テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~ 作: 奏
「~♪~~~♪~~♪……ん?」
俺はいつものように修行を終え鼻歌を歌いながら家へと帰ると家の前に鎧を纏(まと)った兵士の集団がいた。さらに俺が気になったのは彼らは普通の人間なのだ。
「あの~、何かここの家に御用ですか?」
「いえ、実は砦に……って人間の子供?」
女性は振り返り俺の姿を確認すると疑問を持った顔になる。
いや子供なんてどこにでもいるだろ。そう思っていると今度はその女性から話しかけてきた。
「ねえ君、ここはクリティア族の街テムザなのにどうしてこんなところにいるの?」
あ、なるほど。確かにさっきの俺と同じ考えか。確かに逆にクリティア族の街に普通の人の子がいたら不思議に思うよな。最近はほとんど気にしなくなっていたから忘れていた。
「いえ、それは……」 「おーい、キャナリ。」
「……」
俺が声を出すと同時に他の兵士の方から出てきた人に遮られる。それにしてもキャナリってどっかで聞いた気がしたんだけどな。なんだか最近は物忘れが激しいような気がする。
「どうやら砦はこの山の麓(ふもと)らしいぞ。まったく苦労して登って来たってのに……ん?」
その男が俺に気がつく。
「なんだこの餓鬼?」
「だめよダミュロンそんな言いかたしたら。うちの部下がごめんなさいね。」
「いえ別に気にしてないので。」
「おーおー、大人ぶっちゃって。」
俺の言葉に茶々を入れてくるダミュロン。
いまちょっとだけあの男の首に最高レベルの大鎌を突きつけてやろうと思った俺は悪くないと思う。てか今の俺ならお前のこと瞬殺できるぞ多分…
「まったく、やめなさいダミュロン。子供相手に恥ずかしくないの?」
「へいへい」
「それでさっきの話だけどなんでクリティア族の街に人の子がいるの?」
「それは、ここの家に居候させてもらってるからです。」
そういって俺はヘルメス達の家を指す。そういうとキャナリは少し考えるようなそぶりを見せる。
「そうだったの。ちなみに……」「隊長。」
「どうしたの?」
そして何か言おうとして先ほどの兵士の集団から走ってきた兵士に遮られる。
「今から山を降りると恐らく日がくれてしまうそうです。」
「……そう、ならしかたないわ。出発は明日の朝にするとみんなに伝えて。」
「わかりました。」
そういってまた兵士たちの集団の方へと走っていった。
「じゃあ、俺もそろそろ行きます。どうやら家に用があったわけではないようですし。」
「あ……。ええ、ごめんなさいね。呼び止めちゃって。」
「いえ、それじゃあ。」
まあ実際に声をかけたのは俺なんだけどな。
そして俺はそのまま玄関へと向かってドアを開けようとして手をドアノブに伸ばした瞬間、
───ガチャ…ドン!!
「ッあぶな!?」
突然ドアが開き俺に向かってせまって来たのを咄嗟に横に飛んでかわす。そのときに俺のよけた傍を走り抜けて行くジュディスがいたがもう橋の方へと走って行ってしまっている。
「(…泣いていた?)」
俺の横を通り過ぎる時ジュディスの目に涙が溜まっているのが見えた。それより何があったんだ?
そのまま中に入るとあの日以来あまり健康的ではない顔をしたヘルメスが俺を見る。
「…やあ、おかえりリオ。」
「ただいま、それで何があったんだ?」
「それは───」
どうやら今日にはまた砦に行かないといけないと話したところ、突然泣き出して飛び出して行ってしまったらしい。
ほんとにヘルメスはどうしたのだろういままでなら
「ヘルメス、なんでジュディスが出て行ったのか本当にわからないのか?」
「………」
ヘルメスは沈黙している。
「今日はジュディスの誕生日だよ。」
「…!?」
ヘルメスの目が大きく開かれる。まったく、でもヘルメスはやはり変わっていなかった。ここで本質までも変わってしまっていたら恐らく俺はヘルメスを殴ってでも元に戻そうとしていただろう。けれどヘルメスの本質である家族を何よりも大切にしている事は今の表情を見れば明らかだ。
そう考えているとヘルメスが口を開く。
「……私は、親として失格だな。最近は意味のないことで怒り、話も聞こうとせずさらには自分の娘の一番の大切な日まで忘れてしまっていた。」
「でも、ヘルメスはジュディスにとって唯一の父親だろ?ならもう次に何をすればいいかわかるはずだ。」
そう言って俺はヘルメスの目を真正面から見る。
「ま、ジュディスの居場所は大体わかるからつれて帰ってくるよ。」
そしてそのまま家を出ようとして一つ思い出す。
「あ、そうだ」
そういいながらヘルメスの方へと振り向く。
「俺もヘルメスの事を本当の父親みたいだと思ってるからね。頼むぜ父さん」
「………ハハ、どうやら私にしては出来た息子がいたもんだ。ありがとう、リオ」
「あいよ」
そういって俺は家の外へとでてそのままジュディスのいるであろう場所へと向かう。その際にヘルメスの顔を見たが憑き物が落ちたような清々しい顔が見えていた。
「それじゃ、俺もジュディスを迎えに行きますかなっと。」
=s=
「ま、それでほとんど根拠もなく来たけど、たぶんここしか心当たりないよな。」
そう言って今俺がいるのはバルビュサの峰の洞窟、つまりバウルのところなんだが奥に行くと隅の方にうずくまるようにしているジュディスがいた。
「ジュディス。」
俺が名前を呼ぶとビクッと反応した後、顔をあげた。目元は今まで泣いていたせいか赤く腫れている。
「リオ………。」
「そろそろ晩飯の時間だし帰ろうぜ。ヘルメスも心配してたぞ?」
しかしジュディスは地面に座ったままでいる。
「ううん、心配してるわけない。」
「なんでそう思うんだ?」
そう俺が聞くとジュディスは勢いよく立ち上がり先ほどの声とは違う洞窟に響く位の声で言う。
「だってお父さん前とは全然変わっちゃたんだよ!」
「前はすごくやさしかったし研究だって楽しそうにしてた。でも今のお父さんは怒りっぽくなって大好きだった研究もすごく辛そうにしてる。それに前は私の誕生日の日には絶対家で一緒にいてくれたのに…それも、グス…わす、れで…。」
そういいながらジュディスは泣き出してしまう。それはまるで今まで溜め込んできたものを吐き出すような心の叫びだった。
「まったく…。」
「リ、リオ///!?」
それは自分でもも驚くように自然と体が動いていた。俺はそのままジュディスを自分の腕の中に引き寄せた状態で話す。
「俺はヘルメスは前と全然変わってないと思う。」
「え……?」
「理由は分からにけど多分さ、ヘルメスは不安で色々な物が見えなくなっていただけだと思う。自分のこと、俺やバウルのこと、そしてジュディスのこと……。だからさ、まずゆっくり話してみようぜ?ヘルメスが見えるように真正面から堂々と。そんで仲直りして帰ろう。」
そういうと途中から下を向いていたジュディスがゆっくりと顔を上げる。
「……わかった。でも……」
「ん?」
「家族三人みんなでだからね?」
そういって顔を上げながらジュディスが言う。
「アハハ……そうだな!」
一瞬俺はキョトンとした顔をしていたに違いない。そしてそのまま俺は思わず笑ってしまう。なぜだろうこんな簡単な言葉なのにヘルメスの時といいしばらくの間胸に宿った熱さは消えずにいた。
そしていつまでもジュディスを抱きしめていたことに気づきお互いに赤面したり、軽くそこにいないかのような扱いを受けていたバウルにジト目をされつつすでに暗くなってきている空の下を二人で歩きながら帰路についていた。
そして家に帰るとヘルメスが出迎えてくれた。そしてジュディスはそのままヘルメスの胸に飛び込む。
「ジュ、ジュディス!?」
「お父さん、ごめんなさぃ…えぐ…」
そのままジュディスはヘルメスの腕の中で泣き出す。それをヘルメスはやさしくけれど力強く抱きしめる。
「私の方こそジュディスの誕生日忘れていてすまなかった。」
そしてしばらくの間ジュディスとヘルメスはお互いに謝り続けていた。
そうしているとヘルメスが口を開く。
「そうだジュディス手を出してごらん。」
「?」
そういって手の平の上に置かれたのはひとつの魔導器(ブラスティア)だった。
「これは、計時魔導器(タイムブラスティア)という物で時間を正確に測れるんだ。私からの誕生日プレゼントだよ。」
そうヘルメスが言うとジュディスは嬉しそうにその魔導器を手につけた。
「お父さん、ありがとう!」
その笑顔は今まで見てきたどの笑顔よりも可愛く見えた。
「んじゃ、今日はみんなで晩御飯作るか!」
「うん!あ、でもお父さんはお皿とか出してね。」
「わかっているさ、私は全力でリオとジュディスのサポートに回るよ」
そうしてその日を境に徐々にだが確かにヘルメスはいつも通りの温厚な性格へと戻っていった。
ちなみに夕食の後にジュディスに誕生日プレゼントとして自分で作った首飾りをプレゼントするとそのまま抱きついてきたりされたのは余談である。