テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~ 作: 奏
ヘルメスの家に住むことになって数ヶ月がたった。それこそ始めの頃は、もともとクリティア族しかいないここテムザ山のためかなり珍しがられていたが最近は普通に近所の同年代くらいの子達と話したりもする。
ジュディスは現在、学校らしき所に行っている。どうやらクリティア族の独自の文化などにについて学んでいるらしいが部外者の俺は関係ないのでジュディスが学校に行っているほとんどの時間を修行に費やしていた。
ヘルメスはというと起きてからというものほとんどの時間を書斎(しょさい)らしき部屋でなにやら実験を繰り返しているようで、時々爆発音とともに煙が出ていることなど頻繁にあった。
で、俺はというと今、テムザの街から橋を渡った先のバルビュサの峰と呼ばれる所に来ている。
そんなとこで何をしてるかだって?そんなの修行に決まっているだろ。始祖の隷長(エンテレケイア)を圧倒できるくらい強くなるためもあるが、
そもそも自分には何ができるのかというのがまず知りたかったのが理由だ。
「それにしても改めて思ったがやっぱり俺の能力、使い方間違えると危なすぎるよな。」
それを改めて実感したのは、修行というか独自鍛錬を始めてすぐであった。まず神様からもらった能力の武器だがこれは念じると光の粒子が集まり武器が出現した。その後に防具も同じ方法でやってみたのだが変化がなかったので試しに岩に肘(ヒジ)をぶつけたら岩が割れた。どうやら防具に限っては性能だけ変わるが見た目はそのままのようだ。
そういえばゲームでも防具を変えても見た目は変わらなかったっけ。
ちなみにもちろんLvによっても性能が違うようでLvMAXの武器使ったら軽く振ったら岩が豆腐か何かかと間違いそうなくらい切れ味抜群であった。
魔物に使ったらどうなるのやら……
「それに加えての憑神(アバター)化だもんな……」
そう!神様のミス?でなんと使えるんですよ全ての碑文が…。
ま、今はまだスケイスしか試してないけどな…
コルベニクなんてAIDAついてきたら怖すぎだし。
部分展開もできるようでスケイスは剣のような六枚の羽があらわれなんと飛べた。
これでバウルいなくても長距離移動が可能になったな。
もちろんだがデータドレインも撃ってみたのだがこれはどうやらいろいろな性能があるらしく一応わかったのが当てた物体の情報を知る事ができる位だ。だからこれはひとまず保留という事にしている。
そして今は日課の筋トレをしている。神様の手紙には鍛えれば鍛えるほど強くなると書いてあったのでここでは基本、素振りと筋トレをただひたすら繰り返す。ただ筋肉を無駄につけてムキムキにはなりたくないので生前に読んだ本をもとに無駄な筋肉のつかない筋トレをしている。
そのおかげか子供の体ということもあって初めは武器に振り回されていたが、筋トレをしていくうちに片手でも剣を振れる位にはなった。
「よしっと、今日のノルマ終わり!」
そして太陽を見るとちょうど真上に来るところだった。
「そろそろジュディスも帰ってくるだろうし家にもどるか。」
ジュディスが通う学校は午前中だけのようで昼には家へと帰ってくる。今日は俺が食事当番であるため急いで戻らないとジュディスに不満を言われそうだ。
そうして今日の日課を終えた俺は街のある方の山へと走り出した。
=S=
「ただいま。」
「お帰り、リオ。今日もバルビュサへ行っていたのかい?」
家に帰るとちょうどヘルメスが書斎から出てきたところだった。
「まあね、んじゃジュディスが帰ってくる前に昼飯作るよ。」
「ああ頼むよ。私も手伝えればいいのだけど……。」
今の話でわかるようにヘルメスは基本的に料理をしない。いや、できないと言うべきだろう。理由は
ヘルメスにやらせるとなぜか全て真っ黒コゲになるからである。初めはしっかりできているのだが何故か最後は真っ黒こげなのである。
目玉焼きですら真っ黒だしな…。
「ま、そこは適材適所ってことで。」
「そうだね、それじゃあ私は食器とかを出しておくよ。」
「ありがとう」
それじゃあさっそく作りますかな。今日のメニューは何にしようかな。
=S=
そうしてしばらくの間穏やかな日を過ごしていたある日の夜、俺は木が擦れるような物音に起こされた。恐らく玄関の入り口が開かれた音だと思うのだが…そう思い窓から外の様子を伺うと暗闇の中ジュディスが外へと走る姿が見えた。しかも方角はバルビュサの峰の方である。
「(こんな夜中にどうしたんだ?)」
いくらここがテムザの街だからといってこんな夜中に女の子が一人で出歩くのはまずいだろ。
俺はすぐに着替えてジュディスが走って行った後を追いバルビュサの峰へとかかる橋へと向かう。
しばらくジュディスを追って行くとジュディスが山頂近くにあった洞窟へ入っていく姿が見え俺もジュディスに気づかれないように続く。
けれど入り口付近でジュディスは奥を覗くようにしていてそこからあまり動かないでいた。奥に何かいるのかと気になったがとりあえずジュディスが先だ。
「ジュディス」
「ひっ!!……え?リ、リオ何でここにいるの?」
俺が声をかけると肩が目に見えて震えた後、ゆっくりとこっちに振り返る。そして話しかけたのが俺だと気づくとほっとしたような表情をしながら話しかてくる。
「それはこっちの台詞だ。こんな真夜中に外に行くジュディスが心配になって追ってきたんだよ。で、なんでこんな夜中に出かけたんだ?」
「なにか生き物みたいなのが空を飛んでいくのが見えたから気になって見に来たのよ。」
だからってこんな夜中に大事な娘がいなくなってってるのに気がついたらヘルメスが心配するだろ。
「ならヘルメスに────」
と、言いかけたとき……
───ヒュゥゥゥゥ
「「!?」」
ジュディスはまたもや縮こまり俺も周りを警戒する。
ここテムザの街は周囲を砂漠と荒野に囲まれている。この街を築いたクリティア族の先祖は魔物が来ない場所を重点的に探してそれらを橋でつないだらしい。だからここにも魔物がいるはずないのだが、あきらかに今の笛のような鳴き声は人が出せるものではない。そしてどうやらこの音の元凶は洞窟の奥から聞こえてくるようだ。
「この先に何かいるな。」
「そうね………でも暗くてよく見えないわ。」
洞窟の奥はかなり真っ暗で一番奥が少しだけ明るい事からどうやら奥は天井に穴が開いているようだ。
「どうする?この音の正体を確かめるか?」
「ええ、でなきゃここまで来た意味が無いもん」
「りょーかい、安心しろいざとなったらジュディスのことは俺が守ってやるからな」
「なによ、私と同じ子供の癖に」
そう言いながらジュディスはこちらに顔を向けようとはしなかったがその長い耳が赤くなっているのは誰も気がつかなかった。と言うか自分でも言ってて恥ずかしいと言った後に気がついた。
それはさておき、大剣をすぐ出せるようにしておくか……
そして俺たちは警戒しながら奥に進んでいくとまた笛のような鳴き声が聞こえるが、さっきよりもかなり弱々しい。
そして洞窟の中間あたりまで来ると俺たちが来た道のほうから声が聞こえてくる。
「─── リオー … ジュディスー。」
あちゃーヘルメス起きたか。………あ!
「やべ、そういえばヘルメスに来るとき何にも言ってなかった。」
「どうしよ、私も勝手に黙って来ちゃった。」
俺は頭をかきながら、ジュディスは慌てている。起きたら家族二人が家にいなかったらそりゃ親として心配するよな。
「ま、ここは諦めて素直に怒られるしかないな。」
「こんなことなら素直に寝ておけばよかったわ。」
「もうここまで来たらどうしようもないしヘルメスにあの生き物について聞いてみるか。」
そしてまた二人で入り口付近に戻る。坂の下を見ると一つの小さな光がこちらに近づいて来る。
「リオ!ジュディス!」
ヘルメスは俺らに気づくとほっとした表情になったがすぐに眉間にしわを寄せた表情に変わる。
こりゃかなり怒られそうだ。