元魔王のHSDD   作:川柳左右

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初投稿です。
ハーメルンで読むうちに創作意欲が湧いてきてひとまず出しに来ました。


prorogue

 ━━話をしよう。

 ふむ、知り合いのを真似をしたがこれはこれでクセになるな。

 話、というのは我が種族、悪魔のことだ。

 悪魔。

 冥界と呼ばれる異界に拠点を構える勢力で、神話勢力として見るとアブラハムの宗教の善悪二元論における悪に相当する。

 他には天界の天使や冥界のもう一つの大勢力であるグリゴリの堕天使とともに三大勢力として知られている。

 種別となるが彼らは魔王と上級種、それ以外に大きく分けられる。

 後者から語るとするが、低級━━いわゆる下級中級悪魔は正直に言えば光に対する弱性と魔力そして寿命以外は人間と変わらない。

 上級種、まぁ貴族悪魔だとか上級悪魔とか呼ばれる彼らは、潤沢な魔力を持ち中には特有の力を振るうことができる。これは彼らの誕生の際に今までに存在していた力がルーツとして組み込まれているからだ。

 最後に魔王となるが、()()は上級種よりもそのルーツが大きく鮮明であるといえよう。各々が独特の経歴を持ち、魔軍を率いる。

 結論を言えば、冥界悪魔というのは一般悪魔の上に少し強い別種のような貴族がいて、その上にさらに格上の魔王がいる、そんな集団だったんだ。

 何、過去形だと?仕様がなかろう。今なんざ知るか。俺は過去の異物、所詮は老害にすぎん。

 

 

「いやいやいや。肝心なこと言ってないじゃん。意味ないし」

 

 目の前の少女が不服そうに言う。

 

 何を言うか。しかと知っていることは話しただろう。

 ……いや、まぁ確かに肝要なのは今現在の情報であることは確かだ。

 彼女の言う通り、俺の情報は全く役に立たない。

 正直、このようなことにここまで困るようになるなどは流石に思わなかった。なぜなら━━

 

「なぜに日本国に悪魔領があるのかねぇ、一体。日本だよなぁ、ここ?いやアブラハムの宗教は伝わって信者がいるのは知っているが、奴らの勢力と言えるほどなのか?本当に今の冥界はどうなってるんだ、まったく」

 

 少女に向かい合って座ってるこたつに寄りかかる。地雷臭がすごくて泣けてくる。ふむ、彼女がお茶を避けてくれている。すまない。

 

「役立たずね」

 

 ジト目でこちらを見ての冷たい一言。

 

「返す言葉がないな」

 

 誠に申し訳ない。

 

「とりあえず一つだ。一つだけは言えよう。受験時には分からなかったが仮入学で分かったな。

 ……私立駒王学園、どうやら悪魔の巣窟らしい。」

 

 

「……そうね。わかったわ。注意する」

 

 彼女は陰鬱そうにため息をつき、俺はお茶をすする。

 

 入学まで一週間。

 ある程度の指針は建てられるだろう。

 

 

 

 

 彼女とそんな話をしてから約一年が過ぎた。

 未だに悪魔供にはこの身はおろか彼女が非日常一歩手前なことにも気づかれていない。

 一歩手前というのは俺が憑いているが故に、だ。

 

 まぁあんなひよっこに感知されるほど衰えたつもりもないがな。

 

 ひとまず憑き主である彼女と定めた指針は三つ。

 

 近づかない。

 

 付き合わない。

 

 すぐ離脱。

 

 

 ほぼ一緒の事のように思えるが強く意識することが肝要なのだ。

 人は言う、石橋を叩いて渡る、と。すぐに空を飛ぶなどという選択肢が出てくる我らには生まれえない感性で実に好ましい。

 事実、この指針を意識しての彼女の行動は結果を生み出していて、今の所は大丈夫であろう。

 まぁ、やりすぎは逆に印象的になるから注意が必要ではあるが。

 彼女には積極的に話にいかない程度でいいと言っている。

 

 ただ、まぁ……悪魔の害は彼女に直接には及んでいないのだが、代わりにこれもまた予想してない事態が彼女を襲っていた。

 

「「「なんで覗きがばれたぁぁぁあああ!!」」」

 

「「「今度こそ覚悟しなさい!!この変態どもッッォォォオオオ!!」」」

 

 目の前で繰り広げられる逃走劇。

 この学校で「変態といえば?」という問いに必ず解答される三人組。

 今度こそ、という言葉があるように覗き盗撮は初犯ではなく、幾たびも見つかり、あのように追い回されている。

 だというのにそんな数多くの問題行動でも警察沙汰にはなっていない。

 人間が築き上げてきたこの情報社会、このような騒動が日常茶飯事だということはすぐに伝わり問題になり(炎上し)そうなのだが、半ば常態化及び常識化されてるかのように何事も起こらない。

 生徒たちは本人(変態)を見かけたり学校に居ればそれらに対して感情を向け反応を示すのだが、一旦外に出ると気にとめる様子がない。

 これには数人の例外がいるのだがそのほとんどはあまり問題にしていない。

 

「……チッ」

 

 ……その例外にして気にしている豆腐メンタルが彼女な訳だが。

 ぶっちゃけ他は悪魔供な訳で、全く参考にはならないのだがな。実質彼女一人。

 理由?俺が憑いてるからに決まってる。

 

『図書室行っとけ』

 

『……いい。もう帰るし』

 

 そして彼女は不機嫌なまま下校した。

 

 やれやれ。あと二年近くは彼女は我慢を強いられることになるだろう。

 奨学金や評判を調べて志望校を決定し、努力する。それが実った結果この事態。俺さえいなければこのような些事に思い悩むこともないであろうに。これは皮肉になるな。

 

 ……おっと。

 

『帰るというなら、牛乳買っとけ。今日でなくなる。スーパーを通る()()()だな』

 

『ッ!……わ、わかったわ』

 

 ……彼女はいい娘だ。優しく、頭がいい。俺のこの短い言葉でも全て分かってくれる。このまま進めば()()()()()()ということを。

 

 赤の他人だ。それでも彼女は悲しみ、心を暗くする。

 

 

 あぁ、願わくはこのようないい娘が、生江沙良がよき生を謳歌できるよう。

 

 あのクソったれ(聖四文字)にすら祈りたくなる。

 あいつはノーセンキューと思うだろうがな。

 

 ひとまず憑いて姿を現し、彼女の平穏を崩す一因となったからには全力を尽くそう。

 これが今の俺の至上命題。

 

 俺はアダムから七代目にして最初の殺人者であるカインから六代目であるレーメク、その娘ナァムが同じく兄のトバルカインとの間にもうけた子で、人にして悪魔にして魔王。

 名をアスモデウスという。




プロローグはこんな感じですね。

HSDDの本来の魔王はどんな感じなのかと伝承を調べていくうちにこれを書きたくなりました。

稚拙な文となるでしょうが読んでくだされば幸いです。

感想待ってます。
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