テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~ 作: 奏
ちょうど私は就寝しようかと思った矢先に玄関を叩く音が聞こえてきた。
「ヘルメス。起きているかね、ヘルメス」
突然の訪問者は大声でもなければ、扉を強く叩いているわけでもないが、真夜中ということもありそれなりに響く。
そして玄関まで歩いていきドアを開けると近所の家に住むのクリティア族の男性がいた。
「ムルセさん、こんな夜中にどうしたんですか?リオとジュディスが起きてしまう。」
「実はおそらくその二人のことなんだが、妻が言うにはこんな時間だというのに二人がパルビュサの方に出かけるのを見たらしい。」
「……なんですって!?」
確かによく見ると二人のはいている靴が今は見当たらない。私はすぐに身を翻すと書斎へ行き、棚からあるものを探す。そしてその中からひとつの'機械'を見つけるとそれをつかんで玄関へと引き返す。手にしているのは魔導器(ブラスティア)、それも灯りをもたらす光照魔導器(ルクスブラスティア)だった。
ムルセさんはまだ玄関にいた。
「すみません、探してきます。」
「ああ、気をつけるんだぞ。」
そんな気遣いに感謝しつつ光照魔導器で暗闇を照らしながらバルビュサへの橋を渡っていく。
=s=
「リオー!…はぁ…ジュディスー!」
現在、私はバルビュサの峰を走り続けている。しかし今は普段から畑仕事よりも研究を優先しがちだった自分を叱ってやりたい気分だ。
そうして息も絶え絶えになりながらもようやくのおもいで山頂付近に近づくと坂の上の洞窟の前でこちらを向いている二人の子供が見えすぐに先ほどまで探していた二人であるとわかった。
「リオ!ジュディス!」
そう言って私は残りの体力を振り絞り坂を登っていく。
=S=
まず結論から言うと、それはもうこれでもないかと言うくらい叱られた。子供がこんな夜中に起きてるんじゃないとかどうして私に一言でもいわなかったのかとかどれだけ心配したと思っているんだとか言われた。
ジュディスに関してはもう涙目である。
まぁたしかに今回は、明らかに俺たちが悪いのはわかりきっているから次からは気をつけよう。なによりヘルメスに叱られてる間は、地面に正座なのでもううけたくないからな。
「それで、私に黙ってこんな所で何をしていたんだい?」
「じつは……」
そして俺たちはここまで来た経緯と洞窟の奥ににいるらしき生物について話した。
「ふむ確かに笛のような音が洞窟の奥から聞こえるようだね。しかしこんな鳴き声の魔物は聞いたことがない。」
「ヘルメスも知らないのか…。」
「でも、弱ってるみたいなの。父さんあの子助けてあげられない?」
出ましたジュディスの上目使い+涙目これやられて平気な奴いないだろ。この前、近所の男の子に使ったら男の子、顔真っ赤になってたしな。
「でも、まずはその生き物が危険かどうかを調べてみないとどうしようもないからもう少し近づいて見よう。」
「わかったわ!」
ヘルメスはどうやら研究心がそそられたみたいで、ジュディスにいたってはあの声の主を助けられることに喜んでいるようだ。
「それじゃあ、行こうか。」
「了解。」 「うん。」
そのままヘルメスが先に光照魔導器で照らしながら奥に進む。そしてその後ろから俺とジュディスがついていく。洞窟の奥に進むと、予想通り天井がなく少し開けた場所に出た。真上には星空が見える。そして出たところの出入り口の近くにその生物が横たわっていた。それに気がついたヘルメスがすぐに持っていた光照魔導器(ルクスブラスティア)でその生物を照らした。
その生物は大人二人分位の長い体を地面に横たえ、苦しそうに喘(あえ)いでいる。頭部には湾曲した二本の角が生え、頭から背中にかけて長い毛に覆われてさらに二つの大きなヒレらしきものが二対あり全体としては地上よりも海底に適していそうな姿に見えた。ぶっちゃけクジラに毛がはえた感じだな。
てかこれ間違いなくバウルだよな。
そうジュディスが原作開始に乗っていた始祖の隷長(エンテレケイア)の幼体である。
「……これ魔物なの?」
いつの間にかジュディスが俺の服の袖を握りながら寄り添うようにしてヘルメスに聞いている。
「………」
ヘルメスは何かを考えるように無言だった。
ま、始祖の隷長(エンテレケイア)だしわかるはずないよな。
俺は一人そう思った後にあることに気がついて、ジュディスを軽く引き剥がしてからさらにバウルに近づく。
「リオ!?」
「リオ!?それ以上は危険だから近づいては駄目だ!!」
二人は俺のいきなりの行動に驚いているようだ。
「別に平気だよ?なによりこいつかなり傷ついて弱ってるし…」
バウルの体にはよく見ると大小の傷が体のいたるところにあり、かなり衰弱しているのだ。それに気がついたのか二人も警戒しながらゆっくりと俺のいるところまで近づいてくる。
「この子、死んじゃいそう」
「多分、このままだとそう長くはもたないだろうね。」
「………ちょっと待ってて。」
ん~スペル使ってもいいんだけどそうするとヘルメスになんか言われそうだし………よしならあれを使おう。
そして二人から見えないようにして何もない空間から治癒の水を取り出す。ちなみにふと思ったのだがこういう
消耗品は数に限りはないのだろうか?そう思いながらも今は治癒の水をバウルの傷口にかけてやる。
「リオ、それはなんだい?」
「これは俺が作った傷薬だよ。」
「すごいな。もう傷口がふさがり始めている。」
「ま、あくまで応急処置程度だけどね。」
と、適当にごまかしておく。
「よかったねバウル。」
「…え」
「バウル?」
ジュディスが突然出した名前に二人して驚く。
俺は違う意味で驚いたんだけどな。
「そう!バウル!この子の名前。いつまでも名前がないと不便でしょ?」
「…バウルか、自由や解放、自律という意味だね。」
へーそんなバウルの名前にそんな意味があったのか。
「いい名前だな。」
「でしょ!」
そうしてジュディスはバウルを正面から見るようにして話かけた。
「私、ジュディス。よろしくね、バウル。」
ジュディスがそう言うと返事をするかのようにバウルが笛のような声で短く鳴いた。
「それでバウルはなにを食べるのかな。」
ジュディスが振り返り俺とヘルメスに向かって聞いてきた。
というより俺も知らん。始祖の隷長の飯なんてわからんしエアル調整するくらいしか……
もしかして飯もエアルなのか?
「それはわからないな。一応明日にでも少し食料を………」
「ヘルメス、ちょっとその魔導器かしてくれない?」
持ってこようと言おうとしたが俺の言葉に遮られた。
「?…別にかまわないけど。何をするんだい?」
「ちょっと気になったことがあってね。」
「リオ、どうするの?」
ジュディスが首をかしげている中で俺はヘルメスから受け取った光照魔導器(ルクスブラスティア)を受け取りそのままバウルの口元に置く。
「ねえ、リオそれ食べ物じゃないよ?」
「………」
「ま、ちょっと待ってろって。」
ジュディスを宥(なだ)めつつバウルの方を向く。ヘルメスは考えるように無言だ。
するとバウルは光照魔導器をじっと見た後、俺の方を見てくる言葉にするなら”いいのか?”という感じだ。だから俺はその表情に対して軽くうなずく。
すると今まで声を出すときしか開けなかった口を大きく開ける。それと同時に光照魔導器がライトの部分だけでなく全体が輝きだし、それらは風に吹かれたかの如く淡い光の粒が表面を離れてバウルの口の中へと吸い込まれていく。それと同時に光照魔導器の光もだんだんと消えていく。
「これは驚いた。この魔物「バウル」…バウルはエアルを直接摂取しているのか。」
ジュディスに名前について咎(とが)められつつ、ヘルメスは関心したように話す。その目はまさに研究者特有の歓喜の表情が見て取れた。
「えある?」
ジュディスは首をかしげながらヘルメスに聞き返す。
「魔導器(ブラスティア)を動かしてる力のことだよ。それに私やジュディスそれにリオ、この世のありとあらゆる物を形作り生かしている力の根源だよ。」
そしてヘルメスが説明を終えるとそれと同じく光照魔導器の光も失われ洞窟内が暗くなる。
「へぇ~、でもリオはなんでこれがバウルのご飯だってわかったの?」
原作の知識ですとは言えないし。
「バウルがこれじっと見てたからなもしかしたらって思ったんだよ。」
「そうだったんだ。なら父さんもっとそのエアルを持ってきてあげようよ!」
俺の話を聞いて納得したのか今度はヘルメスに向きなおす。
「とにかくこの続きは明日にしよう。」
「了解。」「うん。」
「またね明日ね。バウル。」
バウルはまた短く鳴いて返事をする。そして俺らはテムザの街に戻って行った。
その際帰り道は光照魔導器がなく真っ暗な中を帰るのに苦労したのは余談だ。