テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~   作: 奏

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またもや期間が空いてしまい申し訳ないです…


第二十一相

 

突如として”ソレ”が窓を突き破ってきた事で思わずその場にいあわせた者たちの足が止まる。

 

 

「うわぁ…!!あ、あれって竜使い!?」

 

 

思わず驚いたカロルが叫んだと同時にフレン達も動き出す。どうやら俺達よりも竜使いを捕らえる方がいいと判断したのだろう。

 

 

ウィチルがすぐさま魔術を唱えファイヤーボールを連続して打ち出すが、竜使いは空中でひらりと躱しそのまま魔導器の魔核がある場所へと飛んでいく。

 

 

 

  =S=

 

 

 

 

目の前からこちらへと飛んでくる竜使い。恐らく竜使いの目的は俺の横にある魔核だろう。エフミドの丘で魔導器を破壊したのは竜使いだったと言うカロルの話から、この竜使いは魔導器を破壊して回っているらしい。しかもそれは過程はどうあれ俺の目的とほぼ同じようだ。

 

でも解せないな。あの竜は間違いなく始祖の隸長(エンテレケィア)だ。でなければ結界の中に入ってこれるはずがない。だが始祖の隸長が人間と馴れ合う事を”アイツ”が容認なんてどういう心境の変化だろうか?

 

 

 

そしてなによりもこの震えはなんだ……?

 

 

 

 

先ほどの竜使いを見てから俺の意思とは関係なく突如として震えだした体。決して地面が揺れているわけでも、ましてや恐怖によるものではない。そして何よりもあの竜と竜使いに懐かしさを感じる。

 

 

「……っ!?」

 

 

頭の中で一つのピースがはまりそうになったとき俺の頭に痛みがよぎる。

 

 

──!

 

何かがフラッシュバックすると同時にそこから発する激痛に思わずしゃがみこむ。

 

俺が痛みでしゃがんだ事で魔導器と竜使いの間を遮るものが無くなった。それを好機と竜使いは思ったのか、魔導器へと加速するとそのまま魔核の横をすれ違うようにして片手に構えていた槍を薙いだ。

 

 

パキンッ!!

 

 

竜使いの槍の穂先は魔核を深々と抉り、砕ける音と共に輝く結晶の粒を撒き散らす。

 

 

「ちょっと!!何してくれてんのよ!魔導器(ブラスティア)を壊すなんて!」

 

 

魔導器を壊した事により、リタがキレたのだろう。リタはすぐさま術式を組み上げると先ほどのウィチル以上に火球を連続して放つ。

 

けれども竜使いは数は増えれどもウィチルの時のように空中を滑るように躱していく。

 

 

そして魔導器に最後の止めを刺すためか竜が溜をつくる。そこから予測できるのは恐らく何らかの息吹<ブレス>だろう。そして俺が今いるのは魔導器の前だ。けれど先程からの痛みのせいか足に力が入らない。

 

 

「ヤ…バッ……!!」

 

「リオ!!」

 

 

ユーリが俺の名を呼ぶがもはやよけられないと思った俺はすぐさま腰に手を伸ばし大剣を引き抜き盾のようにして衝撃に備えた。だが、衝撃が来ると思っていた俺とは裏腹に竜による息吹は俺の横を通り過ぎた。

 

 

俺は熱線が通り過ぎた場所を見ると火柱が上がり結果として騎士団と俺たちを分け隔てるように炎が広がっていく。そして竜使いの方を向くと彼らは自分で突き破ってきた窓から悠々外へ飛んでいく所だった。

 

 

「外した…?」

 

 

いや、はじめから狙っていなかったのもしれないが俺ごと巻き込んでも魔導器は破壊できたはずだ。ならなぜ……

 

 

「船の用意をするのです!」

 

 

考えにのめり込みそうになるがラゴウの声によって自分たちの目的を思い出す。ラゴウはどうやら船で逃げ出すようだ。

 

 

「ちっ、逃がすかっ!!」

 

 

ユーリもそれに気がついたのか外へと逃げたラゴウを追いかけ仲間もそれに続く。

 

 

「くそ、足が……あれ動く?」

 

 

先程までは震えていた足が今では普通に動く。何故?と思うが今はそれよりもユーリ達を追わねばと思い出口へと走った。

 

 

 

 

 

 =S=

 

 

 

 

 

 

俺が外に出ると出たところにユーリたちもいた。

 

「リオ、怪我はありませんでしたか?」

 

「ったく!遅いわよ!!何してんのよ!アイツに逃げられちゃうじゃない!」

 

「スマン……ん?パティとあのポリーって子はどうした?」

 

 

よく見ると俺が外に出た時には既にチビッ子二人の姿が見えない。

 

 

「アイツ等は家に帰らせた。ここからは俺達の事だからな」

 

「そういうことか……了解」

 

「ほら、のんびりしてるとラゴウが船で逃げちゃうよ!」

 

 

そういって俺たちは船着場へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

=S=

 

 

 

 

 

船着場へと着くと一隻の船が帆を広げ今にも出航しようとしているところだった。

 

 

「こりゃ、飛び乗るしかないな」

 

「アタシはこんな所で何してんのよ……」

 

「その話は後でな…リタは一人で飛び乗れるな?」

 

「ええ、いけるけど……」

 

「了解」

 

 

後ろでカロルがなんか叫んでるが無視しつつリタの近くを走ってた俺はエステルのところまで走るとそのまま脇に抱える。

 

 

「え、り、リオ!?何を……」

 

「舌噛まないように口塞いどけ、よっ」

 

 

そう言って俺はエステルを抱えたまま船へと飛び移る。

 

 

「よっと。大丈夫かエステル?」

 

「は、はい。少しびっくりしましたけど、ありがとうございます」

 

 

そう言ってぺこりとお辞儀をするエステル。こりゃもしかしたら俺が抱える必要なかったかな?と思っていると真横でリタが声を上げる。

 

 

「これ、魔導器の魔核じゃない!」

 

 

リタの方を向くとしゃがみこんでいたリタの前には木箱にに詰められた大量の魔核がある。

 

「なんでこんなにたくさん魔核だけ?」

 

「知らないわよ。研究所にだって、こんなに数揃わないってのに!」

 

「まさかこれって魔核泥棒に関係が?」

 

「かもな……ここに下町の魔核、混ざってねえか?」

 

「残念だけど、それほど大型の魔核はないわ」

 

そういって全員の意識が魔核に注がれる中、周りに意識を向けていた俺には周りに俺ら以外の反応が感じられた。

 

 

「……!みんな、気をつけろよ。囲まれてるぜ」

 

 

そういうのと同時に船の影からぞろぞろと武器を持った人が出てくる。

 

 

「こいつら、やっぱり5大ギルドの一つ”紅の絆傭兵団<ブラッドアライアンス>だよ」

 

「ひぃ、ふぅ、みっと全部で6人か。ならノルマ一人な」

 

 

俺がそう言うと目の前にいた男がサバイバルナイフのようなもので切りかかってきた事により戦闘がはじまる。

 

俺はすぐさま腰に手を回して今回は刀剣を取り出すとそのまま振りかぶってきた刃に当てて受け止める。そしてそのまま鍔迫り合いのようになるが一瞬力を弱めると相手の体制が崩れそこを刀身でナイフを切り上げ相手のナイフを弾き飛ばした。

 

 

「流影閃!」

 

 

ナイフを下から弾かれたことで両手を上にあげた状態になっている男にスキルを発動。スキルで強化された高速の突きを放ち、がら空きの胴体に叩き込むとそのまま海へと吹き飛んだ。

 

あっけなかったと感じ他の様子を見ようと振り返ると、仲間以外が船の上から消えていた。

 

 

敵全員が海に吹き飛ばされたのか。

 

 

「さて、それじゃあ船内に入りますかね。カロル、ドア頼める?」

 

「うん」

 

 

そう言ってカロルは船内の入口に近づいてピッキングをし始める。が……

 

 

 

 

「どきやがれぇっ!」

 

 

 

 

「うわ!!」

 

ピッキングしようとして扉に近づいた時、突如内側から扉が勢いよく開いたことでカロルが吹き飛ばされる。そして中から出てきたのは赤い服を着た隻眼の大男だった。

 

 

「はんっ、ラゴウの腰抜けはこんなガキから逃げてんのか」

 

 

カロルたちを見て鼻で笑う隻眼の大男。だがそこに俺とユーリが後ろから刀剣とニバンボシを突きつける。

 

 

「隻眼の大男……あんたか。人使って魔核盗ませてるのは」

 

「ま、とりあえず大人しくしてくれよ?」

 

「そうかもしれねえなぁ?…だが、大人しくしてやる義理はねえなぁ!!」

 

 

隻眼の大男はそう言って大剣を取り出して俺とユーリをなぎ払うように振るがすぐさま二人共ステップで大男から距離を離す。

 

 

「いい動きだ。その肝っ玉もいい。ワシの腕も疼くねぇ……てめぇら二人うちのギルドにも欲しいところだ」

 

「そりゃ光栄だね」

 

「遠慮します」

 

「だが、野心のある目はいけねぇ。ギルドの調和を乱しやがる。惜しいな…」

 

「バルボス、さっさとこいつらを始末しなさい!」

 

 

違う方から聞こえてきた声の方を向くといつの間にかラゴウが救難ボートの近くにいた。

 

 

「金の分は働いた。それに、すぐ騎士がくる。追いつかれては面倒だ。小僧ども!次に会えば容赦はせん!!」

 

 

そう言い放つとバルボスと呼ばれた大男も救難ボートへと乗り込む。

 

 

「待ちなさい!まだ中に……ちっ…!ザギ、後は任せますよ!」

 

 

しかし何故かラゴウは一瞬救難ボートに乗り込むのを躊躇うが最後には結局乗り込みよからぬ事を言い残して海へとボートごと落ちていった。

 

 

ラゴウ達が逃げ去ってから、柱の影に目を向けるとそこから一人の男が出てくる。

 

 

「誰を、殺らせてくれるんだ……?」

 

 

その男の姿を見た俺、ユーリ、エステルは驚く赤い髪にアサシンのような服装、そして腰に付けてある二本の双剣。

 

 

「あなたはお城で…!」

 

「どうも縁があるみたいだな」

 

「そんな縁はあって欲しくねぇ」

 

 

ドォン!

 

 

どこからか爆発音が聞こえて来た。恐らく音からして船底から聞こえて来たようだが今はそれよりこの頭おかしいやつをどうにかするか。

 

 

「刃がうずくぅ……殺らせろ…殺らせろぉっ!」

 

 

ザギはユーリに飛びかかるが、それをユーリは足を一歩下げ半身になりながら躱すがザギはそのまま構わず双剣を振り下ろす。

コイツ城でやりあった時も思ったが完全に獣みたいな動きだな…

 

 

「ったく、ユーリさっさとコイツ倒すぞ」

 

「あいよ、お手柔らかに頼むぜ」

 

 

俺はそう言って両手を腰に回して二つの刃を引き抜いた。

 

 


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