捻くれた少年と健気な少女   作:ローリング・ビートル

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 リフレッシュでいきなり書いた物語です。
 更新は緩めですが、よろしくお願いします!

  


有頂天

 お互いの温もりを心にしっかりと焼き付けながら、まだ足りぬという思いをなんとか引き剥がし、二人の体は離れていった。

 そのまま二人は振り返らなかった。

 遠ざかる足音だけが、名残惜しそうに響いていた。

 さようなら……。

 

 *******

 

「海未ちゃーん、ことりちゃーん!こっちこっちー!」

「こら穂乃果!あんまり騒いでは他の方の迷惑になりますよ!」

 

 海未ちゃんが穂乃果ちゃんを叱りつける。その様子は、親友というより姉妹に見える……最近は親子にも見えるなぁ。仲良いなぁ。

 今、私達は千葉県にある総武高校という学校に来ています。理由は生徒会役員にお母さん……理事長から、参考までに文化祭が盛り上がる学校を見て、参考にしなさいと言われたからです。

 最初はA-RISEのいるUTX学園に行く予定だったんだけど、近すぎる場所を参考にするのは流石に……という理由で千葉で指折りのマンモス校の総武高校にやってきました。

 生徒数が千人を超える学校だけあって、活気があり、自然と胸が高鳴ります。それは穂乃果ちゃんも同じようで、いつも高いテンションがさらに高く、それを海未ちゃんはどこか警戒しながら歩く……あれ?

 気がつけば二人共いない。恐らく何処かへ走りだした穂乃果ちゃんを、海未ちゃんが追いかけていったのかな?

 もうお昼も過ぎて、しばらくしたら帰る時間なんだけど。

 ポケットから携帯電話を取り出し、連絡しようとする。

 すると、曲がり角だったのが災いして、誰かとぶつかった。

 

「あ、ごめん」

「いえ、こちらこそ」

 

 男の人一人と女の人二人の三人組だ。私は男の人にぶつかったらしい。

 お互いに謝り、何事もなかったのを確認すると、三人組はそのまま去っていった。その表情は、どこか焦っているように見えた。どうしたんだろう?

 男の人は背も高く、顔も整っていたので、かなり女の子にもてそうだ。女の子二人もそれなりの好意を寄せているように思える。傍から見れば、文化祭を楽しむ男女にも見えたかもしれない。

 私自身はいまいち恋愛事がわからない。幼馴染み三人といる時間が充実しているからかなぁ。今はスクールアイドルもやってるし。

 何となく振り返って三人組に目を向けると、階段を昇っていた。進入禁止の屋上への階段を。

 

「…………」

 

 自然と足が向いてしまう。別に三人組を止めようとかではなく、ただの好奇心で……。

 階段をこっそり昇ると、三人組は屋上に出ているようだ……穂乃果ちゃんと海未ちゃん、ちょっと待っててね。

 何やら話し声が聞こえるので、聞き耳を立てる。何だか悪い事をしてるみたい。

 話の内容は文化祭実行委員さんについてのようだ。

 詳しくはわからないけど、問題が起こっているらしい。

 さっきの三人組が説得をしている。

 すると一人、別の男の人が溜息で割り込んできた。

 

「ほんと最低だな」

 

 その先の言葉は酷かった。

 相手に反論を許さない。異論を挟ませない。とにかく悪い所を一つ残らず掬い上げる。私だったら泣いてしまいそうな……そんな言葉だった。

 だがそれも遮られる。

 ドアの近くに衝撃がきた。

 さっきぶつかった男の人が発言を止めさせたらしい。

 数秒後、人が出てくる気配を感じて、慌てて物陰に隠れた。

 カツカツと階段を降りていく音が消えた時、私も帰ろうかと物陰から出ると、扉の向こうから、今にも消え入りそうな独り言が聞こえた。

 

「ほら、簡単だろ?誰も傷つかない世界の完成だ」

 

 それは、さっきの酷い言葉が嘘のような、誰もいない場所に一人ぽつんと取り残されたような哀しい声だった。

 私は緊張で震える手で、そのドアを開けた。

 青空が見えると共に、風に吹かれ、目を細める。

 そして、ドアの近くの壁に凭れて座る彼を見つけた。  

 




  いきなりの新作ですが、楽しんでいただけたら幸いです。

  読んでくれた方々、ありがとうございます!

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