誤字脱字があるかもしれませんが、気を付けていきたいと思います。
私の横を飛びながら早苗が言った。
「霊夢さん。にとりさんのところって行ったことがないんですが、この先にあるんですか?」
「そうよ。にとりたちは川の上流に住んでるわ」
そう言ったころ、ポツリポツリと家が見えてくる。
河童の集落だ。
よく見てみると二十人ほどの河童たちがあわただしく動いている。
何かあったのだろう。
二十人ほど集まっている場所に降り、一番近くにいる河童に声をかけた。
「あなた、にとりを知らない?」
「…!?霊夢さん…!」
相手の反応はなんだか変だ。さっきまで慌ただしくしていたのでまさかとは思ったが、やはりそうか…。
河童たちが私たち三人の周りを囲った。
よく見ると河童たちはみんな血で汚れている。本人ではないだろうと思うが、血の量が多く、判別できない。
「霊夢さん。あなたたちを捕まえないと私たちが殺されちゃいます……。だから私たちに大人しくつかまってください!」
「……そう。でも私たちもつかまるわけにはいかないのよ」
「一斉にかかれ!」
名も知らない河童が叫ぶと周りを囲っていた十数人の河童が一斉に襲い掛かってきた。
彼女たちは河童だ。普通の人間の十数倍の腕力を持ち、これだけの数の河童に襲われれば無事では済まないはずだ。
だが、その大半が私を捕まえるために触れる前に地面へと崩れ落ちた。
正確にほぼ全員に札が張り付いている。
札で数さえ減れば後はお祓い棒でやればよい。
早苗と永琳の死角にいた二体の河童は二人に任せるとして、私は仲間の陰にいたことにより札を食らわなかった三人に狙いを定めた。
いきなり倒れたようにも見える同志たちを見てその三体は体を硬直させてしまった。隙だらけだ。
手始めに一番近くにいる河童に向かった。
接近してきた私に反応して、物を作る際に使われる工具などで攻撃してきた。
三人の間をすり抜けて通り過ぎた。通り過ぎる際に叩き落とした三つの工具がほぼ同時に地面に落ちる。
三人の河童が私が自分たちの後ろにいるとようやく自覚し、後ろを向こうとしたとき、すでに私は武器をはたきおとした順とは逆の順番で三人の河童を気絶させた。
戦いは、本格的に始まる前に終わった。
「…にとりはどこ」
早苗と永琳が残りの河童を相手にしているとき、私は現在地面に倒れている河童たちに行けと命令した河童に近づいた。
「…くそ…!だから初めから嫌だったんだ……!河童が博麗の巫女を捕まえられるはずがないだろ……!」
河童がぶつぶつと呟いている。
「…答えて、にとりはどこ?」
「…にとりは……ここにはいない…どこにいるなんて知らない!……くそ……なんだよ…積みじゃないか……そもそもあいつがさらわれなかったら私たちがこんな目に合わなかったのに……!」
河童が恨めしそうに言った。
「…さらわれた?にとりがさらわれたの?」
「ああ!そうだよ!」
河童がやけくそ気味に怒鳴りながら言った。
「…萃香にさらわれたのね?」
「そうだ……あい……つ………が…」
河童の動きが止まった。
「ご……はっ……!?」
河童が血を吐き出した。
「なっ…!?」
早苗が驚愕する気配を感じた。
「何……が…!?」
河童も何が起きているのかわからない様子だ。
だが背中側から大量に血液が服に吸収されなかった血が服を伝って地面にこぼれていく。
バチュン!
何かが河童の首元に当たった。
それが鋭い光を放つのと、河童の首が胴体から離れるのは同時だった。
河童の頭は重力に従ってゆっくりと地面に落ち、すぐに河童の体も力が抜けて地面に倒れ伏せた。
倒れた際に背中が見えたが穴が開いている。吐血の原因はこれだろうか。
敵は強力な弾幕の一撃で河童を撃ち抜いたようだ。
「…そういえば。…あんたの主もそっちについていたわね…霊烏路空…」
「うん。まあ、そうだね」
「あんたは萃香がなぜ異変を起こしているか知ってるの?」
「しらない。知ってても関係ない。私はさとり様についていくと決めた。萃香に命令されたのかは知らない。でもさとり様は私にあなたを倒すようにと命令された。だから私は霊夢と戦うだけ」
「……そう」
この子も心から忠誠を誓っている。…聞いても決して情報は吐かないだろう。
霊烏路空が私に第三の足と呼ばれる多角柱の箱のようなものが装着された腕をこちらに向けた。
「空……手加減はしないわ」
お祓い棒に霊力を込めた。
一撃で終わらせる。
大量の霊力をお祓い棒に込めているため、お祓い棒が淡く光りだした。
体を強化して、空に向かって走った。
私が一撃を食らわせる前に空が霊力で形成されたカードを握りつぶした。
「爆符『メガフレア』」
握りつぶされたカードは少しの間は潰された形状を保っていたが、すぐにガラスのように砕け散り、蒸気のように消え去った。
「…こりゃまずいわね」
私が足を止め、いうと後ろの早苗が慌ただしく言った。
「全然そんな風に見えないんですけど!?」
空の周りの温度が急激に上がり、蜃気楼のように大気が揺らめき始める。
空が後ろに下がりながら五メートルほど浮かび上がり、四つの巨大な炎の球を作り出した。
どれも私を包み込むぐらいの大きさはあるだろう。
それに、空は爆符と言っていた。どれほどの規模かわからないが爆発は確実に起こるはずだ。
「……空。初めに警告しておくわ」
私の言葉に空はなんだ?と言いたげな視線を向けてきた。
「その火球は絶対に放たないで」
「何を言っている?これは戦いだ!戦わなければ戦いに終わりはない!……大人しくこれを食らえ!」
空が一つ目の火球を放った。
それと同時に私は言う。
「結」
私が呪文のように唱えた直後、突如として空を地面から伸びた結界が火球ごと閉じ込めた。
「しまっ……!?」
空がとっさに火球を止めようとしたが間に合わなかった。
結界に触れた火球が膨れ上がり、爆発した。
結界をだいぶ小さめに張ったため、爆発の規模がわからないが相当広そうだ。
せまめに張った結界内に爆発を逃れられるほどの範囲はない。残りの三つの火球が誘爆し、結界が外側に向けてわずかに歪んだ。
だが、その程度だ。
「……あの爆発を…抑え込むなんて……」
早苗が後ろで呟いている。
「解除」
私が言うと札が張っていた結界を解いた。
こういう大きい結界を張る際には、今のような命令が必要であるため少々面倒だ。
「…霊夢……!」
全身やけどを負った空が倒れた状態で私を睨んでいる。
「自分のスペルカードでそこまでダメージを負うって……あんたのスペルカードの威力がどれだけ高いかわかるわね」
「……く……いつ…結界の札を……」
空が言った。
「ああそれ?それは、あんたを倒すために走ってるときに投げたのよ、私が走るスピードと霊力で強化した腕力で投げたから、空の視界からは一瞬で見えなくなったはずよ」
「……じゃあ、どうやって私が後ろに下がると分かって……」
「簡単よ。私とあんたの距離が近かったし、魔理沙とどうように肉弾戦をしないあんたが近距離で戦闘を行うわけがないわ」
私が言いながら近づくと空はまだやる気のようで、立ち上がろうとしている。
「くう……まだ…まだ終わってない……!」
「あんたはよくやったわ。今は眠りなさい」
私はそう言い、空の頭に札を張り付けた。
「なっ…!?」
空がとっさにはがそうとしたが私が大量に込めた霊力に弾かれた。
「封」
私がそう言うと、空に電流が流れたようにビクンと震え、すぐに気を失って倒れた。
「…河童と空…どうする?霊夢」
「とりあえず河童たちを運びましょう」
「…そうですね。…霊夢さん。それで、空さんはどうするんですか?」
「…空は神社に来てもらって、…異変が解決するまで神社で大人しくしててもらうわ」
「空さんは何か知ってると思いますか?」
早苗が近くの河童に肩を貸して歩き始めた。
「無駄よ。あの子は何も話さないわ」
「え?じゃあどうやって情報を聞き出すんですか?」
「どうもしないわよ」
「なぜですか…!?河童の方たちは無理やり協力させられているように見えました、…たぶん彼女たちは何も知らないと思います。でも空さんは違います。わかってて従っています。なら、何か知ってるはずです…どうにかして聞き出しましょうよ…!」
彼女は納得のいかない様子で食い下がった。
「早苗…あんたは空からどうやって聞き出すつもり」
「…だから……どうにかして……」
早苗の言葉を遮るようにして私は言った。
「拷問でもして吐かせるつもり?……それじゃあ、萃香とやってることは変わらないわ」
「拷問だなんて、そんなことはしませんよ!」
「それじゃあ、それ以外に早く聞ける方法はある?…異変は早く解決するに越したことはない……遅ければ幻想郷を滅ぼすことになりかねない。そんな状況で空を説得して情報を貰うだけの時間はないの………もう一度聞くわ。それ以外に早く聞き出す方法はあるかしら?」
「……たぶん…無いです」
「…わかって頂戴。空を説得することはできないわ」
「……わかりました」
早苗が了解した。
「きつく言ってごめんなさい」
「いいえ。私もすいません………でもこれからどうします?萃香さんがどこを拠点にしてるかまだ分かりませんし……」
「……あとで決めましょう」
私は言いながら河童の一人を抱え、集会所のような広いところに連れて行き、寝かせた。
全員合わせて二十人程度であったため、二十分程度で終わった。
「……霊夢さん。…家の数のわりに人数が少なくないですか?」
「……確かに……」
上から見下ろした時には家は三十軒以上あったはずだ。
「どうしたんでしょう」
早苗がいいながら走って探しに行ってしまった。
この騒ぎだ。聞きつけないはずがない。残る可能性としては…。
河童の服装を見ると本人たちの怪我ではない大量の返り血。それに河童の言っていた言葉。私たちがこんな目に合わなかったのにと言っていた。つまり、萃香に見せしめで殺されてしまったということだろうか。
「霊夢さん!向こうに人が倒れてます!」
早苗が私から三十メートルほど離れた場所に立っている。そのもっと奥には河童が倒れている。曲がり角から上半身だけ出ている状態でだ。
「っ!!早苗!そっちに行っちゃダメ!!」
私が走り出すと同時に早苗はその河童のことを引っ張ってしまった。
思っていたよりも軽かったらしく早苗は後ろに転んでしまった。
「いったあ…」
お尻についた土を払いながら早苗は目の前の物を見てしまった。
すぐに追いついた私と永琳が早苗の目を塞いだが、早苗は甲高い悲鳴を叫ぶと、ショックで失神してしまったらしく、力が抜けた。私たちがいなければ倒れていた。
「永琳。この子をお願い」
私が言うと永琳は近くのベンチに早苗を寝かせた。
「……酷いわね」
早苗が見つけた上半身だけの死体を永琳が見ながら言った。
「いや、まだそっちはきれいな方よ」
曲がり角の奥を見た私は言った。
「永琳…できるならばあなたは見ない方がいいわ」
私は言いながら道路を見回した。
今までに嗅いだこともないほどの強烈な血の匂いがする。命蓮寺の方が殺されていた人たちの数は多かったが、こちらは狭い範囲に十五人ほどの河童がバラバラのぐちゃぐちゃな状態で殺されている。
「…萃香が戦った痕?」
永琳が曲がり角の向こうから言った。
「ええ…たぶんね」
どれだけの力で殴られたのだろうか。
バラバラで何人死んでいるか見当もつかないが、転がっている頭部の数から辛うじて推測できた。
内臓や血、筋肉の破片などが壁などにへばりついている。
気分の悪くなるような血の匂いはいつ嗅いでも気分を悪くする。
「早苗のような反応が普通だと思うけど……あなたはそうじゃないわよね」
永琳が言った。
「……私が倒れたらだれが異変を解決するのよ……それに、早苗はあのままでいいわ。こんな惨状なんかにはなれない方がいい」
「……そうね……何かわかったことはある?」
永琳は察してくれて特に深く聞くこともなく言った。
「…一応見たけど、今までと特に変わらないわ…行きましょう」
これを見た河童たちが震えあがって、萃香に命令されたとおりに私たちに襲い掛かってきたといったところだろう。
「……行きましょう」
空のいた場所に戻り、私が空を小脇に抱える方に担ぐと、永琳がベンチに寝かせられていた早苗をおんぶし、博麗神社に向かって飛んだ。
…それにしても、
「妙ね」
私のつぶやきに永琳がこちらを向いた。
「どうしたの?」
「……ちょっと思い当たることがあってね」
「何か気が付いたの?」
「まだ仮説の段階だから、もう少し待って」
現在、日は傾いて夕日となってきている。
よくよく考えてみれば、今日は朝に水を一口飲んだだけで、何も食べていない。お腹が減ってくるのは必然的だ。
帰ったらどんなものを食べるか考えながら博麗神社に向かった。
明日も投稿すると思います。気が向いたら見てやってください。