テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~ 作: 奏
俺たちはユーリの独断により献上品をあの夫妻に渡した後、宿にいるフレンの元へと訪れた。
だが、部屋にいたフレン、リフィル、ウィチルの顔を見れば状況が芳しくない事がひと目でわかる。
「相変わらず辛気臭い顔してるな」
入室早々、ユーリの言葉で俺たちが部屋に入ってきたのに気がついたのか、三人がこちらを振り向く。
それと同時に最初に口を開いたのはフレンだった。
「色々と考えることが多いんだ。君と違って」
「ふーん……それで執政官のところに行かなかったのか?」
「行った。魔導器研究所から調査執行書を取り寄せてね」
「それで中に入って調べたんだな」
その事についてユーリが尋ねるとフレン達の表情が曇る。
「いや……執政官にはあっさりと拒否されたよ」
「え…!?なんで?」
自嘲気味にも聞き取れるトーンでそのことを告げるフレン。その事についてカロルも驚きの声を上げる。
「カロル、街を出るときにリタが言ってた事を思い出してみろ」
「え……?あ、そういえば例外とかでよく弾かれるとか言ってたね……」
「魔導器が本当にあると思うなら正面から乗り込んでみたまえと安い挑発まで言われましたよ」
納得しているカロルにウィチルが嫌味を込めた感想を付け足すと、隣にいたソディアの表情もまた悔しさに変わる。
「私たちにその権限が無いから、馬鹿にしているんだ!」
「でも、そりゃそいつの言う通りなんじゃねえの?」
「なんだと!?」
ユーリの言ったことを挑発と感じ取ったのかソディアの表情は先ほどとは違う怒りの表情へと変わる。おそらくユーリが犯罪者である事も関係しているだろうが……
「ユーリ、どっちの味方なのさ?」
「敵味方の問題じゃねぇだろ。自信があんなら乗り込めよ」
そう言うユーリに対してフレンは首を横に振って否定の意思を表す。
「いや、これは罠だ………ラゴウは騎士団の失態を演出して評議会の権力強化を狙っている。今、下手に踏み込んでも証拠は隠蔽され、しらを切られるだろう」
「ラゴウ執政官も評議会の人間なんです?」
「ええ……なのにラゴウはその立場をいいように使って……」
「とにかく、ただの執政官様って訳じゃなさそうだな。で、次のて考えてあんのか?」
「………」
そう聞いたユーリの言葉に答えられないフレン。これは、もはや手詰まりであることを表している。
「なんだよ、打つ手なしか?」
「なぁ、ちょっといいか?」
ふと思いついたことがあったので手を上げるとその場の全員の目が俺へと向かう。
「ん?なんだリオ。いい手でも思いついたか?」
「いや、一応聞いておきたいことがあったんだが……例えば、屋敷の中で騒ぎが起きた場合どうなるんだ?敵対してると言ってもやっぱり守るのは騎士団のつとめだろ?」
「そうなった場合なら、騎士団の有事特権が優先され強行突入することができるんですよ」
「騎士団は有事に際してのみ、有事特権により、あらゆる状況への介入を許される、ですね」
有事特権?と聞こうとしていたらエステルの説明が先に入った。
「なるほど、屋敷に泥棒でも入って、ボヤ騒ぎでも起こればいいんだな」
「ユーリ、しつこいようだっけど……」
「無茶するな、だろ?」
そう言ってユーリは部屋を出て行き、俺たちもユーリへと続く。
だがあの中の何人が気づいただろうかユーリの顔がまるで悪戯っ子の悪巧み顔になっていたことを……
=S=
Q.さて宿を出た俺たちは今どこにいる?
A.ラゴウ執政官の館の前。
「まぁ、結局、最後はやっぱりそうなるよな」
そう言って俺は独り言を呟きながら、俺たちは外壁の影から門番たちの様子を伺う。
「何か言ったかリオ?」
「いんや、何でも」
そう言ってラゴウの館を覗いてみる。門の前には相変わらずのようにガラの悪い男の二人が立っており来るものを阻んでいた。
「何度見ても、おっきな館だね。評議会のお役人ってそんなに偉いの?」
「評議会は工程を政治面で補佐する機関であり、貴族の有力者により構成されている、です」
カロルの疑問にすかさず説明をしてくれるエステル。
「言わば、皇帝の代理人ってわけね」
「へぇ、そうなんだ」
いつものようにエステルの解説が入りみんなが感心するが。今のところ打開策が何もないのは変わらない。
「んで、大体予想はつくがやっぱり正面突破?」
「リオも相変わらず物騒なこと考えるね」
相変わらずとは失礼な俺はこのグループではかなり良心的だぞ?
「でも、リオの言うとおりそれしかねぇよな」
「なら裏口はどうです?」
「残念、外壁に囲まれてて、あそこを通らにゃ入れんのよね」
突然、俺達の後ろからかけられた声に驚き、全員が後ろを向く。だが、その声は俺とユーリにとっては聞き覚えのある声だった。
全員が振り返り見た先にはおっさんと言う言葉が当てはまりそうな中年男性が立っており、思わずエステルが思わず声を上げそうになるのを人差し指で制す。
「こんな所で叫んだら見つかっちゃうよ、お嬢さん」
「えっと、失礼ですが、どちら様です?」
「な~に、そっちのかっこいい兄ちゃん達とちょっとした仲なのよ。な?」
そう言っておっさんは俺とユーリの前まで来ると同意を求めるような声で話しかけてくる。
「いや、違うからほっとけ」
「というかそこら辺でくたばれ」
ユーリ俺の順でおっさんに言い放つ。
「おいおい、ひどいじゃないのお二人さん。お城の牢屋で仲良くしたじゃない。ユーリ・ローウェル君にリオ・ヒイラギ君よぉ。」
そう言われてユーリは自分の名前が出てきたことに反応して今まで背けていた顔をおっさんの方に向ける。ちなみに俺はそのままだ。
「ん?名乗った覚えはねぇぞ?」
「手配書、見たんじゃねぇの?俺とユーリの名前も書かれてるだろうし」
「ご名答」
そう言っておっさんは懐から俺とユーリの手配書を取り出し目の前でヒラヒラとちらつかせる。
「ユーリとリオは有名人だからね。で、おじさんの名前は?」
カロルにいきなり名前を聞かれたおっさんは少し考える素振りを見せ……
「ん?そうだな……とりあえずレイブンで」
「とりあえずって……どんだけふざけたやつなのよ」
今までおっさんことレイブンをうさんくさそうな目で見ていたリタは警戒心をあらわにする。
「んじゃ、レイブンさん、達者で暮らせよ」
そう言ってユーリが話を区切ろうとするが、レイブンはまだ要件があるようだ。
「そう釣れないこと言わないの。屋敷に入りたいんでしょ?ま、おっさんに任せときなって」
そう言うと同時に俺たちが止める間もなくレイブンは門番のもとへと走ってい行ってしまう。
「止めないとまずいんじゃないの?」
「あんなんでも城抜け出す時は、本当に助けてくれたんだよな」
「そうだったんです?だったら、信用できるかも…」
そう言って再び視線を向けると、レイブンは何やら門番の二人と話しているのだが何故かこちらを指差しながら話をしていたかと思えば、突然、門番の二人組が俺たちの方へと走り出した。
「な、なんかこっち来るよ!?」
驚いた俺たちを余所に門の前に残っていたレイブンに目を移すとこちらを見ながら左手で拳を作り親指を天に向けていた。そんな風にサインをしてラゴウの館へと悠々と入っていった。
これを見た俺たちは一瞬にして理解した。ハメられたと………
「そ、そんなあ……」
その後の反応は様々だった。エステルはショックの声を上げ、ユーリはため息を吐き、カロルはアタフタとしていて、俺はユーリと似たような反応をしていた。
そして最後にリタだが今まで体を震わせていたが、それは恐怖などによるものではなくレイブンへの怒りだったようで……
「あいつ……バカにして!あたしは誰かに利用されるのが大っ嫌いなのよ!」
そう言うと今まで隠れていた場所から飛び出して、走ってくる門番の前に立つ。それと同時に魔法陣がリタの足元で輝いたかと思うと、容赦なくファイヤーボールを門番二人に叩きつけた。
直撃を受けた門番二人はプスプスと体から煙を上げてのびていた。とりあえず、手を合わせておく俺。南無……
「あ~あ~、やっちゃったよ。どうすんの?」
「ま、遅かれ早かれユーリといたらこうなる運命だからしょうがない」
「なんというか、リオが言うと説得力あるよね」
「そんなこと言ってないで、見張りもいなくなったしさっさと行くぞ!」
ユーリがそう言って門番のいなくなったラゴウの館へと走るのに続いて俺たちもラゴウ敷地へと侵入する。
「ユーリ、流石に正面はまずい」
「そうだな、なら裏から回って通用口でも探すか」
俺たちはそのまま正面を避けて裏から入ろうと館の周りを通ろうとすると、通用口らしき場所の前でレイブンが立っていた。
「よう、また会ったね。無事でなによりだ、んじゃ」
まるで悪びれる様子もない声でそう言ったレイブンはそのまま脇目もふらずエレベーターらしき通用口で上へと登り始める。
「待て、こら!」
リタは今すぐにでも先ほどの仕返しというか復讐をしたいせいか、すぐさまとなりの通用口から追いかけようとする。そして俺たちも置いてかれまいと急いで通用口へと入るが……
「あれ?下?」
動き出したエレベーターは俺たちの意思とは反対に下へと降りていく。しかも途中からは操作できないのかエレベーターは止まらない。そして結局俺たちは一番下まで降りることとなった。
=S=
~レイブンについて~
リタ「ちょっとあんた、あのレイヴンってのをアタシの前に連れてきなさいよ」
ユーリ「はあ?なんでオレにいうんだよ」
リタ「だってアンタ知り合いなんでしょ!」
ユーリ「だから、別に知り合いじゃねえって。しかもそれを言うならリオだってそうじゃねぇか」
リオ「は?なんで俺があんな加齢臭出してそうなおっさんと知り合いじゃないといけないんだよ」
カロル「あれ?なんかリオ怒ってる?」
リオ「いや、なんかあのおっさん見てるとイライラするんだよな」
カロル「それってつまりただの八つ当たり……」
リタ「そんなのはどうでもいいのよ。というか、まず会った場所が牢屋ってのが胡散臭すぎるのよ」
ユーリ「……その点は否定できないな」
エステル「変わった方だとは思いますが、わたしには悪い人には見えませんでしたよ?」
カロル「いや、けど、いい人でもないと思うよ……」
リオ「事実、俺たちがここに居る原因だしな」
=S=
あれからエレベーターは一番下で止まる。そして俺たちが通用口から出るとそこは薄暗い部屋のような空間だった。だがそれ以上に一瞬にして全員が感じたのは強烈な臭いだ。
「うっ!?」
その臭いにエステルは思わず口を抑えてしまう。この気配は………
「なんか臭いね」
「血と、あとはなんだ?何かの腐った臭いだな」
カロルとユーリはそういう中で、俺は双剣を取り出す。それと同じくしてラピードも気配を感じとったのか威嚇を始める。
俺たちの見つめる先、そこには魔物がいた。しかも一匹だけではなくかなりの数がここに居るようだ。
「魔物を飼う趣味でもあんのかね?」
「そうかもね。リブガロもいたし」
「なんか、問いただした時に高貴な人間しか理解できない遊びだとか抜かしそうだよな」
そう言って全員が警戒をしている中、魔物たちのの声とは違う、まるですすり泣くような声が聞こえてきた。
「パ……パ、マ……助けて……!」
『!?』
その声は扉の向こう側から聞こえて来るようだが全員の耳にハッキリと聞こえたようだ。助けて……と
「行くぞ!!」
そう言って俺たちは声の聞こえてくる方の扉へと駆け出し廊下を走り抜けて声のする目的の部屋の前へとたどり着く。すぐさま中に入ると中は大量の骨が散乱していている。
そしてその散乱した骨を避けるようにして部屋の隅で震える男の子。エステルはそれを見た瞬間に男の子のもとへと駆け出していた。俺達もその後を追って少年へと近づく。
「大丈夫だよ。何があったか話せる?」
エステルが優しく話しかけると男の子は顔を上げて俺たちの姿を確認すると震えが収まった。そして落ち着いた頃にポツリと話し始めた。
この男の子、ポリーいわく…両親が税金を払えなくて、怖い人にここへ連れてこられたらしい。その話を聞いた俺たちは街であった夫婦と役人らしき人物との会話を思い出し、顔を見合わせる。
ユーリ達が男の子と話している間、俺は周りに目を向ける。いたるところにある骨、その中には人とも思わしき物まで混じっている。それと同時に俺は役人の会話の内容を思い出す。
ポリーがここにいたと言う事は、たとえ税金を払ったとしても親の下へと返す気など無かったということだ。恐らく税金を払うのが遅れたお前らのせいで息子は死んだんだとかぬかすのだろう。
「へぇ、アンタもそんな顔するんだ?」
「!っ……どんな顔してた?」
突然横からかけられた声に驚いて、そちらを向くとリタがこちらを向きながら面白いものを見たと言った表情だったため思わず聞き返してしまった。
「そりゃあもう、ちびっ子なら泣き出すレベルね」
「そこまでかよ……まあ、胸くそ悪い話だと思ってな」
言い訳混じりに応えた俺にリタはふーん言いながら目線を逸らすと、そのまま何も言わなくなりしばらくの間無言が続くこととなった。
あれから話し合った結果、ポリーをここに放置するのは危険だと言う事になり、俺たちはポリーを両親の下まで連れて行くということになった。
そしてしばらくポリーがいるため魔物を避けながら同じような部屋を何度も通り抜けていくと今までの部屋にはなかった鉄格子が見え全員が足を止める。
どうやらここが最後の部屋のようで他の出口というのは俺たちが入ってきた扉か鉄格子位のものだろう。
そして俺達の居る鉄格子を挟んだ反対側の先に見える階段。そこからから聞こえてくる靴底の足音に気がついた俺たちは自然とそちらに目を向ける。
「はて、これはどうしたことか、美味しい餌が増えてますね」
目を向けた先にいたのは、黒を基準とした布地に金色の刺繍を身に纏った初老の人物。その威厳ぶった態度を見るからにその糞ジジイがラゴウ執政官なのだろう。
そう考えているとユーリが鉄格子を挟んだ反対側から一歩前に出る。
「あんたがラゴウさん?随分と胸糞悪い趣味をお持ちじゃねぇか」
「趣味?ああ、地下室のことですか」
そう言ったユーリに対してラゴウは一瞬とぼけたような表情を取りながらすぐに納得する。
「これは私のような高雅な者にしか理解できない楽しみなのですよ」
「ねぇねぇ、リオの予想通りだったね」
「ああ、正直自分で言っといてなんだが、そんなアホな事言う奴が実際にいた事が驚きだよ」
ラゴウの言ったことに対してカロルが小声で話しかけてきたが、まさかホントにそんな事を抜かすとは……
「さて、リブガロを連れ帰ってくるとしますかねぇ。これだけ獲物が増えたなら、面白い見世物になります。ま、それまで生きていればですが」
「リブガロなら探しても無駄だぜ。オレらがやっちまったからな」
ユーリの言葉で、今までこちらを見下すような卑下た笑みをしていたラゴウの表情が変わる。
「……なんですって?」
「聞こえなかったか?オレらが倒したって言ったんだよ」
「くっ……なんということを……」
リブガロが倒されていたことを知ったラゴウは悔しがる表情をするもすぐに戻る。
「まあ、いいでしょう金さえ積めばまたすぐにでも手に入ります」
「ラゴウ!それでもあなたは帝国に仕える人間ですか!」
そう言ってユーリを押しのけて前に出るエステル。どうやらラゴウの横暴に我慢の限界が来たようだ。と言うか俺もそろそろずっと後ろで待機しているのも飽きてきた。
「むむっ………あなたは……まさか!?」
「はいはい、もう面倒だからお縄を頂戴しよう…か!!っと」
バキャンッ!!
最早、話も聞いてたらいつまでも終わらなさそううなので、とりあえず俺は目の前にある鉄格子を蹴り飛ばす。すると鉄格子は嫌な音を立ててそのまま吹き飛んだ。
「開通~」
「アンタ…力任せにも程があるでしょ」
そんな風にリタに言われるが俺は聞き流しながらラゴウと向き合う。ラゴウはを見ると風圧で倒れただけでどうやらケガらしきものは無い。ちょっと残念だ。
「き、貴様!な、何をするのですか!!誰か!この者たちを引っ捕えなさい!!」
そう言いながらラゴウは立ち上がり脇目もふらず一目散に先ほど来た道を戻り、二階へと走っていった。
「さーて、リオが執政官怒らせちまったからな。早いところ用事済ませねえと敵がぞろぞろ出てくんぞ?」
「どうせ、ユーリもそろそろ鉄格子ブチ破るつもりだったんだろ?」
「まあな……っと、リタちょっと待った!」
俺とユーリが話しているといつの間にか魔法陣を展開し魔術を発動しようとしているリタに気がついたユーリがストップをかける。
「……何よ、騎士団が踏み込むための有事って奴が必要じゃないの?」
「まずは証拠の確認だ」
「天候を操る魔導器か……んじゃ、ラゴウの後を追うか」
俺たちは逃げたラゴウを追って屋敷の中を走り出した。
この度は投稿遅くなり申し訳ありませんでした。