鳥の声が聞こえる…
それと、蝉の声…少しずつ覚醒しつつある意識を無理やりたたき起こし、目を開ける。
目に映ったのは、4mほど離れた壁と自分がすっぽりと収納された鉄製の棺桶のようなものだった。
身体はどうやら自由に動くようだがやけに冷たい。
しかし、蝉の声が聞こえるだけあって気温は高くなんだか気持ち悪い感覚だ。
ゆっくりと腕を伸ばし、棺桶のようなものの縁を掴んで身体を支えるように動かす。
この鉄の塊は壁に立て掛けるように設置されていたらしく、出るのにそれほど苦労はしなかった。
あたりを改めて見渡すと、どうやら自分のいる場所はコンクリート性の部屋の隅で、この部屋には棺桶のようなもの2つとロッカーのみが置かれている。
窓や扉は無い。いや、無いと言うより無くなっているというのが正しそうだ。
扉と窓がそこにあったのだろう四角形の穴がコンクリートに空いていた。
そして、コンクリートには所々ヒビが入っており、そこから草が生えてきてる。
どうやらかなり古い建物のようだ。多分、廃墟というやつだろう。
なぜ自分がこんな状況に陥ってしまっているのかは、残念ながら全く思い出せない。
思い出せるのは、せいぜい加藤 陽多郎《かとう ようたろう》という
名前と歳は25か26ということぐらいだ。
記憶喪失というやつなのか、経験したこと無かったが嫌な気分だ。
自分が自分じゃないみたいで、胸糞悪い。
芯まで冷えきっていた身体もかなり温まってきたようだからまずはもう一つの、自分が入っていたものとは別の棺桶の中を見ることにした。
棺桶と言ってみたものの、ゴツゴツした部分が多く随分と機械的な見た目をしており大量の配線が繋がっている。
本物の棺桶にも、小さな扉がついていたような気がするがそれと同じようなところに、丸いガラス部分があり中を見ることができた。
目が合った。
「うおっ」
思わず声を上げてしまった。
中には思った通り人間がいるらしく、じっとこちらを見ていた。
もう1度中を見てみようとした時、棺桶がブシュウウウウウと白い冷気を吹き出しながら、その重い蓋を開けた。
冷気と共に出てきたのは、女だった。
女というより、少女だろうか、歳は見た感じ16~20の間といった感じだろう。
髪は肩にかかるかかからないかぐらいの綺麗な水色で、瞳の色もそれと同じだった。外国人だろうか?
服は着ておらず、主張の少ない胸と、太過ぎず細すぎない健康な太ももが少女という存在を際立たせている。
素晴らしい、「特に胸が最高だ。」
そんなことを考えていると、左頬に鈍い痛みが走り途端に視界が崩れ落ちた。
簡単にいえば殴られた。
詳しくいえば、平手打ちを食らった後に背負投の追撃を受けた。
「この変態っ!」
開口一番、可愛らしい少女が口にした最初の言葉だった。
どうやら、どこからか口に出していたらしい。
が、少女が日本語を喋ったことで彼女が日本人であることが分かった。
「いって…」
頬を擦りながら、目を再び少女へと向け一応の詫びをいれる。
「裸をまじまじ見たことは謝るけど、なにも殴らなくたって…」
「服を着てくださいっ!!!」
少女が指をこちらに向ける。
…自分も裸だった。
見知らぬ建物の見知らぬ部屋で、男女が裸でふたりきり…
言葉だけなら最高の状況でふたりは出会ったのだ。