捻くれた少年と健気な少女   作:ローリング・ビートル

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Purple Pink Orange

 筐体から出てきた写真に写っていたのは、少し緊張したようなぎこちない笑顔の二人。

 吹き出しそうになるのを堪え、前向きな感想を口にしてみた。

 

「うん、よく撮れてる♪」

「……だな」

「ほら、八幡君の濁りがちな目もしっかりと!」

「いや、心は綺麗だからいいんだよ」

「ふふっ、じゃあもう一回撮って、今度は目の辺りを可愛く……」

「それは止めてくれ」

「残念」

 

 私は見逃さなかった。

 彼の表情が一瞬、寂しそうに歪んだのを。

 でも、それが何なのかまではわからなかった。

 ただ、自分が漠然と抱いている不安と、彼のあの一瞬見せた感情が、どこか似ている気がしてならない。今はただそれだけ……。

 そんな事を考えている内に、青空が顔を覗かせているのに気がついた。天気予報は外れたらしい。

 それと同時にある風景を思い出した。

 

「ねえ、八幡君」

「?」

「もう少し付き合ってくれない?」

「……わかった」

 

 *******

 

「ここだよ♪」

「公園、か……」

 

 私は小さい頃から何度も何度も、数えきれないくらい遊んだ公園に八幡君を連れてきていた。

 公園の片隅には、高校生から見ればどこにでもある大きさの、幼い子供から見れば、世界の果てまで見渡せそうなくらい高く見える木がぽつんと立っていた。

 彼はその木をじいっと見つめていた。

 

「…………」

「登ってみたい?」

「いや、遠慮しとく」

「昔ね。よくこの木を登ってたんだよ」

「……意外だな」

「穂乃果ちゃんが登るって聞かなくて」

「ああ、会った事ないのに何故か想像つくな……」

「ふふっ、海未ちゃんが木にしがみついたまま泣き出しちゃったり、私も途中で滑り落ちそうになったり」

「…………」

「最後は3人が座った枝が折れちゃったりして……」

「お、おう……」

 

 その時の事を自分なりに想像してくれているのか、八幡君は苦笑しながら、そっと右手を木に添えた。

 私はそれに倣い、すぐ隣に左手を添える。

 長年、私達を見守ってくれている木の優しい鼓動が掌に伝わってくる気がした。

 そして、上着越しに触れ合う肩と肩からも、優しい鼓動が伝わってくる気がした。

 

「なんか、不思議な感じだ」

「?」

「いや、自分でも何が言いたいのかよくわからないんだが……」

 

 彼は木から手を離し、すっかり夕焼け色に染まった空に目を向けた。その横顔に胸がとくんと高鳴り、沈黙を縫うように吹き抜けた風が涼しく思えた。今、心の奥に募る感情を切なさと呼ぶのかもしれない。

 

「昔は……ことりがここで泥だらけになって遊んでて、今はこうして……悪い。やっぱり何を言いたいか自分でもわからん」

「ふふっ、変なの。でも……わかる気がする」

 

 私も夕焼け色の空を仰ぎ、暮れゆく街並みを思う。

 あの時みたいに高い所から街を見下ろしたりはしていないけど、太陽は昇る時だけでなく、沈む時でさえ、街の色を変えていくことを改めて思い知らされた。

 

 

 

 

 

 




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