前回の最後に待ち伏せしていた勇儀と美鈴と戦います。
「ああ、来ると分かってたからな」
後ろのヒマワリ畑の間から現れた勇儀が言った。
勇儀が早く戦いを始めたいらしく、うずうずしている。
「美鈴、てめえは霊夢以外ならだれとでも遊んでていいぞ」
勇儀が言い、私に向かって歩いてくる。
「勇儀。待ち伏せは奇襲してなんぼだと思うわよ?」
私は近づいてくる勇儀に自分から近づきながら言った。
「どうせお前には奇襲は効かない。したところでやれるのはそっちの雑魚だけだ。それじゃあつまらんだろう?」
勇儀が不敵に笑いながら言った。
「…永琳、リグルを頼んだぜ。早苗…いけるか?」
「…いけます。…魔理沙さんは援護をお願い済ます」
早苗が美鈴に対峙するようにして私の前に出た。
「助かる…。接近戦の美鈴と私とでは相性が最悪だ」
「ええ。わかってます」
早苗が言って戦闘態勢をとったころ、勇儀と私はお互いに拳が届く距離に立っていた。
「パーティーを始めようじゃねえか!」
ドゴォッ!!
勇儀が先手を仕掛け、私が勇儀の拳を受け流しながら、頭部にお祓い棒を叩きこんだことにより、こちらは戦闘を開始した。
勇儀が私の攻撃にひるまずに拳を突き出した。
ボッ!
勇儀の拳が巻き起こした風に服が強い力で引っ張られるが、無視して霊力を溜めたお祓い棒で右腕、首筋を殴った。
ここまでの動作は0.4秒以内に済ませた。
それでもこりずに勇儀は私に殴りかかってくる。
私はそれを冷静に対処した。
スピードや火力に頼り切った単調な攻撃だ、これなら武術に心得がある美鈴の方がまだ厄介だ。
ガンガンガンガン!!
隣では目で追うことすら困難な死闘が繰り広げられている。
勇儀と霊夢の戦いは、霊夢が勝ちそうだ。勇儀が一度攻撃する間に霊夢は二度三度と攻撃をしている。
「では、まいります」
私の前方では早苗と美鈴がにらみ合っている。
私はいつでも援護できるように空中に移動して魔力を手先に集中させた。
「じゃあ、行きますよ美鈴さん」
早苗がお祓い棒を構え、先手を決めにかかった。走りながら美鈴に早苗は弾幕を数発放つ。
それを美鈴は必要最小限の動きでさばき、近づいた早苗に蹴りを仕掛けた。
顔を狙ったもので、魔力で体を強化してなければ気絶では済まない。
それにあたる直前に早苗は後ろに少し下がった。
ギリギリではあったが当たってはいない。
美鈴は流れるような素早い動きで早苗を突き飛ばした。早苗はまるでお相撲さんにでも突き飛ばされたように吹っ飛んだ。
「きゃあ!?」
だいぶ強く突き飛ばされたのだろう。勢いよく幽香の家の壁に背中を打ち付けずるりと壁に背中を預けたまま座り込んだ。
「早苗!」
美鈴が早苗に追撃を入れる前に美鈴にレーザーを放つ。
コンマの時間差で十メートルほど先にいる美鈴にレーザーが到達する。
だが、当たらない。美鈴は早苗の方に向けて既に走り出している。
「くそっ」
走る美鈴に向けてレーザーを何度も放つ、だが美鈴はそれをことごとく紙一重で裂けた。
「早苗!逃げろ!」
私が叫ぶが早苗は今からでは遅いと判断したらしく、迎え撃つ大勢になった。
「くっ…」
早苗に近くなりすぎたせいで美鈴にレーザを撃てない。
「せいっ!」
早苗が美鈴に魔力を溜めたお祓い棒で攻撃した。
焦った攻撃なのだろう。大ぶりで隙が多い。
早苗の表情が焦りを浮かべた。
「早苗ぇぇ!」
バックから瓶を取り出そうとした。
隙だらけとなった早苗に美鈴は反撃するのではなく、すり抜けた。
「えっ!?」
早苗も私も驚き、一瞬動きが止まった。
美鈴はその間に私の方に方向転換して跳躍した。
初めからねらいは私だったようだ。
美鈴の踏み込みに地面がわずかに陥没した。
「……っ!」
今からレーザーを撃とうにも魔力の集中が間に合わない。
美鈴が私にタックルする勢いで掴みかかってきた。
美鈴の指が私の喉に強く食い込んだ。
「あぐっ…!?」
美鈴が私を箒から引きずり下ろした。
私の手元を離れたとたんに魔力の供給が絶たれて、箒の推進力が失われて落ち始めた。
やばい!
魔力で体を最大まで強化した。
あと何秒で地面につくか感覚でだいたいわかる。その間に一撃食らい入れてやる。
手先に魔力を集中させ、撃つ寸前に美鈴に向けた。
だが、向ける寸前に手を美鈴に弾かれ、レーザーはあらぬ方向へと飛んでいく。
魔力を再集中するには時間が足りない。どうすることもできなさそうだ。
視界の端にこちらに向かってくる早苗が見えた気がした。
十メートルの高さから落ちた際、発生する運動エネルギーが作用反作用により地面に落とされた私に衝撃として跳ね返ってきた。
「かはっ……!!」
肺から空気が抜けて少しの間、息の吸い方を忘れてしまったかのように呼吸ができなかった。
「魔理沙さん!」
早苗が怒りの表情を浮かべて美鈴に突っ込んでいく。
美鈴が片足を後ろに下げた。早苗に蹴りを食らわせる気だろう。
とっさに美鈴の足を掴んだ。
蹴ろうとした足をける直前に掴んだため、美鈴がそれに反応できず、早苗のお祓い棒を胸にくらって後方に吹っ飛んだ。
「大丈夫ですか!?魔理沙さん!」
「ああ……何とかな……」
私は早苗に手を貸してもらい、何とか立ち上がった。
「…やっぱり美鈴さんは強いですね……お祓い棒が当たるときに後ろに下がって威力を半減させました」
早苗がすぐに起き上がった美鈴を見た。
「……早苗、離れててくれ」
私はバックからさっきとは別の瓶を取り出しながら早苗に小声で伝えた。
瓶には様々な模様が描かれたラベルが張られており、私以外が見ても何もわからないだろう。
様々な材料を使い、様々な割合や方法で混ぜ、何十通りもの使い方を何百回も繰り返してようやく完成させたものの一つだ。
早苗が離れるのを見計らってそれを後ろに投げ投げながらレーザーで撃ち抜いた。
瓶をレーザーが貫いたことにより、外気に触れた中身は化学反応を起こし、すさまじい光を放つ。
夜ということもあり、太陽の何倍もあるような光があたりを照らした。俗にいう閃光手榴弾だ。
「ぐっ!?」
私を見ていた美鈴はそれを直視したため、一定の時間視力を失うことになるだろう。
私は美鈴に向けて走りだした。
レーザー系の弾幕は撃つ対象が近ければ近いほど僅かだが威力は上昇する。
美鈴にできるだけ近づき、最大出力のレーザーをぶっ放した。
美鈴はそれを目を閉じた状態でひらりとかわした。
「なん……!?」
見えていないはずの私の攻撃をかわした美鈴に驚きで開いた口が閉じない。
驚きで頭がついていかなかった。急いで行動を起こそうとしたが美鈴はそのわずかな時間で私の目の前まで接近していた。
まだ目は閉じたままだ。
「…魔理沙さん。私は人の気の気配を感じ取ることができます。……目を閉じていても私はあなたの正確な位置。気の流れからおおよそどんな行動をするかわかります」
私の肩を美鈴が掴んだ。
「…っ!」
美鈴に手をかざし、レーザーをゼロ距離から撃った。だが、レーザーは私の体を貫いた。
直前で美鈴が私の手を捻り、自分の方向に向けさせたのだ。
瞬間的に細くすることはできたが貫通力が高く、やすやすと私の体を貫いた。
「が…ぁ…!」
しかも、運の悪いことに後ろから追ってきていた早苗にもレーザーは当たったらしく悲鳴が聞こえた。
レーザーが貫いた部分から血がどろりと流れてくる。
「…く……」
「終わりです。魔理沙さん」
吐血した私に美鈴は死の宣告のように告げた。
倒れそうになった私を美鈴は殴り殺そうと腕を上げた。
やばい……。
美鈴が私に拳を振り下ろした。
「…っ」
当たる寸前にギュッと目を閉じた。
ゴギッ!!
殴られた音はする、なのに私は痛くもかゆくもない。恐る恐る目を開けると、美鈴を真横から殴り飛ばした霊夢が立っていた。
「大丈夫!?魔理沙」
霊夢が私の傷を心配そうに見た。
「ああ……それより勇儀はどうしたんだ?」
「…勇儀ならそこにいるわ」
霊夢が指をさす方向を見ると札が何枚も張られ、いくつもの札がつながって鎖のような形状になった札に地面に縫い付けられている。
「そう長くは持たないわ」
霊夢が視線を勇儀から美鈴に向けた。
「…今の一瞬で二回も殴られるとは……想像以上に凄いですね…」
美鈴が殴られた部分を押え、ヨタヨタとよろけながら立ち上がった。
「だけど……私は……まけられない……!」
美鈴から身震いするほどの殺気が霊夢に向けられた。
「いいわ。じゃあ、やりましょう」
霊夢が全く表情を変えずに美鈴に近づく。
そこには構えも何もない。
「はあっ!」
美鈴が怪我をしているとは思えないほどの鋭い正拳突きを霊夢に食らわせた。
しかし、それは掠りもしない。
美鈴の伸ばした右腕に上から一撃、右わき腹に横から一撃、左大腿に上からの一撃、お祓い棒で瞬きするよりも早く殴った。
「が…かぁ……!?」
美鈴が目を見開き、かすれた声で締め脱したような悲鳴を上げた。
それでも、霊夢に殴られなかった左手で殴ろうとした。
美鈴の攻撃をかわして頭、首筋、胸、みぞうちに霊夢はねじ込むように重い一撃を加えた。
三回殴った時よりも早い…!
これが幻想郷で一番強いといわれる霊夢の実力だ。
「………っ!!………!…………」
美鈴の意識が段々と無くなっていき、ゆっくりと崩れ落ちた。
早苗や永琳が息をのむ。
「……あとはあんただけよ……勇儀」
霊夢が神業じみたことをさらりとやってのけて勇儀の方に向き直り、言い放った。
「ああ」
勇儀が張り付けられた札や鎖状になった札を千切りながら立ち上がる
「さすが鬼ね」
霊夢が言うが勇儀は美鈴を見た
「お前との戦いはつまらん。…飽きたから帰る」
勇儀が私たちとは逆方向に歩きだした。
勇儀の言葉に驚いて、何を言ったらいいかわからない私たちをよそに霊夢が言った。
「私があんたを逃がすと思う?あんたは萃香に直接かかわっている奴なのよ?」
「……ああ。お前は追って来ようとさえしない。むしろ、私を逃がしてくれるさ」
「へえ。どういうつもり?」
「後ろの中の誰かを殺す…。私から四人全員を守りながら私を殺せるか?」
封印すら即座に破るような奴だ。いくら霊夢と言えど私たちを守りながらではきついだろう。
「……一度退こう……ここで無理をすることはない……リグルなら何か知っているかもしれないぜ?」
私が言うと霊夢は悔しそうな表情をした後、美鈴に札を張って担いだ。
「その代わりに美鈴は連れて行くわ」
「別にそれはいらなかったから構わねぇ」
勇儀が言いながらひまわり畑の中に消えていった。
「早苗……。大丈夫か?」
私が聞くと早苗は大丈夫と呟いた。
「……霊夢もお疲れ様」
私が言うと霊夢が勇儀が歩いて行った場所を見ながら言った。
「ありがと……一度戻りましょう」
明日も投稿すると思います。
気が向いたら見てやってください。