ドガッ
神社につくと同時に扉を蹴り開け、咲夜のナイフで刺されてけがをした魔理沙を床に寝かせ、服を脱がせた。血は依然と流れ続けている。
ぐったりとしていて肌も青白く、生きているようには見えない。だが、胸がわずかに上下していることから生きてはいることがわかる。
咲夜に刺された部分からは依然と血が流れ続けている。
だが、食べたものなどがこぼれていないことからナイフは胃腸を避けたのだろうか?でも魔理沙は吐血していた。器官に当たっているのは確実だ。
「奇跡的に……?…いや……咲夜ほどの腕前なら魔理沙はもう死んでてもおかしくない…」
魔理沙の傷を強く押さえつけながらつぶやいた。
派手に見えるこの傷もわざと急所を外したのだろう。だが、急所を外していても刺し傷は刺し傷だ。油断すれば死につながる。
「……く…」
傷を押えながら傷の処置の方法を考えた。
できないことはないが……できるだけこの手はやりたくはない。それに今私が魔理沙から離れたら失血死してしまう。
「どうする……」
私がどうするか迷い始めたとき、声が聞こえた。
「霊夢さーん」
この声は早苗?
「…早苗!こっちに来れる!?」
玄関にいる早苗に私は叫ぶように言った。
「そんなに慌ててどうしました?小傘さんに呼ばれて…ってどうしたんですか!?」
茶の間にいる私と魔理沙の姿を見て早苗が取り乱した。
「魔理沙が刺されたの!…血が止まらない…少しの間魔理沙の傷を押えてて」
「わ…わかりました」
早苗が私の代わりに魔理沙の傷を押えた。
「霊夢さんはどうやって止血するんですか?」
「大丈夫まかせて!」
大丈夫と言ったものの。方法は切られた部分を焼くもので魔理沙に一生消えない傷を作ってしまう。
でも、死んでしまっては元も子もない。
鉄の棒を取り出し、かまどに火をつけようとした。
「霊夢。お困りのようね」
その声を聴いた瞬間、私は戦闘態勢に入った。
「……どうしたの?霊夢」
声をかけられただけで敵意を向けたられたいつもの赤と紫のあべこべの服を着た永琳が何かあったのかという表情をした。
「…あんたも萃香が異変を起こしたのは知ってるでしょ?」
「ええ」
「あんたのところの鈴仙が萃香と一緒にいたのよ」
「……鈴仙が?…あの子朝からいないと思ったらそういうことね…」
「……その言いぶり、あんたは関与してないように聞こえるけど……関与してないの?」
「少なくともそうね……それよりどうしたの?鉄の棒を急いで意味も無く熱するとは思えないし…」
「……魔理沙が敵に刺された」
「……見せて。私が治療する」
永琳が黒いアタッシュケースを私に見せた。中に治療するためのものが入っているのだろう。
「…まだ、あんたのことは信用できてない…。だから、下手な動きをしたら…わかってるわよね?」
「ええ…。それでもいいわ…魔理沙はどこ?」
「茶の間よ」
永琳を招き入れ、茶の間に向かった。
「永琳はなぜ神社に来たの?」
私が永琳を信じられない理由の一つを聞いた。魔理沙が怪我をして、永琳が来たタイミングが良すぎたのだ。私を信用させて裏をかく作戦だと思われても仕方ない。そう思えるほどに本当にタイミングが良いのだ。
「朝から鈴仙がいないって話はしたでしょ?」
「ええ」
「鈴仙が行く場所と言ったらここか白玉楼だとおもってね。それに、異変が起きてそのタイミングでいなくなれば巻き込まれたと思うのが普通でしょ?」
永琳が言いながら茶の間に横たわっている魔理沙の横に座った。
「手ひどくやられたみたいね」
早苗が布で押さえていたが、一度離させて傷を確認しながら言った。
「ええ…それより…魔理沙は助かるの?」
「……助けるにきまってるでしょ?じゃなかったら医者失格よ」
持っていた黒いアタッシュケースを開き、中から工具を取り出した。
「……ナイフが胃の一部を裂いたみたいね。吐血はそのせい」
魔理沙の口から流れた血の痕を見ながら永琳は言った。
「止血するわ」
そういい、永琳は手際よく魔理沙に局部麻酔をして治療を始めた。
約三十分かけて魔理沙の治療を済ませ、包帯を巻いた。
「…かなり出血してましたけど、血は大丈夫なんですか?」
早苗が永琳に言った。
「大丈夫よ。ある程度なら魔力が血を増産してくれるから……まあ。出血の方が早いから…あんまり流しすぎもよくないけどね」
永琳が言ってからしばらくすると魔理沙の血色が徐々に良くなってきた。
「ああ……よかった…」
ほっとして体から力が抜けた。それと同時に私の落ち度でそうなってしまった魔理沙に申し訳がない気持ちになった。
「……永琳、それに早苗もありがとう」
「ええ、一つ貸よ?」
「魔理沙さんは私の友人でもあるんですよ?当り前じゃないですか!」
「二人ともありがと」
魔理沙を抱きかかえて布団が敷いてある寝室に向かった。
魔理沙を寝かせて二人の元に戻った。
「二人に聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
「何ですか?」
「何か変わったことはないかしら……例えば…誰かがいなくなったとか…怪我したとか……何でもいいわ」
「私はさっき言った通り鈴仙がいなくなったわ……。結構頻繁にあるからわからないけど、てゐが朝食にいなかったわ」
永琳が思い出したように言った。
「……私はとくにはないのですが…森に妖怪たちは住んでいるはずなんですが……今日は全く見かけてない気がしますね」
「…わかったわ。…二人とも魔理沙が刺されたのを見ればわかるけど、いつもの異変とはわけが違うわ」
「私も異変解決を手伝っててわかりますが…こんなことは初めてです」
早苗が言った。
「そうね…早苗は萃香が異変の首謀者というのはもう知ってるかしら?」
「萃香さんが?」
私が言うと早苗が驚いた顔をした。
「…鈴仙はそれに巻き込まれたとして……なぜ萃香に従っているのかしら」
永琳が難しそうに考え込みながら言った。
「さあ。でも…なんかしらの理由がなければやらないと思うわ」
「……今のところ誰が萃香さんに手を貸してるんですか?」
「わかっているだけでも勇儀、文、華扇、レミリア、咲夜、鈴仙、さとり、アリスの八人…妖夢たちはわからない」
「…わからないというのはどういうことですか?」
「行ったけどいなくなってて代わりに咲夜がいた。だから妖夢達も萃香に手を貸している可能性もなくはないわ」
「…聖のところには行った?」
永琳が名前が挙がっておらず、萃香たちの方にいかない人物を言ったのかもしれないが既に彼女は死んでいる。
「……聖たちは…命蓮寺の人たちは全員死んだわ……」
「……聖さんたちが!?」
早苗が驚くのも無理はない。聖はこの幻想郷でも屈指の実力者だ。
そう簡単に負けるはずがない。はずだった。
「……萃香さん……どうやってそんな力を……」
「こんな時に紫は何をしているの?」
永琳が私に言われても困ることを聞いてきた。
何かと異変があれば伝えてくれていたりした。だからだろう。何かと絡むことも多かった。
「私も知らないわ」
紫は幻想郷のことは好きだと言っていた。でなければ、何百年も結界を守っていないと。紫は萃香と古い友人だと言っていた。なら、この幻想郷のバランスを崩している萃香が異変を起こしていることを知らないはずがない。
「……紫を疑うようで嫌だけど……紫も萃香に手を貸しているのかしら……それとも……紫が黒幕かしら……?」
紫が幻想郷が大好きだなんてみんな知ってる。それなのにこの状況で出てこないのは不自然すぎる。
「基本的に自由気ままだけど、確かにこの状況で出てこないのはおかしいわね」
永琳も私の意見にうなづいた。
「……二人とも、今回の異変は今までとは規模が違うわ。異変解決に力を貸してくれないかしら?」
「もちろんです!」
「身内がかかわってるなら…手伝わないわけにはいかないわ」
二人とも快く引き受けてくれた。
「じゃあ。早速行きましょう」
「…ちょっと待ってください。魔理沙さんは置いていって大丈夫なんですか?その間に誰かが来て寝込みを襲うなんてことにならないですか?」
「強い結界を張って行くわ。…外から破ることはできないけど。中からも誰も出れないわ……たぶん大丈夫でしょう」
「…それ魔理沙さん大丈夫なんですか?最悪閉じ込められることになりません?」
「私が無事なら大丈夫よ」
私が言うと早苗がわかりましたとうなづいた。
それを私は確認して寝室に向かった。
「……どうします?…萃香さんたちがどこを拠点にしているか知ってますか?」
「わからないわ」
寝室に寝ている魔理沙の布団を四方向から囲うようにしてお札を置いた。
「結」
私が言うと強固な結界が張られた。
「……とりあえず……霊夢の話によれば確認できただけでも八人。河童たちは確認できなかったのよね?」
「ええ、そうよ」
「なら、にとりの場所に行ってみましょう」
「わかったわ」
私がうなづき、縁側に向かうと二人とも後ろをついてきた。
「じゃあ、行きましょう」
私が言い、にとりたちが住んでいるはずの川に向かった。
優に三メートルはあるヒマワリがあたり一面に生えている。
ここは太陽の畑と呼ばれている花畑だ。
「ふふ…」
私はいつもの傘をさしながらヒマワリにじょうろで水をあげた。
「花はいいわね」
周りよりも成長が遅くて、背の低いヒマワリに水を上げなら言った。
この状況でなければもっといいのだが…。
すぐわきの足元をちらりと見る。
そこに横たわっているのはリグルだ。
訳のわからないことを叫びながら襲い掛かってきたので、私に傘で頭をしこたま殴られて気絶したのだ。
彼女は普段こんなことはしない。
「……何があったのかしら」
私はそう呟きながらリグルのすぐわきに立ち、しゃがんだ。
「……」
リグルはまだ白目をむいて気絶している。万が一にも死なれでもしたら後味が悪い。私もやりすぎたため介抱してあげることにした。
仰向けで転がっているリグルを起こした。
「しっかりしなさい。こんなバカみたいな理由で死にたくもないでしょ?」
揺すりながら言うとリグルが震える手で私の手に触れた。
「幽香…さん……に……げ………て……」
逃げて、リグルは確かにそう言った。
「逃げて?どういうこと?」
聞こうとしたが、今ので力尽きたリグルはぐったりとしている。
「……」
どういうことか頭の中で考えを思い浮かべる。だが村などからはかなり離れているため、最新の情報など入ってこない。それによりいくら考えても答えはわからない。
考えることは後回しにして自宅に向かうことにした。
「……」
リグルを抱えて立ち上がり、家に向かって歩いた。
「……あら……珍しいお客さんね」
気配を感じて後ろを向いた。
「……よお」
萃香と勇儀が先頭に立ち、そのあとをレミリアたちが歩いてくるのが見えた。
「そろって何の用?見ての通り私は忙しいんだけど」
「そういわなくてもいいじゃないか。お前次第では手は出さない」
「つまり、自分の意にそぐわなければ危害を加えるということかしら?」
「取り方によってはな……お前がつべこべ言わずに私につけば話はそれで終わる」
萃香が言いながら私に近づいてきた。
……私に付け?萃香が連れてきたメンバーを見た。…なんとなく状況が読めた。それに萃香は現在私に敵意を向けている。いつでもお前を攻撃できるぞと。
「……昔よりも魔力の量はかなり上がってるみたいだけど、霊夢の実力を知っててそれでも挑もうだなんて……正気とは思えないわね」
そう言った私に萃香はいきなり殴りかかってきた。
傘で拳を横から殴り、軌道を変えさせた。
「今日はそういう気分じゃないし、帰ってほしいのだけど」
「太陽の畑にいる妖怪は強いと思っていたが、いつの間にか腰抜けに成り下がっていたようだな」
「あなたの見え見えな挑発に乗るほど私は暇じゃないの。さっさと消え失せなさい」
「残念だが。無理だな」
だめだ。自分の意見しか突き通さない面倒なタイプだ。
「私はひまじゃないのよ…異変なら自分たちでやりなさい。私には関係ない」
「いやあるね……見ての通り今回の異変は規模が違う。霊夢も仲間を集めるだろう。だから、私のところにお前がいないと分かれば霊夢はここに来るはずだ」
「……あんたのも断ったわけだし、断るにきまってるでしょ」
「いや。ないね……お前は霊夢が自分より強いことを知っている。それにさっきの言い方。意外とお前は霊夢を信用しているようだ。そんなお前が私のところに来ないんだ。行先は霊夢のところ以外ないだろう?」
「……はあ、めんどうくさいわね……私はどちらにもつかないわ」
「……万が一にでもお前が霊夢についたら計画に支障が出る。………じゃあ取引しよう。私が何でも一つ願いをかなえてやる」
「あんたにそんな能力ないでしょ?」
「ああ。私がお前にできること限定だ」
くだらなすぎてめまいがしてきた。話にならない。自分にそれほどの価値があると思っているのかしら。
「じゃあ、あなたにしかできなくて…私が望んでいることを言うわ」
「何だ?」
「私の目の前から消え失せろ」
そう言った私の腹に萃香が拳を叩きこんだ。
「ぐうっ……!!」
来ると分かっていても、それをはるかに上回る威力の攻撃がまともに叩き込まれた。
リグルを抱えた私は、まるでボールのように吹っ飛び、自宅に突っ込んだ。
木と煉瓦でできた家の壁を突き破り、家具を破壊した。
「げほっ……!」
一瞬呼吸ができなくなるほどの威力の物を久々に貰った。
本気を出さなければまずいかもしれない。
リグルは私が庇ったため無傷で安心した。リグルをベットに寝かせ、壁に空いた穴から外に出た。
「交渉決裂で私は悲しいよ。幽香。お前がここまで頭が悪いとは」
「ふん。ちゃちな挑発をしてくる時点で器の大きさが知れ渡る。なんであんたにほかの奴がついていくか理解できないわね」
そういうと萃香は今度は私に蹴りを入れた。
ドゴッ!!
傘で受け止めた。
重いっ…!
魔力で体を強化し、跳ねのけた。
「……そう。……今のあんたについていく理由なんてこれしかないわよね……これができるなんて……萃香……あんたはどうしようもないクズね。妖怪の風上にも置けないわ」
理由が分かった私は吐き捨てるように言った。
萃香に気を取られていて接近を許してしまったらしく、右後方から土を踏む音が聞こえた。
反射的に振り向きながら傘をふるうと、勇儀の拳が私の胸にめり込むのは同時だった。
「がっ……!?」
すさまじい衝撃に肺の空気をすべて吐き出してしまった。
勇儀の拳の方がコンマのレベルで早かったらしく。私の傘は威力が半減してしまい、大したダメージを負わせていない。
「花の妖怪もせいぜいこんなもんか」
勇儀が拳でよろめいた私に蹴りを放つ。
だが、傘の先には光が集まっている。それを勇儀の顔に向け、ぶっ放した。
まばゆい閃光が視界を塗りつぶし、轟音が鳴り響いて何も聞こえない。
超極太のレーザー。魔理沙が言うところのマスタースパークだ。
地面は向こうの山まで一直線にえぐれており、山の一部を大きく薙ぎ払っている。
見える範囲に勇儀はいない。吹っ飛んだか消し飛んだか知らないが、いい気味だ。
「で?つぎはどいつが私の相手をしてくれるのかしら?」
私が言うと自信満々の表情の萃香が前に出た。
「私の能力であればお前の自慢のマスタースパークでは私は倒せんよ」
萃香が言った。
「あんたの能力は知ってるわ。密度を操って体を空気に近い密度にすることによって粒子状になれる。でも、あんたは一度体を粒子状にしたら全身を粒子状にするしかない。戻ろうとすれば、一度に体を戻すしかない。粒子になった後、元に戻ろうと集まったところを吹き飛ばしてあげるわ」
これは、粒子状にさせるのをためらわせるために脅しをかけた。一瞬でも躊躇してくれればマスタースパークで吹き飛ばせる。
「……さあ。それはどうかな」
萃香が言いながら私に見せつけるように右腕だけを粒子状にして見せた。
「なっ…!?」
萃香の能力は全身を一度に大きくするか小さくするか。粒子状にするかしかできなかったはずだ。なのになぜ?
そう思った矢先、私の腹部を突き破って萃香の腕が体から生えてきた。
「かはっ……!?」
傘を支えにしなければ膝をついていたかもしれない。
腹部から生えてきた萃香の腕が粒子状になり、萃香の腕の場所で元に戻った。
「げほっ……」
こみあげてきた血を吐き出した。
「私は昔と今じゃあ違う。力量を図り間違えたな」
「たった数百年で……どうやって…!?」
傷口を押えながら私は言った。
「秘密だ。…それよりそんな状態でまだやる気か?どちらが勝者なんてもう明らかだ」
萃香が言った。
「……そんな状態?…ちょっと不意打ちを決めたぐらいでいい気になるわね」
バキバキと腹部が修復した。
口の血をぬぐい。歩き出した。
「……仕方ないし。続きをやりましょうか」
私が言いながら出した殺気にその場にいる全員がさらに緊張した顔つきになった。
恐らく明日も投稿すると思います。
誤字などがあるかもしれませんが、気を付けていきたいです。