追いかけてくる敵意。
飛来する殺意。
大切な人を抱きながら走る。
赤く染まった手で。
2人は互いに目を合わせ。
「……!」
「…。」
…こんな夢本当に見るんだな。
こーゆーの、小説かテレビの世界だけだと思ってた…。
枕元のスマホには、そこそこの時間が表示されていた。
「…さっさと行くか。」
昨日はグリモアに着いただけで終わったから、入学手続きも何もしてない。
とりあえず寝る部屋だけ貰った状態だ。
支度を済ませると、昨日指定された部屋へと向かった。
「以上が入学についての基本的な説明と……うちでの魔法使いの認識だ。」
…長ったらしい話と一緒にご丁寧に出迎えてくれたのは卯ノ助と名乗るぬいぐるみ兎だ。グリモアの進路指導官らしい。
「しっかし驚いたな…いや、以前から危惧していたことではあったが…」
…魔法使いの役目だのそういう話はアタシには必要ない。
「ま、これからはお前もグリモアの一員だ!よろしくな!」
-私立グリモワール魔法学園・生徒会室-
「会長、本当に大丈夫でしょうか…」
「なに、私はいつも通りのことをするだけだ。」
転校生が来るたびに実施している面談に向け、資料に目を通している生徒会長と副会長。
「そうですね…私は会長を信じますわ。」
「あ、どーもどーも。案内役させていただく服部梓ッス。宜しくお願いするッスよ〜。」
卯ノ助の話が終わり部屋を出ると、口調も身のこなしも軽い女子生徒が待ち構えていた。
「案内役が忍者…随分変わった対応をしてくれるなグリモアは。」
服部は少々呆れ顔で首を横に振った。
「いや〜自分こんな仕事頼まれたこと今までないんスけどねー。ま、事情が事情だから警戒されてるんでしょうね。」
まあ…そうだろうな。
「じゃっ、まずは生徒会室に案内しますよ。転校生はみんな入学した時に会長と面談する事になってるんスよ。」
「そうか。ならなるべく早く頼む。…この視線から逃がしてくれ。」
さっきからチラチラといくつか感じる…アタシは人の視線が苦手なんだ。
「了解!ではでは、自分について来て下さいッス!」
服部について廊下を歩いていると、休み時間ということもあり、時折他の生徒とすれ違う。
だが今のところ、飛んでくる視線は「新しい転校生」に対するものだ。
「服部さん。」
「服部でいいッスよー、どうかしました?」
「今この学園でアタシのことを知ってる奴はどのくらいいる?」
あー…と少し困り顔を浮かべる服部。
「そうですね…執行部から生徒会、精鋭部隊と…あと数人の生徒には伝わってるみたいッス。」
「…そうか。」
「ま、一般の生徒はほぼ知らないッスね。仮に知れ渡ってたらこうして普通に廊下歩けてませんよ。こないだテロ組織に派手にやられた訳ですし…。」
「…ライの連中の襲撃事件か。」
「あれから学園の空気が一部ちょっと変わった感じするッスねー…。
あ、着きましたね。ここが生徒会室ッス。」
そうこう話しているうちに目的地に着いたらしい。
…グリモアのトップ魔法使いとご対面だ。
補説:ライの連中の襲撃事件:2016/10/01〜10/08開催のイベント、「驕れる者」