インフィニット・ストラトス 〜プラスワン〜   作:アルバトロス

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多くの人から質問されましたが、海斗の前世についてはいずれ本編で、話の流れでか或いは閑話のような形か分かりませんが、語りたいと思います。

あと、評価の際に一言欲しいと言いながら一言欄を設けていなかったことに関しましては、本当に申し訳ありません。


第9話 お前だから

 対応に出た職員に散々怒鳴り散らし、文句を喚きまくって電話をぶちぎった。

 これで良しと。

 

「……ねえ、今の何?」

 

 ここまで空気を読んで黙っててくれた篠ノ之に、俺は懇切丁寧に説明する。いや、そんなに丁寧でもないか。

 

「ん、役所に電話したんだよ。向こうの手続きはどんぐらいで終わるのかってな。一週間ぐらい猶予はありそうだ」

 

「そうじゃなくて!君が出してた声のことだよ!」

 

 ああ、そっちか。いや分かってたけども。

 

 では説明しよう。俺の108ある特技の――嘘です、そんなにない。いくつかある特技の一つで、子供の声帯で大人の声を出すというものだ。

 それもルパンのように誰かの声に似せることは出来ないし、電話越しでなければバレてしまうような精度の低いものだが。

 

 ただ、便利な特技ではある。

 何年か前に祖父母も死んで天涯孤独となった時に、子供では出来ることが少なさすぎるのに苛立って練習してみたら意外とうまくいったという経緯で生まれたもので、お陰でかなり楽できた。

 

「名前は書類に書いてあるだろうし、声ぐらいなら少し違っても電話のせいで誤魔化せる。わざわざ身元確認をするほど重要な情報なわけでもないし、いけると思ったんだけど……やっぱりいけたな」

 

 はは、と笑うと、篠ノ之は訝しげな目でこちらを見ていた。

 

「この後ちーちゃんが役所に行くのに、今の電話は必要あったの?」

 

「そりゃもちろん。今の声が通用するかどうかの実験が一つ、こっちの話の信憑性を持たせるのが一つ」

 

もう一つあるけど、それはまだ言えない。

 

「それであれだけ怒鳴り散らしてたのか……」

 

「考えなしには動かんさ。考えることをやめるのは人間をやめるのと一緒だからな。ほら、パスカルも言ってるだろ。“人間は考える葦である”ってな」

 

 “人間は考える葦である”。

 人間はまるで一本の葦のような存在だが、“考える”事が出来る。これは素晴らしい事なんだ、みたいな意味だったはず。うろ覚えだけど。

 

 つまり人間の価値は“考える”というところにあるわけで、逆説的にいえば考えることをやめた人間は獣にも劣るということだ、と俺は解釈している。

 

 ……柄にもなく真面目なことを言ってしまった。

 

「ほら、止まってる場合じゃない。早く行こうぜ」

 

「止まって電話してたのは君だよね!?」

 

 即座に乗ってきた篠ノ之を笑ってあしらいながら、篠ノ之家への道を急いだ。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 15時過ぎ。

 織斑が柳韻先生と共に役所から戻ってきたので、食卓に集まってもらう。

 

「お疲れのところ申し訳ありません、先生」

 

「いや、大事なことだからね」

 

 そう言ってもらえるとありがたい。用意されていたお茶で軽く喉を湿らせてから口を開いた。

 

「織斑の金と家の話です」

 

「ああ、それは大事な話だね」

 

 そう呟く先生に頷く。

 

「まずは金ですが、織斑の両親の口座はまだその名義のままだったので、取り敢えず銀行に連絡して凍結してもらいました。故人との関係が分かる書類――戸籍謄本などですね――と本人確認ができるものを持って窓口に行けば、再び引き出せるようになるそうです。口座には元々の貯蓄や生命保険で下りたものなどが入っているので、そこそこ纏まった額は手に入りそうです。少しの間は大丈夫でしょう」

 

 織斑はひとまずそれを聞いて安堵した様子である。

 その様子に申し訳なさを感じながら、俺は水を差す。

 

「ただ、それは今後大きな出費がなかった場合の話だ。これからお前は高校があるし、ひょっとしたら大学に行くかもしれん。弟君に関してはまだ小学生ですらないんだからな。金はかかるぞ」

 

「そ、そうだよな……」

 

「ただその辺はお前の頑張り次第でなんとかなるからひとまず置いとこう。次は家の話だ」

 

「ああ。そういえば、アテがあると言っていたな。いったいどんな物件なんだ?」

 

 勢い込む織斑を、まあ落ち着けと手で抑える。

 

「その前に。取り敢えず前に織斑が住んでた家が今どうなってるか調べてみたけど、例の夫婦に譲渡された後に売りに出されてた。取り戻すのは資金的に厳しいだろうな」

 

「……そうか」

 

 生まれ育った家だ、思い入れもあるだろう。祖父母の家を無駄と分かっていながら売れなかった俺にもその気持ちはよく分かる。

 だが今後のことを考えると、仮に手中に残っていたとしても売りに出す予定だった。

 流石に家族4人で住んでた一軒家を維持するだけの資金は勿体無い。

 

「では、どこかを借りるのか?」

 

「ああ、良い物件があるぜ。家賃は月2万円で、敷金礼金はゼロ。保証人も必要無しで、おまけに中学校も徒歩圏内だ」

 

「何!?そんな夢のような物件が……あるわけないな。あるとしたら今にも崩れそうな廃屋ぐらいだろう」

 

「おいおい失礼言うなよ、超キレイだぜ?広いし」

 

 この辺で篠ノ之が気付いたらしい。「あっ!!」と叫んで立ち上がり、俺の方に迫ってくる。目が超怖いんだが。

 

「ねえ、どういうつもり?まさか本気じゃないよね」

 

「いや、本気も本気、大真面目だぜ。大体、これが最善――とは言えないまでも、次善くらいだろ。もっと良い手……というか現実的な手は他にあるか?あるならそっちに変えても良いけど」

 

「うっ、それは……でもでも、流石にそれは……」

 

 うんうん唸り始める篠ノ之に織斑がちょっと引きながら、首を捻る。

 

「束は何を言っているんだ?私にはよく分からないんだが」

 

「ああ、簡単なことだ。その夢のような素敵物件ってのはウチなんだよ」

 

「ほう、そうなのか。それなら確かに中学校も近いし家も広いな。……うん?『ウチ』……うち?」

 

「そう、俺の家」

 

「…………はあああああっ!?」

 

 篠ノ之家に、織斑の絶叫が響いた。

 

 ……うん、まあ驚くよね。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 驚愕のあまり錯乱する織斑をどうにか抑え、ふしゃーッと威嚇してくる篠ノ之をやっとの思いで宥めた。

 で、主に唯一冷静な先生に向けて理由を話す。

 

「例えば織斑が激安物件を借りれたとするでしょう?で、一生懸命生活費を切り詰めて、それでも織斑が高校生になる頃には相当厳しいでしょう。で、その後は織斑が中卒で就職すると?ただでさえ中卒で収入が低いのに、弟君は成長するにつれてお金がかかるようになる。はっきり言ってとても支えきれるとは思えません」

 

「それは確かにそうだろうが……やはり私としては、千冬君に任せるとしか言えないな。千冬君が嫌がるのならば何か他の手を考えるが、それで構わないかい?」

 

「ええ。嫌がっているのを無理やり、とは思いません」

 

「だそうだが、千冬君。君はどうする?」

 

 問われた織斑は、俯いて考え込んでいた。

 

「嫌なら嫌で無理することはないぞ?」

 

 流石に同い年の男子と一つ屋根の下っていうのは無理があったか、と内心後悔しつつ、断りやすいようにそう言うと。

 

「……いや、そういうわけではないんだ」

 

 織斑は首を横に振った。

 ……じゃあなんで?

 

「ただ、お前にまた迷惑をかけてしまうのだと思ってな」

 

 ……はぁ。

 思わず溜息を吐いてしまった。

 

「あのなあ織斑。迷惑だと思うんならこんな提案してねえよ。俺はお前だから、お前なら良いと思ったからそう言ってるんだ」

 

 そう言うと、織斑はバッと顔を上げた。目が見開かれていて、その頬は少し赤い。

 ん?……ああ、ちょっと台詞が臭すぎたか。ちょっと恥ずかしい。

 

「……大体、迷惑がどうとか今更だろ。何年お前の後始末に奔走したと思ってんだ」

 

 織斑と臨むドキドキ☆調理実習に比べたら、住人が2人増えるぐらいなんてことない。

 

 照れ隠しも交えてそう言うと、途端にムッとした顔になった。そしてプイッとそっぽを向く。

 

「ふん、お前のうちを借りさせてもらうとしよう。一夏のためにもな」

 

「お前ホント弟君が大好きだな」

 

「……ほっといてくれ」

 

 織斑は、今度はさっきとは別の理由で顔を赤くしたのだった。

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