誤字脱字はできるだけ治していこうと思います。
少し離れて場所にいた永琳と合流した。戦ったわけではないため負傷はしていない。抱えているリグルはいまだ気絶している。
「…魔理沙と早苗……怪我大丈夫?」
霊夢が右肩を押える私と左腕を押える早苗を見て言った。
「…比較的に軽症ではあるが…大丈夫ではないな」
私が言うとそれを聞いた永琳が少しうれしそうにポーチの中をあさり始めた。
「魔理沙に早苗。怪我してるんなら?これを使って」
永琳が縦に二十センチぐらいの瓶をポーチから取り出し、手に納まる程度の大きさの湯飲み茶碗に並々注ぎ、それ私と早苗に手渡した。薬だろうか。
「これは何の薬ですか?」
早苗が手渡された薬を不思議そうに見つめた。
「怪我をした際にそれを飲めば、怪我をした部分の組織が治る速さが早くなる薬よ」
永琳が瓶の蓋をしてポーチに瓶を押し込んだ。
「ちなみに味はどうなんだ?まずいのか?」
粉薬などはオブラートなどに包んで飲み込むことができる。だが、飲み薬ならそれができない。だからできるだけまずいのは飲みたくはない。
「この幻想郷においしくて、よく効く薬なんて存在しない。大人しくその薬を飲むことね。……一気飲みの方がいいわよ」
まずいのか……嫌だなぁ…飲みたくねぇな…。
私と早苗はげんなりした様子でそれぞれに渡された湯呑み茶碗に並々注がれた薬を見つめた。
「「……」」
早苗と目が合い、無言で頷きあって一気に飲み干した。
「………おえぇぇ……!!なんだよこれ!?…何入れたらこうなるんだよ!!」
口を押えて吐き出さないようにしている早苗をよそに私は永琳に詰め寄って叫んだ。
「え?知りたい?」
永琳は、ふふっとサディスティック的な表情で笑いながら言った。
「知りたくもないわぁ!!」
私は頭を掻きむしり、湯呑み茶碗を遠くに投げ捨てた。
弧を描きながら小さくなっていき、湯飲み茶碗が最後にガシャンと地面に落ちて割れる音を聞いて少しは気が晴れた。
早苗も吐き出しそうになりながらも飲み込んだらしい。
「本当になんですかこれ…!?……今まで生きてきて、飲んだり食べたりしたものの中で一番まずいですよ…」
早苗もおえーっと舌を出した。
「………もういいかしら?」
霊夢が呆れたように言いながら博麗神社に向かってゆっくりと上昇していく。
「…おい…。少しは待ってくれよ…」
私は言いながら近くに落ちた箒を拾い、霊夢の後を追った。
「…………」
霊夢がいつもの通りに私たちの先頭を飛んだ。
三十分ほど黙って飛んでいたが霊夢が徐々に速度を落とし、止まった。
「「「?」」」
後ろを飛んでいた私たち三人は霊夢が止まったことにより止まった。
「どうしたんだ?霊夢?」
私がじっと動かずに止まっている霊夢に問いかけた。
「……なるほどね……そういうことね」
「え?」
前を向いたまま一人で解釈した霊夢がこちらを向いた。
「どうしたっていうんですか?霊夢さん」
早苗が霊夢に聞いた。
「……そうね……。この中に一人、裏切り者がいるわ」
霊夢が私、早苗、永琳の順に私たちを見回した。
「なっ…!?」
誰が驚いたかわからないが、驚いた声が聞こえた。もしかしたら私かもしれない。
「だ…誰が……?」
早苗が霊夢に言うが霊夢はそれについて答えるのではなく、返事代わりにこう言った。
「……あなたなんでしょう?……魔理沙」
名前を呼び、私よりも背が高い霊夢が私を見下ろし、目を細めた。
「……え…?嘘ですよね?…冗談はやめてくださいよ……、一緒に戦ってきたじゃないですか」
早苗が取り乱して私と霊夢を交互に見た。
「魔理沙さんも何とか言ってくださいよ………じゃないと本当に裏切り者になっちゃいますよ…?」
永琳は私に警戒しながらも私や霊夢が何を話すのか耳を傾けた。
「……なぜそう思たんだ?」
私は霊夢にたっぷりと時間を使って言った。
「……初めに、魔理沙は知らないだろうけど、河童の村に行ったときに空が来た。これ自体は何も変じゃないわ。…でも、さっき、戦う前に勇儀はこう言っていた……。来るのはわかっていた…と。……予測したにしては正確すぎる。空のときもなぜ私たちの居場所が分かったかずっと疑問に思ってた。でも答えは簡単…誰かが裏切って敵に私たちがどこにいるか伝えていた」
「………確かに筋は通ってる…。でも、遠くの相手と連絡を取る魔法なんてものはない。…私がどうやって萃香たちと連絡を取るっていうんだ?……それだったら誰だって連絡できる。私以外だって疑われるはずだぜ?」
「……向こうにはにとりもいる。無線機か何かを使ったんじゃない?……それに、白玉楼でも咲夜を連れ戻しに文が来たわ。…文は連れ戻しに来たと言っていたはずよね?」
「……ああ」
私は文と咲夜の会話を思い出しながらうなずいた。
「つまり、咲夜は勝手な行動をしてたんだと思うの……勝手な行動をした咲夜を文は萃香の命令で連れ戻しに来た。……でも、萃香と言えども自分についている仲間の場所を一人一人把握してるとは思えない。…それなのに文が来たということは、その時私と一緒に行動していた魔理沙が伝えたということになるわ」
永琳たちと行動を共にし始めたのはそのあとであるため、この二人が萃香たちに精通しているとは思えないということだ。
「……咲夜が無線機を持っていたという可能性は?」
「ないわ。以前にとりは無線機を作るのが難しくて数は全然ないって言ってたわ。だから、そんなものを敵に潜り込んでいる人に持たせないで誰に持たせるのよ」
「……!」
「魔理沙さん…」
何も言い返さない私に早苗が呟く声が聞こえた。
「……違うなら違うって言って!!」
突然、霊夢が私を怒鳴りつけた。その声量に私はびくりと体を震わせた。
「その推理は間違ってる。私は裏切ってないって!」
霊夢が力いっぱい叫んだ。
私は気が付いた。霊夢は小さいころ見せたあの時のように泣きそうな表情をして叫んでいた。
「……っ!」
その顔を見て私は罪悪感で霊夢を見れなくなってしまう。罪悪感で押しつぶされそうだ。
うつむいて帽子を深くかぶった。
これ以上、霊夢に嘘はつきたくはない。もう遅いのはわかってる。これ以上言い逃れができないから白状するしかなくて白状したと思われても仕方がない……。でも、霊夢に嘘をつきたくはない一心で私は言った。
「……霊夢が言う通り……私が…裏切り者だよ……」
私が言うと早苗と永琳が私から距離を取り、霊夢の横に移動した。
「……!……そお。じゃあ…死ぬ準備はできているわね?」
私が言ったとき、霊夢は息をのんで悲さがいりまじった雰囲気を一瞬だけさせた。だが、すぐにいつもの霊夢の声に戻った。
霊夢が言ったとき、私は驚いた。霊夢は空の時や小傘の時には生きて連れてきたからだ。でも、殺されてしまってもしかたがないよな…。
「…いいや。…できてない……」
私は霊夢に殺されてしまうのだろうか。そう思いながら少し線を上げた。
霊夢を見ると私を睨みつけている。相当怒ってることがわかる、その視線だけでまるで蛇に睨まれた蛙のように動けなくなってしまった。
「っ!」
悲鳴を上げなかったというよりも、喉や肺から空気を押し出す器官が凍り付いたように動かなかっただけだ。
動けない私に向かって霊夢が加速しながら進もうとした。だが、すぐに止まった。
なぜならば、そのまま進んでいれば霊夢の頭部にはナイフが突き刺さっていただろうからだ。
「……咲夜」
私の隣に咲夜がいつの間にか浮いている。
「今は戦う気はないので、ごきげんよう」
そう咲夜がいうとこちらの意思とは関係なく時を止めた。
世界が段々とゆっくりとなり、風でなびく髪などがそのままの形で止まり、まるで写真でも見ているような気分になる。
「魔理沙いきますよ。…あなたにもやらなくちゃならないことがあるでしょう?」
咲夜が言い、後ろを向いて飛び去った。
時の止まった世界で霊夢たち三人は私がいた場所を睨み続けている。
「……すまない……霊夢」
自然と口から洩れた。私は箒をくるりとその場で回転させて咲夜の後を追った。
「……」
瞬きをすると魔理沙は消えていた。咲夜の能力で時を止めて移動したのだろう。
「…魔理沙さん」
早苗が悲しみと怒りがわずかに含まれた絞り出した声は私の耳にか細く聞こえた。
「…行くわよ」
私が言い、180度方向転換して先ほどのように二人の先頭を飛んだ。神社まではあと十分ぐらいだ。
「……霊夢さん。…魔理沙さんはどうして萃香さんのところに行ったんですか?」
なぜ私に聞くんだと言う質問を私のわきまで飛んできた早苗が言った。
「…知らないわよ」
「…ですよね……」
「まあ……どうでもいいわよ……魔理沙がどんな理由で私を裏切ってても関係ないわ」
「……なんでそんなこと言うんですか…?……魔理沙さんは霊夢さんの友人ですよね…?」
「ええ…友人だった…わ。…でも、どんな理由があろうとも私を裏切った事実は変わらないわ」
私がバッサリと切り捨てるように言うと早苗は黙ってしまった。
私も少なからず動揺して、魔理沙の裏切りというものに対して苛立っていたようだ。早苗に当たってしまい、申し訳ない気持ちになった。
「……」
重たい空気が流れ、十分間ずっと会話がなく神社に向かって進んだ。
ようやく博麗神社につき、茶の間に入った。
「起きてたのね…空」
ベットに寝たまま上を見つめる空が言った。
「ああ」
起きていたのに逃げなかった理由は、私が周りに強力な結界を張ったからだ。
「……」
茶の間に入った私、永琳、早苗を見て空が言った。
「魔理沙が裏切り者とようやく気付いたのか」
空が興味なさそうに上を
見ながらつぶやいた。
「遅い報告ありがとう」
永琳が皮肉を言いながら来客用の布団に美鈴とリグルを寝かせた。
「どういたしまして」
そう言った空は起き上がり、私の方を見た。
「何?」
「聞かないのか?萃香の居場所のことを…」
「聞かないわよ……あんたのさとりへの忠誠心は本物。どうせ聞いたって話さないでしょ?なら、聞かないわよ」
「……ああ」
空は意外だと言いたげな表情をした。
「私たちが無理やりあなたから情報を引き出すと思った?」
「……情報が引き出せなければ…すると思ってた」
「あたしらにどんなイメージを持ってるか知らないけど、そんなことはしないわ」
「……」
「……永琳。リグルはどう?」
私が聞くとリグルを調べていた永琳が言った。
「……強く殴られて気絶しているみたい……頭に多数の打撲の跡がある」
リグルの頭を自分のふとももの部分に置き、頭をいじりながら永琳が言った。
「…そう……すぐにとは言わないけど、目は覚ましそう?」
「そのうちだと思う。いつとは言えないわ」
「……わかった。……一度二人とも休んで…これから先いつ休めるかわからないわ」
私が二人分の布団を押し入れから出しながら言った。
「でも、霊夢さん一人だけ起きていてもらうというのは、申し訳ないですよ」
早苗が言うが、誰かしらがやらなければ寝込みを襲ってくれと言っているようなものだ。
結界を張っていてもそれは変わらない。
この部屋だけなら何とかなるかもしれないが、結界が大きくなればなるほど防御力は著しく下がる。
そんな結界などを張って大量の霊力を消費するなら、私が起きて見張っていた方が何倍もましだ。
「結界を張ったことがあるなら早苗もわかるはずよ。大きな結界は見た目だけで大した防御力はないわ。……だから誰かがやらないといけない……じゃあ、三時間後に起こすから、それまで寝てて……そのあと私が寝るから」
私が言うと早苗がうなずき、敷いた布団に潜り込んだ。疲れていたのだろう程なくしてすぐに二人分の寝息が聞こえてきた。
「……」
現在の時刻は午前0時。
移動や勇儀たちとの戦闘。魔理沙の裏切り、それらにより思っていたよりも時間をだいぶ食っていたらしい。
霖之助さんから貰った時計の秒針は一秒一秒を正確に刻む。
カチ…カチ…カチ…
六十回で一周し、分針が1メモリ進んだ。
秒針が何周したかわからなくなってきたころ、空が私に声をかけてきた。
「…霊夢」
「………何?」
私は周りの気配を探っていたため、反応に少し遅れた。だが、すぐに私は返事をした。
「…萃香に勝てると思ってるのか?」
空が体中にまかれている包帯に目を落とし、眺めながら言った。
「…さあね。……そんなことはやってからじゃないとわからないわ」
目を閉じたままそう答えると空がこちらを見たらしく、視線を感じた。
「…確かにな…でも、お前ひとりじゃ勝てないよ…」
空が言うが私は目を閉じてそのまま何も言わず時間が来るまでじっとして、周りに向けて神経をとがらせる。
よく音が聞こえる。私の周りにいる五人のそれぞれがする呼吸音。風が壁や隙間を通ってなる吹き抜ける音。風で動く砂や葉っぱの擦れる音。それらがよく聞こえる。
私が何かを言うのか止まっていた空だが、何も言わないと悟って布団に寝転んだ。
「………」
ずっと同じ体勢で集中していたため、いつの間にか約束の時間を三十分ほど時間が過ぎている。
私は立ち上がって二人を起こして見張りを頼み、寝室で睡眠をとることにした。
布団に潜り込み、私は目を閉じた。
今日会ったことが頭の中を次々と横切っていく。
白玉楼や命蓮寺の出来事などが何度もリピートされ、正直に言うと寝ることができない。
どの映像も最終的にたどり着く場所は、魔理沙のあの泣きそうな顔だ。
なぜ泣きそうな顔をしていたかなんて知らない。私に知る術がない。いくら考えても私にだって出ない答えだってある。
この場所には魔理沙が寝ていた。今となっては彼女がどう思ってこの布団で寝ていたかはわからない。
寝返りをうつと顔が枕に沈んだ。ほのかに魔理沙の髪の匂いがした気がした。
あれこれと考えているうちにいつの間にか寝ていたらしく、早苗と永琳がこちらに来る足音で目が覚めた。
「……」
すでに太陽は上から光で地面を照らしている。
二時間か三時間ほど寝ることができただろうか。
私が布団から起き上がったところで二人がふすまを開けた。
「おはようございます!霊夢さん!!」
早苗が朝から元気よく大きな声であいさつをした。
「おはよう」
私は短く挨拶を済ませて布団を片付けた。
「あれ?起きてたんですね」
早苗が少し驚いた様子で言った。
「あなたたちの足音で目が覚めたわ」
二人には何かがあったら起こしてくれと伝えてあったが、様子から見るに緊急というわけではなさそうだ。
「霊夢、今ある食材で朝食を作ったのだけど、よかったかしら?」
永琳が言うまで気が付かなかったが、何か食べ物を焼いた臭いなどがわずかに感じ取れた。
「ありがとう。助かるわ」
朝食をとるために二人を先頭に茶の間に向かった。
空にも朝食を渡して結界内で食べてもらい、私たちも机に並べられて料理を食べた。
「……萃香さんがいる場所は見当がつきませんね」
早苗が言い、朝食の焼いた卵を食べた。
「行けばそのうち萃香たちがいるところにつくわよ」
「地道にやっていくしかなさそうね」
永琳がごちそうさまと手を合わせててから言った。
食器を片付け、あらゆる準備を済ませた。
「…今回は地霊殿に行ってみようと思うわ…旧都にはほかの鬼もいるし、気を付けていきましょう」
地霊殿は地上から見て地下深くに存在している。
行くためのルートただ一つ。
この旧都に行くために続く斜めに正確に掘られた穴から行くしかない。
風化などで崩れたりして中はかなり凹凸が激しい。
待ち伏せする相手からしたらこれ以上にないくらいいい場所だ。
入るものとしては、これ以上に入りたくない場所などそうそうないだろう。
「この場所には入りたくはないわね」
永琳が真っ暗闇の洞窟を見下ろして言った。
「どっちみち行くことにはなるわ。萃香がこの場所にいる可能性だって捨てられない……私が先導するからついてきて」
私が初めに中に入った。
早苗と永琳は固まった方が安全と判断したらしく、二人はすぐ後ろをぴったりとくっついてくる。
三十センチ先も見えない。後ろの二人の息遣いがわずかに聞こえてくるぐらいだ。
こんなところで襲われれば本当に洒落にならない。
しばらく進み、そう思ったときに小さな声が洞窟を反響して聞こえてきた。
「……今の…聞こえた?」
後ろの二人に静かに語りかけると永琳と早苗のうっすらと見える輪郭が頷くような動きをした。
「そもそも、アタイがいれば一人でじゅーぶんだよ!」
この元気な声は氷の妖精のチルノの声だろうか?
「さすがに無理だよチルノちゃん」
「絶対に無理だと思う」
「何を言う!!…なんてったってアタイはさいきょー!なんだから!」
チルノが最強の部分を強調して叫ぶ。
ほかの二人はあきれたというより疲れたというようにため息をついた。
喋り方などから大妖精とルーミアだろう。
「チルノが霊夢に勝てるはずがないよ。妖精全員でかかっても私たちが負けるよ」
ルーミアが言った。
「そうでもないかもしれないわよ?」
私が話していた三人に言うと、三人が驚き慌てふためきながら立ち上がる音がする。
「出たな霊夢!姿は見えないけど、このさいきょーのアタイがけちょんけちょんにしてやるー!」
チルノが叫ぶと戦闘態勢に入ったのか、洞窟内の温度がわずかに下がった。
明日も投稿すると思います。よろしくお願いします。