まだ、人類が存在していたであろう時。
その中で1番の
もちろん、人間というのは脆い生き物で、病気や怪我といった様々な原因から簡単に死に至る。
さらには、ウイルスの蔓延や人間同士の殺し合いなどでその数を著しく変動させてきた。
しかし、技術進歩などによる多種多様な兵器の登場や科学技術、医療技術の進歩による延命、文化レベルの向上でその数を爆発的に増やし、数という武器を手に入れた。
人間の活動が原因で絶滅した動植物は数しれず、絶滅の危機に瀕した種にはその慈悲を与え、まるで神のごとく振るまっていた。
しかし、今現在自分達のいるこの時代、時代って表現は果たして正しいのかイマイチだが、少なくともこの日本だった場所で
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「貸してくださいっ陽多郎さん!」
普段では決して挙げないであろう猛々しい声が響いた。
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時間は少し前に遡る。
部屋のあった廃墟を出て、しばらくふたりで空っぽになった道路の真ん中を歩いていた時だ。目の前に、見たこともない生き物がいた。
この言い方では少々語弊があるかもしれない。
正しくは、日本ではまずいない野生動物ということである。
小さい頃、動物園か若しくはテレビに出ていたのかは覚えていないがあれはどう見てもトムソンガゼルだった。
明らかに日本に住んでいる鹿とは違う、その特徴的なラインと角はサバンナとかにいるアレである。
「加藤さん、アレって日本に生息してましたっけ?」
空ちゃんが疑問を投げかけてくる。
「いや、いなかった気がする。」
野生ではまずありえない。
街がこの状況なんだから、動物園はまぁ似たような状況だとは思うが折に閉じ込められた状況で、ここまで生き残ってきたとは思えない。
「動物園っていうより、サファリパークから逃げ出したやつか。」
サファリパークなら、草や水もあるだろうし、壁さえどうにかなれば逃げ出すことも可能だろう。逃げ出したのがヤツ1匹とは考えにくいしまず繁殖に成功したからこそそこにいるんだろう。
「さて、どうする?」
「どうするって?」
「いや、もしかしたら食えるかも。」
「え。」
空ちゃんから驚嘆の声が上がるが、とりあえずは様子見でどこまで近づけるか試してみた。
カタッ
足元にあった小石をけってしまった。
ダダダッ
ほんの小さな石の音に敏感に反応し、ガゼルは走り去ってしまった。
「こりゃあ、食糧調達は厳しそうだな…。」
「は…はや…」
「まぁ、とりあえずもうちょい進んでみよう。」
「はーい!」
そうして、また歩き出した。
うーん、トムソンガゼルがサファリパークから逃げ出して繁殖に成功しているってことは、そのパークにいたほかの動物も何種類かは生き残ってたりするのか?
だとしたら、日本の生態系とかはもうズタボロだろうな。
そんな、くだらないことを考えていた。
いや、くだらなくなんてなかったのかもしれない。
角を曲がり出会った
もっと考えるべきだった。
「は?」
「え…」
ふたりの疑問が重なった。
無理もない。目の前に現れたのは、大きな体躯に大きな顎、獲物にトドメを指すための牙に鋭い眼光、そしてなにより立派な
「嘘だろ…。」
「ちょ…加藤さん…じ、銃…早く!」
空ちゃんの声にハッと我に帰り、手に持っていたショットガンを構える。
が、そこでさらに絶望が増幅した。
「た…弾込めてない…」
「えぇ!?」
ライオンが、のそりのそりと近づいてくる。
決して早くはないが確実に
ライオンとの距離が7mかそこらまで近づいた時、やっと空ちゃんから受け取った弾を銃に装填し、構えることができた。
………くそっ
「加藤さん!!撃って!!」
空ちゃんの声が響く。
その声に多少驚いたのかライオンが、警戒心を強めた気がした。
鼓動が早くなる。
やばい…やばいやばいやばいやばいやばい。
「加藤さんっ!!!!」
「撃てない!!」
ライオンへの恐怖ではなく。自分の中の記憶に押しつぶされた。
「貸してください!陽多郎さん!!!」
普段では決して挙げないであろう猛々しい声が響いた。
声と同時に、俺からショットガンを取り上げ構える空ちゃん。
その目と行動には一切の迷いがなかった。
まるで慣れた手つきだったような気もする。
ガキンッ!!!
耳元でとても重い、金属音とも爆発音ともとれる音ともに若干の熱を感じた。
ガウア!!!!
百獣の王の雄々しい声がこだました。
バシュンという音とともに、王の右目とその周りが弾け飛ぶ。血飛沫が飛び、一瞬ライオンの足が止まった。
既にライオンとの距離は4mもない。
獣臭とともに、火薬と血の混じったなんとも言えない匂いが充満している。
ガチャ…
ガキン!!ガチャ…ガキン!!
弾を装填し直し、さらに2発の銃撃を王の顔に浴びせる。
散弾銃というのか、ライオンの左目と鼻あたりの肉がはじけ飛び、頭蓋骨のようなものが見えた。
真っ赤に染まりつつある風景に、ライオンが倒れこんだ。
「やった…のか…?」
「ふぅ…危なかったですね陽多郎さんっ!」
返り血を浴びているにも関わらず、笑顔を見せる彼女に若干の恐怖を覚えながらも、助かったことへの安堵がこみ上げ、その場にへたりこんだ。
それにしても、まさかライオンを倒すなんて…
いつの間にか下の名前で呼ばれていることも忘れて、しばらく呆然としていた。
次回の投稿は、水曜日あたりを目指したいと思います。