ソファーに並んで、お互いの肩にもたれ合いながら眠った夜。
私達はずっと手を握り合っていました。
明かり一つ点けず、時折聞こえてくる誰かの歩く音や、車の音を聞き流しながら。
気が向いた時に、手探りでお互いの輪郭を確かめ合い、キスを交わしながら。
そして、気がつけば眠りについていました。
夢の中では、二人は並んで歩いていました。
懐かしい寂れた街並みを。
見覚えのある賑やかな街並みを。
少し広い公園を。
誰もいない砂浜を。
雪の降り積もった細長い道を。
どこまでも、どこまでも歩いていました。
*******
外はどしゃ降りの雨がざあざあと絶え間なく音を立て、窓の外はまだ夕方なのに、深夜のような暗闇だった。
ぼーっとしていたけど、携帯が震え、画面を確認してからの自分の動作は驚くほど速かった。
「久しぶり」
「……おう」
「どうしたの?」
「いや、声がちょっと怖いんだが……」
季節は秋になり、10月もあと少しで終わりを迎える頃、私は八幡君と1週間ぶりに電話で話していた。
理由は、単純に忙しかったから。
この時期になると仕方ないと頭で理解していても、やはり声すら聞けないことは不満で、ついついワガママになってしまう。あぁ、ダメだなぁ……。
「寂しかったんだよ?」
それでも、つい言葉にしてしまう。
すると、彼は途切れがちに口を開いた。
「……俺も、その……寂しかった……むしろ、俺の方が……寂しいまである」
「……ふふっ、それはどうかなぁ?」
「何だよ。何ならどんだけ寂しかったか、今から5時間みっちり語ってもいいんだが」
「そ、それは遠慮しとこうかな……」
「まあ、そっちは元気そうだな」
「八幡君も。1週間連絡取らなかっただけで、こんなに相手がどうしてるか気になるって、何だかおかしいね」
「……そうかもな」
「…………」
「…………」
二人の間に沈黙が降りてきた。
彼の吐息が、電話越しに耳をくすぐり、次の話題を催促しているように思える。
そして、きっと彼も同じ事を考えている。
決して居心地の悪い沈黙じゃなかったけど、私は素直な気持ちを口にした。
「……会いたいな」
心からの本音。
嘘では飾れなかった。
今すぐにその温もりに包まれたかった。
それだけでよかった。
「……俺も、そう思ってる」
「あはは……ごめんね?変なワガママ言っちゃって」
「いや、別に……ああ、悪い。誰か来たから、また後で連絡する」
「うん、じゃあまたね」
通話はすぐに途切れ、私はしばらく画面を見つめていた。
雨はまだ止みそうになかった。