君と龍の愛し方   作:武田兎

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第十話 決勝

まだ太陽も完全に顔を出し切っていない早朝、普段ならいびきをかきながらまだ寝ている時間だが本日に限っ

てはそれはない。

なぜならば今日は待ちに待ったインターミドル県予選、昨晩から既に緊張と嬉しさで心臓が高鳴っていたせいか、ほとんど眠れなかった龍一の目は冴え渡っている。

 

「よし準備万端行ってきまーす!!」

「あ、え?ちょ、ちょっと!!」

「ん?え!?なんで憧ここいるんだ?」

 

いつもではありえないくらい時間に余裕を持って爽やかに家を後にすると誰かに急に呼び止められる。そこにいたのは昨日訳のわからないまま顔面にカバンを明らかな殺意を込めてぶつけてきた新子憧であった。憧をみた龍一は昨日の出来事がトラウマになってしまっているので思わず身構えてしまう。

 

「き、昨日のこと私も悪かったし…だからこれ…」

「お、お守り?」

 

そう言ってバツが悪そうに憧がカバンから取り出したのは神社の社名と『必勝祈願』という刺繍の入った小さなお守りであった。

 

「お守りっていうのは誰かからもらったほうが効果があるものだから…」

「さすが神社の娘…」

「な、なに!?いらないなら別に、」

 

茶化してくる龍一に対し、憧は顔を真っ赤にしてお守りを再びカバンの中に戻そうとすると龍一の手がそれを阻止してお守りを奪い取る。

 

「おう、あんがとな憧」

「まったく…絶対優勝してきなさいよ」

「おう!!お前も女子の大会よく見とけよ来年は憧も出るんだからな!!」

(ほんとう…どこまでも真っ直ぐな奴…私も負けてられないな)

 

そう言って走り出した龍一の背中が見えなくなるまで眺めていた憧も女子の試合会場まで思わず走り出して向かっていった。

 

 

その頃松実家ではいつも通り玄が朝食の準備を誰よりも早く始めていた。味噌汁の準備が出来た頃、姉の宥がまだ眠そうな目を擦りながら二階から降りてくる。

 

「ふあ~おはよう玄ちゃん」

「おはようお姉ちゃん」

「今日だね龍一くん…」

「うん…」

 

妹の顔がどこか普段よりも強張っているのを察した宥は玄の顔を覗き込んで尋ねる。

 

「玄ちゃん…龍一くんに会いに行かなくていいの?」

「うん、大丈夫、きっと龍一くんいつも通りの笑顔で帰って来てくれるって信じてるから。私は待ってる」

「玄ちゃん…」

 

玄はグツグツ煮える鍋を掻き回しながら嬉しそうに答える。きっと龍一のことが心配で今すぐにでも試合会場に向かって応援したいはずなのにただ信じて待ち続けている、そんな健気な妹を見て宥は思わず微笑んでしまう。

 

「な、何かな?お姉ちゃん」

「玄ちゃん、龍一くんのことになるとすごいあったかい…」

「え!?っそそそれはどういう」

 

宥の言葉に動揺した玄が思わず先ほど完成したばかりの味噌汁の入った鍋に肘がぶつかってしまい、わかめと豆腐の入った味噌汁が勢いよく床に飛散する。

 

「お、お味噌汁が…」

「ご、ごめんね玄ちゃん、あ…」

「ん?どうしたのお姉ちゃん?」

「玄ちゃん髪留めが…」

 

玄がいつも大切につけている龍一からもらった髪留めが床になんも前触れもなくポロリと落ちてしまっていた。

 

「大丈夫?」

「うん、ただ取れただけみたい、それより…」

「…それより?」

「ううんなんでもないよ、さあお片付けしよう」

 

二人で飛散した味噌汁の片付けにはいるなか、玄はさっき宥に言おうとして飲み込んだ言葉が頭の中でぐるぐると巡る。

龍一にないか良くないことが起きるのではないかーーーーーーそんな胸騒ぎが自分の杞憂であって欲しいと願いながら玄は飛散した味噌汁を雑巾で強く拭き取った。

 

 

「いやー快勝、快勝!!どうだ見てたか江夏?」

 

玄の胸騒ぎなど知りもしない龍一は対局で相手校を飛ばすという快挙を成し遂げ観客室で応援している江夏大樹のところへご満悦な表情でやって来た。

 

「調子に乗るな!!ほとんで先輩たちが作ったリードだろうが」

「でもプラス3万だぜこれすげくね?これなら次の決勝も余裕だな。」

「調子に乗ってると足もとすくわれるぞ?」

「大丈夫大丈夫、俺はもう県予選じゃなくて全国に目を…ん?なんだあれ?」

 

龍一の目の前にはおそらくテレビで使われるのであろう大きなカメラを持った人達がある学校の生徒たちを取り囲んでいた。

 

「あー斑鳩西中な」

「どこだそこ?」

 

全く知らない学校名にきょとんとする龍一に江夏は面倒臭がりながらも淡々と説明する。

 

「知らないのかよ、来年廃校になるってんで今年が全国に行く最後のチャンスらしくてな。それをテレビ局が嗅ぎつけてドキュメンタリーにするんだと」

「ふーん…」

「ふーんってお前決勝の相手校だぞ、それに結構強いし」

『まもなくインターミドル県予選団体戦の決勝戦を始めます。選手の方は指定の対局室に移動してください』

 

あまり興味のない返事をする龍一に江夏は少し強めな口調で返すとほとんど同時に決勝戦を告げるアナウンスが会場に響き渡った。

 

「よしそれじゃあ行ってくるわ」

「龍一」

「わかってるよ、誰だろうと手は抜かない約束したからな全国に連れてくって」

「約束…?お前まさかあの子とか?あの黒髪の子となのか!?」

「すげーなよくわかんな、でも玄だけじゃないぞ。あと憧とゆ、宥姉ちゃんと…」

「……」

「ん?江夏どうした?」

「……いけ」

「え?」

 

龍一の話を聞いて急に俯いてしまった江夏がぼそりと何かを呟くが声が小さすぎて聞き取れないので聞き返す。

 

「早く行け!!そんで優勝してこい!!お祝いに3発思いっきりぶん殴ってやるから!!」

「あ、あんで?」

「いいから行け!!」

「は、はい」

 

突然江夏がまさに血の涙でも流しそうなほどの剣幕で龍一に詰め寄りながら控え室に戻ることを急かす。そして龍一は訳が分からいまま江夏の迫力に圧され急いで先輩たちのいる控え室に戻って行った。

 

 

そして迎える運命の決勝戦…

 

 

 




遅くなってしまい申し訳ありません。なかなか忙しくなってきてしまい書く時間が取れなくなってきていますが少しずつでも投稿していきたいと思うので応援よろしくお願いします。
どんな些細なことでも構いませんご感想お待ちしてます。

追記  
咲の全国編アニメ放送決定ということで永水女子のメンバーのキャストのハマリ具合に思わず笑ってしまいましたww(特に霞さんが・・・)
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