「ツモ、2000.4000」
対局が始まり東1局目に早速和が軽く満貫をツモ上がりする。
「ありゃりゃ」
「龍一~和にボコボコにされてんね~」
「うるせーぞ憧!!久しぶりだから感覚が掴めないんだよ」
「あはは」
(……)
確かに打ち筋は悪くない、憧や穏乃が行っていた通りなかなかの打ち手だ。
しかし和は龍一の打ち筋になにか靄がかかったような違和感を感じていた。それはまるで初めてこの場所に訪れ玄と初めて対局した時のような…言葉では言い表せない違和感を覚えながらも場は進んでいった。
「よっしゃツモったぜ!!4000オールだな!!」
龍一:{二三四[五]六[5]67[⑤][⑤]⑤北北} ツモ{一}
ついに龍一が嬉しそうにツモ上がりを宣言し手牌を晒すが和にはどうしても龍一の和了に納得がいかないところがあり尋ねる。
「あのその三面張ならリーチをかけた方がいいのでは?跳満になりますし…」
「あー俺ってリーチは絶対にかけないんだわ」
「え?それはどうしてですか?」
「和それはね~龍一さんじゃあリーチしても意味ないんだよ、そうですよね!!」
「おい憧、なんか穏乃まで俺のことひどいこと言うんだけど、お前だろ吹き込んだの?」
「な、なんのことかなーわたしわかんなーい」
キラキラした目で応える穏乃にいらぬ事を吹き込んだのであろう容疑者の憧に龍一が視線を送るとぎこちない言葉と額に汗をかきながら目を合わせようとしない。
「あ、あの」
「龍一くんはね簡単にいうと私の逆なんだ」
「逆…とは?」
「それは」
龍一達は和の質問に応える前に何やら別の話題に話が切り替わってしまいオロオロとしていた和に玄が優しく声をかける。
「それは俺がドラにとことん嫌われてるからだよ。配牌やツモでドラなんて来たことないし裏ドラも槓ドラ乗った試しがない。だからリーチするメリットがあんまりないの」
玄と話している間に龍一達の話の方は終わったのか突然龍一が話に入ってくる。
「そ、そんなオカルト」
「でた和のそんなおかもち」
「オカルトです!!」
「でも現にほら乗ってないだろ?裏ドラ?」
「ぐ、偶然です…あれでも赤ドラ」
そう言って裏ドラをめくると龍一の言ったとおり裏ドラは一つも乗っていない。しかし和は龍一の手牌からあることに気づく。赤ドラ-----もともとドラとして決められている特殊な牌。それが彼の手牌の中には4つもソレがあったのだ。そのことに和が気づいたことを察した龍一はソレを待ってましたとばかりに玄に手牌を開くように命ずる。
「ああそうなんだ玄」
「うん」
玄:{1111234②③④五発発}
「うわあドラが槓材とか相変わらずのドラ爆…」
「あれ?でもいつもより…」
憧が玄のあまりの手牌に声を漏らす中、穏乃はいつもの玄の手牌よりドラが少ないことに気づくまあ今でも十分多いが…
「そう俺はドラにはとことん嫌われてるがこの赤ドラだけはこの俺にゾッコンなんだよ」
「龍一なんかきもい…」
「なにっ!?」
「龍一君と同じ卓だとドラが少ないからさみしいよ…」
「「いや十分多いから」」
涙目になる玄に全員がまるでリハーサルをしたかのような息の合ったツッコミを入れる。
「さあ俺もだんだん感覚が戻ってきたところで続きやろーぜ続き、転校生ちゃんには悪いけどここからはこのレッドドラゴン龍一の独壇場だぜ!?」
「レ、レッドドラゴン…?」
「っぷ!?ちょ、ちょっと和我慢してたんだからや、やめてよプククあははっは!!」
「……」
呆気にとられていた和が龍一の言葉を口にすると今まで我慢していたのか憧が口を抑えながらも思いっきり吹き出す様子をみて、龍一の顔がりんごのように赤くなり瞳に涙が溜まっていく。
「りゅ、龍一くん私はいいと思うよ、なんかアレだよねほ、ほらアレ…」
「そんな哀れみ目をして言うな!!もういいお前らみんな箱にしてやる!!」
玄の優しさが余計に龍一の心の傷を広げたところで対局は再開した。
その様子をみて穏乃は…
(私はかっこいいと思うけどな…)
◆
夕暮れに染まった道を大きな声を出しながら歩く人影が二人、並んでいる人影は玄と龍一のものであり麻雀教室が終わり二人で下校していた。
「くそー紙一重だったのに」
「龍一君にとって20000点差は紙一重なんだね…」
「あの転校生強すぎだろ!っくそあんな立派なおもちまでこれはリベンジするしかねえな」
「え?じゃあまた来てくれる?」
その言葉に今まで龍一の話の聞き役に徹していたに玄の顔が一気に明るくなる。
「あ、あんだよ急に?」
「だって久しぶりに龍一君が来てくれて麻雀クラブ全員が揃ったし、和ちゃんも来てくれて今日は本当に楽しかったから、また来て欲しいかなって…ダメかな…?」
「そそそうだな!?たまになら言ってやってもいいかな転校生のおもちを拝みに」
玄の上目遣いの涙目に少しドキッとしてしまい顔を赤らめた龍一はわざと夕焼けの太陽の方を向き玄に悟られないようにする。
「うん!!でも和ちゃんのおもちは私のなのです!!」
そういってと玄は龍一に子犬が主人に遊んで欲しいような無邪気さで飛びつく。しかし中学生にもなってこんなことをされると色々意識してしまう。
「こらくっつくな!!早くお前んちに行くぞ」
「ああ食材を厨房に運ぶんだっけ?」
「全く親父の奴…それくらい自分でやれっての…」
麻雀教室がちょうど終了する頃、龍一の携帯に一通のメールが届いていた。『松実館に業者の人が野菜を置いていってるらしいから全部厨房まで運んでおいてくれ』と親父らしい絵文字も可愛さの欠片もない簡潔そのものメールであった。
親父に逆らうと後が面倒くさいので渋々玄の家もとい松実館に向かっているのであった。
言っておくが決して親父が怖いんじゃない、そのへん誤解しないように!!
◆
「ふう…これで全部かな?」
裏口に置いてあった野菜をすべて厨房に運び終えると既に時刻は午後7時を回って辺りは真っ暗になっていた。額に浮き出た汗を拭うと玄がエプロン姿で様子を見にやってきた。
「龍一くんお疲れ様、家でご飯食べてく?今日は私が作ったんだ」
「ほう、肉じゃがなんて作れるようになったんだ」
「だって龍一君の好物だし…」
ぼそりと玄は顔を赤らめてうつむき加減で呟く。
「ん?なんか言った?」
「べっべえべべ別にあ、」
顔を真っ赤にしテンパっている玄であったが龍一の後ろの扉が開いたことに気がつき誰が来るかも玄には予想できていた。
「ただいま~寒いよ~あ、龍一くんいらっしゃい」
既に桜も散り始める季節だというのにマスクにマフラーという季節外れな格好をしているのは
「ああああの、そそその、」
「ん?どうしたの?」
「あ、あああの俺急用をおおお思い出したからじゃ!!」
宥の姿を見た龍一は先ほどの玄と同じがそれ以上に顔を真っ赤にし、落ち着かない挙動不審な態度で外に飛び出して行ってしまった。
「あ…行っちゃった…玄ちゃん?」
「ううん…なんでもないよお姉ちゃん…さあご飯食べよ?」
私は知っている。
龍一くんが昔からお姉ちゃんのことが好きだってこと
私に振り向いてくれないかもしれけけど…それでも…私はあなたを待っていたい…
久しぶりの次話投稿、もっと速いペースで書けないかな…
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