フリーズタイム   作:tawamo

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武器と記憶

 

外はまだ暗い。

しかし街明かりが無いためか驚くほど月の光で明るく感じる。

 

空ちゃんは泣き疲れたのか今は、部屋の隅でマントにくるまって眠っている。

 

自分はといえば、現在ロッカーの中身を物色中である。

よく見ると食糧と思われるものがいくつかあった。ゲームとかで見るポーションとか兵糧の類だと思われる。

 

水も1ℓのペットボトルが2本入っていた。

 

「やっぱり変だよな…」

 

外の荒れようとは隔絶されたこのロッカーの中身、人類が滅んだ世界でペットボトルがこんな綺麗な状態で保存されてるなんて…

 

やはり、何者かがこの付近にいて、自分達のことを見張っているんじゃないかと思ったが今の限られた情報だけだとやはり確信に欠ける。

 

いや、誰かいるのは確実だがそれが仲間であるかどうかという問題の方がよっぽど重要だろう。

武器と食糧が用意されている点では味方と捉えることも出来るが…

 

「あー、さっきから考えっぱなしで頭が痛い。」

 

頭を掻きながら、首をかしげていると

 

「眠れないの?」

 

と空ちゃんの声が聞こえた。

 

「あ、起こしちゃったね…ごめんよ。」

 

「いいですよ。だいぶ疲れも取れましたし…」

 

目の下がほんのり赤いが笑顔を作り笑う空ちゃんがとても眩しく見える。

 

「朝になったら、2人で付近を探索してみよう。少しでも情報を集めないと。」

 

「うん、なにか食べるものも探さないとですね。」

 

空ちゃんが言う。その通りだ。

いくら食糧が用意されていたとしても、量的にいえば2日もてばいい方だろう。食糧を確保しなければ。

 

しかし、外の状況を見れば明らかだが食糧なんて、そもそも現存しているのだろうか。

 

鉄やコンクリートすら腐るほどの年月がたっているとするなら、まず人間の作った食べ物があるはずがない。

 

だからこそ、用意された水と兵糧が余計に謎を深めているのだけれど。

 

空ちゃんに今日はもう寝ようと言い、再びマントにくるまるのを見届けてからロッカーの中に置かれたショットガンを手に取る。

 

「レ…ミン…トン…」

 

その瞬間…頭の中を短いがとても騒がしい映像が流れた。

 

「いてっ…」

 

頭痛とともに聞こえたのは悲鳴と銃声…爆発音だった。

今のは…俺の記憶なのか?

短すぎていったいなんの記憶かは分からないが、確かに心のモヤが少し晴れた気がする。

 

しかし同時に、今まで記憶が無かったからこそ許容できた今の現実に対して微量な不安を覚えた。

 

俺は、この銃を知っている…映像の中の俺はこれと似た銃を持っていた。

きっと使える。けれど、使えない。

銃を置き、頭を抱える。

 

ほんの少し記憶を取り戻しただけで、なにか、この銃と世界に対する恐怖がふつふつとこみ上げてくる。

 

怖い…恐ろしい…辛い…

 

いったい、この銃と俺になんの関係があるのかまで思い出すことはできないが、とにかく本能が恐怖しているのだ。

 

**************************

 

いつの間にか眠りについていたらしく、鳥のさえずる声と蝉の合唱がこだましていた。気温は高く、汗が自然と吹き出るようだ。

 

空ちゃんは既に起きていたらしく

 

「さぁ、行きましょう!探検!」

 

ショットガンを携え、まるで漫画に出てくるキャラかなにかのような格好をしている。

 

「こら、それはダメだ。」

 

そう言いながら空ちゃんからショットガンを取り上げる。

 

「ちぇー」

 

空ちゃんは残念がるが、年端もいかぬ少女にショットガンなんて持たせておくわけにはいかない。

 

「でも、このマント銃弾入れるところとかついてますよ。」

 

そう言いながら恥ずかしがる様子もなく、空ちゃんがマントを広げる。

 

な…「何をしてるんた〜!」

 

噛んだ。声が裏返った。恥ずかしい。

なぜ、裸を披露する少女よりもこちらが恥ずかしがらなければならないのかは分からないが。

 

この子の貞操観念は大丈夫なのだろうか、心配になる。

 

*******

 

「よし、これでいいか」

 

いろいろあっだかなんとか支度を終え、いよいよ外に出る。

装備は空ちゃんに護身用のナイフとハンドガン、あとは補充用の銃弾を持ってもらい、俺が水と食糧、それから手榴弾とショットガンだ。

 

協議した結果、外ではなにが起こるか全く予想出来ないため空ちゃんにも銃を持ってもらうことにしたのだ。

 

まぁ、使うことはないと思うが。

 

ちなみに、空ちゃんは銃の扱いについてゲームや映画で見たことはあると言っていたが果たして大丈夫だろうか?

 

自分についての記憶が無いのに、知識や知恵はちゃんと身に覚えがあるという形で発揮されるのだから、これも立派な武器と言えるだろう。

 

とにかく、ここからは何が起きても不思議ではない。

できる限り守るつもりではいるが、場合によれば離れ離れになることだって予想できる。

 

「心していこう。」

 

「りょーかい!」

 

自信満々の空ちゃんと共に1歩を踏み出す。

 

手に持った銃には弾を込めていない。

 

 




読んでいただき、ありがとうございます。
ここまでがフリーズタイムの前半になります。

後半からはもう少し動きの描写も増えていくと思うので
暖かい目で見ていただけると光栄です。
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