IS 朱夜の残光   作:六馬 楽音

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 今回は、少し長めの文となってしまいました。
 そして、お待たせしました。遂に本編突入です。


本編
穏やか『だけど刺激的』


 

 

 

「全員揃ってますね。それじゃあ、SHR(ショートホームルーム)始めますよ~」

 

 

 黒板の前で微笑む教壇状の女性――副担任である山田麻耶先生――を前に、北良辰人はただ静かに机に座っていた。彼は、幾つもの視線に身を貫かれながらも、威風堂々としている。もう一人の男子――織斑一夏――はその視線に貫かれ、萎縮している。

 

 今日は、高校の入学式。世間では、新しい出会いや環境に目を輝かせたり、消沈したりする時期だ。

 しかし、その環境が、現在2人の立ち位置をただの生徒の扱いにさせなかった。何故、彼らに視線が集まるのか。それは、この学園の全生徒中で男は2人しか所属していないからである。因みに、一夏の席は一番前の真ん中、辰人は窓際の最後尾に位置している。

 

 

――――IS学園。主にIS操縦者を養成する機関で、運営と資金の調達は原則日本がその義務を背負っている。ただし、当機関内で得られた技術は協定参加国全てに開示する等、他国がその甘い汁を存分に吸える取り決めが多い。日本は黙秘・秘匿の権利は一切持たず、当機関内の問題は全て日本がその責を担って公正に介入し、協定参加国に理解できるような解決を義務付けされている。また、協定参加国に属する国籍の者全てに門戸を開き、日本国内での生活を保障すること――――

 

 

 IS学園についての情報を頭の中でまとめていた辰人だったが、意識をすぐに目前に戻すと既に自己紹介の時間へと入っており、もう一人の男子である織斑一夏と山田先生がなにやらごたついている。数分の後、織斑一夏が立ち上がり全体に見えるように後ろを振り向く。

 

 

(う……)

 

 

 途端に、女生徒全員の視線が集中する。女子が苦手ではないが、クラス内の全生徒の視線に当てられれば、女子に苦手意識のない彼もたじろいだ。

 

 

「えー……えっと、織斑一夏です。宜しくお願いします」

 

 

 そう言うと、一礼する。直後、あたりが少しざわざわと騒ぎ始める。更に『え、それで終わりじゃないよね?』『もっと色々喋ってよ』と訴えかけるような視線を女子たちは一夏に向けた。

 

 

「…………」

 

 

 少し黙考する一夏。そして口を開いた。

 

 

「以上です」

 

 

 その一言に、更なる情報公開を期待していた女子たちは、落胆している。数名の女子は、椅子からずっこけた者もちらほら見える。

 直後、背後から何かが振り下ろされ、一夏の頭でおかしな音を響かせる。

 

 

「いっ――――――!?」

 

 

 一夏は慌てて背後を振り向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(成る程、あれが『元世界最強(・・・・・)』織斑 千冬か……)

 

 

 辰人は、一夏の頭に出席簿を叩きこんだ人物――織斑 千冬――に目を向ける。

 凛々しく美しい顔立ちに、長身。黒のスーツにタイトなスカート、その下の肉体も鍛えられたものであることは容易に想像できた。

 

 

(これまた、姉弟(きょうだい)仲が宜しいことで)

 

 

 そう思いながら眺めていた辰人だったが、直後、何かが恐ろしい速度で襲ってきた。辰人は、それを動揺することなく掴む。それは、白いチョークだった。

 

 

「良い反応だ。だがな北良、教師を馬鹿にするのは感心せんぞ」

「あ、あはは……すいません」

 

 

 チョークを投げた千冬に対して、自らの義父と同じ匂いを感じつつ、内心冷や汗をかいていた。

 一夏の方の説教も終わったのか、威風堂々とした姿勢でクラス中に声を響かせた。

 

 

「諸君、私が織斑 千冬だ。君たち新人を1年で使い物になる操縦者に育てるのが私の仕事だ。私の言うことはよく聞き、理解しろ。出来ないものには、出来るまで指導をしてやる。私の役目は、弱冠15歳を16歳まで鍛え抜くことだ。逆らっても構わん、しかし私の言うことは聞くように。いいな」

 

 

 すると、一瞬辺りが静寂に包まれた。辰人は何かを察したように、耳を塞ぐ。それを見た一夏は、何をしているのか分からなかったのか首を傾げた。直後、

 

 

「「「「「キャ―――――――――――――!」」」」」

「本物、本物の千冬様よ!いぎででよがっだぁー」

「ずっとファンでした!サインください!」

「私、お姉さまに憧れて北九州からここに来ました!」

「このクラスの人たちばかばっか」

「あの千冬様のご指導頂けるなんて、恐悦至極です!」

「私、お姉さまの為なら死ねます!」

 

 

 女子の大音声で窓ガラスが震える。あまりの音量に一夏は少し悶えたが、千冬はとてもうんざりしたような表情を浮かべていた。

 

 

「……全く。毎年、よくもこれだけの馬鹿が集まったものだ。感心させられる、それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」

 

 

 呆れたのか、千冬はうんざりするようにため息をついた。だが、現代女子の暴走は止まらない。

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!お姉さま!もっと叱って、罵って!」

「でも時には優しくして!」

「そして私たちをもっと躾けて!」

 

 

 もはや止めるのを諦めたのか、千冬は一夏に向き直る。

 

 

「で、お前は満足に挨拶も出来んのか?織斑」

「千冬姉、でも……」

 

 

再び、鋭く出席簿が叩き込まれた。

 

 

「ここでは織斑先生と呼べ、馬鹿者」

「……はい、織斑先生」

 

 

 すると、更に場がざわついた。

 

 

「……もしかして、織斑君って千冬様の弟?」

「良いなぁ~、代わってほしいなっっ」

 

 

 もう女子たちを気にするのを止めた千冬は、辰人へと視線を向ける。

 

 

「北良、時間が無いからお前も一応挨拶をしておけ。織斑はもう座っていい」

「はい、分かりました」

 

  

 そう言うと、辰人は立ち上がる。一夏に集中していた視線が一気に集中する。その視線をまるで気にしないように、辰人は微笑みを浮かべながら、その口を開いた。

 

 

「どうも、世界で2番目の男性IS操縦者の北良 辰人(ほくら たつひと)です。運動が好きで、少し槍術等の武術をかじってます。あと、家事も一通りこなせますので、どうぞ宜しくお願いします」

「…………」

 

 また、一瞬の静寂に包まれる。辰人は、耳を塞ごうとする。だが、少し動作が遅れてしまい、辰人自身も「やってしまった」と心中で呟く。

 

 

「きゃ……」

「きゃ?」

「「「「「「キャ――――――――――――――!」」」」」

 

 

 先程と同じように、女子生徒の歓声という名の衝撃が辰人を襲った。あまりの大声に耳がおかしくなった辰人は堪らず顔をしかめる。

 

 

「オッドアイよ、オッドアイの落ち着いたお兄さん系のイケメンよ!」

「織斑君みたいな頼りになる感じじゃなくて、甘えたくなる感じだわ!」

「織斑×北良、いえ、北良×織斑も良いわね!」

 

 

 盛り上がる女子を余所に、あまり気にせずに、辰人は席に着く。直後、チャイムが鳴り響いた。

 

 

「さあ、SHRは終わりだ。諸君には半月でISの基礎知識を身に付けてもらう。その後のISの操作実習もまた半月だ。基本動作はその期間内で覚えるように。良いか、良いなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ、私の言葉には返事をしろ」

 

 

 横暴ともとれる言葉を口にしつつ、鬼教官の如く千冬を前に一夏は呆けた表情をしているが、辰人は何とも思っていないようだった。

 

 

「席に着け、馬鹿者」

 

 

 再度、頭を叩かれた一夏を見つつ、辰人は授業の準備を始める。そして、授業が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 授業を聞きつつ、辰人は周囲を観察する。流石、倍率1万を超えるIS学園に合格している生徒である。全員が、真剣な表情で授業に取り組んでいる。

 辰人はとある天災ウサギ(・・・・・・・・)から2年間、みっちり指導をされていたため、この学園でのIS関連の座学は問題ない。だが、このクラスで唯一、渋面を作っている人物がいた。それは元世界最強の弟だったため、辰人は驚きを隠せなかった。

 そうしているうちに、授業の終了を告げるチャイムが鳴り、1時間目が終了した。

 

 

 

「なあ、ちょっといいか」

 

 

 その声を聞いて、一応次の授業の予習をしていた辰人は手を止める。顔を上げると、そこには一夏がいた。

 

 

「ああ、別に良いよ。確か織斑だよな?」

「一夏で良いよ。いやぁ、同じ境遇のヤツがいて助かったよ、女子の視線がさっきから凄いしな。北良は平気なのか?」

「まあ、こうなることは予測できたからな。あと、俺のことは辰人で良い」

「じゃあこれから宜しくな、辰人!」

 

 

 差し出された手を握り返し、2人は握手をした。2人は気づいていないようだが、クラスの女子だけでなく、他クラス、そして2年3年の生徒も廊下から2人の様子を伺っている。だが、その実、誰が最初に声をかけるのかを決める戦いが静かに始まっていた。

 

 

「きたわ!やっぱりオリ×タツ、タツ×オリね!早速夏に向けて作業開始よ!」

「印刷所にすぐ依頼しといて!それと動ける人間はすぐに作業を始められるようにしないと!」

「者どもぉぉぉ、戦の準備じゃぁぁぁあぁぁ!」

 

 

 一部の女子から何かが聞こえていた辰人だったが、深くは聞かないことにした。すると、

 

 

「……すまん、ちょっと良いか」

 

 

 一夏に声をかけた女子のことを、辰人はさりげなく観察した。さらさらと流れるような黒髪を、後ろで白いリボンで纏めてポニーテールにしている。その顔立ちは凛々しく、まるで侍のようだった。

 

 

(なんか束さんにどこか似ているような気がするな)

 

 

 そう思いながらも、辰人は2人の会話に意識を移す。

 

 

「箒?箒じゃないか、久しぶりだな!元気だったか?」

「すまない、一夏。廊下で良いか?」

「お?おう……。なんか悪いな、辰人。それじゃあ、ちょっと行ってくるわ」

「ああ、気にするな。知り合いなんだろ?ごゆっくり~」

 

 

 すたすたと先を歩く箒とそれを追いかける一夏を見つつ、辰人は予習に戻ろうとした。しかし、ただでさえ少なかった男子が1人になった状況に、動かない女子ではなかった。  

 

 

「ねえ、北良君!彼女いるの?」

「好きなタイプは!」

「何処に住んでたの?」

「メアド交換してください!」

「ISのこと教えてあげよっか?」

 

 

 自分の座席の四方八方を囲まれ、様々な好奇な視線と質問が飛び交う。心の中で「勘弁してくれ」と思いながら、辰人は当たり障りのない受け答えをする。そうしているうちに、休み時間は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――で、あるからして、ISの基本的な運用は現時点で国家の承認が必要であり、枠内を逸脱したIS運用をした場合は、刑法によって罰せられ――――」

 

 

 すらすらと教科書を読んでいく山田先生は、童顔からは考えられないような真剣さで、教師のそれだった。それを見て関心する辰人だったが、もう1人の男子、一夏は苦しい顔を浮かべている。

 隣の女子をじっと見たり、周囲を確認したりしている挙動不審な一夏を見て、辰人は苦笑いをするしかなかった。 

 

 

「織斑君、今までの所で分からなかったところはありますか?」

 

 

 一夏の不可解な行動を気づいたのか、麻耶が一夏に問い掛ける。

 

 

「あ、えっと……」

「分からないところがあったら何でも訊いてくださいね。なにせ私は先生ですから」

 

 

 先生の部分を強調しながら、えっへんと胸を張る麻耶に、一夏は迷わず答える。

 

 

「先生!」

「はい!」

「全部分かりません!」

 

 

 あまりの衝撃発言に、クラス中が凍り付く。困惑する麻耶に、教室の端に待機していた千冬が動く。

 

 

「織斑。確か、入学前に参考書が渡されているはずだが、あれはどうした?」

「古い電話帳と間違えて捨ててしまいました」

 

 

 直後、千冬の出席簿が叩き込まれ、一夏は痛みで頭を押さえた。

 

 

「一夏、流石にそれは無い」

「北良の言うとおりだ。織斑、再度発行してやるから、1週間で覚えろ。良いな?」

「え……。でも、あれぐらいの厚さは1週間で覚えらr……」

「覚えろ、やれと言っている」

「はい……」

 

 

 龍すら後退りそうな睨みの視線に当てられ、一夏はただ頷くしかなかった。

 

 

「ISはその機動性、攻撃力、制圧力と過去の兵器を遥かに凌ぐ。そういった『兵器』を深く知らずに扱えば必ず事故が起こる。そうしないための基礎知識と訓練だ。理解ができないても覚えろ。そして守れ。規則とはそういうものだ」

 

 

 その後、一夏の「別に来たくて来たわけじゃない」という心情を読み取った千冬の正論で事は収まり、授業を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと、よろしくて?」

「へ?」

「ん?」

 

 

 休み時間。辰人の座席で談笑していた一夏と辰人に声をかける女子がいた。その女子は優雅に2人の元へ歩み寄った。

 

 

「ああ、俺たちに何の用だ?」

「まあ!何ですの、その失礼なお返事は。(わたくし)に話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度があるんではないかしら?」

 

 

 辰人の返事に、わざとらしく声を上げる女子。金髪が鮮やかで、白人特有のブルーの瞳が、彼女の魅力を引き立たせていた。

 

 

(典型的な現代女子か、それも厄介なヤツが来たな……)

 

 

 そう思う辰人を置いて、一夏とその女子の会話が進む。

 

 

「悪いな。俺、君が誰か知らないし」

(わたくし)を知らないですって!?」

 

 

 一夏の一言に、金髪女子は憤慨している。

 

 

「なあ、辰人。この人のこと知ってるか?」

「……一夏。お前本気で言って……るんだろうな。第三世代の試作機『ブルー・ティアーズ』の搭乗者で、イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットさんだよ」

「あら、最低限のことは知ってらっしゃるようで安心しましたわ」

「なあ、ちょっと質問良いか?代表候補生って何だ?」

 

 

 一夏の問題発言に辰人とセシリアは絶句した。

 

 

「簡単に言うと、国家代表の候補生でIS操縦のスペシャリスト、って所だな。更に、467機しかないISの内、専用機と呼ばれるISを持ってるから、かなりの実力者だろう」

「そう!エリートなのですわ!」

 

 

 人差し指を突き立てながら「エリート」の部分を強調しつつ、セシリアは高圧的に言葉を放つ。

 

 

「本来なら(わたくし)のような選ばれた人間とは、クラスを同じくすることだけでも幸運……いえ、奇跡でしてよ。その現実をもう少し理解してくださる?」

「「そうか、なら幸運(ラッキー)だ」」 

「……馬鹿にしていますのっ!?」

 

 

 一字一句重なった2人の言葉は、彼女のプライドに大きく傷をつけた。

 

 

「大体、知識がある彼ならともかく、貴方はよくISについて何も知らずにこの学園に入れましたわね!数少ない男のIS操縦者と聞いていましたのに、正直に言って期待外れですわ」

「おーい、一夏。言われてるぞ」

「そんなこと言われても。俺に期待されても困るんだが」

「まあでも?(わたくし)は優秀ですから、貴方たちのような人間にも優しくしてあげても良くてよ。泣いて頼むのなら、まあ……教えて差し上げても良くってよ。(わたくし)、教官を唯一試験で倒した、エリート中のエリートですから」

 

 

 捲し立てるように言ったセシリアの言葉に、2人が違和感を覚えた?

 

 

「唯一教官を倒した?それなら俺も倒したぞ。一夏はどうだ?」

「おう、俺も……まあ、倒したのかな?」

「煮え切らないな、そんなに微妙だったのか?」

「いや、勝手に自滅したんだよ。俺も驚いた」

 

 

 2人とも教官を倒した。その事実が、更にセシリアの怒りを加速していく。

 

 

(わたくし)だけではありませんの!?」

「女子だけではってオチじゃないのか?」

「ああ、成る程な」

 

 

 セシリアはわなわなと震え、詰め寄るように言った。

 

 

「あ、貴方たちも教官を倒したって言うの!?」

「ああ」

「多分俺も」

「あ……有り得ませんわ!」

 

 

 続けて何かを言おうとしたが、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。

 

 

「ま……また後で来ますわ!逃げないことね!よくって!?」

 

  

 そう言い残し、自分の席へと戻っていく。一夏も、疲れたような表情を浮かべつつ、自分の席へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、この時間で、実戦で使用する各種装備の特性について説明する」

 

 

 1、2時間目と違い、今回は麻耶ではなく千冬が教鞭をとっていた。だが、ふと思い出したような顔をして言った。

 

 

「ああ、その前に再来週行われるクラス対抗戦に出場する代表者を決めないといけないな」

 

 

 その瞬間、辺りがざわめき始める。

 

 

「クラス代表者とはそのままの意味だ。対抗戦だけでなく、生徒会の開く議会や委員会への出席などが主な仕事だ。まあ、有り体に言ってクラス長だな。ちなみにクラス戦は、入学時点での各クラスの実力推移を測るものだ。今の時点では大した差は無いだろうが、競争は向上心を生む。一度決まると1年間変更はないから選ばれたものは全力で取り組むように」

 

 

 その説明を受け、辰人はこの展開はまずいのではないかと察した。そして、それは実現することとなった。

 

 

「はい、私は織斑君が良いと思います!」

「私は北良君が良いと思います!」

「私も織斑君が!」

「私は北良君で!」

 

 

 やはり、このクラスの女子は男子2名を推薦するようだ。だが、辰人は気づいていた。それを決して許さないであろう女子の存在も。

 

 

「それでは、織斑と北良の2人で多数決を行う、ということで異論はないな?自薦他薦も構わんぞ、他にはいないのか?」

「ちょ……ちょっと待った!俺はそんなものやr」

 

 

 一夏が撤回を求めるべく抗議しようと立ち上がるが、出席簿の前に沈黙する。

 

 

「ほ、北良は良いのか!?」

「俺?まあ、やるならやるぞ。別に困らないしな」

「納得いきませんわ!」

 

 

 男子の内のどちらかが代表になる流れで進んでいた話を、セシリアが遮るように叫ぶ。

 

 

「そのような選出は認められません!実力で言えば、この(わたくし)、セシリア・オルコットが適任です!それに、男子が代表なんて良い恥さらしですわ!大体、文化の浅いこの国に暮らすということも、(わたくし)には耐えg」

「おい、少し黙れ」

 

 

 脱線するセシリアの罵倒の言葉に、辰人の頭が沸騰する。自分たちが馬鹿にされるのはどうでも良いが、自分を育ててくれた北良家の人たちや今世話になっている束の生きている国を馬鹿にされるのには、はらわたが煮えくり返るほどの怒りを辰人自身感じていた。

 

 

「流石にな、言って良いことと悪いことがあるってわかるか?」

「な、何ですの!貴方急に」

「お前は、今国を馬鹿にした(・・・・・・・)。分かるか?少なくとも、IS開発者とここに居る世界最強に喧嘩を売ったってことは理解できるか?あんただって、自分の国が馬鹿にされればあんただって怒るだろう?」 

「な、な……!」

「俺を馬鹿にするのはまだ良い。だがな、この国を馬鹿にするのは流石に許せない」

「……け、決闘ですわ!」

 

 

 言い返せないような正論を吐かれたことと、辰人の瞳に宿る僅かな殺意を感じたのか一瞬恐怖を感じたセシリア。だが、持ち前のプライドでプレッシャーを押しのけ、辰人と一夏に決闘を申し込んだ。

 

 

「良いだろう、相手をしてやる。後で後悔するなよ」

「良いぜ。四の五の言いうより、分かりやすい」

 

 

 その言葉に、周囲の女子は苦笑を浮かべる。

 

 

「北良君本気で言ってる?」

「確かに男が強い時もあったけど、それは過去の時代だよ?」

「ISを扱えるからって、オルコットさんを舐めない方が良いよ」

 

 

 女子たちの言葉はある意味事実だ。ISが開発されてからというもの、女尊男卑の傾向が強まってしまった。ISが女性にしか扱えないことにより、女性の権利が肥大化し、男性の権利は大きく縮小したことが原因である。

 

 

「安心しろ、真剣勝負だ。意地でも勝つさ」

「ああ、その意見には同意する」

 

 

 火花を散らす3人に、ため息をつきながら千冬が言う。

 

 

「話は纏まったな。それでは、勝負は1週間後の月曜。場所は第三アリーナで行う、各人準備をしておくように。それでは授業を開始する」

 

 

 こうして3人によるクラス代表戦の火蓋が、切って落とされた。

 

 




 さあ、クラス代表を決めるための戦いが始まった!勝つのは辰人か一夏かセシリアか!

 朱き修羅と蒼い涙と白い騎士が、第三アリーナでぶつかり合う!飛び散るビーム、煌めく刃の一閃、洗練された槍の技が冴えわたる!

 果たして、辰人と一夏は、男の意地を見せることが出来るのか!はたまた、セシリアに敗れ、代表候補生のプライドを貫き通せるのか!

 次回、IS 朱夜の残光!女尊を破る『男の意地』を、皆で読もう!






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