テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~ 作: 奏
バウルと出会って一ヶ月がたった。今では傷も完全に癒え今ではもう元気に空中を泳ぐかのように飛べるようになって
いる。
それと同じくして突然ジュディスとバウルも変化が現れた。
現在、俺とバウルは日向ぼっこをしながら一緒にまどろんでいた。
「それにしても、お前が倒れていた場所がまさかここだったなんてな。」
───?───
「いや、なんでもない。ただの独り言。」
バウルが不思議そうな顔をしてきたのでそう返した。今俺とバウルがいるのはバルビュサ山の頂上付近の洞窟で、はじ
めは暗くてよくわからなかったが、ここは原作でバウルが成体になった場所なのである。
そんな事を考えているとバウルが洞窟の出入り口の方に顔を向ける。そしてそれを合図に誰かが近づいてくる。どうや
ら相手は音を出さないようにしているようだが俺やバウルは気配を読み取れるために誰かが近づいてきてもすぐわかる
ようになっていた。だんだん人間やめてきたな俺。まぁそれよりもここに忍び寄って来るような事をする人物などここ
には一人しかいない訳で…………。
「ジュディス、いつまでそこで隠れてるんだ?バウルもさっきから気づいてるぞ。」
そういうと入り口付近から顔を出して、俺とバウルの所に近づいてきた。
「もう、驚かそうと思ったのに。」
そういいながら顔を膨らませながら岩の陰から出てきたのはやはりジュディスだった。
「それで、リオとバウルはここで何してるの?」
「一緒に日向ぼっこしてたんだよ。」
「そうなのバウル?」
バウルは喉を鳴らして答える。ニュアンス的には肯定しているように聞こえる。
「そっか、日向ぼっこしながらリオに頭撫でてもらってたんだ。よかったねバウル。」
今の会話でわかるようにジュディスはある日を境に突然バウルと話が出来るようになった。俺みたいに感覚で話すので
はなくどうやらテレパシーのようなものでジュディスのナギーグがそれを受信しているのではないかとヘルメスが言っ
ていた。ちなみにナギーグとは2本の長く延びた髪の部分の事で、実際はあれは髪ではないらしい。ただ俺が感覚で話
しができている事にも驚いていたが。それこそはじめは、一言二言位でしか話せなかったが今ではほとんど意思疎通が
できるまでになっている。
さらに最近変わったことといえばテムザ山のふもとに砦が築かれヘルメスは山を降りる回数が増えてきた。話を聞くと
、どうやらあと少しでヘルメスが今まで研究してきた事が実を結びそうだかららしい。
そしてこの時の俺はこの世界にのことを忘れていた。ここはテルカリュミレースの世界で、この世界の物語が紡がれし
原点の存在を……
=s=
それから1ヶ月後ヘルメスは研究を完成させた。研究内容は話してはくれなかったが、それでも俺とジュディスは喜ん
だ。それから数ヶ月の間は特に何もなく俺はいつもどおり修行をしながらジュディスとバウルとで遊びそしてのんびり
と毎日をすごしていた。
そしてある日の夜、物音に起こされてリビングに出ると玄関の明かりがついていた。ジュディスがまたどこかに出かけ
たのかと思い部屋に行くと、寝息をたてながらすやすやと寝ているジュディスの姿があった。
「(ジュディスが出て行ったんじゃなかったのか。)」
「んぅ、…リオぉ~…バウルぅ~……。」
「(夢の中でまで一緒にいるんかい。)」
軽くジュディスの寝言にあきれつつ思わず自然とジュディスの頭を撫でてしまう。
「……えへへ~……」
ジュディスは頬を緩ませながらまた寝息をたてはじめた。
さてと、となると家を出たのはヘルメスか……
ジュディスの部屋を出た後にヘルメスの書斎と寝室にも行ってみたが、やはりヘルメスの姿はなかった。こんな時間に
どこに行ったのか心配ではあるが、ヘルメスの事だ。俺たちと違って朝になれば帰ってくるだろうと思いその日は自分
の部屋へと戻った。
=s=
「ん………ふぁ~……朝か……。」
結局、ヘルメスはまだ帰ってきていないようだった。俺は起きようとした時……
────ギィィ、バタン。
玄関からドアを開けて閉める音が聞こえてきた。
ヘルメス帰ってきたのか?
俺はベットから起き上がり早足で玄関へとむかう。
そして予想通り俺はヘルメスが帰ってきたのを確認して声をかけようとしたが、声が詰まった。
───おかえり。
そういうつもりだった俺の声を詰まらせた原因はヘルメスの表情だった。
精魂尽き果て、気力の最後の一滴までも吸い尽くされたかのようにげっそりとしているが両目は大きく開かれほとんど
焦点があっていない。まるで驚愕と悲しみと後悔がごちゃ混ぜになったかのような表情なのだ。
長い間一緒に暮らしてみてわかったが、ヘルメスは基本的には冷静だ。ジュディスや俺に関しては多少熱くなりやすい
がその他では、割と物静かな対応をしている。そのヘルメスがまるで凍りついたかのような表情をするなどよほどのこ
とがないとまずありえない。
昨日までは、いつも通りのヘルメスだった。ということは恐らく昨日の夜で何かあったのだろう。
まずは、本人と話してみないとどうしようもないよな。
「ヘルメス、そんな顔してどうしたんだ?」
「…………私は、とりかえしのつかない大罪を犯してしまった。」
ヘルメスはまるでうわごとを呟くような声で話した。
大罪ってどういうことだ?
それについて聞こうとしたがヘルメスは寝室の方へと入ってしまった。
こんなことなら昨日の夜にヘルメスを探していればよかったな………。
結局、その日は何もわからないまま終わってしまった。
しかしその日を境にヘルメスは変わった。
もともと神経質であったが、近頃は度がすぎるほどになり、ささいなことで怒り、苛立ちが目に見えるようになった。
さらに最近は砦に篭り、滅多に行かなかくなっていた学術都市アスピオにまで行き、何日も家を開けるようになった。
たとえ帰ってきたとしてもすぐに倒れるようにベットに横たわるか書斎に篭ってしまうことが多かった。
俺はそんなヘルメスを見ているのが辛くなり、ある日、気分を変えるためにバウルのもとへとむかった。
「──!?───!!」
そしてバウルがいつもいる洞窟に入ると中で喧嘩するような声が聞こえてきた。
「なんで父さんがあんな風になったか知っているんでしょう!?」
──……──
「どうして?」
はたから見れば一人で魔物に喋りかけている少女だが恐らくテレパシーもといナギーグで会話しているのだろう。
「なにそれ、ずるいよ、わけわからない。」
「もういい!バウルなんてしらない!!」
そういってジュディスは洞窟を出て山を降りていった。
俺はというと洞窟の入り口のすぐ脇で聞いていたため気がつかなかったようだ。ジュディスが出て行った後、俺はジュ
ディスを追わず洞窟に入ってバウルのところに向かった。
「よ、派手に喧嘩したみたいだな。」
バウルは少し驚いたような顔をした後、急にしゅんとした表情になる。
あらためて見るとほんと人間じみてるよな。
「それで、ヘルメスが変わった理由をお前は知ってるのか?」
バウルにそれを問うと顔を縦に振り肯定の意思を表す。
「でも、それを誰かに話すことはできない。……………それは誰かの命令か?」
───── 肯定 ──────
「そいつと俺が話すことはできないか?」
───── 否定 ──────
「そうか…………。」
おそらくバウルに命令を出したのはバウルより高位の始祖の隷長(エンテレケイア)だろうな。バウルはいくら幼体と言
っても始祖の隷長だ。始祖の隷長はこの世界の生き物にとって上位種にあたる。そんなバウルに命令できるということ
は同じ始祖の隷長以外にありえないだろう。
となると…………。
「なぁ、バウル……。」
俺はバウルを正面から目を合わせる。
「もし、俺がいないときはお前がジュディスを守ってくれないか?」
恐らくジュディスにとってバウルはこれからの原作のように最高の相棒になってくれるだろう。
───?───
なぜ?そういった顔をするバウル。
「ヘルメスがあんな状態の今、なにかあった時ジュディスを守れるのはさ俺とバウルしかいないだろ。だから俺がもし
いない時、ジュディスを守ってほしいんだジュディスに害を与えるやつ全てから。………頼めるか?」
そういうとバウルは強く肯定するように鳴いた。
「サンキュ、んじゃ俺もそろそろ戻るよ。」
「またな、バウル。」
俺はそういってバウルの頭を撫でた後、洞窟を出て家から来た道を戻っていった。