喫茶店を出た私達は、次に行く場所を歩きながら考えることにした。
さっきみたいにμ'sのメンバーや、他のお友達に会う可能性も決して低くはないけれど、今はこの並んで歩く時間も、かけがえのない大事な時間だった。
「あら?あなたは……」
「え?ツ、ツバサさん?」
またいきなり声をかけられ、振り向くと、今度はA-RISEのリーダー・綺羅ツバサさんがいた。にこちゃんと同じくらいに小柄な身体からは、圧倒的なオーラが出ていて、その表情は自信に満ちて……
「え?あ、そ、その……そちらの男性は……」
いなかった。
ツバサさんは何故か足を震わせ、私と八幡君を交互に見ている。言葉もどこか覚束ない。
「あっ、そうよね!たしか南さん、兄弟いたもんね!やだ、私ったら……」
「ち、違いますよ!」
一体誰からの情報なのかなぁ?
「う゛ぇえ!?じゃ、じゃあ、まさか……」
どこかで見たことあるようなリアクションだなぁ。
私は八幡君の方を見て、手を繋ぎ、合図を送った。
「ヒミツです♪」
「え?あ、ちょっ……あ、で、でも、そうよね!ヒミツってことは恋人とかじゃないわよね!だって高校生で恋愛とか早すぎるし!」
……ツバサさんの意外な一面を見てしまった気がする。この事は私の心の中に、そっと仕舞っておこう。
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結局私達は、秋葉原を少し離れることにしました。
今は電車の中で……
「……なあ、ことり」
「なぁに?は、八幡君」
「東京に住んでる奴らは……いつも、このラッシュに耐えているのか……」
「あ、朝は、もっと、ひどいらしいよ……」
やはりゴールデンウィークで、そこかしこでイベントが行われていることもあり、電車内は満員で、彼は身じろぎをするのも難しいくらいだった。
私は彼が端っこで庇ってくれたから、そこまできつくはないけれど……
(近い……)
向かい合っているから、お互いの鼻先に吐息がかかり、どうにも落ち着かない。身体も胸の辺りや、足が絡まるように密着して、かなり恥ずかしい。彼が頑張っていなければ、もっと気まずいことになっていただろうなぁ……。
八幡君は顔を背けながら、話を続ける。
「あ、あれだ……俺はとてもじゃないが、家から徒歩か自転車で通える範囲じゃないと、東京じゃ働けそうもない」
「あはは……」
彼の言葉に私は苦笑いしかできなかった。この辺りは全然変わらないね。
私が潰されないように、必死になっている彼を見て、何かできることはないかと考えてみたけど……何も思いつかない。降りた後で何か……
そこで変化が訪れた。
突然電車がガタンと揺れ、後ろから押された彼の身体が、私の方へ傾いてきた。
「「っ!」」
今、確かに唇に熱を感じた。
お互いに顔を離し、一瞬だけ目を合わせ、すぐに俯く。
周りの音が遠くなり、顔がだんだん熱くなっていく。
高鳴る鼓動は止められそうもない。
私の唇は、彼の頬の、彼の唇に近い部分に一瞬だけ触れた。