君と龍の愛し方   作:武田兎

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第十三話 再会

あのインターミドルから二年後の冬、外は雪が降り積り一面の銀世界が広がっている。この大雪のせいか阿知賀女子学院内の部活は全体的に休みとなっているのだが、かつて子供麻雀クラブがあった教室------------そこには五人の少女が黙々と麻雀の練習に打ち込んでいた。

 

「ねー今日ハルエは?」

「えっとなんか遅れて来るって言ってたよ。灼ちゃんなにか知らない?」

「さあ…」

 

玄の質問に対して歯切れの悪い返事をする小柄なおかっぱの少女は鷺森灼(さぎもりあらた)、玄がスカウトしてきた新しい部員候補である。実はこの5人の中で灼だけは晴絵がどこに行って何をしているのか知っているのだがそのことは他の4人には黙って黙々と練習に没頭する。

 

「宥さん大丈夫ですか?さっきから震えが尋常じゃないんですけど」

「さ、寒い…」

「でもストーブの側から動かなかったら練習できませんよ」

「うう…後五分待って…」

 

冬の犬のようにジャージ姿でも元気いっぱいな穏乃が一人ストーブの前からブルブルと震えて動こうとしない宥に声をかけていると教室の扉が勢いよく開いた。するとそこには満面の笑みをした麻雀部顧問、になる予定の赤土晴絵の姿があった。

 

「いやーみんな遅れてごめん」

「遅いよハルエ!!何してたの?」

「うん、ちょっとね…」

「ちょっと…もしかして男の人とか!?」

「まあ…そうかな…」

「えええ赤土さんにですか!!」

「うそ!!冗談で言ったのに!!」

 

予想外の晴絵の返答に冗談交じりで言った憧や他のメンバーも練習を忘れて驚きの声をあげて色めき立つ。

 

「赤土さんって男の人より女の人にモテると思ってたよ」

「赤土さん暖かい…けどやっぱり寒いよ…」

「あれ?灼さんなんか冷静だね、もっと取り乱すかと…」

「う、うん…まあ…」

 

予想に反して冷静だった灼の反応に疑問を感じた憧が語りかけると灼は目をそらしながら答える。

 

「で、今日はその人に来てもらってる!!」

「うそ!!」

「じゃあ入って来て」

「うわ…どんな人だろう」

「楽しみだね」

「さ、寒い…」

 

どんな人だろうと目を輝かせながら登場を待ち望むメンバーの前に現れたのはここにいる全員がよく知っている『あの少年』であった。

 

 

時間は少し戻り、龍一は不機嫌そうにしながらも晴絵と共に阿知賀女子を目指して雪道を歩いていた。

二人の賭けを結果から言ってしまうと晴絵との賭けに龍一は負けた。

甘かった--------つい最近までプロだった奴に自分の今の実力では勝てるわけないと少し考えれば分かることだが如何せん売り言葉に買い言葉、全くタイムマシーンがあれば過去の自分にもう少し冷静になれよとアドバイスしたいところだ。

 

「ほら負けたんだからちゃんと言うこと聞きな」

「わかってるよ、で誰がいるの?」

「玄としずに憧、あとは玄のお姉ちゃんの宥とあんたの居場所を教えてくれた灼かな」

「全員知り合いかよ…それに灼やつめ…」

 

自分の居場所を晴絵に教えた灼に怒りを覚える龍一を横目に阿知賀女子の校門前まで到着した晴絵が急に足を止める。

 

「あのさ龍一…」

「ん?あに?」

「『あの事』…みんなに対局前に言っておこうか?」

「いいよどうせ対局したらバレるんだし、まあ玄辺りは驚くかもしれないけど」

「そっか…じゃあ私先に教室に入ってるから呼んだら入ってきなよ」

「あーい」

「逃げないようにね?」

「逃げねえよ!!」

 

よし、と頷くと晴絵は聞き覚えがある声が聞こえてくる騒がしい教室内に入って行ってしまい、龍一は二年ぶりに訪れた懐かしの教室の前で晴絵に呼ばれるのを待つ。

 

(はあ二年ぶりかあ…もうそんなに経つのか)

「じゃあ入って来て」

(よし…行くか)

 

壁に寄りかかりながら物思いにふけっていると教室の中から呼び声がかかり龍一は無言で教室の扉を開けて中に入った。

 

 

「……」

「りゅ、龍一くん」

「うそ…」

「もしかして龍一さんですか?」

 

龍一は扉を開け教室に入り五人の前に立つ。龍一をみた瞬間、あまりの予想外の人物に驚きの声が漏れる。

 

「今日から龍一にはみんなの練習相手になってもらう。どんどん相手してもらいな、ほら龍一みんなに自己紹介」

「知ってる顔しかいないのに何を自己紹介すんダ!?」

「りゅ、龍一くん!!」

 

晴絵に転校生のお決まりパターンのようなやり取りをやらされそうになっていると急に玄が龍一の胸に勢いよく飛び込んできた。二年ぶりにあった玄は性格は以前と変わっていないようだが昔よりも女性らしい体つきになっており、不意に抱きつかれた事もあってか今までの龍一のしかめっ面が崩れて顔を真っ赤にしてテンパってしまう。

 

「く、く、く玄お前その抱きつく癖どどどうにかしろって」

「だって久しぶりで…龍一くん全然会ってくれなくなっちゃって…もしかしたら私のこと嫌いになちゃったのかなって考えたりして辛かったんだよ…」

 

胸の中で顔をグチャグチャにして泣きじゃくる昔となにも変わらない泣き虫な玄をみて、龍一はぽんと玄の頭の上に手を乗せて優しく一回頭を撫でた。

 

「玄…ばーか別にお前のこと嫌いになんてなってねーよ」

「ほんと?」

「二度も言わせんな恥ずい…」

「龍一くんお帰りなさい」

「宥姉ちゃん…俺」

 

今までストーブの側から頑なに動こうとしなかった宥が龍一の前に現れる。龍一としては今の自分を最も見られたくない人物であった為、まともに目を合わせられずに俯いていると今度は龍一の頭に宥の柔らかく暖かい手が伸びて子供をあやす母親のように優しく撫でる。

 

「心配したんだよ、もう勝手にいなくなったら…めっだよ」

「はい…」

「うん…よろしい」

「あぅ…うぅ」

 

宥に対して完全にノックアウト状態でクラクラしている龍一に今度は穏乃と玄が腕を掴み雀卓に連れて行く。

 

「さあ龍一さんなんかよくわかんけど久しぶりに打ちましょう!!」

「そうだね早く打とう」

「お、おいお前ら引っ張るなよ」

「……」

 

みんな久しぶりの龍一の登場にはしゃぐ中、憧だけは無言でその様子を眺めていた。そしてすっと立ち上がると突然荷物を持って教室を出ていこうとする。

 

「私帰る」

「え?憧」

「こんな相手を倒す度胸もないやつと打っても意味ないから」

「……」

「…チッ」

 

憧の厳しい言葉に対し何も返答をしない龍一に憧が軽く舌打ちをして目の前まで詰め寄る。

 

「なんとかいいなさいよ」

「……」

「なんで言い返さないの!?昔みたいにつっかかってきてよ!!どうして…どうしてなんも言わないで…辞めちゃったの…?」

「……」

 

今まで厳しい口調だった憧の声が次第に弱々しくなっていき俯いて確認することにできない顔は泣いているのか華奢な体がプルプルと震えている。

そんな憧の様子を龍一は何も言わずにただ見ていた。

 

「辞める必要なかったじゃん!!先輩たちもよくやったって褒めてくれたんでしょ?なら」

「だからだよ!!」

「え?」

 

急に発せられた龍一の怒気の混じった大声に憧は思わず顔を上げる。その顔はやはり泣いていたのか目は赤く腫れ、溜まっていた涙が顔を上げた衝撃で頬を伝って落ちる。そして顔を上げて見た予想外の龍一の辛そうな表情を見た驚きからか涙はピタリと止まった。

そして龍一は辛そうに話し始める。

 

「俺はあの時先輩たちへの申し訳ない気持ちで一杯だった…俺が先輩たちの夢を奪ったんだって…」

「龍一くん…」

「そりゃあ泣いて謝ったよ、それで許されることじゃないけど何度も何度も…でも先輩からかけられた言葉は『ごめんな、まだ二年生のお前に負担がかかるようにして』だってよ…その言葉で一気に俺の熱は覚めたよ、なんだ俺がやってきたことって全然期待も信頼もされてなかったのかよって…それで」

「馬鹿!!」

 

辛さを達観して自嘲気味に話す龍一の前に突然いつぞやと同じように憧のカバンが飛んできて顔面にまたしてもクリーンヒットする。

 

「いって!?あにすんだよ!!」

「馬鹿龍一!!先輩たちやみんながどんだけ心配したと思ってんの、期待されてないわけないじゃん!!信用されてないわけないじゃん!!私だって心配してたのに…あれから避けるようになって…」

「憧…悪かった…あわせる顔がなくて」

「言い訳無用…もう逃がさないからね。今までサボってた分きっちり私の相手してもらうから」

 

そう言って今まで泣いていたのが嘘のように普段どおりの憧に戻り、申し訳なさそうな顔をする龍一の腕をギュッと掴んで逃がさないようにする。

 

「あ、それと別に私は興味ないんだけどアンタもしかして…は、ハルエと付き合ってるの?」

「え?あんで?」

「だ、ダメだよ龍一くん!!先生と生徒でそんな…いけないのです!」

「ちょ、どゆこと!?どゆこと!?」

 

その後、憧と玄のあらぬ誤解を解くのに時間はかかったものの、こうして麻雀部は龍一を新たに加え全国を目指してまた一歩前進した。

 

 




テスト終わった!!ってことで更新が遅くて申し訳ありませんでした。

次回はもっと早く投稿できるように頑張りますので応援お願いします。

アニメで玄の出番もうないのかな…
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