それでは今回もよろしくお願いします。
満面の笑みのことりが手をぎゅっと握り、とある場所に自分を引っ張っていこうとする。
「さ、行こ♪」
「……行かない」
「行こ♪」
「い、行かない……」
俺はその場に踏みとどまり、何とかそれを阻止しようとする。
「行こう……?」
「で、できれば他のやつで……」
「むぅ……」
俺の態度に頬を膨らませた彼女は、胸の前で両手を合わせ、俯いた。すると、彼女の身に纏う甘やかな空気が少しずつ雰囲気を変えた。
いかん、多分アレがくる……。
体中の神経がアレに備え緊張し、それにつられるように拳を握り締め、奥歯を噛みしめる。
やがて彼女は顔を上げ、濡れた瞳を向けてきた。
「……おねがぁい……!」
「ぐ……わ、わかった」
俺はあっという間に意見を翻す。
最初から勝ち負けなどはっきりしているのだ。
ことりに手を引かれた俺は、小さな筐体の中へと導かれる。
そう、ことりにプリクラを一緒に撮るようにせがまれたのだ。戸塚とはノリノリで撮ったくせに何故?なんてツッコミは勘弁していただきたい、こちらにも照れやら何やらがある。
彼女はそんな思春期男子の照れなどお構いなしに、フレーム選びに興じていた。
「う~ん、どのフレームがいいかな?」
「いや、シンプルなやつでいいだろ……」
「ダメだよー、せっかくの記念なんだし」
「何の記念だっけ?初耳なんだけど……」
「え?ん~……進級記念だよ♪」
「…………」
絶対に今思いついただろ、なんて言えなかった。
その優しい笑顔が、思わず見とれてしまうくらいに魅力的だったから。
「じゃあ、撮るよ?」
「お、おう……」
端っこに星やらが散らばり、少し賑やかなフレームを選び、ようやく撮影に入る。あとは撮るだけだと思うと、安堵の息が漏れた。
「もっとこっちに寄ってよってくれないかな?」
「…………」
ことりの指示に従い、ミリ単位の精密機械ばりの動きで、僅かにずれる。
さっきから、彼女の甘い香りがふわふわと筐体内に充満し、ひどく落ち着かない。しかも、つけすぎた香水のような不快さはなく、ずっと包まれていたいような程良い甘さなのがいけない。
「どうかしたの?」
「いや……なんか緊張してるだけだ」
「ふふっ、大丈夫♪素敵な一枚になるから」
その無邪気な笑顔を見ていると、甘く心を満たしていく幸福感以外に、一つの現実を突きつけられる。
お互いの進む道は確実に違っていること。
それだけで、こんなにも近い彼女を遥か遠くの星のように感じられた。
そして、それはひどく悲しいことに思えた。
今からB'zのライブに行ってきます!
読んでくれた方々、ありがとうございます!