パチパチと音をたてながら、火が燃え上がる。
火の粉が飛ぶ様子はまるで小さな蛍のようだ。
「ライオンって結構美味しいですねー!」
そう言って、ライオンの肉にかぶりつく空ちゃん。
全く、たくましすぎる。
「すまなかった。俺が不甲斐ないばかりに。」
「いえ…あのままだとふたりとも死んでたと思うし、必死だったというか…なんだかもし、陽多郎さんがライオンに食べられたら、私少なからず悲しいと思いますから。」
そんなことを言いながら、火の光で浮かぶ空ちゃんの顔はやけに大人っぽく見えた。
火をつけたのは、弾丸の中の火薬を使ったんだが、このままだと残弾もそんなにもたないな…
獣は火を恐れるから今日はこれでやり過ごすにしても、交代で見張らなければ、どこから襲われるか分からない。
初日の夜が嘘のような張り詰めた緊張感を手に握りつぶし、交代ごうたいで眠ることにした。
まずは空ちゃんに寝てもらう。朝からとんでもないことの立て続けで忘れていたが、空ちゃんは裸の上にマントを羽織っているだけなのだ。首元と胸元の2箇所でベルトのようなものでとめているとしても流石に無防備すぎではないだろうか。
男の前で、それもほんの昨日知り合った奴の前でくかーと可愛らしい寝息をたてながら眠る少女をしばらく見つめていた。
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「ふぁーっ」
大きなあくびをして、空ちゃんが起き上がった。
時間にして2時間ほどだろうかあまり寝てはいないが、どこから襲われるかも分からない極限状態で2時間はかなりしんどかった。申し訳ないが交代してもらおう。
「ねぇ、陽多郎さん。」
唐突に空ちゃんが話しかけてくる。
「なに?」
すっかり寝る体勢となった俺は、空ちゃんが放つ言葉を静かに聞いた。
「多分、陽多郎さんは銃を撃つことに酷いトラウマがあると思うんだけど、もし今日みたいな危ない状況になったら、守りきれるか分からない。」
最初は守るつもりでいた少女に守られる大人…
情けないな…
「だから、約束して。もし私がもうダメだと判断したら私を置いて逃げて。」
なんてことを、言うんだろう。
…いや、言わせてしまったんだろう。
彼女は言っていた。
俺が死ぬのは悲しいと、そんな彼女が自分を見捨てろだなんて…
全く俺は情けない。男としても、大人としても最低だ。
「そんなこと、出来るわけない…もし、俺が死んだら君は悲しむだろう?俺も同じだ。二人しかいないんだ。大切な家族だ。見捨てるなんて…できない。」
「そう…ですよね…」
なにか、思いに浸るようなそんな空ちゃんの声。
「それよりも、約束してくれ。」
「なんですか?」
「絶対死なないって、絶対に諦めないって。」
「えぇ、約束しますよ。」
「俺も、頑張るから…トラウマを克服して、君を守れるように。」
「はい、約束です。私は死にませんし、もう諦めません。見捨てろだなんて言いません。あなたを見捨てたりなんかしません。だから…今はゆっくり寝てくださいね…」
少し、彼女の声が震えている気がするが、無理もない。
まだ少女なのだ。
大人である自分がしっかりせねば…
「そうするよ…」
下唇を力いっぱい噛みながら、声が漏れるのを必死に我慢して眠った。
次回は土日あたりの投稿になります。
できれば、土曜日曜1話ずつ投稿できるようにします。