テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~ 作: 奏
俺達はデイドン砦を出た後、脇道へと入り進んでいくと森の入り口へと差し掛かりそのまま森へと入る。
「よし、到着っと。ここを抜ければ平原のむこうにつけるぞ」
俺がそう言うとエステルの顔が強張っている。
「……この場所にある森って…、まさか、クオイの森……?」
「エステルはこの森知ってるのか?」
ユーリは俺だけでなくエステルまでもがこの場所を知っていた事自体が珍しく感じているようだ。
「クオイに踏み入る者、その身に呪い、ふりきる、と本で読んだことが……」
「なるほどね、それでさっきのお姉さんはここを通らないわけか…」
「いやいや、そんな理由であのオバ……もといお姉さんが通らないわけないだろ。一応ギルドのボスだぞ。ま、実際は道が狭くて荷馬車が通らないのと視界が悪いから魔物に襲われたら一溜りもないのが理由だな」
そう言いながら俺とユーリはそう言いながら奥に進もうとしたが、足音が二つ分しかしない事に気がつきお互い振り返ると。何かと葛藤するような表情をしながらその場から動いていないエステルがいた。
「行かないのか?ま、オレらはいいけど、フレンはどうすんだ?」
「ユーリ、俺に確認というものはとらないのか?」
「なんだ?リオは急ぎの用事でもあるのか?」
「いや、まったく」
「ならいいだろ」
そう言ってユーリはニヤッという擬音が似合いそうな笑顔で俺に言ってくる。
コイツ明らかにわかって言ってやがるな……
「……わかりました。行きましょう!」
そんな会話をしている内に決心したのかエステルは俺らと一緒に奥へと進んでいく。まだ顔は若干強張ってはいたが……
=S=
「蒼破刃!」
しばらくすると何匹かの魔物が草むらからとびだしてきたのをユーリが牽制する。
「ユーリ!エステル!そっちはまかせた!」
「りょーかい!」「はい!」
そう言って俺は目の前にいる狼のような魔物と対峙する。
「さてと、今回はこいつで行きますか!」
そう言って俺は背中に手を回して何かを掴んで引き抜く動作をする。するといつの間にかそこにはチェーンソーのような大剣が握られながら凶悪な機械音を鳴らしていた。
「虎乱襲!」
俺は、アーツを発動しながら魔物の背後へと回りこんでVの字に切り裂く。それだけで狼のような魔物は両断され絶命する。
俺はそのまま大剣を降ろすと隠れていたのか俺の背後の草むらがガサガサと音を立てながら先ほどと同じ種類の魔物が俺めがけて飛んできた。
ま、避ける必要はないけどな……
「ガウッ!」
そのまま飛んできた魔物は俺には届かず横から来たラピードの小太刀によって切り裂かれながら吹き飛ぶ。だがどうやら切込みが浅かったのか魔物は吹き飛ばされながらも何とか立ち上がる。
「よっと」
そんな声が聞こえたかと思うと次の瞬間、魔物は俺の手から離れた大剣によって串刺しにされ大剣はそのまま光の粒となって消え、そこには魔物の亡骸だけが横たわっていた。
「さんきゅ、ラピード」
「ガウ」
俺はそのままラピードを撫でつつユーリたちの方を見ると丁度最後の魔物にエステルの術が決まっているところだった。
そんなこんなで、俺達はそのまま何度か森の魔物と遭遇しながら奥へと進んでいく。
「な、何の音……です?」
しばらく歩いているとエステルが何かを感じたのか足を止める。
「足元がひんやりします…まさか!これが呪い!?」
「どんな呪いだよ」
ユーリは呆れた声でエステルに言う。
「木の下に埋められた死体から、呪いの声がじわじわと這い上がり、わたしたちを道連れに……だからカウフマンさんも…」
「それさっき俺が通らない理由話したよな?」
「……あれは?」
どうやらエステルが目の前に何かある事に気がついたようでそちらに意識を向ける。
つまり俺の話はスルーですね。わかります。憑神出すぞゴラァ。
「これ、魔導器か。なんでこんな場所に……」
地面にのの字を書いてる俺を軽く無視してユーリとラピードがそれに近づいていた。
「少し休憩するか」
「だ、大丈夫です」
ユーリは丁度いいかと思ったのか休憩をしようと持ちかけるがエステルはそれを断って歩きだした。そして、魔導器の前でなにかに気がついたのか足を止める。
そう思ってエステルの方に振り向く時には既に手遅れで、
「……あれ、これは?」
と言ってエステルは魔導器に近づいくと次の瞬間
「「うお!」」
「キャァ!」
眩い光に襲われ思わず目をつぶるそして目を開けたときにはエステルが倒れていた。
俺とユーリは急いでエステルに駆け寄った。
「おい、エステル!」
「気絶してるだけだな」
=S=
エステルはラピードに枕がわりになってもらって、眠っている。
「ほら、ユーリこれでも食っとけ」
俺はしばらく用事のため離れた後、その間に拾ったニアの実をユーリに投げ渡す。
「お、さんきゅ」
そいってユーリが何の疑いもなくニアの実を口へと運び次の瞬間には顔を歪める。
「うっ…苦っ!?……おい、リオ」
「いやーいいリアクションありがとう」
「ん……あれ?」
その時、エステルが目を覚ました。
「大丈夫か?」
「うっ……少し頭が……でも、平気です。私、一体……」
「突然倒れたんだよ。何か身に覚えないか?」
ユーリは見た目は普通にしていたがよほど心配していたのか何度も容態を聞いていた。
「もしかしたら、エアルに酔ったのかもしれません」
「エアルってあのエアルか?」
「はい、そのエアルです」
「濃度が濃いエアルは人体に悪影響を与えるからな。エステル、大丈夫か?」
俺が隣からそう補足して言う。
「はい、大丈夫です」
「ふうん、だとすると呪いの噂ってのはそのせいなのかもな」
ユーリが納得していると、エステルが立ち上がった。
「倒れたばかりなんだ、もう少し休んどけって」
「そうはいきません。早くフレンに追いつかないと」
「でもまた倒れて、今度は一晩中起きなかったら逆に遅れるからな。俺はリオに賛成だ」
「でも……そうですよね。ごめんなさい……」
エステルは不満を抱えつつも渋々休憩を取ることにした。
=S=
一休みした後、俺達は再び森を進んで行く。そしてもうすぐ出口というところで、
「グルルルルル……」
ラピードが草むらに向かって威嚇していたそれと同時に草むらがガサガサと音がする。
「ん?」
ユーリと俺、エステルは草むらの方を向いた。
「エッグベアめ、か、覚悟!」
という声と共にいきなり、草むらから小柄な少年が飛び出して来たと思うと自分よりも大きい剣を振り回す。いやむしろ剣に振り回されていた。
「うわっ、とっとっ!」
回り続ける少年を傍らに俺はユーリに話しかける。
「ユーリ、止めてやれば?」
ユーリはそのまま近づいていきタイミングを見て、ニバンボシで、少年の武器に攻撃をしてそのまま大剣を真ん中あたりからたたき折る。
「うああああっ!あうっ!う、いたたた……」
「うわ、容赦ねえな」
回っていた少年は突然受けた衝撃によって派手に転び、転んだ少年にラピードが近づくと目を回していた少年がラピードに気がつく。
「ひいいっ!ボ、ボクなんか食べても、おいしくないし、お腹壊すんだから」
「ガウッ!」
「ほ、ほほほんとに、たたたすけて。ぎゃあああ???!!」
「ほらユーリがあんなことするからこの少年、頭おかしくなったじゃん」
「俺のせいかよ!というか忙しいガキだな」
呆れているユーリと面白がる俺。そうしていると最初は驚いて動かなかったエステルは少年に近づいて行く。
「だいじょうぶですよ」
「あ、あれ?魔物が女の人に」
「ったく。なにやってんだか」
「あははは、この子おもしれぇ」
=S=
「ボクはカロル・カペル!魔物を狩って世界を渡り歩く、ギルド『魔狩りの剣』の一員さ!」
先ほどの少年、カロルは自己紹介した。
「オレは、ユーリ。それにエステルとリオ、そしてラピードだ」
カロルが自己紹介をしてきたのでユーリがみんなを代表して自己紹介したあと出口の方を向く。
「んじゃ、そういうことで」
「じゃあ、カロルとやら死なないようにな」
そう言って俺とユーリは森の出口へと歩き出す。
「あ、え?ちょっとユーリ、リオ!」
どうやらエステルは俺らのさっぱりとした態度に驚いているようだ。
「えと、ごめんなさい」
「へ?……って、わ?待って待って待って!」
カロルは歩きだした俺達の前に急いで回り込む。
「3人は森に入りたくてここに来たんでしょ?なら、ボクが……」
「いえ、わたしたち、森を抜けてここまで来たんです。今から花の街ハルルに行きます」
「へ?うそ!?呪いの森を?あ、なら、エッグベア見なかった?」
「ユーリは見たか?」
「いや、見てないと思うぞ」
「そっか……なら、ボクも戻ろうかな……あんまり待たせると、絶対に怒るし……うん、よし!3人だけじゃ心配だから、『魔狩りの剣』のエースであるボクが街まで一緒に行ってあげるよ!」
「カロル、あれでエースを名乗れるのならギルドならギルド名は『魔狩りの剣』から『魔物の餌』に改名することをお勧めするぞ」
「嫌だよ!?そんなギルド名!それにさっきのはちょっと油断しただけだよ!」
俺が笑顔でそういうとカロル面白いくらい反応をする。そして今度は自分の鞄を見せる。
「なんたってボクは、魔導器だって持ってるんだよ」
「いや、残念ながら俺以外はみんな持ってるから大した自慢にならないからな?」
「え?え?なんで魔導器持ってるの!な、ならこれでどうだ!」
そう言ってカロルは少し厚い本を鞄から取り出す。どうやら中には魔物の情報などが書いてあるようだ。
「魔物の情報か。だが、途中から白紙だぞ?」
「こ、これからどんどん増えていく予定なの!」
「あ、ここ間違ってるぞ」
そう言いながらユーリと俺は本に魔物の情報を修正&書き込みをしていく。
「ちょっと!ねぇ、勝手に書き込まないでよ!」
「エースの腕前も、剣が折れちゃ披露できねえな」
「いやいや、案外軽くなって振りやすくなってるかもよ?」
「いやだなあ。こんなのただのハンデだよ。あれ?なんかいい感じ?やっぱり僕の計算どうりだね!」
カロルは折れた武器を振りながら何か言っているが俺達は無視してはカロルを置いて森の出口に歩き出す。
「ちょ、あ、方向わかってんの??ハルルは森出て北の方だよ。もぉ、置いてかないでよ!」
どうやらカロルもしばらくして俺達がいないことに気がついたらしく一緒についてきた。
=S=
~犬にだってプライドはある~
カロル「ラピードって何者?犬なのに武器使うし。牙とか爪があるのに……」
ラピード「ウー、ワン!」
ユーリ「爪とか牙使うのは犬の戦い方だしな」
エステル「え?だってラピードは犬、ですよね?」
ラピード「ワンワン!」
ユーリ「ラピードはラピードって生き物だよ」
カロル「なにそれ?」
ラピード「ガウッガウッ、ワォーン!」
リオ「つまり、ラピードは自分のことはラピードって生き物だから犬や人間の常識に囚われないってところか」
ラピード「ワン!ガウッガウッ」
ユーリ「ご名答、だからもちろん武器も使うし道具も使う」
エステル「よくわかりませんけど……気位のようなものを感じます」
ラピード「ワオーン!」
ユーリ「だろ、敬えよ?」
リオ「ラピード、お手」
ラピード「ワン!」
カロル「…ね、ユーリ。もしかして、ラピードの言葉、訳してる?」
ユーリ「気のせいだろ」
エステル「うう、あいかわらずリオだけラピードに触れてずるいです」
カロル「あれって敬ってるのかな………」
=S=
ユーリ達が先ほどまでいた魔導器の場所では…
先ほどまでは止まっていた魔導器が突如光りだす。その魔導器の前には銀色の輝く長い髪をなびかせ赤い服をまとった男が立っている。
「なぜ、貴様がここにいる?あの者たちと共に森を抜けたのではなかったのか?」
そう言う男はまるで初めからわかっていたかのように振り向きながら後ろに立っていた青年に話しかける。
「知ってて聞くなよ。それに半端に壊れていたせいか近づくまで気がつかったけど、これは間違いなく’あの’魔導器だ。だから俺が完全に壊す。」
「フン……好きにするがいい」
そう言うと男は魔導器の前から退く。
青年はそのまま右手を前へと突き出す動作をするとそこから光を放ち突き出した右腕はいつの間にか幾何学的な砲身へと変化する。
「ハァッ!」
その掛け声と共に砲身から弾丸らしきものが打ち出され、魔導器に当たるとそこから右手へと幾何学紋様のようないくつもの帯が右手に流れ込んでいき、しばらくすると収まった。
魔導器の方へ目を向けるとそこには今まであった魔核が消えて機能を完全に停止させている。
「貴様はなぜここまでする?」
事が終わったのを見はからって男は青年に話しかける。
「ま、これは、あの人からの頼みだからな。そして俺のためでもある」
「……そうか」
そう言うと男は納得したかのように言うとそのまま踵を返して森を出て行く。そして青年はその場から動かず、しばらくすると光の粒へと変化して消えた。