ことりが泊まっていく旨を母親に伝える為、電話をかけている横で、黙って天井を仰いだ。
腕の中にまだいるように思えるくらい彼女の感触や温もりが焼き付いている。
さらに、頭の中は靄がかかったようにぼんやりして、身体はドクンドクン疼いている。
こんなに誰かを欲しいと思ったのは、生まれて初めてだった。
「うん、それじゃあ……もう、な、何言ってるの?切るからね!……ふう、お待たせ」
「……ことり」
「?」
「ちょっと立ってもらっていいか?」
「どうかしたの?」
「……さっき、座ったままだったから……今度は、しっかり立って、向かい合って……その……抱きしめたい」
我ながら歯の浮くようなことを言い、挙動不審になりかけるが、彼女の微笑みがそれを押しとどめた。
「……う、うん、いいよ」
頷いたことりは俺の前に立ち、胸の前で両手を合わせ、目を閉じる。その曇りのない美しさに、触れるのさえ躊躇われるが、俺はゆっくりとその身体を抱きしめた。
じんわりと優しい体温が、何もかも忘れさせてくれる。
「ん…………あったかいなぁ」
「……そっか」
「ねえ、八幡君」
「どした?」
「私達……」
「ニャー」
「「っ!?」」
足をするりと撫でていく毛むくじゃらな何かと、可愛らしい鳴き声に、二人してビクッと身体が反応し、バランスが崩れてベッドに倒れ込んだ。
「わ、悪い……」
「あはは、大丈夫、だ……よ……」
苦笑いなことりの声が次第に途切れていく。
どうしたのだろうかと体を起こそうとすると、右手にやわらかな感触を感じた。
……まさかな。
右手が握りしめているものに対して、確信にも近い推測がつくが、まさかそんなTo LOVEるが……なんて気持ちもあり、指を動かしてみる。
「んぁっ……」
ことりの口から、ぞくぞくするような甘く艶やかな吐息が漏れ、耳元を刺激する。ああ、これはもう完全にクロですね。
ゆっくりと顔を上げると、俺の右手はことりの胸を掴んでいた。
事実確認が済んだところで、さっきまでの呼吸をするのも躊躇われるような静謐な空気は雲散霧消してしまった。
「あわわわ……」
「わ、悪い……」
真っ赤に染まることりの顔を見て、手を離そうとするが、体が動かない。動いてくれない。さっきとは違う意味で心臓がばくばく鳴り、やばい。やばいったらやばい。
「お兄ちゃ~ん、ことりさ~ん。なんかすごい音……が……」
「「…………」」
「失礼しました~♪」
ドアが閉められる。というか、開けられたのにも気づかなかった。小町のことだからノックはしたのだろうが、気づかないくらいに頭の中がこんがらがっていたらしい。
火照った頭の中が急速に冷えていくのを感じ、溜息を吐く。あのままだったら……
「あの……八幡君……」
「?」
「そろそろ、手をどけてもらえないかな?」
「わ、悪い!」
すぐに手をどかし、土下座の態勢をとる。
隣にはカマクラが座り、「ニャ~」と気持ちよさげに鳴いていた。おい、半分はお前のせいだからな。
体を起こしたことりは胸元を押さえ、恥ずかしそうに口を開いた。
「も、もう……八幡君のエッチ…………意気地なし」
最後の方はあまりに声が小さくて聞こえなかったが、まずは謝るのが先だった。