偶然の再会。
そんな言い方がぴったりくる二度目の出会い。どうやら彼も気づいているようだ。
そして、前と同じように、どこか哀しそうな目をしていた。あれからどうしてたのかなぁ?
「ミナリンスキーさん、どうしました?」
後輩メイドのマユミちゃんが話しかけてくる。
「あ、何でもないよ。大丈夫!」
いけないいけない。仕事中でした。
マユミちゃんは
「あの目つき悪い人と一緒にいる……剣豪将軍さんってホントに素敵ですよね~♪」
「え?あ、うん……」
そうかぁ、マユミちゃんってああいう感じの人がタイプだったのかぁ。
「だめだよ。ご主人様に目つき悪いとか言っちゃ」
「あ、すいません……」
まあ悪気はないんだろうけど。
彼の方を見ると、周りのものには大して興味なさそうに、コーヒーに砂糖とシロップを入念に注いでいた。……ちょっと入れすぎじゃないかなぁ。
でもこれも何かの縁だから、文化祭を楽しめなかった分、少しでも満足してもらえるといいな。
「じゃあ、私行ってくるね」
私は出来上がったメニューを手に、彼のいるテーブルへと向かった。
「お待たせしました、ご主人様~♪」
オムライスを一つずつ丁寧に運ぶ。
運んだ後は、いつものサービスの為、ケチャップを取り出す。
「それではお絵描きさせていただきますね~♪」
「うむ、存分にやるがよい!」
「…………」
腕を組み、思いきり胸を張る剣豪将軍さんを、彼は面倒くさそうに見ていた。穂乃果ちゃんが思いつきで行動するのを止めようとする海未ちゃんの目と似ている。いい意味での諦めというか……。
私はハートとメッセージを書く。よし、完成!じゃあ、次は……
「あ……」
「?」
予想外の光景がそこにあった。
彼はもうオムライスを食べ始めていた。
「八幡!き、貴様、何をやっておるか!」
「あ、いや……朝飯食いそびれたから腹減ってたんだよ」
「あはは……」
「空気の読めん奴め」
「え?何それ、自己紹介?お前にだけは言われたくないんだけど……」
じゃあ、ここは……
「それでは代わりに……おいしくな~れ♪」
ケチャップの代わりに魔法をかけておいた。
「…………」
彼は照れくさそうに頬を赤く染め、外の方を向いている。意外と照れ屋さんなんだ。結構可愛いかも。
「それではごゆっくり、ご主人様♪」
少しだけからかってみたくなったのは内緒の話。
*******
しばらくして、彼のいるテーブルのベルがチリンチリンと鳴らされた。
「は~い♪」
「ツ、ツツツ、ツーショットチェキなんだけど……」
声が震えている剣豪将軍さんからツーショットチェキ券を差し出される。
……背後からマユミちゃんの視線を感じるけど……ごめんね?
「はい!それではこちらへ♪」
「はひゃい!……は、はちま~ん!やっぱりお主が行ってきて~!」
「お前……ここでヘタレるのかよ……」
「し、仕方ないじゃねえか……はちえも~ん……」
「誰がはちえもんだ。こら、チケット押しつけるな……」
「はちま~ん……」
「わかった……わかったから離れろ。暑苦しいから」
剣豪将軍さんの必死のお願いに、彼は根負けしてしまった。ツーショットチェキは、彼と撮ることになった。
「それではこちらへどうぞ~♪」
落ち着かない様子の彼を、チェキ撮影用のブースへと案内する。
隣を歩く彼の横顔をちらりと見やると、視線に気づいたのか、こっちを向き、目が合った。
「「…………」」
数秒間立ち止まり、見つめ合ってしまう。
マユミちゃんに声をかけられるまで、私達はそのまま動けなかった。