四月、本日はどこの学校も始業式らしく龍一が通ってる高校もかったるい校長の話を聞くだけで終わり昼過ぎには待ち合わせ場所の阿知賀女子女学院の校門前に到着した。待ち合わせ場所に到着して出迎えを待つ間暇つぶしに携帯をいじくっていると遠くから龍一の名前を呼びながら綺麗な長い黒髪を振り乱して幼馴染の松実玄が走ってくる。
「おーい龍一くーん!!」
「もう学校終わったの?サボってない?」
「サボってねえよ、それよりも…」
龍一の目線は玄の到着からしばらくして現れた高鴨穏乃と新子憧にいっていた。二人とは昨日も練習に付き合わされて会っていたが真新しい制服をきた二人は昨日と何処か違ったように見えてまじまじと眺めてしまう。
「な、なに?」
「いやあんか見慣れなくて」
「ふん、どうせ似合わないとか思ってるんでしょ!?後目線がやらしいんだけど?」
「どうですか龍一さん?似合いますかね?」
龍一の目線に気づいた憧が少し顔を赤らめながら腕を組みそっぽを向くと穏乃は対照的にキラキラとした眼差しでスカートをヒラつかせながらその場でくるりと一回転する。
「ああ、似合ってるよ特に穏乃は昔からジャージ姿しかみてなかったから新鮮だな。」
「わーい」
「ちょ、私には何にもないわけ!?」
「んー憧は…」
「な、なに…」
龍一は食ってかかってきた憧の制服姿を改めて見て咄嗟にふと思ったことを口にする。
「なんか…援k」
「死ねええ!!」
その言葉を合図とばかりに憧は手に持っていた鞄を思いっきり投げつけてきた。
今日は始業式ということもありこれから使う教科書が配布された為か紙一重で避けた鞄にいつも以上の風圧とプレッシャを感じ、これはシャレにならないと大声で謝るが憧の追撃は止みそうにない。
「嘘嘘冗談だって!!似合ってる似合ってるから!!」
「ねえねえ龍一くん私は?」
「玄は二年になっただけなんだから変わんないだろうが!それよりもこの状況止めてくれよ!」
この状況で何を言っているのだこのアンポンタンは…と心底思ったが今はそのアンポンタンの手も借りたい状況である。頼りにしていた穏乃はオロオロとしてとても役に立ちそうにない。なら…玄頼む、幼馴染のお前だけが頼みなんだ。と逃げ回りながら必死に懇願していると玄は一言…
「よく見て龍一君、なんとリボンを新しくしたのです!!」
「知らねえよ!!」
「ふんッ!!」
「うっがッ!!」
思わず出たツッコミに気を取られていた龍一の顔面に憧のピカピカの一年生セット一式が入った鞄がクリーンヒットしてその場に倒れ混んでしまった。
「な、な…一体何があったんだ…」
数分後、呼びに行ってから帰ってこない玄達を心配してやって来た麻雀部顧問赤土晴絵が見たのは土下座している龍一の頭を踏みつけながら罵倒する憧とソレを止めようとしている穏乃と玄の姿であった。
その後今日の部活の帰りに奢ることを条件としてなんとか憧のお許しが出たがもう二度と冗談でも『この事』を言うのはやめようと命の危機を感じ固く心に誓うのであった。
◆
部室に到着した龍一達はすでに来ていた灼と宥になにかあったの?と聞かれたが愛想笑いでごまかしておいた。
特に宥姉にだけには何としてもバレたくない。
「よしまずは穏乃、憧阿知賀女子に入学おめでとう」
黒板に大きく『穏乃、憧入学おめでとう』の文字を書いた晴絵が二人の入学を祝福し拍手を送ると続いて龍一たちもパチパチと手を叩き拍手が二人に送られる。
送られた二人は照れくさいのか少し顔を赤らめてぺこりと小さくお辞儀をする。
「よしお祝いもすんだところで、改めて私たちの目標を確認しようか」
「インターハイ出場!!」
穏乃が大きな声で返事をするとメンバー全員が決意のある表情で力の入った頷きをする。
「うん、でこの奈良県は激戦区の大阪や東京に比べてそこまで多くの強豪がいるわけじゃない」
「多くのってことは何校かはいるってこと?」
「そう、その中でもやばいのがみんなの知っての通り…」
「晩成高校…」
晩成高校-------奈良県最強の高校と名高い高校であり男子、女子共にインターハイ出場回数は県最高の高校である。そんな強豪校がこの10年間のうち一度だけ全国行きを逃したことがある。それが10年前赤土晴絵率いる阿知賀女子であり晩成高校女子麻雀部はその年王者から転落したのであった。
「晩成は私がインターハイに行った10年前のあの年以降9年連続でインターハイ行きを決めている。そして今年は10年連続出場を目標にきっと気合入ってるんだろうね」
「あわわわ」
「……ハルちゃんが全国に行ってからそれ以降一度も負けてない…」
「……」
晴絵の言葉に皆が静まり返る。
仕方ないといえば仕方ない、ここにいる誰ひとりとして高校の公式大会への出場経験などないのだから相手がどの位強いかなどもまったくわからないのである。皆が不安で押し黙る中一人がその場の空気を引き裂くように龍一が口を開く。
「くっだらねえ!!知らない相手のこと今から不安になってもしょうがねえだろ?」
「うん…そうだけど…」
「心配すんな、ここにいるみんな強いよ。玄も宥姉ちゃんも憧も灼も穏乃も…あの時逃げた俺なんかよりよっぽど強い。これまでずっと傍で見てきた俺が保証する。」
「龍一くん…」
「な?だから心配すんな」
龍一はただその場の空気を和ませる為についた嘘ではなく心の底から玄達のことを強いと思い認めているのだ。今まで口にこそ出さなかったが本心では思っていた本音を語った事でメンバー全員からしだいに不安の色が消えていった。
「べ、別に龍一に言われても説得力ないけどね。昨日だって私が勝ち越したしー」
「あんだと、先週は俺にボロ負けだったろ!?それに人がせっかく」
お互い照れくさいのか言われた方である憧と言った方である龍一が一緒に顔を赤くしながら言い争っている。
いつもなら龍一が憧に言い負かされ涙目になるのが常である。しかし今回は憧がいつものように噛み付かないどころか龍一と目も合わせずに赤い顔のまま体をもじもじとしながら聞き取れるかどうか程の小さい声でボソッと一言…
「でもありがと、ちょっと勇気でた…」
「え、なに?聞こえないんだけど、人と話す時は人の目を見て大きな声で話しなさい」
「はぁ!?ま、マジ意味わかんないし!!龍一マジキモい!!」
「…あんでこんなに言われなきゃいけないんだよ…もう帰りてえ…ん?あんだよ玄そういうのはいい加減や…め…」
結局いつも通り憧から罵倒を浴びせられ目から涙が出そうになっていると龍一の手を何か温かいものが包み込む。
なんだと思い手を見てみると龍一の手は誰かの手にギュッと包まれていた。どうせ玄あたりだろと思いその人物を見て龍一の心拍数は一気に高まる。なぜならそこにはピンクのマフラーをしながらプルプルと震える宥の姿があったからだ。
「龍一くん…憧ちゃんも本当は龍一君の事すごく頼りに思ってるんだよ。私も…ここにいるみんな龍一君にすごく感謝してる。だから…もう自分の事責めるのは止めてほしいの…」
「ね、ねねえん姉ちゃんが俺れれの手を」
宥に手をギュッと握られた龍一の頭はもう言葉を聞く余裕などあるわけがない。龍一は一切宥の話が頭に入って来いままショート寸前となっていた。
「だ、大丈夫ですか龍一さん顔が真っ赤ですけど!?」
「大丈夫、大丈夫なんの問題もない!!」
「わかり易すぎ…テンションがもう…」
「はいー灼!!まずはお前から相手をしてやろう!!後は玄と憧な」
「私ハルちゃんとがいいのに…」
「えー」
「よし頑張るよ!!」
「あはは、さてじゃあみんな練習始めるよー」
こんなデコボコなメンバーだけど絶対にこいつらを全国に連れて行ってやりたい。今日の事でより一層練習に熱が入った為か龍一は携帯に一通のメールが届いていることにこの時まだ気がついていなかった。
遅くなって申し訳ありません。なんもかんもスマブラ悪いのです!!
言い訳はともかくなるべく投稿できるように頑張ります。
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