インフィニット・ストラトス 〜プラスワン〜 作:アルバトロス
お気に入り数1000達成及び日間ランキング4位、あと感想とかありがとうございます。ホント感謝です。
期待の重さに打ち震えながら次話を投稿。
◆ ◆ ◆
どうにか織斑を説得した俺は、「取り敢えず落ち着けるところへ行こう」と言って我が家へ誘った。
「お、お邪魔します」
何故にそんな緊張した様子なのか。
……ああ、こんな時間に一人暮らしの男の家に上がるのは緊張するか。
「荷物はここ置いとくぞ。弟君はソファにでも寝かせとけ」
「あ、ああ。ありがとう。そうさせてもらう」
その間に冷蔵庫から飲み物を取り出しておく。
「ほら、どうぞ。ただの麦茶だけど」
「いや、ありがたい。喉が渇いていたからな」
喉を潤し、落ち着いたのを見計らって話を切り出す。
「それで、何があったんだ?」
織斑は躊躇っている様子だったが、一つ深呼吸をして覚悟を決めたようだった。
「そうだな……何から話したらいいか。最初は――」
◆ ◆ ◆
「――で、家を飛び出してあてもなく歩いていたら、お前に会ったというわけだ」
「……そうか」
織斑の話を一通り聞いて、俺の心にあったのは強い自責の念だった。
まさかそんなひどいことになっていたとは……いや、あの織斑があそこまで溜め込んでたんだ。ひどいことになっているのは想像に難くなかったはずだろ。
何が「家族の問題に〜」だ。そうやってカッコつけてる間に、織斑はこんなに追い詰められたんだろうが。何やってんだ、俺は――「恩田?」
声を掛けられて顔を上げると、織斑は心配そうな顔をしていた。
「ん、何だ?」
「その……あまり自分を責めるな。お前達に言わなかった私が悪いんだ」
思わず目を瞠った。
こいつは自分のことでいっぱいいっぱいのはずなのに――いや、そんな奴に気を遣われる俺が駄目なのか。
……ったく、反省は後だ。
「悪い、切り替える」
麦茶を一息に飲み干してから、織斑のことを考える。
まず金が無い。
次に家が無い。
最後に頼れる大人がいない。
おい、何が残ってるんだよ。……ああ、織斑か。
なんだ、一番大事なものだけは残ってるじゃないか。
「金に関しては明日確認してみよう。家は一応当てがある。大人は……柳韻先生を頼るしかないだろうな。他に誰か候補はいるか?」
「……いや、いない」
「よし。話は早いほうがいい」
携帯を取り出して、登録してある少ない番号の中から一つを選ぶ。
『――もしも〜し』
「よう篠ノ之、こんな時間に悪いな」
『こんな時間?……おお、もうこんな時間か』
……大丈夫かこいつ。
『そんで、何の用かな?』
「柳韻先生はまだ起きてるか?』
『お父さん?どうだろ、知らなーい。なんで?』
「ちょっと話したい。織斑のことだ」
電話の向こうでガタッと音がした。姿勢でも正したのか。
『ちーちゃんの?』
「ああ、色々あってな。今から行くから、知ってる範囲で事情を教えといてくれ。寝てたら――」
『寝てたら叩き起こすから大丈夫。他には?』
「あとは着いてから話す。んじゃ頼んだ」
『おっけーい』
……少々不安だが、話は早いほうがいいのは確かだ。電話を切り、急展開に少し驚いている織斑を見る。
「というわけで、今から篠ノ之家に行くぞ。弟君は……連れて行ったほうがいいだろうな」
「……ああ、私が背負っていく」
「そんじゃあ、今日は向こうに泊まるかもしれんから直接学校に行けるように必要なものを用意してくれ。俺も一応準備するから」
「ああ、分かった」
さて、俺も学校の準備やら何やら――あ、ノート買ってねえ。……まあいっか。それどころじゃねえし。
◆ ◆ ◆
篠ノ之家に着くと、柳韻先生が待ってくれていた。
そこから離れたところで、篠ノ之も壁に寄りかかっている。
「夜遅くにすみません、先生」
「いや、緊急のことなのだろう?構わないよ」
座りたまえ、という言葉に従い腰を下ろす。
「それで、何があったのかな?束からは、千冬君が家族の事で何か問題を抱えているとしか聞いていないんだが」
「説明させていただきます。まず――「待ってくれ、恩田」――織斑?」
語り出そうとした途端に遮られて織斑を見ると、彼女は決然とした顔をしていた。
「私が話す」
「いや、俺が話すよ。誰が話しても変わらないだろ?つらい話を何度もしなくても……」
「いや、私に話させてくれ。これは私の問題なんだ。せめてこれぐらいしないと、私が自分を許さない」
……相変わらず、不器用で強い奴だ。
「……仕方ない。好きにしてくれ」
「ああ。……では、お話しします――」
その後、織斑は俺に語った話を繰り返した。
一度俺に話したからか、先ほどよりも順序立てて話せている。
「――こんなところです」
話を書き終えた柳韻先生は苦い顔をしていた。
「最近様子がおかしいとは思っていたが、まさかそんなことになっているとは……気付かなくてすまないね、千冬君」
「いえ、そんな……」
そんな会話を他所に、もう1人が動きを見せる。
「――待て、篠ノ之」
こっそり部屋を出ようとしていた篠ノ之を制止する。
「なんで止めるんだよ!束さんは――「いいから」――っ」
俺に食ってかかる篠ノ之の言葉を遮る。
「後にしろ」
目を細めてそう言うと、篠ノ之は舌打ちをして元の場所に戻った。
「……それで、千冬君。私は何をしたらいいのかな?」
「それについては、俺が説明します」
一瞬凍りついた空気の中、躊躇うように口を開いた柳韻先生に感謝しつつそう言う。
「現在、織斑には保護者がいません。ですが、生きていくには様々なところで大人の許可が必要になります。そこで柳韻先生には、織斑の後見人となっていただきたいのです」
「……それだけかな?お金や家に当てはあるのかい?」
「ええ。お金は多分大丈夫だと思います。家に関しても、一応当てはあります。まあ、その辺の細かい話は明日にしましょう。今日は事情だけお話ししておきたかったので」
「そうか、分かったよ。……今日はもう遅い、泊まっていくといい。客人用の部屋があるから用意させよう」
「ありがとうございます」
頭を下げてから、篠ノ之にアイコンタクトを送る。
不機嫌そうにしていた篠ノ之は一瞬首を傾げるも、納得したように頷いて指を二本立てた。
……なるほど、二階か。
◆ ◆ ◆
一階にあった割り当てられた部屋に向かい、荷物を置いて少し時間を潰してから、部屋を出て二階に向かった。
「……遅い」
「隣の部屋が静かになるまで待ってたんだよ」
仁王立ちで待っていた篠ノ之に招かれ、部屋に入る。
「……なんつうかすげえ部屋だな」
「そう?……ああ、そっちのは触っちゃ駄目ね」
初めて入ったが、篠ノ之の部屋は彼女が今までに作ったと思われるものやびっしりと書き込まれた紙で埋められていた。
「なあ、これ何がどこにあるのか分からなくなんないのか?」
「全然。寧ろ束さんにとってはこれがベストな配置なんだぜ」
相変わらず天才の思考回路は分からんな、と思いながら空いてるところに腰を下ろす。
「で、さっき止めたのはやっぱりちーちゃんやお父さんの前でこう言う話をしたくなかったから?」
「ああ。あの2人は清廉潔白な性格してるからな。知られたら面倒だ」
まあ、俺はそんな性格はしていない。
「取り敢えず、パソコン一台貸してくれるか?そんな良いのじゃなくていいから」
「束さんの部屋にスペックの低いパソコンなんて存在しないんだよ」
「……まあ何でもいいや。俺はしなきゃなんない手続きとかについて調べる。その間にお前は件の夫婦のことを調べてくれ。名前と住所から職場とか個人のアドレスの特定は行けるだろ?」
「そんぐらい朝飯前だよ♪」
「じゃあ、役職から仕事内容、検索履歴やSNSでの発言まで、徹底的に頼む」
「りょうか〜い。いやあ、楽しくなりそうだねえ」
「ははっ、本当だな」
口の端をつり上げて悪辣に笑う篠ノ之を横目に、自分の口も三日月を描いているのを自覚しつつ、俺もキーボードを叩き始めた。
――二度と織斑には手出しできないようにしてやる。
11/5 最後の部分を少し修正しました。