テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~   作: 奏

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大変遅くなりました。


第十六相

 

あれからカロルがビリバリハの花で痺れたりする中、俺たちは魔物を倒しながら獣道を進んでいた。しばらく行くと開けた場所に出る。

 

 

──ガアァルルルル!

 

 

その音は、ラピード発するものとはまた違う声色の威嚇するような声が聞こえ全員が足を止める。

 

「ん?……何?」

 

「カロル、上」

 

「うわあああっ!!」

 

 

そう言って俺が指差すと、カロルはそのまま視線を指の先に向け驚く。高く聳え立つ崖の上、そこには狼のような魔物。数匹のガットゥーゾ・ピコとその中の一匹をさらに大きくしたボスのような存在ガットゥーゾがいた。

 

 

「あ、あれ、ハルルの街を襲った魔物だよ!」

 

「へぇ、こいつがね。生き残りってわけか」

 

「ほっといたらまたハルルの街を荒らしに行くわね、たぶん」

 

「でも、今なら結界があります」

 

「結界の外でも近所にこんなのいたら、安心して眠れねえからな」

 

「んじゃ、俺たちがその憂いを絶ってあげますか」

 

 

──ガアァァァァァ!!!

 

 

俺達の姿を確認したガットゥーゾは一際大きく吼えるとそのまま崖をものともせず滑り落ちてきた。そして同じようにガットゥーゾ・ピコも後ろに続く。

 

 

「んじゃ、小さい奴らは俺が何とかするからユーリ達はデカイ奴を頼む」

 

「了解だ!」

 

「うん!」

 

「気をつけてくださいね」

 

「そんな事言っといて前みたいにやられんじゃないわよ」

 

 

そう言いつつユーリ達はガットゥーゾに狙いを定める。そして俺は目の前にいる三匹のガットゥーゾ・ピコの方を向く。

 

 

「よし、行きますかね!」

 

 

それを合図に三匹のガットゥーゾ・ピコが一斉に飛び掛るが俺はそのまま後ろに飛び去る。

 

「よっと」

 

 

飛びのいた後、俺はそのまま両手を左右から腰に回して二振りの剣を引き抜く。引き抜いたそのフォルムはまるで炎をイメージしたように湾曲していて、ある意味爪のようにも見える。

 

そして何よりもその剣を見て思うのがその禍々しさだろう。黒くまるで錆びついているようにも見える刃は刃こぼれ一つ見当たらない。

 

俺はそのまま引き抜いた”虚空ノ双牙”を逆手に持ち替える。すると今まで三つの刃が重なり一つに見えていた剣が花開き、まるで三対の爪となる。

 

そしてガットゥーゾ・ピコ達は最初に飛び掛った後は俺を観察していたようだったが、この剣が開いた時に後ずさっていた。

 

 

「今回のはちょっと凶悪だぜ?」

 

 

恐らく俺の口の端が吊りあがっていたのだろう。ガットゥーゾ・ピコ達は真正面から飛び込むのは危険と感じたのか、今度は三匹で囲むようにしてから一斉に飛び掛ってきたが……

 

 

 

──ズシャッ

 

 

 

まるで何かが切り裂くような音と共に次の瞬間には俺のいた場所にはバラバラとなったガットゥーゾ・ピコの死体だけしか残っていなかった。

 

 

俺は少し離れた所で剣を振り血のりを飛ばしてから”虚空ノ双牙”を消す。そしてユーリ達の方を向くとまだガットゥーゾとの戦いを繰り広げていた。

 

見る限りではユーリ達が数の差で押しているといった感じであるが、決定打が欠けていた。どうやらあのガットゥーゾはリタやエステルが放つ魔術やユーリの大技に対しては決して当たらないようにしているようだ。

 

 

「蒼破!」

 

「煌めく猛追!ファイヤーボール!!」

 

ユーリの放つ蒼破刃とリタのファイヤーボールを難なくかわしたガットゥーゾはそのまま尻尾で近くに居たユーリがなぎ払われる。

 

 

「「「ユーリ(ガウ)!!」」」

 

「大丈夫だ!」

 

 

だが、ユーリはとっさに後ろに飛びながら剣でガードしたためダメージは最小に抑えられたようだ。

 

「ガウ!」

 

「だーもう!!何で当たらないのよ!」

 

「とても素早い魔物ですね」

 

「騎士団から逃げ切れたのも頷けるな」

 

「でもどうするの?これじゃあ埒が明かないよ」

 

 

ユーリ達が距離をとりながらガットゥーゾを見るがやはり倒すまでのダメージは与えられていない。ガットゥーゾもユーリ達の動きを警戒してか観察するような動きをしている。

 

「んじゃ、ちょっとした作戦があるぞ」

 

「「リオ!!」」

 

 

ユーリ達の動きが止まったところで後ろから声をかけるとカロルとエステルが驚くように此方を振り向く。

 

エステルはともかくカロル……戦闘中に魔物から目を離すのは自殺行為だろ。

 

それを知っていてかユーリとリタは此方に振り返ろうとはしない。

 

 

「んで、リオ……作戦ってのは?」

 

「まぁ、ひとまずリタとエステルは大技の術をいつでも打てるようにしといて」

 

「あの魔物、相当素早いから多分かわされるわよ?」

 

「ま、とりあえず頼む……っ!」

 

 

作戦内容を説明しようとすると痺れを切らしたのかガットゥーゾが突進してきた。俺たちはそのまま散開して女性陣が詠唱を始める。

 

 

「さーて、こっからが男性陣の見せ所だぞ」

 

「ほ、ほんとに倒せるの…?」

 

「それで実際どうするんだ?」

 

俺は右手で指をさしながら言う。

 

 

「あれ、なーんだ?」

 

「……なるほど、そういうことか」

 

「え?何、どういうこと?」

 

 

俺が指差す方向には綺麗なオレンジ色の花が咲いていた。ユーリはそれを見た瞬間に理解したように頷く。カロルはイマイチわからないようだ。

 

 

「そんじゃ追い込みますか!!」

 

「期待してるぜ?ユーリ。あと…カロルは合図したらあの花に衝撃を与えてくれ」

 

「え?……う、うん!」

 

 

そう言ってカロルのが頷くと同時に俺とユーリが前に出る。するとガットゥーゾは俺たちをターゲットとしたのか此方を睨み付けている。

 

「環伐!!」

 

ガットゥーゾに向かって走りながら腰に手を回し、大鎌を引き抜くと同時にアーツを発動して自分を中心に円陣を描くように切り裂くが、ガットゥーゾは後ろに飛びのくとそのまま尻尾で俺をなぎ払おうとする。

 

 

「させるかよ、蒼破刃!!」

 

 

だがユーリの放つ蒼破刃によって阻まれそのままガットゥーゾはさらに後ろに飛びのく。

その先にはあの花が咲いていた……ガットゥーゾは飛び退いてしまったのだ。ビリバリハの花の前に。

 

 

「「カロル!!」」

 

「鬼神千裂ノック!!」

 

 

カロルが打ち出した石がビリバリハの花に直撃する。するとそのまま半径一メートル位に黄色い粉が舞い、ガットゥーゾのの体を包んだ。そしてガットゥーゾの様子を見ると小刻みに痙攣していて麻痺に陥っている事がよくわかる。

 

 

「リタ、エステル頼んだ!」

 

「行きます!聖なる槍よ、敵を貫け」

 

「まったく、待ちくたびれたわよ!無慈悲なる業火は汝らの心をも燃やし尽くす!」

 

 

「ホーリィランス!!」 「クリムゾンフレア!!」

 

 

二人の詠唱が終わり、先に光の剣が降り注ぐ。本来ならば避けられただろうが麻痺の状態であったガットゥーゾはそのまま光の剣を受け、そして次に来た地獄の業火の如く炎の鉄槌が瀕死であったガットゥーゾに落とされ、煙が晴れたときには骨一つ残さず燃やし尽くされていた。

 

「ふぅ、お疲れさん」

 

「な、なーんだ、最後はあっけなかったね」

 

「でも、この先もまだ何匹も出てくるかも……」

 

「だ、大丈夫だって」

 

「ま、そうならないことみんなで祈ろうぜ」

 

「いや、ユーリは祈ったらむしろ余計に面倒ごとに巻き込まれるだろ」

 

 

「どうだろうな」とユーリは笑いながら俺たちはそのまま道を進んでいく。

 

 

 

 

 

 

   =S=

 

 

 

「うわぁ………」

 

「これ……って……」

 

 

女性陣二人の声には見るからに感動の気持ちが含まれていた。そして男性陣も声には出していないが同じ心境だったと思う。

 

あれから少し歩いて道を抜けた先には開けている崖の上に繋がっていた。

 

そこには見渡す限り視界いっぱいの大海原が広がり水平線の先まで海が広がっている。そのせいでまるで空と海が繋がっているかのような錯覚が起こりそうになる。

 

 

「二人とも、海ですよ、海」

 

「わかってるって」

 

「あー風がすげー気持ちいい」

 

 

そう答えるがどうやらエステルの興奮はその程度では収まらないらしい。

 

 

「本で読んだことありますけど、わたし、本物をこんな間近で見るのは初めてなんです!」

 

「なら旅が続けばもっと面白いものが見られるよ。ジャングルとか滝の街とか……」

 

 

カロルの放った何気ない言葉を聞いたエステルはその言葉を自分の中で噛みしめるように呟く。

 

 

「旅が続けば……もっといろんなことを知ることができる…」

 

「そうだな…オレの世界も狭かったんだな」

 

 

思わず呟いたユーリのうしろではリタが珍しいものを見るかのような表情になっている。

 

 

「あんたにしては珍しく素直な感想ね」

 

「リタも、海初めてなんでしょ?」

 

「まぁ、そうだけど」

 

「そっかぁ…研究ばかりのさびしい人生を送ってきたんだね」

 

「アンタに同情されると死にたくなるんだけど」

 

 

そんな話を繰り広げてる間でもエステルはずっと海を見続けている。

 

 

「この海を通じて世界中が繋がっている……」

 

「へぇ、エステルは意外とユーリと違ってロマンチストだねぇ」

 

「いえ!あの、わたしはそうだったらいいなぁと思いまして……」

 

「また大げさな、たかだか水溜りの一つで」

 

「リタも結構感動していたくせに」

 

 

──ドカッ

 

カロルも鳴かねば討たれまいのに…

 

 

「これがあいつの見ている世界か」

 

「ユーリ?」

 

「もっと前に、フレンはこの景色を見たんだろうな」

 

「だろうな、騎士は任務とかで各地を旅してるだろうし」

 

 

そう言ってユーリの隣に立つがユーリの視線の先は目の前にある大海原をどこまでも見続けていた。

 

 

「追いついて来いなんて、簡単に言ってくれるぜ」

 

「ここを抜ければ、ノール港はもうすぐだよ。追いつけるって」

 

「…そう言う意味じゃねえよ」

 

 

カロルがそう言うが、ユーリはまるで少しふてくされた様な声色で小さく呟く。

 

 

「さぁて、ルブランが出てこないうちに行くぞ」

 

 

そう言ってユーリはそのまま海沿いの道を歩いて行きリタとカロルもそれについて行く。けれどエステルは今だこの景色を脳に焼き付けるかのごとく見続けていた。

 

 

「エステル、そろそろ行くぞ」

 

「…はい」

 

 

そう返事をするがエステルはやはり海から目を離そうとしない。恐らくこれを見られるのが最後だとか思っているんだろうが……

 

 

「もう一度この景色を見たいなら選択すればいい。そうすれば海を見ることも、旅をすることだっていくらでもできる」

 

「……」

 

 

俺がそう言うとエステルはゆっくりと海から目を離しこちらを見る。

 

 

「今だってエステルは俺たちと旅をすることを選んだ結果だろ?」

 

「……そうですね」

 

「それにもう一ついい事もあったな」

 

「え?」

 

 

そう言って振り返った俺に続いてエステルも振り返る。

 

 

「リオー!エステルー!早くー」

 

「二人ともーさっさとしないと置いてくわよー!!」

 

「ワオーン」

 

 

その先には俺たちの仲間が居た。

 

 

「…ほらな?」

 

「………はい!」

 

 

そう返事をしたエステルの表情は希望に満ちた笑顔に変り、仲間の下へと走って行くのをゆっくりと後ろからついて行く。

 

俺はあの笑顔を前に見たことがあるような気がする。そしてその子の笑顔を守りたいと思った。俺は守れたのだろうかその子を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士~を読んでいただき真にありがとうございます。

えー、皆さまこの度は更新が遅くなり大変申し訳ありません。
何とか忙しい時期を無事終えましたので、投稿を再開できるようになりました。
なので、以前というほどの頻度では投稿できませんが2,3週間に最低1回は投稿できるようにしていければと考えております。もちろん早めに書き終えれば早めに投稿しますので、どうか読者の皆様には暖かく見守っていただけると幸いです。


                                      奏
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