テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~   作: 奏

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第十二相

 

ユーリ、エステル、リオ、ラピードはクオイの森で出会った少年、カロルと共に花の街ハルルに到着した。

 

 

「ここがハルルなんですよね?」

 

「うん、そうだよ」

 

「この街には結界がないのか?」

 

「そういえばユーリとエステルはこの街は初めてだったよな。この街の結界魔導器は樹についてんだよ」

 

 

「魔導器の中には植物と融合して、有機的特性を身につけることで進化をするものがある、です。その代表が、花の街ハルルの結界魔導器だと本で読みました」

 

エステルが説明すると、ユーリは街の様子を見渡す。けれど街の住民の中にはケガをした人が多く空には結界の象徴である光の輪が見えない。

 

 

「役に立ってねえみたいだけど」

 

「毎年、満開の季節が近付くと一時的に結界が弱くなるんだよ。ちょうど今の季節なんだけど、そこを魔物に襲われて……」

 

「結界魔導器がやられた…ってところか?」

 

そうユーリが聞くとカロルは俯きながら頷く。

 

「うん、魔物はやっつけたけど、樹が徐々に枯れはじめてるんだ」

 

 

そう言うと丁度カロルの前を通りすぎた女の子がいた。

 

 

「あっ!」

 

「どうしました、カロル?」

 

「ごめん!用事があったんだ!じゃあね!」

 

 

そう言ってカロルは何かを思い出したかのように走っていった。

 

 

「どうしたんだろうな?」

 

「さあな。勝手に忙しいやつだな。それよりエステルはフレンを探すんだよな……」

 

 

エステルはユーリが言い終わる前に走り出し、その先にはケガをした人達が横たわっていた。

 

 

「まったく、大人しくすることができないのかアイツは」

 

「ま、エステルの性格からして放ってはおけないんだろうな」

 

 

そう言ってユーリと俺ははエステルのところまで歩み寄っっていく。

 

 

「わたしに、皆さんの手当てをさせてください」

 

「なんと、治癒術をお使いになられるのですか!?」

 

 

俺達が近づくころにはエステルの言葉に長老らしき老人が驚きの声を上げていた。

 

 

「ええ、それはぜひとも!……あ、いや、ですが、私らお金の方は……」

 

「そんなのいりません」

 

 

そう言うとエステルは噴水の近くにいた人みんなのケガを治癒術で手当てしていく。

 

 

「ありがとうございます!本当にありがとうございます!」

 

「いえ、そんな、ぜんぜん……」

 

「いやはや、これほどの治癒術があったなんて……」

 

「なんとお礼を言えばいいか」

 

 

エステルがみんなに感謝されてるのを横目に、俺はハルルの樹がある広場へと先に向かう。

 

 

「リオ、どこ行くんだよ?」

 

「ハルルの樹を少し見てこようと思ってな。なにが原因もわかるかもしれないだろ?」

 

「そうか。オレらも少ししたら行く」

 

「わかった」

 

俺はそのままはユーリ達と別れた。

 

 

 

 

 

  =S=

 

 

 

 

 

俺はハルルの樹を見上げる。以前、来たときは花が咲き乱れ幻想的な空間を作り出していたこの場所も今では樹が枝の先から徐々に枯れようとしていた。

 

足元を見るとやはりというか土が変色をしている。

 

 

「やっぱりか、だいぶ魔物の血を吸ってるな~」

 

 

俺は土を見て一人呟く。こうして見るとやはり魔物の血を吸っていしまったせいか土が赤黒い。

 

 

「リオ。樹の方はどうだ?」

 

「見た感じだと結構枯れ始めてるな」

 

 

そこにユーリとエステル、ラピードがやってきた。

 

 

「んで、二人ともこの後はどうする?」

 

一応、どうするかはこの二人の性格上分かっているが確認をする。

 

 

「わたしは、フレンが来るまでケガ人の治癒を続けます」

 

「……なぁ、どうせ治すなら結界の方にしないか?」

 

「え?」

 

 

突然のユーリの言葉にエステルは首を傾げる。

 

 

「魔物が来れば、またケガ人が出るんだ。今度はさっきのガキたちが大ケガするかもしれねぇ」

 

「それはそうですけど…どうやって結界を治すつもりなんです?」

 

「こんだけでかい樹なんだ。魔物に襲われた程度で枯れたりしないだろ」

 

「何か他に理由があるってことですか?」

 

「あー多分その原因はこれじゃね?」

 

 

そう言って俺は地面を指差しながら言う。

 

 

「土を見てみろ。足下の土だけ変色しているだろ?たぶん魔物の血を土が吸ったから、それが樹を枯らしているんだと思うぞ」

 

「確かに色が違うな」

 

 

ユーリがそう言いながら地面を確認しているとそこに先ほどの長とカロルがやってきた。

 

 

「なんとそれは真ですか!?」

 

 

どうやら先ほどの会話を聞かれていたようで、長は驚いたように問い返すと返事は長の後ろにいたカロルから聞こえてきた。

 

 

「リオ、よくわかったね」

 

「ということは、カロルも知っていたんだな?」

 

「ま、まぁね。……ボクにかかれば、こんくらいどうってことないよ」

 

「その毒をなんとか出来る都合のいいもんはないのか?」

 

ユーリがカロルに尋ねるとカロルは顔を俯かせて言う。

 

「あるよ、あるけど……誰も信じてくれないよ……」

 

「なんだよ、言ってみなって」

 

 

そう言ったユーリはそのまましゃがみ込んでカロルの目線にあわせて話す。

 

 

「パナシーアボトルがあれば、治せると思うんだ」

 

「パナシーアボトルなら。よろず屋にあるぞ」

 

「さっそく行きましょう、ユーリ、リオ!」

 

 

 

   =S=

 

 

 

俺達はそのままよろず屋を訪れた。

 

 

「はいよ、いらっしゃい。今日は何がいり用で?」

 

「パナシーアボトルはあるか?」

 

ユーリが店主にそう聞くと店主は困った顔になる。

 

「あいにくと今切らしてるんだ」

 

「そんな……」

 

「素材さえあれば、合成できるだがね」

 

「何が必要なんだ?」

 

「たしか『エッグベアの爪』と『ニアの実』『ルルリエの花びら』の3つだった気がするぞ」

 

 

ユーリの質問に俺が答えると店主は驚いたような顔をしながら話を進める。

 

 

「へえ、そっちの兄ちゃんは物知りだな。けど、パナシーアボトルを一体、何に使うんだ?先日も同じことを聞いてきたガキがいたんだが」

 

「ハルルの樹を治すんです」

 

「え?パナシーアボトルを樹に使うなんて、聞いたことないけどなあ」

 

「なるほど…カロルがクオイの森でエッグベアを探していたのはそういうことか……」

 

「あの、ニアの実とはどんなものなんです?」

 

「森で俺がユーリに渡したあの苦い果実だな」

 

「げ、あれかよ」

 

 

ユーリは先ほど俺が食べさせた事を思い出したのか。苦そうな表情になる。

 

よほど苦かったのか……

 

 

「では、ルルリエの花びらは?」

 

「それはこの街の真ん中にハルルの樹があるだろ?あれの花びらさ。普通なら魔導樹脂をつかうんだけど、このあたりにはないからね。ルルリエの花びらは長が持ってると思うから聞いてみな」

 

「わかった。素材が集まったら、また来る」

 

 

ユーリがそう言ってよろず屋を後にする。そして、隠れていたカロルに話し掛けた。

 

「カロル、クオイの森に行くぞ」

 

「え?」

 

「森で言ってたろ?エッグベアかくご~って」

 

「俺達も手伝ってやるってこと」

 

カロルは少し驚きの表情を浮かべて俺らの顔を見る。

 

 

「パナシーアボトルで治るって信じてくれるの……?」

 

「俺はギルド『魔物の餌』のエースに名誉挽回のチャンスをあげようと思ってな」

 

「『魔物の餌』じゃなくて『魔狩りの剣』!!……でも、も、もう、しょうがないな。ボクも忙しいんだけどね?」

 

 

カロルはいつもの調子に戻ったかと思うと見事に顔がにやけていた。

 

 

「決まりですね!わたしたちで結界を直しましょう」

 

「エステルも来るのか?」

 

「治すなら樹を治せって言ったのはユーリです」

 

そういわれたユーリは思わずぐうの音も出なくなる。

 

 

「こりゃ、一本とられたな。ユーリ」

 

「ったく、ならフレンが戻る前に樹治して、びびらせてやろうぜ」

 

 

俺達は再びカロルを加わえて、再びクオイの森に向へと向かう。

 

 

 

  =S=

 

 

 

 

 

「ねぇ、そういえば疑問に思ってたんだけど、二人……ラピードもなんだけど、なんでリオ以外はみんな魔導器持ってるの?」

 

 

カロルがクオイの森に入った直後に思い出したかのように尋ねた。

 

 

「普通、武醒魔導器なんて貴重品持ってないはずなんだけどな」

 

「カロルも持ってんじゃん」

 

「ボクはギルドに所属してるし、手に入れる機会はあるんだよ。魔導器発掘が専門のギルド、『遺構の門(ルーインズゲート)』のおかげで出物も増えたしね」

 

「ほぉ、遺跡から魔導器を発掘するギルドもあるのか」

 

「うん、そうでもしなきゃ帝国が牛耳る魔導器を個人で入手するなんて無理だよ」

 

「古代文明の遺産、魔導器は、有用性と共に危険性を持つため、帝国が使用を管理している、です」

 

エステルが説明する。

 

「いやいや、あれって管理というより独占だろ」

 

「確かにな」

 

「そ、それは……」

 

「で、実際のとこどうなの?なんで、持ってんの?」

 

「オレ、昔騎士団にいたから、やめた餞別にもらったの。ラピードのは、前のご主人様の形見だ」

 

「餞別って、それ盗品なんじゃ。……えと、エステルは?」

 

カロルは次にエステルに尋ねた。

 

「あ、わたしは……」

 

「貴族のお嬢様なんだから魔導器くらい持ってるって」

 

「あ、やっぱり貴族なんだ。ユーリやリオと違って、エステルには品があるもんね」

 

「心外な」

 

「うるせぇ」

 

 

 

 

   =S=

 

 

 

 

そして何体かの魔物を倒しつつ俺達は前にエステルが倒れた魔導器のある場所に着いた。そしてユーリはその場に落ちていたニアの実を拾った。

 

 

「あとは、エッグベアの爪、だね」

 

「森の中を歩いて、エッグベアを探すんです?」

 

「それは、多分見つからないと思うぞ?」

 

「なら、どうすんだ?」

 

俺が説明する前にカロルが答える。

 

「ニアの実一つ頂戴。エッグベアを誘い出すのに使うから。エッグベアはね、かなり変わった嗅覚の持ち主なんだ」

 

 

ユーリはそれを聞くと、カロルにニアの実を渡し俺はすぐさま自分の鼻をつまむ。ユーリは俺の行動を見て疑問そうにしていた。そしてカロルがニアの実をいじりだししばらくすると突如ものすごい異臭が漂った。

 

 

「くさっ!!おまえ、くさっ!!」

 

「ちょ、ボクが臭いみたいに!」

 

「いやーやっぱり強烈だなこれは」

 

カロルが近づこうとするが、俺達は異臭で引く。そして嗅覚が優れているのがあだとなったのかラピードが倒れる。

 

「あ、ラピード、しっかりして」

 

「みんな警戒してね。いつエッグベアが来てもいいように。それに、エッグベアは凶暴なことでも有名だから」

 

「その凶暴なやつの相手は、カロル先生がやってくれるわけ?」

 

「やだな、当然でしょ。でも、ユーリとリオも手伝ってよね」

 

「がんばれ、カロル。俺はお前の勇士を忘れないから!」

 

「ちょ、ちょっと!リオは、ほんとに手伝ってくれるよね!?」

 

「わたしもお手伝いします。ほら、ラピードも」

 

 

エステルが介抱していると、ラピードはやっと立ち上がったがやはりというべきか表情は険しい。

 

 

「んじゃ、これで森の中を歩いてみるか」

 

 

俺の言葉でユーリ達はカロルを先頭に歩きだした。

 

 

 

 

 

  =S=

 

 

 

 

 

『ガアァァ!!』

 

 

しばらく臭いカロルを先頭に森を歩いていると何かの叫び声が聞こえた。それを聞いたカロルは脱兎のごとくユーリの後ろに隠れる。

 

 

「き、気をつけて、ほ、本当に凶暴だから……!」

 

「そう言ってる張本人が真っ先に隠れるのな」

 

「エ、エースの見せ場は最後なの!」

 

「いや、普通最初からでしょ……」

 

 

あきれるユーリと俺をおいて、そう言ってると茂みから出てきたのはタンポポの形をした植物型の魔物だった。

 

「……これは、違いますよね」

 

その魔物が去ると、次に現れたのは、巨大な腕と二メートルを越えないかと思われる体格を持つ熊の魔物だった。

 

 

「うわああっ!」

 

「こ、これがエッグベア……?」

 

 

エステルが言うと、カロルは頷く。

 

 

「なるほど、カロルの鼻曲がり大作戦は成功ってわけだな」

 

「へ、変な名前つけないでよ!」

 

 

俺が作戦名を命名するとカロルからの反発の声が上がる

 

 

「そういうセリフは、しゃきっと立って言うもんだ」

 

ユーリはそう言って、ニバンボシを抜く。エステルとカロルそしてラピードも武器を構えた。ちなみに俺はというと…

 

 

「がんば!」

 

「ええ!リオも手伝ってよ!」

 

 

いつのまにか樹の枝に座りながら高見の見物を決め込む。いやだって多分一撃で片付いちゃうし。

 

 

「来るぞ!」

 

カロルはまだ何か言いたそうだったが相手は魔物、会話を呑気に待つわけでもなくエッグベアは巨大な腕を振り回しながらカロル達へと接近する。

 

けれどそれを理解していた三人+一匹は散開して避ける。

 

 

「蒼破刃!」

 

 

ユーリの放った衝撃波は一直線にエッグベアへと向かい衝突するがあまり効いていないように見える。

 

 

「臥龍アッパー!」

 

 

カロルはハンマーでを下から振り上げエッグベアの顔へと攻撃をするが、巨大な腕によって阻まれる。そのままエッグベアは腕を振り払おうとして、横に巨大な腕がカロルに直撃しそうになるが、なんとかガードが間に合ったようだ。

 

 

「うわっ!」

 

 

けれど力までは相殺できずカロルはそのまま吹き飛ばされる。

 

 

「大丈夫ですか!聖なる活力ここに、ファーストエイド!」

 

 

吹き飛ばされたカロルにエステルが駆け寄り、治癒術の光がカロルに注がれる。

 

 

「煌めいて 、魂揺の力」

 

 

エステルはそのまま詠唱をはじめて、その間にラピードはエッグベアの後ろに回り小太刀を突き立て、そのまま切り裂く。

 

「フォトン!」

 

「ガウッ!」

 

 

エステルの術が発動してエッグベアの頭の辺りで光の爆発が起こる。さらにそこに追撃でラピードが剣でエッグベアの背中を斬ったことでエッグベアは動きが止まる。

 

 

「カロル!今だ!」

 

「うん!」

 

 

カロルに合図を送り、ユーリはその隙を逃さず勢いよく接近してエッグベアの懐に入り込む。

 

 

「鬼神千裂ノック」

 

 

エッグベアは接近してきたユーリをそのまま掴もうと手を伸ばすが、カロルが打ち込んだ石が見事に顔へと直撃した。するとエッグベアはそのまま軽く後ろに仰け反る。

 

 

「双牙掌!」

 

 

そしてがら空きになった瞬間にユーリのニバンボシがエッグベアの体を斬り裂き、そこに向かって右手の拳を叩き込んだ。

 

 

『グオォォ……』

 

 

エッグベアはそのままヨロヨロと後ろへあとずさると、そのまま力尽き倒れた。

 

 

「ふぅ、お疲れさん」

 

 

ユーリが肩の力を抜きみんなに労いの言葉をかける。

 

 

「お、もう終わったみたいだな」

 

「リオ、今まで何処にいたんです?」

 

「いや、ちょいと用をたしに……それよりカロル的には名誉挽回できてよかったんじゃないか?」

 

「ま、まあね、僕にかかればエッグベアなんて楽勝だよ」

 

 

その言葉に俺とユーリは呆れ顔になりつつ、エステルさえも苦笑いしていた。

 

 

「それじゃあカロル先生、その勢いで爪も取ってくれ。オレ、わかんないし」

 

「え!?だ、誰でもできるよ。すぐはがれるから」

 

 

カロルが言うと、ユーリ達はエッグベアに近付く。

 

 

「わたしにも手伝わせてくだ……うっ」

 

 

エステルがさらに近づいて行くが、エッグベアから発せられる臭いに思わず鼻をつまむ。

 

 

「エステルは周囲の警戒よろしくー」

 

「は、はい」

 

 

俺がそう言うと、エステルはうなずいた後に、こちらとは反対の方を向いて周囲の警戒に回ってくれた。

 

 

「も、もう、動かないよね?」

 

 

そういいながらカロルが恐る恐るエッグベアへと近づいていくわけで、俺が思うに、もうこれはお約束としかいえない状況ではないか。思わず顔に笑みが浮かぶ。

 

そしてユーリの方を見るとこちらも悪戯を前にした子供のようないやらしい笑みを浮かべ俺の方を見ている。俺もこんな顔をしているんだろうな。と思いながら口だけを動かしタイミングをとって………

 

 

「「うわああああっ!!」」

 

「ぎゃあああ????っ!!」

 

 

俺とユーリの後ろからの不意打ちに、カロルはもうガクガク震えながら叫ぶという最高のリアクションが返ってきた。

 

 

「驚いたフリが上手いなあ、カロル先生は」

 

「あ、うっ……はっはは……そ、そう?あ、ははは……」

 

「あははははははっ、は…腹が…い、痛い……くははっ」

 

 

ユーリは嫌な笑みをしつつカロルを弄り、俺はその場で腹を抱えながら笑っていた。

 

その後カロルが未だに震えている間にユーリはエッグベアに近づくとそのまま爪を剥ぎ取った。

 

 

「さて、戻ろうぜ………てか、リオはいつまで腹、抱えてんだよ」

 

 

このあと俺達は森を出口まで歩いていきそのままハルルの街へと戻ったのだが、その際、森から出るまでの間、俺は終始笑っていたせいか、後に呪いの森から笑い声が聞こえる。という噂が立ったのだがその噂を作った本人はこの事を知らないままだった。

 

そしてユーリたちが倒したエッグベア。その周りには何体もの魔物の死骸が転がっていてその殆どが額を打ち抜かれ一瞬で絶命していたのだが、それを知るのはこの状況を作り出した本人だけである。

 

 

~クオイの森出口付近~

 

しばらくして俺達が森の出口にさしかかると……

 

 

『ユーリ・ローウェル!共犯者の男!森に入ったのはわかっている!素直にお縄につけぃ!』

 

 

奥からシュヴァーン隊のルブランの声が聞こえた。

 

 

「この声、冗談だろ。ルブランのやつ、結界の外まで追ってきやがったのか」

 

「共犯者って俺のことだよな?」

 

 

そう言って俺は自分を指差しながらユーリに確認する。

 

 

「そうなんじゃねぇのか?リオの名前、あいつらに教えてないしな」

 

「え、なに?誰かに追われてんの?」

 

カロルが追われていることについて聞いてくる。

 

 

「ん、まあ、騎士団にちょっと」

 

「またまた、元騎士が騎士団になんて……」

 

「信じたくないが、ユーリの言ってることは全部事実なんだよな~」

 

「え、え、ええ~っ!!」

 

 

俺がユーリの言っている事が事実だと伝えカロルが俺達の顔を交互に見ながら驚いていると……

 

 

『す、素直に出でくるのであ~る」

 

『い、今ならボコるのは勘弁してあげるのだ~』

 

 

更にアデコールとボッコスの声も聞こえるがその声はかなり震えていていつも通りとはいいがたかった。

 

 

『噂ごときに怯えるとは、それでもシュヴァーン隊の騎士か!』

 

「……ねぇ、二人とも何したの?器物破損?詐欺?密輸?ドロボウ?人殺し?火付け?」

 

「俺は無罪だ!」

 

 

俺は思わず叫ぶ。というか俺、毎回言ってるはずなんだけどな。

 

「何言ってんだよリオ、脱獄罪があるだろ?」

 

「ユーリこれで何度目になるかわからないが一応言っておく、お・ま・え・が元凶だからな?」

 

「ま、恨むなら間違えた騎士を恨んでくれ。とにかく今は逃げるのが先決だ」

 

 

ユーリは俺の言葉を軽く流しつつ、林の草を使って道を塞いでいく。

 

 

「これでよし」

 

「だ、だめですよ!無関係な人にも迷惑になります!」

 

「ここは呪いの森って言われているんだから、大丈夫じゃね?」

 

 

そう言ってユーリと俺、ラピードは森の出口へと向かい始め、エステルも後に続いた。

 

 

「わ~、待ってよ?!」

 

 

いつの間にか置いてかれていたカロルも走って俺達を追いかけて森を抜けていった。

 

 

 

 

   =S=

 

 

 

 

その後ハルルの街に着いた頃には既に日は暮れて夜となっていた。ユーリ達は長からルルリエの花びらをもらい、そのままよろず屋を訪れる。

 

 

「おっ、戻ってきたか。材料は揃ってるか?」

 

「ちゃんとあるよ」

 

 

そう言ってカロルは、素材を店主へと渡し、店主は材料を確認し始める。

 

 

「よし、作業に取り掛かる」

 

 

しばらくして店主はパナシーアボトルを持って出てきた。

 

 

「パナシーアボトルの出来上がりだ」

 

「これで毒を浄化できるはず!早速行こうよ!」

 

 

バナシーアボトルを落とさないように気をつけつつ俺達4人はハルルの樹に向かう。

 

ハルルの樹の根元にはどうやら樹を治すと言う噂を聞きつけた街の人たちが集まってきて今か今かとまちかまえていた。

 

「おおっ、毒を浄化する薬ができましたか!」

 

「カロル、任せた。面倒なのは苦手でね」

 

「え?いいの?じゃあボクがやるね!」

 

 

ユーリからその役を貰ったカロルはパナシーアボトルを受け取り、樹に向かった。

 

 

「カロル、誰かにハルルの花を見せたかったんですよね?」

 

「恐らくはな」

 

「ま、手遅れでなきゃいいな」

 

カロルはパナシーアボトルを変色した土と樹の間にかける。すると樹が淡く光を放ち始める。

 

 

「お願いします。結界よ、ハルルの樹よ、よみがえってくだされ」

 

長は必死に願うが、樹の光はだんだん弱くなりやがて光は消えてしまう。そこには今だ枯れ続けるハルルの樹しか残ってはいなかった。

 

 

「そ、そんな……」

 

「うそ、量が足りなかったの?それともこの方法じゃ……」

 

 

カロルは樹がよみがえらなかったことに困惑しているようだ。

 

 

「もう一度、パナシーアボトルを!」

 

「それは無理です。ルルリエの花びらはもう残っていません」

 

「そんな、そんなのって……」

 

 

諦めきれないエステルは樹の前に立ち、両手を合わせる。さながら何かに祈るように──

 

 

「お願い…」

 

 

すると、エステルから光が零れ、それはやがて雫となり空へと昇り始める。それはまるでホタルが樹の周りで踊っているような幻想的な輝きを醸し出して、そこにいた人々全員がエステルから目が離せなくなっていた。ユーリと俺も例外なく……

 

 

「エステル……」

 

「……」

 

 

やがて光の雫が樹を囲みエステルが囁く。

 

 

「咲いて……」

 

 

小さく呟かれた一言、けれどそれはそこにいた全ての人に耳に届き、空に舞っていた光の雫はそれを合図とするかのように樹の根元へと集まり、そこから樹の中を駆け上がっていく。そして樹の頂上の結界魔導器の所へ集まるとより一層輝きながら弾けた。

 

それはまるで雪のような光が降る中でハルルの樹が変化していく。枯れていた所からは新たな新芽が生え、しな垂れていた花達はまるで一つ一つが主張するかのように咲き誇りながら花びらを舞い躍らせ、そして空には結界の象徴となるリングが街を覆っていた。

 

 

 

「す、すごい……」

 

「こ、こんなことが……」

 

「今のは治癒術なのか……」

 

「これは夢だろ……」

 

「あり得ない……でも……」

 

 

カロルの声を始めとして街の人々が次々と驚嘆の声を上げていく中、エステルは崩れるようにその場で膝を下ろす。

 

 

「はあ……はあ……」

 

 

エステルを見ると呼吸が乱れ満身創痍といった感じである。

 

 

「ありがとうございます。これで、まだこの街も、やっていけます……」

 

 

長は今だ驚いてはいたがそれでも嬉しさに満ち溢れた表情でエステルにお礼を言っていた。

 

 

「わ、わたし、今何を……?」

 

「……すげえな、エステル。立てるか?」

 

エステルは今の状況をうまく飲み込めないではいるが、ユーリが尋ねると、エステルはそのまま立ち上がる。

 

 

「ユーリ」

 

 

カロルを見ると手を上げながらこちらを向いている。それの意味を理解したユーリも手を軽く上げるとカロルの手とユーリの手が重なりほど良いハイタッチの音がする。

 

 

「リオも」

 

「おう!」

 

 

そして俺にもカロルが同じようにハイタッチを要求する。

 

 

「フレンのやつ、戻ってきたら、花が咲いてて、ビックリだろうな。……ざまあみろ」

 

「ユーリとフレンって不思議な関係ですよね。友達じゃないんです?」

 

「ただの昔馴染みってだけだよ」

 

「どっちかつーと、ライバルと言った方がしっくりくるんじゃないか?」

 

「そりゃ、言えてるな」

 

「………」

 

 

 

ラピードがユーリたちに近づき、ある方向を向いた。そこには城で会った赤目の男たちとザギが見える。

 

 

「あの人たち、お城で会った……」

 

「ここで会うのはまずいな。この街から早く離れよう」

 

「え?なになに?どうしたの急に!」

 

 

ユーリ達は街から出るために出口に向かって走り出す。

 

 

「面倒な連中が出てきたな」

 

「ここで待っていれば、フレンも戻ってくるのに」

 

「そのフレンって誰?」

 

「「エステルが片想いしてる帝国の騎士様だ(ろ?)」」

 

ユーリと俺は同時に言った。なんだろ最近はほとんどユーリと同じ思考になってきている気がするな。

 

 

「ええっ!!」

 

「ち、違います!!」

 

 

カロルは俺達の話を鵜呑みにしたような表情をしながら、エステルは顔を赤くしながら否定してくる。

 

「あれ?違うのか?ああ、もうデキてるってことか」

 

「もう、そんなんじゃありません。というかリオも笑わないでください!」

 

「くははっ……いや~お前らといると飽きないな。ほんとに、」

 

「ま、なんにせよ、早く街から離れた方がいいな。リオ、前に結界の外旅してたって言っていたよな。ならアスピオってのがどこにあるのか知ってるか?」

 

「ああ、知ってるぞ。ここから東の方角にある街だぞ」

 

「東って言ったら、フレンが行ったところですね」

 

「そういえばそうだな。とりあえず、今は急いでここを出た方がいいな」

 

 

ユーリの言葉に俺とエステルも共に頷く。

 

 

「待ってくだされ」

 

 

しかしそれを遮るように長が俺達のもとに駆けて来た。

 

 

「花のお礼がしたいので、我が家へおいでください」

 

「悪いな町長さん。今は一刻も早くこの街から出ないといけなくなっちまったから…」

 

 

俺がそう言うが長はどうやらまだ納得できないような表情をしている。

 

 

「ですが、何かお礼をしなくては私の気持ちが収まりがつきません」

 

「なら、こうしようぜ。今度遊びにきたら、特等席で花見させてくれ」

 

「あ、それいいですね!とても楽しみです!」

 

 

そう言う長の言葉に返事をしたのはユーリでありエステルはユーリの提案が非常によかったらしい。

 

 

「……わかりました。その時は腕によりをかけて、おもてなしさせていただきます」

 

「サンキュ、んじゃあまたな」

 

 

そう言ったことでようやく納得してくれた長にユーリに続いてそれぞれが礼を述べた後、街の外へと歩き出す。

 

 

「そういや、カロルはどうすんだ?」

 

「港の街に出て、トルビキア大陸に渡りたいんだけど……」

 

「それじゃ、ここでお別れかな?」

 

「え!?」

 

 

ふとユーリが街の出口にて気がついたことで目的地の方角が違うカロルとここでお別れのような雰囲気が流れる。

 

 

「カロル、ありがとな。楽しかったぜ」

 

「お気をつけて」

 

「お前の事は忘れないからなww」

 

 

みんなの言葉にカロルはなぜかあわあわという表情になる。ちなみに俺は忘れない出来事という事で、森での出来事を思い出してしまい、また笑いそうになるのを堪えていた。

 

 

「あ、いや、もうちょっと一緒について行こうかなあ」

 

「なんで?」

 

「やっぱ、心細いでしょ?ボクがいないとさ」

 

「ま、カロル先生、意外と頼りになるもんな」

 

「お笑い担当としてだけどな」

 

「では、みんなで行きましょう」

 

 

そんな話をしつつ再びカロルも加わってアスピオに向かうことになった。

 

 

「とにかく、あのザギとかいうやつが来る前に行くぞ。正直あいつと戦うと面倒だから勘弁して欲しい」

 

「そういえば、リオはなんか城であいつに気に入られた見たいだしな。」

 

「あんなやつに気に入られても俺はこれっぽっちも嬉しくねえ!」

 

 

そんな話をしながら俺達は結界を出て、東にある学術都市アスピオへと向かった。

 

 

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