ。
「…お願いだから…止めてくれ…!」
私が立ち上がろうとしたとき、父に私は胸倉を掴まれて持ち上げられた。
父は私を殴る。何度も何度も振りかぶって殴った。
「あぐっ……!?」
私は抵抗できずに殴られ続ける。
回数が二桁に達した。でも、私は父のことなど見ていなかった。横から飛んでくる棒状の物を眺めていた。
父の振る手よりも早く動くそれは父の側頭部に触れるとわずかにめり込み、父を吹き飛ばした。
「……え…?」
父の手に掴まれていたため、少し引っ張られたが私はよろけながらも踏ん張り、父を殴った人物を見た。
「…霊夢?…なんでこんなところに?」
私は驚きを隠すことができずに呟いた。
「…人助けよ」
殴られて顔に痣がある私を見た霊夢が表情に怒りを含ませ、私の父に向き直る。
「は…博麗の巫女がなんで…?」
服装だけ見れば見分けがつかないが、父は霊夢だと気が付くと、怒ったような表情を見せた。
「何だおまえは!…いきなり出てきたかと思えば、殴ってきて!」
父が殴られた側頭部を押さえながら叫んだ。
「…言っただしょう?…人助けだって」
霊夢が凛とした声で言い放つ。
「人助け…?…ふざけるなこんなことが許されると思っているのか…!?」
父が怒りを抑えようともせず叫んだ。
「じゃあ、あんたがしてることは許されるわけ?」
霊夢が父を睨みつけ、持っていた棒を突き付けた。
「…霊夢!…待ってくれ…!!」
私は霊夢が父に向ける手を掴んだ。
「何だと…!?」
父は幻想郷でもかなり大きい方の店を持ち、そういう輩は地味に権力も持っている。だから自分に意見されたかとが気にくわないのだろう。
「……どんな理由があろうとも、虐待はいけないことよ」
霊夢は臆することなくいう。
「お前が博麗家の人間だろうが、人の家庭に首を突っ込むな!」
父が霊夢に詰め寄り、怒鳴った。
「だから何?……一度や二度じゃないでしょう?…説教ってレベルでもないしね」
霊夢が私を見て言った。
「…?」
私が自分を見下ろすと、さっき霊夢が父を吹っ飛ばしたときに服が引っ張られたことにより、服がはだけてしまっていたのだ。服で隠している数々の痣が見えた。
「…」
私は急いではだけている服を元に戻した。
「……前よりも増えてるんじゃない……あんたがどれだけ魔理沙に暴力を振るってるのかがわかるわ…」
霊夢が父を睨みつける。
「…暴力をふるうことは、やめてくれ!」
私が言うと父が言った。
「こいつ次第だ」
「あんたに言ったんじゃない」
私は霊夢を見ると、霊夢も私を見てコクリとうなずく。
「そもそも、お前には関係のないことだろう」
父が言った。
「大切な友人がこんな目に合ってるのに、関係ないはずがないでしょう?」
霊夢は近づいた父を睨んだ。
「…霊夢、もういい…私は大丈夫だから…」
短気な父が霊夢に暴力を振るう前に、霊夢を父から放したかった。
「…こいつがいいと言ってるんだ。…それ以上貴様が口出しすることじゃないんだよ」
「いや、私にはそんなの関係ないわ……あんたそのうち魔理沙を殺すわよ…?」
その言葉に父はわずかに顔色を変えた。
確かにそうかもしれない。私への虐待は日に日に酷くなっていっている。
「今やめればまだ間に合うわよ」
霊夢が言うが父はやめる気はないといった態度を目に見えてとった。
おそらく、子供に言われたのが面白くないのだろう。私がそう思ったとき、霊夢が再度口を開く。
「…大人が子供に諭されるのが面白くないのはわかるわ……でも、逆に言えば子供に諭されるようなことをあんたはしてるのよ?」
霊夢が父の考えていたことを見抜いていたのか、そう言うと父は歯ぎしりをした。
「…霊夢、もう大丈夫…これ以上は必要ないぜ」
私が言うが、両者とも納得がいっていないようでにらみ合いが続く、仕方がないため私は霊夢を肩に抱えて連れだすことにした。
「ま…魔理沙!?…まだ話は終わってないのよ!?」
霊夢がじたばたと暴れるが、霊夢の軽い体重では抜け出すことは容易ではないだろう。
「とにかく…次、魔理沙に手を出したら私が絶対に許さないからね!!」
霊夢がまるで悪役の下っ端のような捨て台詞を叫んだ。
魔力の修行を始めたおかげで感覚が鋭くなっているのだろう。父がこちらを睨んでいるのがひしひしと伝わってくる。
私はそれに気が付いていないふりをして家の外に出た。
「……………。そろそろおろしてくれない?」
博麗の巫女の娘が抱えられて道を歩いていれば、そりゃあ人の目も集める。
「…私もそう思っていたところだぜ」
私は肩の上に抱えていた霊夢を地面に立たせた。
身長は十センチほど私が低いため、霊夢をおのずと見上げることになる。
「…まだ話は終わってなかったんだけど」
霊夢がさっき出てきた店の方向を見ながら言う。
「まあまあ、落ち着けよ」
霊夢の家に向かいながら私たちは歩みを進めた。
「……霊夢。父に殴られそうになった時に助けてくれてありがとうな…」
私はしばらく無言で歩いていたが、そう話を切り出すことにした。
「…遅かったけどね」
霊夢が私の顔にできた真新しい痣をちらりと見て落ち込みながら言う。
「…いや、そんなことはないぜ」
「「…………」」
また会話が途切れた。
周りを見ると、こういった道でも会えばよくケンカをしていた私と霊夢が仲良く歩いているため、逆に通行人の注目を集めている。
「…霊夢」
私は隣を歩く霊夢の方向を見ながら言った。
「…どうしたの?魔理沙」
「……私は…家を出ることにするよ」
私が言うと霊夢はこちらを見た。
「…別に霊夢が来たから家にいずらくなったとかじゃない。前々から決めていたことだ。それに、霊夢がせっかく頑張ってくれたけど、……あの父親は変わらない」
私は長年過ごして父の性格を知っている。
「…だから、それを変えてもらおうとしたんじゃない」
霊夢が言う。
「…いや、もし変わったとしても、私が突き放すかもしれないな」
「……」
霊夢は頭が良い、私が話したいことなど薄々感づいてはいるだろう。だが、霊夢は黙って私の話を聞き続けた。
「…生まれてから、私は親の愛情なんかとは無縁で暮らしてきた。…だから、今更優しくしてもらってもどうしたらいいかわからん」
私は上を見上げながら言う。
「……そっか…」
霊夢が少し悲しそうに呟く。
「…なんでお前が落ち込んでるんだよ」
「いや…、今になって魔理沙が私を止めた理由がわかってさ」
「…?…なんだよ」
「…魔理沙はそんなことを言っても、父親が変わってくれないかってかけたかったんでしょう?」
霊夢が言ったとき、私は目を見開いていた。なんでわかったんだ。
長い間、父親に家族に私は苦しめられていた。でも、それにずっと耐えてきたりしたのは腐っても自分の肉親だ。自分の血のつながりが唯一ある家族が変わってくれることを心のどこかで臨んでいたのかもしれない。
「私、やっぱり余計なお世話だったのかしら…」
霊夢のテンションが段々と下がっていく。
「…いや、結果的に私は家を出ることを霊夢の決心できた」
「…魔理沙がいいなら…よかった」
霊夢が少し微笑んだ。
「…」
私はいつの間にか霊夢に見とれていた。
「…魔理沙?…どうしたの?ぼーっとしてるけど」
霊夢が私の顔をのぞき込んでくる。
「なっ…何でもないぜ!」
吐息がかかるぐらい近い位置にある霊夢の顔からとっさに離れた。
「…?」
霊夢は意味が分からないようで、首をかしげている。
私だってわからないのだ。霊夢がわからないのは当たり前だろう。
「顔が赤いわよ?…どうしたの?急に」
「…さ、さぁ…私に何だかわからないんだぜ」
私は言った。
なぜか霊夢の笑顔を見たら心拍が上昇して、顔や体が熱くなったのだ。
「…今日も修行していく?」
霊夢が私に聞いた。
「せっかくだから行く…今日こそ私は空を飛んでやるぜ」
それから、父や家族、使用人などから虐待を受けることはなくなった。
しかし、私はいないものとして扱われた(霖之助は相変わらず話しかけてきたが)。今までとあまり変わらないため、平和だった。
魔力の扱いにも慣れてきて幅広く様々なことができるようになっていた。だが、霊夢にはまだまだ及ばない。
住む場所だが、魔女が村に住むのはなんだか嫌だ。
だから、魔法の森と呼ばれる場所ならばいいのではないかと考えた。霊夢に会う前は家から出ず、暴力を受けるとき以外は本を読んでいて、どんな食べ物に毒があり、危険のない食べ物はなにかはある程度は識別できる。
それもふまえて魔法の森に住もうと思い、私はきのこの本などを読み漁っていたわけだが、一つ問題があり、魔法の森には魔女が住んでいるという噂があるのだ。
魔力をある程度扱えるようになったとはいえ、実戦はまだ早いだろう。戦ったことがないからわからないが、妖精か弱い妖怪をやっと倒せるぐらいだろう。
魔法の森には使われなくなった家などがあると聞くが、魔女も怖い。しかし、村で宿や家を借りるだけのお金もないため、選択肢は二つあるが一つしかない状態であるため、私は自分の身を守るために修行することにした。
霊夢たちにばかり頼れないため、自分で研究もした。
霖之助がそんな私を見て魔女の服をくれた。人から貰った初めてのプレゼントで私は手を上げて喜んだ。
そして、私は魔法の森の中に行き、住めるように家がないか探した。
この時に自分に蒐集癖があることを知り、それと同時に綺麗な空き家を見つけた。
家具なども残っていて地味にきれいで雨漏りもしている様子はない。
だが、誰も立ち寄らないため埃が酷く、掃除する必要がありそうだった。
しかし、なんでこんなところに一軒家があるんだと私は疑問に思った。
幻想郷ができる前からあったなら新しくてしっかりしすぎているし、村などの家と比べると洋風な感じの家だ。
たぶん、忘れ去られた外の物件が丸ごと幻想入りしたのだろう。私には好都合だ。
「よし!ここを私の家にするぜ!」
森の中を探索しているときに見つけた剣やほかの鉄くずなどを抱えて家の中に入った。
中は家具などは意外と残っていて、埃かぶっている。
掃除をしなければ住めそうにない。
私が引っ越しを完了させた日に、霊夢の家に行くことにした。
高い塀を超えるといつもの場所にいつも通りに修業している霊夢がいる。
「霊夢!おはよう」
私はあいさつしながら霊夢の隣に着地した。
「魔理沙おはよう」
霊夢も修行の手を止めて私に挨拶をしてくる。
「やっぱり服を着るとそれっぽく見えるわね」
縁側に座っている紫が私に言う。
「魔法使いだからな!」
私が言うと、霊夢が苦笑いしながら言った。
「別にほめてるわけじゃないけどね」
「おいおい、せっかくいい気分でいたんだぜ?…それを言っちゃあいかんだろう」
私が言うと霊夢がふふっと笑った。
「そういや、紫がいるのも珍しいな」
この頃紫の姿を見ていなかったため、私は紫にそう聞く。
「そうね…今日はちょっと用事があるからね」
紫が言いながら立ち上がる。
「…?」
紫が私たちとは別の方向に視線を向けた。
それにつられて私と霊夢も紫が向いた方向を見る。すると、淡く光る陰陽玉がふわふわと飛んでくるのが見えた。
「…なんだあれ?」
私が言うと、霊夢が説明をしてくれた。
「陰陽玉…博麗の巫女になる証となる物……なぜあんなところに?」
霊夢もなぜかよくわからないらしく呟くように言う。
霊夢が呟いた時、陰陽玉が目で追える速度を超えて霊夢に突っ込んだ。
霊夢の胸のあたりに溶けるように吸い込まれ、霊夢の体が淡く光り、徐々に戻っていく。
「…い…いったい何…?」
霊夢も困惑し、自分の体に異常がないことを確認しながら霊夢は言う。
少しして、霊夢の母親がこちらに向かって走ってくるのが見えた。
「…?珍しいな」
私が呟いた時、霊夢に詰め寄った霊夢の母親が霊夢を殴った。
「え?」
いきなりのことに私たちは目を白黒させていると、霊夢の母親が言った。
「何をした!?」
霊夢の母親が霊夢の胸倉を掴み、持ち上げる。
「なんの…こと…!?」
霊夢が自分を掴む母親の手を振り払いながら言った。
「とぼけるな!」
霊夢の母親は冷静ではなく、何があったのかも話さずに霊夢に掴みかかろうとする。
「…ちょっと待ってくれ!訳を話さなかったら霊夢だって何が何だかわからないぜ」
私が言うと、霊夢の母親は外野は黙っていろと言わんばかりに睨みつけてくる。
「言わなくたってわかってるでしょう…?先代巫女」
紫が先代という部分を強調しながら相変わらずくつろぎながら言う。
「この子が博麗の巫女になるなんてありえない。私は、あの子に陰陽玉を授けたのよ!?」
こちらに走って来た霊夢の妹を見ながら先代の巫女が言う。
「霊夢!何か細工したんだろ!?」
起こった霊夢の妹が霊夢を突き飛ばした。
「ふふっ」
それを見ていた紫が笑いを漏らした。
この場にいる全員の視線が紫に集まる。
「クスクス」
紫が笑いながら霊夢の妹をつまらないものを見るような目で見降ろした。
「長い間にこんなことも忘れてしまったの?……陰陽玉は授ける物じゃない、陰陽玉が選ぶのよ」
私が霊夢にもう少し頑張ろうぜと言ったあのときと同じことを紫は言った。
「陰陽玉が…選ぶ…?」
先代や先々代は初めて聞いたような顔をした。
「今までは、子供を一人しか作ってこなかったから仕方なく受け継がれていたけど……今回は子供が二人、…博麗の巫女にどちらがふさわしいか陰陽玉が選んだのよ…その結果霊夢が選ばれた」
「…そんなはずはない。霊夢が何かしたに決まってる…!」
先々代が言った。
「ここまで来ると滑稽ね」
紫がクスクスと笑いながら言うと、巫女たちが怒り、霊夢に向き直った。
「だったら霊夢!陰陽玉を手放しなさい!…そうすればこの子に陰陽玉が来る」
先代の巫女が言う。
「霊夢、そんなことをしなくてもいいわ」
紫が言い、続けてこう言った。
「先々代や先代に認められなくても、陰陽玉に認められた…それだけは事実だからね……それにたとえ陰陽玉が霊夢に授けられなくても、あんたたちが甘やかして育ててきたその子は強い妖怪なんかには太刀打ちできないわ。遅かれ早かれ陰陽玉は霊夢に来ていたでしょうね」
紫がよっこいしょ、と縁側から降りながら言った。
「だったら、どちらが優れているか勝負をしなさい」
「決めるのは私じゃないわ」
紫が言いながら霊夢を見た。私もつられて霊夢を見ると少し状況に困惑している。
「……もしやるんだったら、いつも通りにやればいいわ」
紫が気楽に言った。
「…うん。私も言われてばっかりは嫌だからやる」
霊夢がそう言ったことにより、戦って決めることとなる。
「……」
十数メートル先に立った妹がレプリカのお祓い棒を構えているが、私は目を閉じて集中していた。
頭の奥にあるスイッチを入れ、目を開けると脳が視覚と聴覚から入ってくる妹の情報の処理を始めた。
「ルールは戦闘不能になるまで、なんでもあり」
自信満々な声で私怨が混じった声、私のことをコテンパンにしたいのだろう。
単細胞な妹の考えることなど、手に取るようにわかる。
叔母が始めと言い放ち、戦闘が始まる。それと同時に妹は正面から突っ込んでくる。
常人からしたら風の何倍もの速さで人が走っていると思ったことだろう。
「……」
私はそこでようやくレプリカのお祓い棒を構えた。
私の脳が目から入って来た視覚情報を処理してあと何歩でこちらに到達し、何秒かかり、どのような攻撃をしてくるか予測を割り出す。
そう言えば、いつからだろう。
私は自分の人生をかけた戦いだというのに、全く違うことを考えていた。
いつからだろう。修行で血反吐を吐かなくなったのは、いつからだろうか、あらゆる動きがわかるようになっていたのは、
私は軽く横に半歩動いて妹の初撃を必要最低限の動きでかわした。
妹はわずかに驚いた顔をしたが、どうせまぐれだろうと高をくくった表情をしている。
腕と肩の筋肉の運動から更に妹が薙ぎ払おうとしているのが推測でき、体をくの字に曲げることにより、妹の薙ぎ払いを完璧によけた。
妹はそれでも余裕の笑みを崩さない。
外野をちらりと見ると、今の二撃で私と妹の実力の差を理解しているようで、母と叔母は苦虫を噛み潰したような表情をしている。
私は踊りを踊るようにして妹の攻撃をよける。
いくら妹との実力が離れていても油断は自身の敗北を意味する。腐っても博麗家の人間で私にない才能を持っているからだ。
私は霊力を使い、体とお祓い棒を最大まで強化した。お祓い棒が霊力の白い膜で覆われた。
「ようやくやる気になったようね!」
妹が上段からお祓い棒を振り下ろす。
私は一瞬のうちに妹が持っているお祓い棒に二度、頭部に一度お祓い棒を振った。
妹が持ったお祓い棒が霊力の耐久性が低かったらしく砕け散ったと認識するころ、すでに彼女は気絶して地面に倒れ伏せていた。
「………」
一瞬で何が起こったのかわからなかったのか、皆開いた口が塞がらない様子だ。
「霊夢!!お前の勝ちだぜ!」
だが、魔理沙がすぐに私に走り寄り、胸に全体重をかけて飛び込んできた。
私は耐え切れずに後ろに転がった。
背中を地面に打ち付け、ずきりと痛むがそれが気にならないぐらい私は高揚していた。
あの血反吐を吐き、地面をはいずって修行していた数年間は無駄ではなかったのだ。
「私……やったよ…!魔理沙」
私は嬉しくてどうしようもないのに、どうしてだろうか。涙が止まらない。
そんな私を見て、涙ぐんでいた魔理沙は微笑んだ。
こうして、私は博麗の巫女として神社に住むこととなった。
広い神社に一人で住むのには広いが、魔理沙がほぼ毎日来てくれるから寂しくはない。
私は急須にお茶の葉を入れてやかんで沸かしていたお湯を注ぎ、縁側に腰を掛けながら床に二つの湯飲み椀を置く。
今日も私が大好きな普通の魔法使いは私の家に訪れる。
「私が聞いたのはここまでですね」
文さんが覚めたお茶を飲み、言った。
「……二人とも、親に優しくされてこなかったんですね…」
「…はい、そうみたいなんですよね」
文さんが手帳を閉じて言った。
「…だから、母達は私にすごく優しくしてくれたんですか…」
私が呟くと文さんがうなづき、言った。
「ええ、二人ともあなたのことを溺愛してましたからね」
「………。もう一つ聞いていいですか?」
私は飲み終わった湯飲み椀を床に置いた。
「…?…私に答えられることなら」
文さんも湯飲み椀を床に置く。
「…母たちは、なぜ寿命を削ったんですか?」
私の質問に少し驚いたような顔をした。
「……もう、十年以上の前の話になります。……伊吹萃香と呼ばれていた鬼が異変を起こしました」
「…」
「彼女は同族を食らうことで力をつけ、酒を飲むことで魔力の大きさを隠してきました」
確かに、効率のいい力のつけ方と言えるだろう。
「……戦いは数日にわたって続き、霊夢さんたちは心身ともに疲弊していた時、魔理沙さんが魔力切れを起こしてしまいました」
魔法使いの母は弾幕戦が物凄く強かった。それではこちらは結構な痛手になってしまったのだろうか。
「その時、魔力を回復させる手段がなかったので魔理沙さんは自分の寿命を削ることで魔力を生産して戦ったんです。それにより、魔理沙さんは何十年もの寿命を削りました」
文さんが一度言葉を切り、再度話し始めた。
「それらにより、何とか主力を尽くして伊吹萃香の撃破に成功しましたが、このまま放っておけばまた異変を起こすと分かっていたので、霊夢さんは伊吹萃香を封印することにしました……一年や二年で封印が解けるのは困るので、一生とけないレベルでの封印をする必要があり、霊夢さんは魔理沙さんと同様に数十年の寿命を消費して鬼を封印したのです」
「…そんなことが……」
私は呟いた。
「…はい。……私はその時助けてもらった身なので本当、霊夢さんたちには頭が上がりませんよ」
文さんはそう言いながら空を見上げる。
「…文さん、今日は母たちのことを教えてくれて本当にありがとうございました」
私がいうと、文さんは縁側から降りてこちらに向き直って言った。
「…いえいえ、また何か知りたいことがあれば呼んでください!」
そう言うと文さんは黒い翼を広げて飛び去った。
文さんが見えなくなったころ、私は急須からお茶を湯飲み椀に注ぎ、一口飲んだ。
温かいお茶が食道を通って胃に注がれ、体の内側から温まる。私はほっと息を吐き、空を見上げる。
母たちが命をとして守った幻想郷は今日も平和だ。
二百年後。
「さーてと、何か面白いスクープは転がっていないですかね」
姫海道はたては薄暗くなった空を飛び、辺りを見回しながら一人ごとを言った。
最近、いやここ二百年。小さな騒ぎはあっても大きな異変などは起きていなくて平和な日々が続いている。そろそろ出来事を捏造するのも限界が来ていた。
二百年前、私は身の危険を感じて伊吹萃香が起こした異変には介入しなかったことでどれだけ大変だったかわからないが、異変に巻き込まれていまだ生きている妖怪たちは、その話題をいまだに話す。
博麗霊夢は初代博麗の巫女並みに語り継がれている。
博麗の巫女はあれから十回ほど変わった。
もう、彼女たちの面影もない。
紅魔館や文達、永遠亭、霖之助、風見幽香も相変わらずだ。
彼女たちが守った幻想郷は今日も平和で、記者魂がくすぶられる出来事はない。
私はため息をついて屋敷に帰ろうとしたとき、腹に響くような低い爆発音が響き渡る。
「!!」
私はいつの間にか携帯を片手に音の方向に向かっていた。
馬鹿げたことでもいい、久しぶりに興奮する出来事が起こっているのだ。
私は怖いもの見たさに音の方向に進み、地面に降り立った。砂煙で視界が悪い。この辺から聞こえたと思っていたが、間違っていたのだろうか。
弾幕勝負のような光は見えない。弾幕勝負でないならさっきの爆発音は何だったんだ。
私は周りを見回した時、近くに洞窟があるのが見えた。内側から何かが爆発でもしたのか、そこを中心に土が周りにまき散らされているのがわかる。
「…あれ………ここって……」
血の気が引くのを感じた。
二百年前、伊吹萃香を封印した場所だ。
札が吹き飛ばされて大きな穴がぽっかりと開いている。そこから強力な鬼の魔力を感じる。
「…っ!」
私の感が今すぐ逃げろと言っている。
でも、足が凍り付いたように動いてくれない。
そんな時、
「…よう……くそ天狗」
誰かが私の肩後ろから掴んだ。見なくても声でわかる。
「…ひっ…」
私はビクリと震える。歯がカチカチと合わさり、膝が笑っている。
「ちょっと、話を聞かせてくれよ」
二百年ぶりの萃香の声は変わらない。
ギュッと萃香が私の肩を強く握った。
「ひぃ……!!」
殺される。この場所から逃げなきゃ…殺される。私がそう思ったとき、すさまじい力で引き寄せられ、洞窟に引きずり込まれた。
「いやああああああっ!!だ…だれか!助け……」
萃香が私の顔を掴んだことにより、私の叫びは途切れてしまった。
いつもと変わらず、どんよりとした空が広がる一本道、今日は珍しいお客さんが来た。
「…黒です」
私はそう言い放ち、今まで彼女が犯した罪を悔悟棒に書き込むと悔悟棒に重さが発生し、それで数回黒い翼を生やした天狗を殴った。
それが終わると、あの世とこの世の境,彼の場所につながる道を姫海道はたては歩いて行く。
彼女が見えなくなったころ、私はさっきのことを思い出す。はたての人生を見てわかったことがある。
「彼女が出てきましたか」
私は誰に言うということなく呟き、はたてが歩いて行った方向に私も向かった。
「眠っているところを悪いけど、あの時の貸しを返してもらうよ……博麗霊夢」
四季映姫・ヤマザナドゥはそう呟き、彼の元に行った。
二百年ぶりの地上、新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込んだ。
「……いくぜ、勇儀……今度こそ博麗の巫女を殺し……月の住人を殺し…私は月を手に入れる!!」
満月が浮かぶ空に手をかざして拳を握り、私は宣言した。
「ああ、やってやろう…!」
勇儀も私の横に立ち、不敵な笑みを浮かべて言った。
博麗霊夢と伊吹萃香の因縁は、まだ続くようだ。
とりあえずここで東方鬼狂郷は完結とさせていただきます。
このこんなこともできるのではないかと私の妄想の塊と言える東方鬼狂郷を楽しんでいただけたのならとてもうれしいです。
初めて書いたので、言葉足らずでどういうことかわからないといったところがあるかもしれないので、そう言ったことがあればいつでも感想でお聞きください。
一応、他にも作品を作っていてそのうち投稿すると思いますので、そちらも気が向いたら読んでやってください。
始めに言っておきます。おそらく、今作品と同じく原作無視となると思います。そのときは駄文ですがよろしくお願いします。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。