君と龍の愛し方   作:武田兎

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第六話 選択

桜舞い散る通学路を先日この阿太峯中学に入学したばかりの新子憧が真新しい制服を翻しながら歩いていく。まだ新しい環境に馴染めてないのかその歩く姿はどこかぎこちない。

 

(はあ…制服って動きづらいなあ…友達もまだ誰もいないし…)

「よお憧」

「ひゃい!?」

 

朝からこれからの新生活への不安をため息混じりに考えながら歩いていると急に後ろから誰かに肩を叩かれドッキっとして声が裏返ってしまう。

 

「なんだ今の声?なんかのモノマネか?」

「りゅ、龍一!!なんでもない!!」

 

憧の肩を叩いた人物はこの阿太峯中学に一年早く入学している幼馴染の杉花龍一であった。

 

「ついてこないでよ…」

「同じ学校なんだからそれは無茶だろ」

「むぅ…」

「にしてもまさか本当に憧が阿太峯に来るとはね…俺はてっきり穏乃やあの転校生と一緒に阿知賀に行くものだと思ってたのにな」

「確かに穏や和と一緒にいたい…でもそれ以上に私は麻雀を本気でやってみたいの」

 

この事に対して憧がどれだけの覚悟を持って決心したかを知っていた龍一は隣で歩く真剣な憧の表情を見ながら優しく微笑みかける。

 

「そっか…まあとりあえず入学おめでとうって言っておくわ。これからは俺のこと龍一先輩って呼べよ」

「絶対イヤ!!龍一は龍一だもん」

「なんじゃそりゃ…まあ憧に変に敬語使われても気持ち悪いだけだしぃ~」

「な、なにをー…あ、あのさ龍一」

「ん?」

 

そう言うと憧は急に立ち止まり、何か言いたげな表情で顔を真っ赤にし体をモジモジとくねらせる。

 

「ありがとね…私が阿太峯に行きたいって言った時相談に乗ってくれて多分そのことがなかったら決心がつかなかったと思う。だから…」

 

私は数ヶ月前まで阿太峯に行くか阿知賀に行くか悩んでいた。

自分としては大好きな麻雀を本気で打ち込むために強豪阿太峯中学に入学したいがそれでは今まで一緒だった穏乃や和を裏切ることになるのではないかと思い誰にもこの悩みを打ち明けられずにいた。

そんな時だった…彼にこの話を打ち明けたのは…

その時から彼のことがただの幼馴染以上に気になり始めてしまうのだがその話はまた別の機会に…

 

「なんだよ急に改まって?まさか俺に惚れたか?」

「はあ!?い、意味わかんないし龍一マジキモい!!もう私先行くからね!!あ、そうだ龍一…」

 

10メートルほどダッシュした憧が何かを思い出したかのように立ち止まるがこちらを振り向かない為龍一からは憧の表情を確認することはできない。

 

「あんだよ?」

「りゅ、龍一はさあ…髪の毛長い女の子と短い女の子ど、どっちがタイプ?」

「なんだよいきなりだな」

「いいから答えて!!」

 

唐突な質問に対し不思議に思いながらも龍一は自分なりの考えを答える。

 

「そうだなその人に似合ってればいいと思うけど強いて言えば長い方かな」

「そうなんだ…なるほど」

「で、それがなに?」

「つ、追求しないでよマジキモい!!」

「……」

 

憧は龍一に対して暴言を吐いてさっさと学校に向かって走って行ってしまった。

こんなやり取りを通学路で大声でしていたので残された龍一は周りの生徒たちにヒソヒソと囁かれながら肩身の狭い思いで学校に登校したのであった。

 

 

その日の夜、龍一は松実館に麻雀の特訓のために訪れ玄と宥の三人で三人麻雀をしていた。本当はあと玄達の親父さんでも入ってくれれば助かるのだけれどなかなか忙しいらしく四人でやる機会は滅多にないが三人麻雀でもなかなかこの姉妹は強敵なのでいい特訓になる。

 

「そういえば憧ちゃん麻雀部入ったの?」

 

玄が牌を洗牌しながら何気ない疑問を龍一に尋ねる。

 

「んー入ったよーまあ先輩の俺に対する礼儀は全くなってないけどな」

「あはは、そっかよかったー」

「俺のことはいいのかよ。あ、そういえばさそろそろインターミドルのレギュラー発表があるんだよ」

「へーもしかしたら龍一くんレギュラー取れるんじゃないかな?」

「いやいや確かに最近は二人に相手してもらってるから調子はいいけど三年生の最後の大会に俺が入れる余地なんて」

「そんなことないよ!!最近の龍一くんすごく強くなったしきっとレギュラー取れるよ!!お姉ちゃんもそう思うよね?」

「うん龍一くん頑張って…」

 

興奮気味に力説する玄が炬燵布団をぽっこり被って猫のように丸まっている宥に話を振る。すると寒そうに丸まっていた体を少し龍一に向けてか弱くガッツポーズをしてエールを送る。

その宥の姿が龍一にとっては百人の歓声以上の勇気を与えてくれた。

 

「宥姉ちゃん…あと玄ありがとう」

「なんで私はついでみたいなの!?」

「俺頑張るよ。そうしたら全国の舞台である東京に二人を連れってってやるぜ!!」

 

新しい決意の意味を込めて勢いよく龍一は牌を切った。

 

「あ、それロンだよ。16000」

「私も…12000」

「……」

「ん?なにかな龍一くん?両替?」

 

龍一は無言で玄の方を凝視し軽くポカリと頭を叩く。

 

「いたっ!!なんで私の頭叩くの!?」

「なんとなく…」

 

こうして夜は更けていった…

 

 

そして季節は5月、本日の部活内のミーティングには男女ともにどこかそわそわしていた。

この時期に男女揃ってのミーティングなどアレしかないと全員が始まる前からおおよその予想はついていた。

 

「よーし男子と女子全員集まったな。それじゃあこのミーティングの時間は夏から始まるインターミドルのレギュラー発表する。それじゃあ女子から」

 

そして監督が次々と女子のレギュラーメンバーを読み上げていく。この時すでに龍一の心臓は隣の人に聞こえるんじゃないかというくらい激しく高鳴っていた。

 

「続いて男子」

 

もしかしたら…という淡い希望とは裏腹に呼ばれるのは三年生の先輩たちの名前ばかりであった。

 

「やっぱり先輩達ばっかりか…」

「そりゃあそうだろ~なんたって今の三年はみんな強くて団体戦も県優勝確実って言われてるじゃん。俺たち二年生が入る余地なんかねーよ」

(そうだよなあ…やっぱり)

 

江夏は最初から期待もしていたいのか早く終わらないかと携帯で時間を確認している。龍一も自分の願いがただの希望的観測に過ぎない‥そう思いうなだれていた時だった。

 

「えー最後に大将は杉花でいく」

「え?先生今なんておっしゃいましたでしょうか?」

 

あまりに自分に似たような人の名前が聞こえたので思わず龍一は監督に聞き返してしまう。

 

「いやだから大将は最近ドンドン伸びてきてるお前を使ってみようと」

「っよよ、よっしやあああああああ!!!!!」

 

そこまで聞くと龍一は大きな咆哮とガッツポーズをしながら教室を飛び出して行ってしまった。

 

「なんだアイツは?い、以上でミーティングは終了。呼ばれなかった人や一年生はこれから大会までレギュラー陣のサポートに回るように、以上解散」

(へー龍一二年生でレギュラーなんてやるじゃん…私も頑張らなきゃ!!)

 

監督や部員たちがぞろぞろと教室から出ていく中憧だけは校舎を全力疾走で飛び出していく龍一を窓から眺め改めて強くなると決心を固めた。

 

 

 

 

 




今回憧がかなりキャラ崩壊激しいですね…まるで由比●浜みたいになってしまった…

それとタイガーアンドドラゴンが多方修復が完了しました。お持ちになって頂いている方々申し訳ありませんでした。来週には投稿予定ですのでもう少しお待ちください。

これからこの物語の核心にドンドン入っていきます。
それではご感想、ご意見たくさんお待ちしてますので気軽によろしくお願いします。
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