テイルズオブヴェスペリア ~転生者は錬装士(マルチウェポン)~ 作: 奏
今俺の目の前にはごつごつとした鉄格子がある。
空気はジメジメしており、居心地が悪い。囚人はいつもこんな空気を吸っているのか。
ごろんと牢の中のベットに横になるとどこからか声が聞こえてくる。
「……で、その例の盗賊が難攻不落の貴族の館から、お宝を盗んだわけよ」
「知ってるよ。盗賊も捕まった、盗品も戻ってきた。だろ?」
向かい側の看守と囚人だろう。随分と呑気な話をしてるよな。
ふぁぁ…と小さく欠伸をする。俺はなぜここにいるのかが自分でもまったく理解できない。
「いやぁ、そこは貴族の面子が邪魔してってやつでな?盗賊は捕まっちゃいねーし、いま館にあんのは贋作よ」
「馬鹿な・・・」
「ここだけの話な。漆黒の翼が目の色変えて、その盗賊のアジトを探してんのよ」
「何?例の盗賊ギルドが?……!!ごほんっ、いい加減大人しくしていろ。もうすぐ食事の時間だ」
話に食い入るように夢中になっていた看守だが、これ以上はとか何か思ったところがあったのか。わざとらしい咳払いをした後、話していたおっさんの囚人を叱るように突き放した。そして、看守は俺の檻の前を過ぎて外へ出て行った。
そして数秒の沈黙がこの空間に流れ……
「……そろそろ、じっとしてるのも疲れるころでしょーよ、お隣さん。目ぇ覚めてるんじゃないの?」
不意におっさん囚人は誰かに声をかけた。一瞬自分かとも思ったが声が聞こえた奥の方のさらに手前側から男の声が聞こえてきた。
「そういう嘘、自分で考えてんのか?おっさん暇だな」
そういえば、さっき隣に運ばれてきてたな…。そんな事を思いながら再び彼らの話に耳を傾ける。
「おっさんはひどいな。おっさん、傷つくよ」
「おっさんって自分で言ってんじゃん。」
俺は思わずツっこんでしまった。
「…ん?」
「おやぁ?そっちの人も起きてたみたいじゃない」
俺の声に気がついた青年とおっさんが反応する。
「誰かいんのか。さっきから気配はしてたけど…」
「起きてたら話しかけてくれてもよかったのに、おっさん寂しくて死んじゃうかもよ?」
「いや、あんたはウサギかっつーの」
まぁ、別に話すのが嫌なわけではなかったのだが。何しろ、閉じ込められている牢が離れていたから話しにくかっただけ。
「それよりも、ここを出る方法を教えてくれ。」
「ん?何したか知らないけど、十日も大人しくしてたら、出してもらえるでしょ?」
「そんなに待ってたら下町が湖になっちまうよ」
「俺は法すら犯してもいないのに何故に何日もここにいないといけないんだ。」
はぁ、俺は思わずため息を着くと隣の青年が疑問を投げかける。
「ん?法を犯したわけでもないのになんであんたは牢屋に入れられてるんだ?」
「いや、たまたまザーフィアスの中歩いてて道端に袋をくわえた犬がいてさ、思わず撫でてたら何故か騎士が来て捕まえられた。」
すると隣の青年が一瞬沈黙して恐る恐る聞いてくる。
「ちなみにもしかしてその犬、キセルとか一緒にくわえてなかったか?」
「あー、確かにくわえてたな」
「わりぃ、その犬、俺ん所のやつだ」
おまえのせいか!!そう考えているとおっさんが話しかけてくる。
「ねぇねぇお二人さん、盛り上がるのはいいけどおっさんを仲間はずれにするのは酷くない?」
「じゃあここを出る方法を教えてくれ」
「…悪いね。その情報は持ってないわ」
「使えないな」
「ひどっ!!」
おっさんに対して俺が毒を吐くと面白いように反応が返ってくる。
「だろうな…モルディオとかいうやつのことも、どうっすかな…」
「モルディオ?ってアスピオの?学術都市の天才魔導士とおたく、なんか関係あったの?」
ユーリはその場で跳ね起きる。
「知ってんのか?おっさん」
ユーリが聞くとそのおっさんはへへんとまたおどけた口調に戻る。
「お?知りたい?知りたいんだったらそれ相応の報酬をもらわないと――――」
「学術都市アスピオの天才魔導士なんだろ?ごちそうさま。」
「い、いや、違う、違うって。美食ギルドの長老の名前だ。いや待て、それは、その、あれか……」
「おっさん見苦しいぞ」
しどろもどろにもなりながら全力で否定し始めるおっさん。しかし、それと同時に独房の廊下の先から足音が近づいてくる。その近づいてくる音に誰もが耳を澄ます。
その足音は俺とユーリの牢屋の前を過ぎ…あのおっさんの前で止まった。
そこには帝国騎士団長、アレクセイの姿があった。そして、アレクセイはおっさんの牢を開け言った。
「出ろ」
「いいところだったんですがねえ…」
「早くしろ」
ガチャンと牢屋が閉まる音が聞こえ、再び彼らの前を通り過ぎるアレクセイ。しかし、俺らには見向きもせずに過ぎ去って行く。その後ろにはさっきのおっさんがついていく。
一つに束ねられた髪、東風の衣服に身を包んでいる。顎に生やした無精ひげが見た目の胡散臭さを余計に強調していた。うん、すげー胡散臭い
「おっと…」
と不意におっさんはユーリが閉じ込められている牢の前でつまづいた。それに気づいたユーリは前の腰をかがめたおっさんに目を向ける。
「…騎士団長直々なんておっさん何者だよ」
ユーリのその問いに彼は答えなかった。代わりに、鉄格子のなかに何かが滑り込んできたのを掴み取る。
ここの牢屋の鍵だろう。それを渡すと見据えながらユーリに言う。
「女神像の下」
「何をしている」
「はいはい。ただいま行きますって」
アレクセイの声に導かれこの独房を後にした二人。しばらくすると彼らの気配は消えてしまった。
「そりゃ、抜け出す方法を知りたいとは言ったけどなあ…」
そう言うも、その鍵で独房から抜け出すユーリ。そして、独房を後にしようとするも、手前にある牢に向かう。
「オマエはどうする?」
「お前のその鍵で俺のも開かない?」
「んなわけないだろ…」
と言いつつユーリが鍵穴に差し込んで力を加えると……
──ガチャン
鍵はそのまま回り鉄格子が開く。
「開いたな」
「………ここの相変わらずのザル警備といい、本当に大丈夫か?」
俺とユーリはそのまま牢を出る。
「それでこれからどうするんだ?」
俺が尋ねるとユーリは口角を上げながら…
「一応、女神像の下ってのも試す価値はありそうだろ?」
「そうだな、発信源がさっきのおっさんでなければもっといいけどな。」
ユーリにそういうと苦笑いをする。
「そんじゃ、さっさとここを出ますか」
そういって俺が歩き出すと後ろから呼び止められる。
「ちょっと待てよ。まずは自己紹介だろ?俺はユーリ・ローウェル。お前は?」
「お、そういえばまだ言ってなかったな」
俺は振り向きながら言う。
「俺はリオ・ヒイラギだ。リオでいいぞ。」
「りょーかい、脱獄の間までだがよろしく」
そして、独房に入る前に取られた武器を取り戻して、俺らは牢屋を後にした。
「そういえば、リオには無罪だったんだよな?」
「ああ、そのはずだが……突然どうしたユーリ?」
突然ユーリが先ほどの話を聞きなおす。
「今、ここにいる時点で脱獄罪がついたな」
ユーリが笑いながら言ってくる。
「もともとこうなったのはお前が原因だからな!?」
おもわず声を大きくして叫ぶ。そのせいで何人かの騎士に見つかり、そいつらを全員気絶させて俺らは先へと向かった。
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次回からは多分一週間投稿になると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。