テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~   作: 奏

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第十八相

あれから宿で一泊した俺達は宿を出る。しかし空は相変わらず厚い雲に覆われ雨が降り続けていた。

 

 

「ねぇ、これからどうする?」

 

 

カロルがそう言うが現在港が封鎖されているためトリム港へ行く事は一応は不可能である。

 

 

「わたし、ラゴウ執政官に会いに行ってきます」

 

「え?ボクらなんか行っても門前払いだよ。いくらエステルが貴族の人でも無駄だって」

 

「とは言っても、港が閉鎖されてちゃトリム港に渡れねぇしな。デデッキってコソ泥も隻眼の大男も海の向こう側にいやがんだ」

 

「うだうだ考えてないで、行けばいいじゃない」

 

「俺もそれでいいと思うぞ?それによく言うだろ当たったらボコボコにしろってさ」

 

「リオ、それって本当は当たって砕けろだと思うんだけど」

 

「いいじゃねえかオレららしくて」

 

 

カロルにそう言われユーリ的には気に入ってもらえたようだ。

 

 

「では、ラゴウ執政官の屋敷に向かいましょう」

 

 

 

   =S=

 

 

 

俺達はそのまま街の北にあるラゴウ執政官の館に向かったが、門前にいた先ほどの街にいたようなガラの悪い二人組みによって止められる。

 

 

「なんだ、貴様ら」

 

「ラゴウ執政官に会わせて頂きたいんですが」

 

 

エステルが執政官に会わせて欲しいと男達に交渉していると、カロルが近くに居た俺とユーリに小声で話しかけてくる。

 

 

「リオ、ユーリ、この人たち傭兵だよ。どこのギルドだろう………」

 

「道理でガラが悪いわけだ」

 

「ついでに性格も悪そうだけどな」

 

 

傭兵、有名所だと紅の絆傭兵団(ブラッドアライアンス)か……

 

そんな話をしていると傭兵達が俺達全員に向けて声を放つ。

 

 

「ふん、帰れ、帰れ!執政官殿はお忙しいんだよ」

 

「街の連中痛めつけるのにか?」

 

 

そう放ったユーリの言葉に傭兵一人が睨んでくる。

 

 

「おい、貴様口には気をつけろよ」

 

「だから相手にされないって言ったじゃないか」

 

「ま、ここは一応退散して他の方法でも考えようぜ。ユーリ」

 

「ここはリオに賛成だな」

 

 

そう言ってユーリは踵を返し歩き出しそれに続いて他のメンツも街の方へと歩き出す。そして少し離れた所で再び一箇所に集まりこれからの事について話し合う。

 

 

「それで他の方法ってどうするんです?」

 

「正面からの正攻法は騎士に任せるしかねぇな」

 

「それがうまくいかないからあのフレンってのが困ってんじゃないの?」

 

「まあな。となると、献上品でも持って参上するしかないな」

 

献上品か…確かあの執政官がやってるっていう…

 

 

「ああ、あのリブガロとか言うやつか」

 

「そういえば、役人の一人が言ってました。そのツノで一生分の税金が納められるって」

 

エステルも先ほどあった出来事を覚えていたようだ。

 

 

「じゃあ、リブガロってのを捕まえて顔拝ませてもらうってわけ?」

 

「ご名答」

 

「だったら、今がチャンスだよ!雨降ってるし」

 

 

カロルの言葉に対してみんなの視線がカロルに向かう。

 

 

「雨がどうかしたんです?」

 

「リブガロは雨が降ると出て来るんだよ。そう言う意味で天気が変った時にしか活動しない魔物ってのも時たまいるんだよね」

 

「よく知ってるな、カロル先生。それで?」

 

「それでって……?」

 

ユーリに聞き返されてきょとんとした顔をするカロル

 

 

「ユーリはあれだろ。それで何処にいるのかって聞きたいんだよカロル。まぁ今の反応からある程度は予想できるけどな……」

 

「さ、さぁ……?」

 

 

予想を裏切らないと言うべきかそのカロルの答えに俺のかわりにリタがため息を吐く。

 

 

「やっぱりね……」

 

「じゃあ街の人に話を聞きましょうか」

 

「聞きましょうって、いいのかよ、エステル?」

 

「はい?」

 

「?、どういうことだ?」

 

 

エステルに続いて俺もいまいちユーリの言葉の意図が読み取れない。

 

 

「この街のルール作ってんのは帝国の執政官様だ。そいつに逆らおうってんだからな。下手すりゃ、こっちが犯罪者にされんだぞ」

 

「ああ、そういうことか」

 

 

俺は納得したがエステルは少し考えた後、ユーリを真っ直ぐ見る。

 

 

「………わたしも行きます」

 

「いいんだな」

 

「はい」

 

 

その声は決して大きいものではなかったがエステルの決意が伝わったのか、やけに力強く感じた。そしてユーリは他の全員にも確認をしていく。

 

 

「リタもいいんだよな?」

 

「天候を操れる魔導器っていうの凄い気になるしね」

 

 

そう言うリタの声はどちらかと言うと嬉しそうだった。

 

 

「カロルは?」

 

「ボクはギルドの人間だからね」

 

 

カロルがそう言って最後に俺へと順番が回ってくる。

 

 

「んで、最後はリオだがどうする?リオは犯罪者になるのを嫌ってるみたいだったが今ならまだ引き返せるぞ?」

 

 

そうユーリが今更ながらにそんな事を言ってくる。確かに正直、犯罪者になるのは面倒だ。けどな……

 

 

「いまさら犯罪者になる原因を作ったやつが何言ってんだか。」

 

「んじゃ、リオもいいんだな?」

 

「仕方ないしな。毒を食らわば皿までだ」

 

 

なによりこいつらと一緒にいると楽しそうなんだよな。そう思いながら俺は自然と共に行く事を選択していた。

 

 

「決まりですね!」

 

「じゃあ、まずはリブガロを探すとしますか」

 

 

そう言って俺たちは街へと戻り住民たちに話を聞くとリブガロは街を出て西の森の中によく出るようだ。

 

そしてそのまま街を出ようとすると、街の入り口から来たフレンとすれ違う。

 

 

「相変わらず、じっとしているのは苦手みたいだな」

 

「人をガキみたいに言うなよ」

 

 

そう言って横を通り過ぎようとするユーリにフレンは再び話しかけるが先ほどとは声色が違っていた。

 

 

「ユーリ、無茶はもう……」

 

「俺は生まれてこの方無茶なんてしていないぜ。今も魔核ドロボウを追ってるだけだ」

 

「ユーリ……」

 

「お前こそ無理はほどほどにな」

 

 

そう言ってユーリは今度こそ本当に横を通り過ぎて先に街の入り口へと向かっていたリタとカロルのもとへと歩いて行く。

 

そして俺もそれについて行こうとして振り返ると今度はエステルとフレンが話していたが、少し離れていたせいか内容はうまく聞き取れない。

 

 

「ねぇ!リオ、エステル、もう行こう!ユーリに置いて行かれるよ」

 

 

カロルにそう呼ばれてそちらを振り向くとユーリはどんどん先に街の入り口へと歩いて行く姿が見え、俺とエステルは慌ててユーリの後を追った。

 

 

 

 

   =S=

 

 

~強制調査権限って?~

 

 

エステル「ねえ、リタ。フレンの言っていた魔導器研究所の強制調査権限ってなんです?」

 

リタ「ああ、あれね。要するに、帝国が認めた魔導器調査であれば、どこでも入っていけますというものよ」

 

ユーリ「なんだ、そんなすげえ権限あったのかよ」

 

カロル「ボクらが苦労する必要って、無いんじゃないの?」

 

リオ「それ、多分権力持ってる相手には使っても意味ないんじゃね?権力振りかざしてとか」

 

リタ「ご名答。例外とか言って、よく弾かれるのよね」

 

ユーリ「帝国のやりそうなことだな」

 

 

   =S=

 

 

街を出た俺たちはノール港の住民から聞いたリブガロが現れるという高台の上の西の森に向かう。今は丁度、雨が降っておりカロルの話の通りならばリブガロがいつ出ても不思議ではない天候だった。

 

そしてしばらく森の中を歩き続けると森の開けた場所に一匹の魔物がいた。

 

見た目は馬のようにも見えるが、まず目を引かれるのはそのツノである。黄金に輝いたツノは巨額を生むと言う話を頷かせざるおえない輝きを放っており、さらにその黄金のツノを彩るかのような同じく金色に輝く毛並みは雨に濡れているというのにも拘らず、その輝きを失わずにいた。

 

 

「これがリブガロだよ!!」

 

 

カロルの言葉でリブガロに見とれていた俺たちは一瞬にして戦闘の隊形をとる。

 

リブガロも俺たちに気づいたようだ。だが逃げるかと思いきやすぐにその黄金のツノを武器に突進してくる。

 

 

「全員、間違えて殺すなよ?」

 

「「「「了解(ガウ)!」」」」

 

 

ユーリの言葉に全員が頷き、俺がすぐさまリブガロの前に出る。

 

 

「んじゃ、不殺ということで今回はこれで行くか!!」

 

 

そう言って俺は拳闘武器を取り出す。そして突進してくるリブガロのツノを避けながらアーツを発動する。

 

 

「吹っ飛べ!!金剛発破掌!!」

 

 

避けると同時に隙だらけのリブガロの頭に気功を叩き込む。するとリブガロはそのまま吹き飛ばされて地面を転がりながら数メートル先で停止した。しかし倒れたリブガロは生きてはいるようだが起き上がらない。

 

 

「す、すごいです……」

 

「なんつー馬鹿力…」

 

「ボ、ボク、リオが仲間でよかったよ……」

 

「あれ?俺、手加減したんだけど?」

 

「以外にあっけなかったな」

 

 

以外にも弱かったリブガロに驚きつつユーリに肩を叩かれながら全員でリブガロに近寄ると何故弱かったのか理由がわかった。

 

リブガロの体を見てみると至るところに傷があり中には直りきっていないものまである。傷の数から見て既に相当のダメージが入っていたのだ。

 

 

「すごい傷だらけ……少しかわいそうですね」

 

 

エステルはその傷を見て思わず呟く。

 

 

「死に物狂いの街の連中に何度も襲われたんだろうな」

 

「街の人が悪いわけじゃ………」

 

「わかってるって」

 

 

ユーリはそう言いながらリブガロに近づくと俺が叩きつけた辺りを軽く剣の柄で殴るとリブガロのツノがあっけなく折れた。

 

 

「ユーリ?」

 

 

そのままリブガロ自体を連れて帰るのかと思いきや角だけ折るユーリにエステルは疑問そうな声を上げる。

 

 

「高価なのはツノだろ?金の亡者どもにゃこれで十分だ」

 

「ユーリってばやーさしー」

 

「アンタが魔物に情けなんてかなり意外なんだけど」

 

「そんな事言ってる場合じゃ……ほら、起きるよ!」

 

 

カロルの言葉でリブガロを見ると今まさに起き上がろうとしているが俺の頭へのダメージが効き過ぎたのかヨロヨロとしている。

 

 

「仕方ないか……」

 

 

そう言って俺は何も無い所から癒しの水の入ったビンを取り出しリブガロの傷と思われる部分にかける。すると見る見る傷が言えていきリブガロはゆっくりと立ち上がる。

 

 

「リオ!?何で傷治してるの!?また襲われるよ!!」

 

 

カロルがそう言い俺以外のみんなも緊張した空気が流れる。だがその空気は一瞬で消える事となった。

 

リブガロは俺の前まで来ると頭を下げたのだ。俺は一度その立髪を撫でてから一言、行けと言うとリブガロはそのまま走り去っていった。

 

 

「へぇー魔物って意外と温厚なのも居るみたいだな」

 

「リオってもしかして魔物が人間に化けてんじゃないの?」

 

「ありえるわね。さっきの馬鹿力といい魔物なら頷けるわ」

 

人間に化けてるって…

 

「どうしてみんなそんな風に言うんですか!きっとわたし達の意図を理解してくれたんですよ」

 

「はいはい、ツノが手に入った事だしさっさと帰ろうぜ。それと一応否定しとくが俺は魔物では断じてない!」

 

 

そうして俺たちはリブガロのツノをもって執政官に会うべくノール港へと戻った。

 

 

 

 

 

   =S=

 

 

 

 

ノール港に戻った俺たちの目に入ってきたのはまたあの夫妻だった。

 

 

「待って!せっかく、怪我を治してもらったのに!」

 

 

そういって引き止める妻の制止も聞かずディグルはコンパクトソードを携えながら街の外へ行こうとする。するとユーリは俺たちの前に出てディグルの道を遮る。

 

 

「そんな物騒なもん持って、どこ行こうってんだ?」

 

「あなた方には関係ない。好奇心で首を突っ込まれても迷惑だ」

 

 

ユーリは無言のまま持っていたリブガロのツノをディグルの前へと投げ落とす。

 

 

「こ、これは……っ!?」

 

「あんたの活躍奪って悪かったな。それは、お詫びだ」

 

「「あ、ありがとうございます」」

 

 

後から来た妻も一緒に地面に手をつきながら礼を言う夫妻をよそに、ユーリは宿のある道へと歩いて行ってしまい俺たちも後を追う。

 

 

「ちょ、ちょっと!あげちゃってもいいの?」

 

「あれでガキが助かるなら安いもんだろ」

 

「最初からこうするつもりだったんですね」

 

「ま、ユーリが執政官邸の前であんな確認するくらいだしな」

 

「思いつき思いつき」

 

 

そう言いながら手をぷらぷらと振りながら言うユーリ。

 

 

「その思いつきで、献上品がなくなっちゃったわよ。どうすんの?」

 

「ま、執政官邸には、別の方法で乗り込めばいいだろ」

 

「ならフレンがどうなったか確認に戻りませんか?」

 

「そうだな。んじゃ宿に戻るか」

 

俺たちはそのまま宿にいるフレンのもとへと向かった。

 

 

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